給与以外の副収入や老後の年金づくりを目的に、不動産投資を検討する人が増えている。その一方で、不動産投資は物件価格が高いため、「ハードルが高い」と感じる人もいるだろう。その場合は少額から不動産投資を始めるのも一つの手だ。
少額から始められる不動産投資4選
少額から始められる不動産投資は複数あるが、最低投資金額やメリット・デメリットはそれぞれ異なる。各投資方法の特徴を理解した上で、自分に合った方法を選択しよう。
1.不動産小口化商品
不動産小口化商品は、複数の投資家が出資して不動産に投資し、投資金額に応じて分配金を受け取れる投資商品だ。個人では難しい億単位のオフィスビルなどに投資できるのが特徴である。不動産小口化商品にはいくつかの種類があり、オーソドックスなものとして任意組合型(現物出資)、匿名組合型がある。
任意組合型(現物出資)
任意組合型(現物出資)では投資家が不動産特定事業者と共同で任意組合を設立し、投資家が不動産特定事業者から不動産の共有持分を取得(購入)する。その後、投資家は取得した持分を組合に対し出資し、不動産特定事業者は運営・管理の労務出資を行う。この組合において発生した収益は出資者に対して分配される仕組みだ。投資家は出資した不動産持分に対して出資登記を受けることができる。尚、分配金は不動産所得として確定申告が必要である。
・任意組合型のメリットとは
- 物件管理を任せられる
- 相続税対策として利用できる
現物不動産投資は物件の維持管理が必要だが、不動産小口化商品は賃貸管理や修繕などを不動産業者に任せられる。
また、不動産は預貯金や金融商品よりも相続税評価額が圧縮されるため、相続税対策として活用できる可能性がある。
・任意組合型のデメリットとは
一方で、任意組合型の不動産小口化商品には主に以下のようなデメリットもある。
- 元本割れリスクがある
- 収入保証がない
- 商品によっては中途解約ができない
- 融資を利用できない
小口化商品とはいえ、不動産価格の下落や家賃収入の下落により投資元本の毀損や想定していた収入が得られないリスクが現物不動産を保有することと同様にある。
保有中の不動産小口化商品を売却する場合、商品によっては中途解約ができないケースがあり、売却ができるとしても買い手を見つける必要があるため、すぐに売却できるとは限らない。
不動産小口化商品は金融機関の融資を利用できないため、全額自己資金で投資しなくてはならない。最低投資金額は1口100万円程度(ただし、最低投資口数には規定がある)であり、後述する匿名組合型(不動産クラウドファンディング)やJ-REITに比べるとまとまった資金が必要となる。
匿名組合型(不動産クラウドファンディング)
匿名組合型ではインターネットなどを通じて不特定多数の投資家から出資を募り資金を集め、その資金で不動産投資を行い、賃貸収入や売却益を投資家に分配するサービスだ。不動産クラウドファンディングはこの一種である。
ファンドには単一の物件によって運営されるもの、異なる複数の物件によって運営されるものがある。募集金額や想定利回り、最低投資金額、運用期間もファンドによって異なる。運用期間中は定期的に分配金が支払われる仕組みになっている。匿名組合型における分配金は雑収入になる。
投資対象は幅広く、マンション以外にホテルや保育園、学校などにも投資できる。
・匿名組合型のメリットとは
匿名組合型の主なメリットは以下のとおりだ。
- 少額から投資を始められる
- 時間や手間がかからない
不動産クラウドファンディングは1口数万円程度の少額から投資できることが多い(最低投資口数には商品ごとに規定がある)。分配金の支払いを確認したり、レポート等で資産の管理運用状況を確認したりする必要はあるが、インターネット上で手続きが完結するので、仕事が忙しいビジネスパーソンでも気軽に始めやすい。ただし、あくまで金銭出資によるものであることから、任意組合型と異なり、相続税対策にはならない。
匿名組合型のデメリットとは
一方で、匿名組合型には主に以下のデメリットがある。
- 元本割れリスクがある
- 収入保証がない
- 中途解約が基本的にできない
匿名組合型も任意組合型と同様に、元本保証や収入保証はない。基本的には中途解約ができない点にも注意が必要だ。
不動産クラウドファンディングでは、ファンド内容やこれまでの運用実績を参考に、利用するサービスやファンドを選ぶといいだろう。
2.J-REIT(不動産投資信託)
