不動産投資を検討している人の中には、「属性」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないだろうか。不動産投資における属性とは、金融機関が融資を審査する際に見ているポイントのことである。属性という言葉を初めて聞く人にとっては「実際に金融機関がどのようなことを見ているのか」と不安に思うこともあるかもしれない。
そこで本記事では、融資の際に金融機関が見ているポイントについて解説する。本記事を読むことで、審査や融資を受ける前に注意しておくべきポイントが分かるだろう。不動産投資を検討している人は、ぜひ参考にしてほしい。
不動産投資の融資で金融機関が見るポイント
不動産投資の融資で金融機関が見る主なポイントは以下であると考えられる。
- 顧客の属性
- 物件の担保価値
「属性」とは?
融資を受ける場合の「属性」とは、申込をした顧客が持っている特徴や性質のことを言い、金融機関が融資可否を決めるための要素の一つである。
属性の中では、主に以下の点が見られる。それぞれを詳しく見ていこう。どういった要素を重視しているかについては金融機関によって異なるのであくまで一般的な内容として参考にしてほしい。
- 勤務先
- 勤続年数
- 収入
- 金融資産
- 借入状況
家族構成
勤務先
融資において勤務先は、大きな判断材料の一つとなる。なぜなら、金融機関は融資をする際に返済の安定性を重視する傾向にあり、勤務先が上場企業など社会的信用の高い場合、安定した収入が見込めるからだ。
不動産投資の融資は、返済期間が35年と長期間となるケースが多い。例えば、返済期間中に勤務先が倒産してしまうと収入が途絶えてしまい、その結果、融資金を回収できない恐れにつながるのだ。
勤続年数
収入の安定性を測る要素の1つに「勤続年数」がある。近年では転職することが一般的になってきてはいるが、中には収入が上がらないケースでの転職が少なくない。年収維持、あるいは減少となるケースに他業種への転職の傾向が見られるため、まったく新しい業種への転職歴がある方は注意が必要だろう。収入
お金を貸す際、収入が多い人と少ない人であれば、収入が多い人のほうが安心して貸せるだろう。金融機関は、返済能力を判断する一つの指標として収入額も重視しているのだ。ただし、金融機関はあくまでも不動産投資の借り入れ申し込み時点の収入で判断する点はしっかりと押さえておきたい。例えば、上場企業に勤めている場合でも年齢が若いうちは収入が少ない人もいるだろう。
「上場企業勤務だから将来性も含めて年収以上の評価で見てくれるのではないか」と考えてしまう人もいるかもしれない。しかし返済能力の有無は、あくまでも現在の収入で判断されることが多い。なぜならローンを組んで不動産を購入した場合、返済は翌月から始まるからだ。歩合制の給与形態などの場合を除き、いくら将来性が高い人材であったとしても収入がいきなり大きく増加するわけではないため、返済能力を上回る返済はできないだろう。
給与所得者ではなく経営者や個人事業主の場合は、事業実績が重要になる。金融機関によっては、直近3期分の確定申告書や決算書を提出しなければ審査の土台にすら乗らない場合も少なくない。それだけ経営者や個人事業主は、給与所得者と比べると収入が安定していないため信用力が低く評価されてしまうのである。金融資産
現金や株式などの金融資産の保有状況も評価対象の一つとなる。例えば、「収入は多いが貯金などが全くない」という状態では、評価は低くなってしまうかもしれない。「どれくらいの金融資産があれば評価が高くなる」という明確な決まりは公表されていないため、ケースバイケースである。借入状況
現状でカーローンや住宅ローンを組んでいる場合、さらに返済額が増えるため返済リスクが高いと判断されかねない。そのため、比較的大きな借り入れがないほうが金融機関の印象は良くなると考えられる。家族構成
教育費をはじめ、将来的に子どもにかかる費用は多い。そのため、子どもが何人いるかといった家族構成が今後の資金収支を見るうえで参考になる。金融機関が見ているポイントの1つであると考えておきたい。
物件の担保価値
購入する物件の担保価値が十分に評価されることも重要なポイントの一つである。仮に返済が滞ってしまった場合、金融機関は物件を差し押さえ売却することで貸出金の回収を行う。将来的に売却価格が大きく下がるような担保価値の低い物件の場合は、融資を受けるのは厳しいだろう。金融機関が担保価値を査定する方法は、主に以下の2つである。
