不動産投資をすると節税できる?節税の仕組みをわかりやすく解説
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「不動産投資で節税できるの?」「どの税金が節税できる?」というように、不動産投資を検討していると、節税についても気になるものだ。

結論を言うと、不動産投資をすると節税ができるケースがある。節税できる可能性がある税金は、所得税と住民税、相続税の3つである。ただし、節税の仕組みは複雑なため、よく理解することが重要だ。

こちらの記事では、不動産投資で節税できる税金とその仕組みについて詳しく解説していくので、ぜひ最後まで読んで、不動産投資をする際の参考にしてほしい。

不動産投資で節税できる税金は?

不動産投資で節税できる税金は以下の3つだ。

所得税
住民税
相続税

所得税と住民税については、損益通算を利用することで節税することができるケースがある。

損益通算とは、不動産所得などの赤字をほかの所得から差し引くことだ。一方で相続税の節税は、損益通算とは全く違う仕組みになる。

では、それぞれの節税の仕組みについて説明していく。

「所得税」と「住民税」の節税ができる

不動産所得が赤字になると、給与などの所得と損益通算することができる。そのため、確定申告することによって、払いすぎた税金の還付を受けることができ、節税につながるのだ。

「相続税」の節税ができる

不動産投資をすることで相続税対策にもなるのだ。その理由は以下の4つが挙げられる。

  • 融資による借入金はほかのプラス資産から差し引くことができる
  • 現金よりも不動産のほうが相続税評価は減額される
  • 借地・借家割合で相続税評価額をさらに下げられる
  • 不動産賃貸用の土地の場合は「小規模宅地等の特例」を利用できる

それぞれについて説明していこう。

  • 融資による借入金はほかのプラス資産から差し引くことができる
    不動産を購入する際に融資を利用すると、相続を受ける時点での残債を相続税評価額から差し引くことが可能だ。相続税評価額が下がることによって、相続税の課税額も下がることになる。

    例えば、相続する資産のうち5,000万円の現金があった場合、不動産購入のための借入が2,000万円残っていたら、その借入金が債務にあたるので、相続税が課税される金額は「5,000万円-2,000万円=3,000万円」になる。ただし、借入金を資産から差し引くことができたとしても、相続人に負債が残るのはデメリットである点は理解しておきたい。

    また、融資を受ける際には団体信用生命保険に加入するケースが多い。この場合、不動産を相続するときは残債が団信の保険金で完済されるため、このケースには当てはまらない。

  • 現金よりも不動産のほうが相続税評価は減額される
    現金は金額がそのまま相続税評価されるため、100万円なら100万円と評価されることになる。

    一方で、アパートやマンションなどの敷地(宅地)は路線価方式や倍率方式によって相続評価されるため公示価格より圧縮されるケースがある。また、建物は固定資産税評価によって評価されるため、こちらも実勢価格より圧縮されるケースがある。そのため、立地や不動産の状態によっては、実際の価値よりも相続税が課税される金額が低くなる。

  • 借地・借家権割合で相続税評価額をさらに下げられる
    不動産を貸し出している場合には、借家権割合によって建物の相続評価額を下げることが可能だ。借家権割合とは、貸家建付け地を相続する際に相続評価の計算で使用する建物の価値に占める借家権の割合のことで、一律で30%と決められている。

    また、土地を貸している場合には、借地権割合によって土地の相続評価額を下げることも可能だ。借地権割合とは土地に占める借地権の割合のことで、借地等の貸宅地の相続評価額を計算する際に使用する。路線価に表示されているアルファベットの記号が借地権の割合を示していて、A〜Gと90%〜30%の順に定めており、地域によって異なるため確認が必要だ。なお、空欄は「権利金の支払の習慣がない地域」であり、借地権割合は20%となる。

借地借家権つきの建物と土地の相続評価額の計算式は以下になる。

【建物の相続評価額の計算式】
「固定資産税評価額×(1−借家権割合×賃貸割合)=建物の相続評価額」
上記にある賃貸割合とは、実際に貸している住戸の割合のことを指す。

【土地の相続評価額の計算式】
「自用地評価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=土地の相続税評価額」
上記にある自用地評価額とは所有権として保有していたときの評価額のことを指す。

上記の計算式に自身の不動産の条件を当てはめることで、正確に計算することができる。

  • 小規模な事業用の土地の場合は「小規模宅地等の特例」を利用できる
    不動産賃貸用の土地の場合は「小規模宅地等の特例」を利用することが可能だ。ただし、利用するためには要件があるので以下を確認してほしい。
要件 内容
事業継承 対象の土地で行っていた貸付事業を相続税の申告期限までに引き継いで、継続していること
保有継続 対象の土地を相続税の申告期限までに所有していること
土地上限 200平方メートル
減額割合 50%

出典:国税庁ホームページより株式会社ZUU作成

上記の要件を満たしているケースは、200平方メートルを上限に、評価額を50%減額することができる。つまり、要件さえ満たしていれば、更に相続税の課税額を圧縮することが可能になる。ただし、相続する財産が「自宅と賃貸アパート」といった複数の土地であるケースでは、自宅の土地で特例を受けると減額割合が80%になる。賃貸用物件で特例を受けるほうが節税にならないケースもあるので、複数の土地が相続対象となるときは専門家に相談するのが無難だろう。