J-REIT(不動産投資信託)とは、投資法人が発行した投資口を購入し、その投資法人が不動産投資で得た収益の一部を分配金として受け取る金融商品だ。決算(多くは年2回)を行うごとに、投資金額に応じた分配金が支払われる。
J-REITの投資対象不動産は幅広く、個人では難しいオフィスビルや商業施設、物流施設などに投資できる。「収益の90%超を分配する」などの一定の条件を満たすと、実質的に法人税がかからないため、分配金利回りが高い傾向にある。
不動産クラウドファンディングと仕組みは似ているが、J-REITは証券取引所に上場しており、株式と同じように売買できる点が異なる。最低投資金額は銘柄によってさまざまだが、数万円程度から購入できる銘柄もある。
J-REITのメリットとは
J-REITの主なメリットは以下のとおりだ。
- 少額から分散投資ができる
- 流動性が高い
- 売却益を得られる可能性がある
J-REITはさまざまな物件に投資するため、少額から分散投資ができる。複数の物件に投資先を分散することで、1つの物件に資金を集中させるよりリスク軽減が可能となる。
また、J-REITはまとまったお金が必要になったら投資口を市場で売却して、早期に現金化できる点もメリットだ。売買タイミングによっては、売却益を得られる可能性もある。
J-REITのデメリットとは
一方で、J-REITには主に以下のようなデメリットもある。
- 価格変動リスクがある
- 金利動向の影響を受ける
- 災害リスクがある
- 倒産・上場廃止リスクがある
J-REITが保有する不動産が、不動産市況などの経済情勢の影響を受けて賃料や保有物件の価格が変動することで、J-REITの価格が変動するリスクがある。うまく運用できれば売却益を得られる一方で、価格が下落して損失が生じる可能性も否定できない。
J-REITは金融機関からも資金調達を行っているので、金利動向の影響を受ける。金利が上昇して返済額が増加すれば、J-REITの収益性に影響が出る可能性もあるだろう。地震や火事、水害などによって投資対象不動産に被害が出れば、分配金が減少する可能性も考えられる。
また、J-REITは投資法人が運営しているため倒産リスクがあり、上場不適格と判断されれば上場廃止となる恐れがある。上場廃止が決定されると投資家の売却が殺到し、価格が著しく下落する可能性がある点には注意が必要だ。
3.現物不動産投資
現物不動産投資は、マンションやアパートなどの投資用不動産を購入し、入居希望者に貸し出して家賃収入を得る投資方法だ。不動産を購入するにはまとまったお金が必要だが、購入資金の全額を自己資金で用意できない場合は金融機関の融資を利用することも可能だ。
ワンルームマンションなどの区分所有であれば、エリアや築年数などの条件を工夫することで、投資額を抑えられる。また、入居者募集や契約手続き、家賃回収、修繕などの賃貸管理業務は、管理会社に委託できる。
現物不動産投資のメリットとは
現物不動産投資の主なメリットは以下のとおりだ。
- 家賃収入を得られる
- 金融機関の融資を利用できる
現物不動産投資は、入居者がいれば長期にわたって毎月家賃収入を得られる。また、金融機関の融資を利用して物件を取得できるため、家賃収入から借入金を返済することで、不動産という資産が手元に残ることもメリットといえる。
現物不動産投資のデメリットとは
一方で、現物不動産投資には主に以下のようなデメリットもある。
- 空室リスクがある
- 災害リスクがある
- 金利動向の影響を受ける
現物不動産投資は、退去して空室になるとその分の家賃収入を得ることができない。地震や火災などの災害により物件に被害が出れば、大きな損失が生じる可能性がある。また、金融機関の融資を利用する場合は、金利が上昇すると借入金の返済に影響が出る恐れもある。
ただし、「空室リスクが低い物件を選ぶ」「保険に加入する」「無理な借り入れをしない」などの対策を行うことで、ある程度リスクをコントロールできる。
4.自分に合った方法で不動産投資を始めてみよう
自己資金で不動産投資を始めたい場合は、「不動産小口化商品(任意組合型、匿名組合型)」や「J-REIT」、その中でも比較的少額から始めたい場合は「不動産小口化商品(匿名組合型)」や「J-REIT」がよいだろう。金融機関の融資を利用することに抵抗がなければ、ワンルームマンションなどの区分所有で現物不動産投資に挑戦するのも選択肢となる。
それぞれの特徴を理解し、自分に合った方法で少額から不動産投資を始めてみよう。
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