- 積算法
- 収益還元法
- 積算法
積算法とは、土地と建物の現在価値を足して算出する方法である。土地は国税庁が発表する相続税路線価や、国土交通省が発表する公示地価に土地の面積をかけて算出する。計算式は以下の通りだ。
「相続税路線価または公示地価×土地面積」
土地形状などによって最終的に価格は調整される。
建物については、同様の建物を再建築した際の価格や面積、残存価値をもとに計算する。計算式は以下の通りだ。
「再調達価格×延床面積×(法定耐用年数-築年数)÷法定耐用年数」
- 収益還元法
収益還元法とは、対象不動産が将来生み出すと予測できる収益をもとに価格を算出する方法であり、計算方法は直接還元法とDCF法の2通りである。1つ目の直接還元法の計算式は下記の通りだ。
1年間の収益(年間賃料収入-必要経費)÷還元利回り
1年間の収益とは、年間賃料収入から必要経費を差し引いた金額である。還元利回りとは、投資利回りを指し対象不動産近隣エリアの類似した物件事例など金融機関の幅広いデータをもとに算出される。
2つ目のDCF法とは、ディスカウントキャッシュフローの略であり、将来得られる見込み収益と将来売却できる予想価格を現在の価格に割り引いて計算を行う方法だ。計算式は下記の通りだ。
不動産の収益価格=年間収益 ÷(1+ 割引率) +年間収益 ÷(1+ 割引率) の2乗 ・・・年間収益 ÷(1+ 割引率)の n乗 + 物件保有終了時の不動産売却価格 ÷(1+ 割引率)の n乗
nは物件の保有年数を指す。しかし「現在の価格に割り引く」と聞いてもすぐに具体的なイメージができる人が少ないだろう。わかりやすいように100万円で例えてみよう。今現在持っている100万円と1年後に手に入れられる100万円の価値は同じだろうか。
仮に現在持っている100万円を年利3%で運用したら1年後には103万円になる。つまり1年後に得られる100万円よりも現在持っている100万円の方が3万円高い価値があり、将来の100万円のほうが価値が低いのである。
割引率とは運用する商品によって異なるが、不動産の場合は3〜5%の利回りが一般的であるため、ここでは4%で計算しよう。
月に10万円、年間120万円の利益が出る不動産を、3年後に2,800万円で売れると仮定しよう。
120万÷(1+0.04)+120万÷(1+0.04)の2乗+120万÷(1+0.04)の3乗+2,800万÷(1+0.04)の3乗=115万+111万+107万円+2,500万円=2,833万円
このように現在の価格に割り引いた3年間の収益と、3年後の売却価格を合計すると現在の不動産価格が導ける。
信用度を維持するために事前にできること
融資を受けるためには、金融機関からの信用度を維持することが必要だ。例えば信用度を維持するためにできることは、以下のようなものがある。
自分の状況を把握するために信用情報を確認する
融資の審査において、金融機関は借入の返済状況も参考にしている。そのため、過去に返済の遅延・滞納がないかは気になるところだ。自分で信用情報を取得できるため、調べて振り返ってみるのも良いだろう。信用情報を確認する手段については以下のとおりだ。信用情報を取り扱う3つの機関
日本にある個人信用情報機関は、以下の3社である。
全国銀行個人信用情報センター(KSC)
株式会社シー・アイ・シー(CIC)
株式会社日本信用情報機構(JICC)
それぞれの情報機関で加盟している金融機関は異なる。同じ金融機関が2つの情報機関に加盟しているケースもあるため、不安な場合は3つすべてで情報開示請求をするといいだろう。
- 信用情報を確認する方法
信用情報を確認する方法は、以下の通りである。 - インターネット開示
- 郵送開示
- 窓口開示
いずれの方法でも個人情報の入力と約1,000円の手数料が必要だ。
まとめ
本記事では、融資の際に金融機関が見ているポイントについて解説した。金融機関は、融資をするにあたりさまざまなポイントを見ている。結論としては「問題なく返済できるか」という「信用度」を確認しているのだ。信用度というのは一朝一夕で身につくものではない。ローンを組みたいタイミングで組めるように本記事で解説した内容を常日ごろから意識してみてはいかがだろうか。
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