中古アパート経営が良い理由と経営に失敗しないためのポイント
(画像=豆助/stock.adobe.com)

アパート経営を検討する場合、新築と中古のどちらを購入するかは大きな問題の一つだろう。例えば、中古アパートの場合、価格が安い以外にもメリットが多いため、新築よりも始めやすいといえる。本記事では、中古アパート経営が良い理由と失敗しないためのポイントを解説していく。

中古アパート経営が良い理由

土地持ちオーナーの場合、土地の有効活用を目的に新築アパートを建築するのがオーソドックスな方法の一つだ。しかし、土地を持たずに始めるオーナーは建売の新築物件や中古物件を購入する場合が多いだろう。ここでは新築アパートよりも中古アパート経営が良いといわれる主な理由を紹介する。

購入費用が安いので利回りの高い経営が可能

中古アパートは、同じエリアの新築と比べると購入費用が安い傾向にある。購入費用が安ければ、利回り(年間家賃収入÷物件購入価格×100)の高い経営が期待できる。

一例として、購入価格1億円の新築アパート(8戸)を家賃8万円で貸し出す場合と、購入価格5,000万円の中古アパート(同)を家賃5万円で貸し出す場合を比較してみよう。

購入価格建物の状態戸数毎月の家賃年間の家賃利回り
1億円新築アパート8戸8万円768万円
(8万円×8戸×12ヵ月)
7.68%
5,000万円中古アパート8戸5万円480万円
(5万円×8戸×12ヵ月)
9.6%

利回りは、新築7.68%、中古9.6%で中古のほうが高い。これは、

利回りは、新築7.68%、中古9.6%で中古のほうが高い。これは、購入価格が半分だからといって家賃まで半分とは限らないからだ。

過去の賃貸実績から収支を予測しやすい

中古アパートは、購入前の段階で入居実績などの確認ができるため、収支を予測しやすい点がメリットだ。新築アパートの場合は、実際に募集してみないとどれくらいの家賃で入居が決まるのか、あるいはどれくらい入居が埋まるのか分からない。もし空室のある中古アパートを購入する場合は、仲介する不動産会社に空室の期間を確認し、一過性の空室なのか賃貸の条件に原因があるのか分析するとよいだろう。

新築よりも購入価格が低いためローン返済負担が軽い

中古は、新築よりも購入価格が低いため、ローンを組む金額も少なくて済む。ローンの返済は、出費のなかで大部分を占めるため、借入金額が少ないほど毎月の返済額が減り経営が安定しやすい。ただし、中古の場合は新築と異なり初期費用として不動産仲介会社への仲介手数料がかかることは覚えておこう。物件購入時における仲介手数料の上限の計算式は、以下の通りだ。

購入金額×3%+6万円+消費税(売買金額が400万円以上の場合)

なお、アパートの初期費用については以下のコラムで詳しく解説している。

【関連記事】アパート経営の初期費用はいくら?運営費用も解説

中古アパートの収支シミュレーション

中古アパート経営では、どれくらいの収入を得られるのだろうか。以下の条件で収支をシミュレーションしてみよう。

【物件概要】
・場所:東京都八王子市
・築年数:築10年
・構造:木造2階建て中古アパート(1K、全8室)
・家賃:5万円
・管理費および共益費:5,000円
・駐車場:なし

【融資条件】
・物件価格:5,000万円
・購入時諸経費:350万円
・頭金:1,350万円
・融資金額:4,000万円
・融資期間:12年
・返済方法:元利均等払い
・金利:2.0%(本シミュレーションでは最終回まで変わらないとして算出)

▽中古アパート経営年間収支の一例(空室は年間2室×2ヵ月=家賃20万円分あったと仮定)

収入の部支出の部
家賃収入460万円
(空室込み)
ローン返済金375万2,076円
管理費・共益費46万円
(空室込み)
管理委託料
(家賃5%)
24万円
(空室分も払う)
礼金
(家賃1ヵ月分)
10万円
(2室新規入居)
保険料1万円
(一括年払い)
更新料
(家賃1ヵ月分)
10万円
(2室更新)
水道光熱費
(共用部分)
24万円
(月2万円)
仲介手数料
(家賃の1ヵ月分)
10万円
(2室分)
広告料・営業活動費
(家賃の1ヵ月分)
10万円
(2室分)
雑費12万円
(月1万円)
大規模修繕に向けた積立24万円
(月2万円)
合計526万円合計480万2,076円
年間手取り収入 45万7,924円(税金支払い前)
税金
所得税
住民税
固定資産税固定資産評価額×1.4%
都市計画税課税標準額×0.3%
※支出に消費税は含んでいない。減価償却費は実際の支出を伴わないので、ここでは除外している