不動産投資で計上できる経費

節税効果を高めるには、収入から差し引くことができる不動産経営に関連する経費を漏らさず計上して所得を少なくすることだ。

ここでは、賃貸経営で認められている経費を把握しておこう。

  • 固定資産税や都市計画税、不動産取得税、登録免許税、印紙税、事業税など
  • 減価償却費
  • 地震保険、火災保険などの保険料
  • 管理費・修繕費
  • ローンの支払い利息
  • 管理会社への委託料
  • 管理会社との打合せ、現地調査などの旅費交通費
  • 管理会社との打合せなどの交際費
  • 情報収集するための書籍、新聞などの諸経費、など

不動産投資に直接必要な経費であることがポイントになる。

所得税と住民税の節税できるシミュレーション

続いて、実際に所得税と住民税を節税するシミュレーションを行ってみよう。給与所得者の場合、所得税と住民税が節税になるのは、不動産所得が赤字になりそれを給与所得と損益通算して、税金の還付を受ける場合だ。

不動産投資の損益通算の計算式は以下である。

不動産所得(赤字額)=不動産からの収入-必要経費
損益通算後の所得=給与所得-不動産所得(赤字額)

なお、不動産所得が黒字になる場合は納税が必要になる。だからと言って無理に赤字にすると税務署から指摘を受ける場合があるので正確に申告することを心掛けよう。

実際にシミュレーションを行ってみる

前提条件は次の通りである。

  • 本業の給与年収:700万円
  • 家賃収入:240万円
  • 減価償却費などの諸経費:350万円
  • 社会保険料控除:100万円(同じ年収でも異なる場合がある)
  • 給与所得控除:180万円
  • 基礎控除額:48万円
    ※医療費、生命保険、寄付金、配偶者控除等の控除はないと仮定

1.「給与所得のみのときの課税所得」「給与所得と不動産所得があるときの課税所得」を計算する。

(1)給与所得のみのときの課税所得
給与所得=700万円(給与年収)−180万円(給与所得控除)=520万円

給与所得のみのときの課税所得=520万円(給与所得)−100万円(社会保険料控除)−48万円(基礎控除)=372万円

この場合の課税所得の合計は372万円になる。

(2) 給与所得と不動産所得があるときの課税所得

給与所得=700万円(給与年収)−180万円(給与所得控除)=520万円
不動産所得=240万円(家賃収入)-350万円(減価償却費などの諸経費)=△110万円

損益通算後の課税所得=〔520万円(給与所得)−110万円(不動産所得)〕−100万円(社会保険料控除)−48万円(基礎控除)=262万円

この場合の課税所得の合計は262万円になる。

2.所得税の節税額を計算する。

  • 給与所得のみのときの所得税=372万円(給与の課税所得)×20%(税率)-42万7,500円=31万6,500円

  • 給与所得と不動産所得があるときの所得税=262万円×10%(税率)-9万7,500円=16万4,500円

このように給与所得だけの場合と不動産所得と損益通算後の所得税を比較すると、損益通算後のほうの所得税が15万2,000円安くなる。

<所得税の速算表>

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円から1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円から3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円

出典:国税庁ホームページより株式会社ZUU作成

なお、所得税の計算の基礎となった所得額は、住民税の計算の基礎ともなっている。すなわち、所得税が安くなれば、翌年6月以降に納める住民税も節税できることになる。

相続税の節税シミュレーション

相続税を計算するには、税率と基礎控除額を把握しておく必要がある。基礎控除額の計算は次のようになる。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

次に相続税の税率は、課税される遺産額によって変わる。細かい税率については以下の表より確認ができる。

<平成27年1月1日以後の場合の相続税の速算表>

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% -
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

出典:国税庁ホームページより株式会社ZUU作成

ここでは現金1億円を相続する場合と1億円の固定資産税評価額の不動産を相続する場合の相続税を比較してみる。

  • 現金で相続する場合
    次のような仮の条件を設定する。

法定相続人:1人
相続財産は現金:1億円

基礎控除額:3,000万円+600万円×1人(法定相続人の数)=3,600万円
相続税が課税される金額:1億円(相続財産)-3,600万円=6,400万円
相続税額:6,400万円×30%(税率)-700万円(控除額)=1,220万円

つまり、現金のみで相続する場合は「1,220万円」の相続税を納める必要がある。

  • 固定資産評価額が1億円である不動産で相続する場合
    仮の条件は次の通りとする。

  • 法定相続人:1人
  • 建物:4,000万円(固定資産税評価額)
  • 路線価地域の200平方メートルの土地を相続(小規模宅地等の特例を利用)
  • 路線価:30万円
  • 奥行補正率:1.0
  • 借家権割合:30%
  • 借地権割合:60%
  • 賃貸割合:100%

