不動産投資をするために自己資金はいくら必要?自己資金の目安を解説
(画像=Krakenimages.com/stock.adobe.com)

不動産投資する際に「不動産投資をするのに自己資金がいくら必要なのかを知りたい」「あまり自己資金がないけどそれでも不動産投資できるのかを知りたい」など、自己資金について知りたい方は多いだろう。

自己資金を多く入れることによって、月々の返済が少なくなるメリットがある一方、レバレッジ効果が小さくなるなどの注意点もあるため、自身の投資目的や資金状況、購入する物件などによって自己資金をいくらにするかを見極める必要がある。

そこで本記事では自己資金の考え方、自己資金の目安などについて詳しく解説していく。

不動産投資の自己資金とは

自己資金とは、不動産を購入する際に必要な資金のうち、ローン借入額を除いて現金で用意するお金のことで、一般的に頭金と諸経費のことを指している。

  • 登録免許税
  • 司法書士報酬
  • 印紙代
  • 融資事務手数料
  • 火災保険料や地震保険料
  • 仲介手数料
  • 不動産取得税

諸経費は購入する不動産によって異なり、大体、物件価格の7〜10%かかると言われている。ただし、物件や投資家の属性によって割合は変動するので注意が必要だ。なお、不動産取得税は物件購入後、数ヵ月〜半年後に請求されるので忘れないようにしておきたい。

不動産投資ローンで自己資金を入れるメリット

不動産投資ローンで自己資金を入れるメリットはいくつかあるが、ここでは以下の2つについて解説したい。

  • 月々のローンの返済額が減る
  • 金利変動によるリスクを軽減できる

月々のローンの返済額が減る

不動産投資ローンで自己資金を入れるメリットは月々のローン返済額が減ることが挙げられる。また、自己資金拠出によりローン金額が下がることから完済までに支払う総支払額(元利金)に占める利息部分を減らすことができる。

では、実際に以下の場合で月々の支払いと完済までに支払う元利金の総額に占める利息にどれだけ差が生まれるのか比較してみよう。

【前提条件】

  • 金利(年利):2%
  • 元利均等返済で計算
  • 不動産価格:8,800万円
  • ボーナス返済:なし
  • 返済期間:30年

<自己資金を1,000万円入れて借入金額7,800万円の場合>

月々の返済額:28万8,303円
総返済額:1億378万8,935円
総返済額のうちの利息部分:2,578万8,935円

<自己資金が0円で借入金額8,800万円(フルローン)の場合>

月々の返済額:32万5,265円
総返済額:1億1,709万5,235円
総返済額のうちの利息部分:2,909万5,235円

上記のように1,000万円の自己資金がある場合と0円の場合を比較すると、月々の返済額は「3万6,962円」、総返済額のうちの利息金額については「330万6,300円」の差が生まれる。

<8,800万円の物件を購入した場合>

総返済額 月々の返済額 総返済額のうちの
利息金額
自己資金0円 1億1,709万5,235円 32万5,265円 2,909万5,235円
自己資金1,000万円 1億378万8,935円 28万8,303円 2,578万8,935円
差額 1,330万6,300円 3万6,962円 330万6,300円

金利上昇によるリスクを軽減できる

不動産投資ローンを組む際に自己資金の割合を多くするほど、金利上昇のリスクを軽減することが可能だ。

借入金額によって支払う利息額が大きく変わってくる。先の比較は「金利が30年間変わらない」という前提の金額であることから返済途上で金利が上昇した場合には、その差はさらに大きくなることになる。したがって、金利変動によって金利が高くなった場合には自己資金を入れない場合に比べ金利上昇の影響を軽減することにつながる。ただし、いくら自己資金を投入しようとも金利上昇に伴う、支払利息の増加自体は防ぐことができない点には注意したい。

借入条件が優遇される可能性がある

借入額が少なくなると、金融機関からすると債権を回収できなくなるリスクが小さくなる。よって、借入期間や金利などに条件交渉余地が生まれる可能性がある。

しかし、自身の属性や購入物件に難がある場合には、頭金を入れなければ取り組みができない、もしくはそもそも取り組みができないということがあるので、自己資金を入れたからといって必ず条件交渉に有利に働くわけではないことに留意が必要だ。