自用地評価額:30万円(路線価)×1.0(奥行補正率)×200平方メートル(土地の面積)=6,000万円
土地の相続税評価額:6,000万円×(1−60%☓30%☓100%)=4,920万円
小規模宅地等の特例を適用:4,920万円(土地の相続税評価額)×50%=2,460万円

建物の相続評価額:4,000万円×(1−30%×100%)=2,800万円

基礎控除額:3,000万円+600万円×1人(法定相続人)=3,600万円
相続税の課税額:2,460万円+2,800万円-3,600万円=1,660万円
相続税額:1,660万円×15%(税率)-50万円=199万円

上記のように同じ評価額の財産であっても、現金で相続するより投資用不動産で相続したほうが相続税を減額できる可能性が高くなる。

不動産投資のリスクと低減策も把握する

不動産投資には上記のように節税できるメリットもあれば、リスクもある。成功するにはリスクを把握した上で低減策を立てておくことが重要である。

不動産投資の主なリスクは以下のようなものが挙げられる。

空室のリスク

空室のリスクは不動産投資において最も大きなリスクと言える。低減策としては、駅から近い、周辺にスーパー、コンビニがあるなど立地がよく、賃貸ニーズが高いエリアの物件を選ぶことが考えられる。

家賃滞納のリスク

家賃滞納によって家賃収入が得られなくなるリスクのことだ。低減策としては、入居者の審査を厳しくすることなどが挙げられる。

家賃下落のリスク

物件の建物・設備が経年劣化したり、物件内で事件や事故が発生したりすると、その分家賃を下げないと入居者が決まりにくいという状況に陥りかねない。これが家賃下落のリスクだ。低減策としては、定期的な修繕、建物や内装のリフォームといった方法が考えられる。

修繕のリスク

不動産や部屋にある設備は築年数の経過とともに劣化していく。修繕する必要が生じるため修繕費がかかる。低減策としては、設備の寿命を把握することや修繕に備えて計画的に修繕費用を積み立てていくことが重要と考えられる。

金利上昇によるリスク

金利上昇によるリスクとは、金利が上昇したことにより、ローンの返済額が増えるリスクのことだ。低減策としては、金利上昇に備えて余裕のある返済プランを立てることが重要だろう。

災害のリスク

災害のリスクとは、地震などの災害によって不動産が損傷を受けたり倒壊したりするリスクのことだ。低減策としては、新耐震基準を満たす物件を購入することや地震保険などの保険に加入することが挙げられる。

不動産価格下落のリスク

築年数とともに不動産の価格が下落することが考えられる。低減策としては、人口の増加が期待できる、賃貸ニーズが高い都内など資産価値が落ちにくい立地を選ぶことが挙げられる。

納税資金のリスク

「現金を不動産投資にあてる」ということは、単純に考えるとその分だけ納税資金が減ることを意味する。収益性の高い物件なら、資金が減っても家賃収入で再び現金を殖やすことができるが、そうでないなら、他の面に支障が出るおそれがある。節税ができても現金がなければ、生活も事業も滞るのだ。

「売ればなんとかなる」と言いたいところだが、不動産は車や株式ほど簡単に買い手が見つからない。投資するにあたっては、支払う相続税も考慮しある程度の現金も残しておく必要もあるだろう。

将来の相続争いのリスク

子どもが複数いるケースなら、将来の相続のことも考えておこう。現預金のように分けやすい財産だけなら争いは起きにくいが、不動産のように分けにくい財産があると相続でもめることがある。争いを避けるべく、相続人同士で共有して円満相続を図ろうとする世帯もあるが、共有持分は次やその次の相続のときのトラブルの原因になりかねない。不動産投資は節税効果が高いと考えられるが、同時に別の問題も抱えているのだ。こういった争いを避けるために子どもが複数いるケースであれば長子には不動産を相続させ、次子に対しては次子を保険金受取人とするような生命保険を契約しておくなどの別の手当てを考えておいた方がよいだろう。

節税できないリスク

不動産投資が節税につながらないことがある。例えば、相続直前に賃貸物件を購入したときだ。すでに伝えた通り、賃貸物件の敷地は、小規模宅地等の特例で評価額を下げられる。しかし、被相続人の死亡日以前3年間に賃貸事業の用に供した物件の敷地には、原則としてこの特例を使うことができないのだ。

この他、不動産投資で相続税を過度に抑えていると見られると、相続税の財産評価基本通達第6項に基づいて税務当局が否認し、評価しなおすことがある。

まとめ

不動産投資は所得税と住民税、相続税などを抑える効果があるが、正しく節税するにはきちんと仕組みについて理解する必要がある。不動産投資でできる節税の仕組みについて詳しく知りたい方は、ぜひこの記事を参考にしてほしい。

鈴木 まゆ子
税務に関する記述の監修

鈴木 まゆ子
税理士・税務ライター

中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。
「ZUU Online」「KaikeiZine」「朝日新聞『相続会議』」「マネーの達人」「納税通信」などWEBや紙面で税務・会計に関する記事を多数執筆。
著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著)」。

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