不動産投資ローンで自己資金を入れるデメリット

不動産投資ローンで自己資金を入れるデメリットはいくつかあるが、ここでは以下の2つについて説明する。

  • 資金的な余裕がなくなる
  • レバレッジ効果が低くなる

資金的な余裕がなくなる

不動産を購入する際に自己資金を多く入れることによって、手元に残っている資金が少なくなり余裕がなくなる可能性がある。

普段生活をしていく中で、突発的に資金が必要になるケースや不動産経営をしていくうえで災害や設備故障などで突発的な修繕費が生じるケースが考えられる。不動産を購入するときに自己資金を入れすぎてしまうと、突発的な事態に対応するための資金が手元にないという結果になる。つまり、投資する資金と手元に残す余剰資金とのバランスをよく考慮することが重要だ。

レバレッジ効果が低くなる

不動産投資ローンを利用して不動産投資を行う際のメリットは、少ない自己資金で大きな利益を得るレバレッジ効果があることだ。しかし、自己資金を多くすることでレバレッジ効果は低くなる。

物件価格4,000万円・利回り7%の不動産を、自己資金500万円+不動産投資ローン3,500万円で購入したケースと、自己資金1,000万円+不動産投資ローン3,000万円で購入したケースを比較してみよう。以下は、1年目の収益の比較である。なお、本記事では利回りについてわかりやすいように表面利回りとしている。

【前提条件】

  • 利回り:7%
  • 金利(年利)2%、20年ローン(元利均等返済)
  • ランニングコストなどの経費は除外して計算
  • ボーナス返済:なし

<自己資金500万円+不動産投資ローン3,500万円のケース>

  • 4,000万円(不動産価格)×7%(利回り)=280万円(年間の家賃収入)
  • 3,500万円のローンの利息分:63万724円(初年度)
  • 280万円(年間の家賃収入)−63万724円(初年度利息)=216万9,276円
  • 自己資金利回り:自己資金500万円÷216万9,276円=43.3%

<自己資金1,000万円+不動産投資ローン3,000万円のケース>

  • 4,000万円(不動産価格)×7%(利回り)=280万円(年間の家賃収入)
  • 3,000万円のローンの利息分:54万621円(初年度)
  • 280万円(年間の家賃収入)−54万621円(初年度利息)=225万9,379円
  • 自己資金利回り:自己資金1,000万円÷225万9,379円=22.5%

同じ280万円の家賃収入だとしても、自己資金500万円の場合の自己資金利回りは約43%に対し、自己資金1,000万円の場合の自己資金利回りは約22%である。自己資金が多いほうが利回りは約21%も低くなり、レバレッジ効果は低くなるのだ。なお、ここでの収益は計算上のものであって、実際のキャッシュフローとは別であること、そして元本の返済があるため手元に残る現金は少なくなることは覚えておきたい。

上記は1年目の比較である。この先は建物や設備の経年劣化による資産価値の下落、家賃の下落があり、さらに金利が上昇するリスクもある。年間の家賃収入が落ちてくることを考えると、将来的にはここまでの差は生まれないだろう。

不動産投資における自己資金の目安

ここまで不動産における自己資金について説明してきた。では、不動産を購入する際に自己資金はどれくらい必要なのだろう?結論から言うと、ローンを依頼する金融機関によって異なる。

金融機関のローン審査では、物件の収益性や担保の適格性、ローンを受ける人の勤務先の安定性、既存の借入状況、不動産投資用の自己資金や諸経費以外の余剰資金など総合的に見ていると言われている。

まとめ

不動産投資ローンを利用する際にどれくらいの自己資金を入れるかについては、自身の投資目的や資産状況などによって異なる。そのため、自己資金を入れるメリットやデメリットについてよく理解しておくことが重要だ。

また、自己資金を入れることによって、手元の資金が減ることになる。万が一の出費に備えて、資金計画をきちんと立てることも大切である。

不動産投資における自己資金について悩まれている方は、ぜひこの記事を参考にしてほしい。

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