(ストーリー)
Aオーナーは、東京都の郊外に購入価格5,000万円までを目途に中古木造アパートの物件を探していたところ、東京郊外の八王子市に築10年で5,000万円の物件が見つかった。駅からバス便利用で8室中2室の空室という点は気になったが、購入を検討することにした。

銀行融資を受けたいが木造アパートの耐用年数は22年である。当該物件は、中古のため築年数10年を差し引いて12年が銀行融資の返済期間の上限だ。上記のシミュレーションは、返済最長期間となる12年で審査が通るものと仮定してシミュレーションを行った。計算の結果、年間の手取り収入は約45万円となる。

ここから税金を支払うため、決して楽な経営とはいえないが、ローンの融資期間が12年と短いため、早めに完済を目指せる点はメリットだ。13年目以降はローン返済がなくなるため、修繕費や家賃下落を考慮に入れてもキャッシュフローは大幅に改善される見込みだ。Aオーナーは、ローン完済後から本格的に収益を得たいと考えている。

中古アパート経営で失敗しないためのポイント

「中古アパートは経営しやすい」といわれているが、当然だが失敗する人もいる。中古アパート経営で失敗しないためには、主に以下のポイントに注意して取り組むことが望まれる。

甘い見通しは禁物!現実的な収支計画を立てる

多くの中古不動産物件の広告には、「年間家賃収入÷物件購入価格×100」で算出した「表面利回り」が掲載されている。一見利回りが高い物件があると魅力的に感じる場合もあるかもしれない。しかし、表面利回りは諸経費が考慮されていないため、高めの利回りが表示されている点に注意したい。

表面利回りは、先述した新築と中古の利回りを比較する場合などには参考となる。しかし、自分が購入する物件の収支をシミュレーションする場合は、甘い見通しにならないように経費を勘案して算出する「実質利回り」または「返済後利回り」で行うことが大切だ。実質利回りは、「(年間家賃収入-年間諸経費)÷(物件購入価格+購入時諸経費)×100」で算出される。

上記シミュレーションの物件の実質利回りは(526万円-105万円)÷5,350万円×100=7.87%となる。また、経費率は105万円(ここでは大規模修繕に向けた積立も経費の一部とした)÷526万円×100=約19.96%となり、経費を除いた部分からローンの支払いをすることを考えるとローンの支払い条件にもよるが一定のキャッシュフローが期待できるシミュレーションとなる。ただし、税金を年間諸経費に含む場合は、もう少し利回りは下がり、経費率が上昇する点は押さえておきたい。

さらに安全性を高めるなら、返済後利回りでシミュレーションすることでローン返済後に手元に残る金額の目安が分かる。計算式は「(年間家賃収入-年間諸経費-ローン返済額)÷(物件購入価格+購入時諸経費)×100」で算出可能だ。

なお、アパート経営の利回りについては以下のコラムで詳しく解説している。

【関連記事】アパート経営の利回りの理想と最低ラインは?安定化には経費率が大事

入居者のニーズがあるか周辺環境を調べる

中古アパートは、すでに入居者がいる場合が多い。しかし、「購入後も入居者のニーズがある周辺環境なのか」については、しっかりと調べる必要がある。なぜなら、新築時にコンビニやスーパーがあっても今は撤退している場合もあるからだ。単身者向けの物件であれば、コンビニやコインランドリー、ファストフード店などがあれば利便性が高い。

一方ファミリー向けであれば、スーパーや公園、学校、保育園、クリニック、図書館などがあればかなり魅力的な立地に映るだろう。逆に、そういった施設がほとんどなければマイナスになると考えたほうがよい。

築年数によって銀行融資が可能か確認する

築年数によっては、銀行融資を受けられない場合もあるため注意したい。上記のシミュレーションでは、木造築10年と法定耐用年数の22年以内の物件となるため、融資を受けられる可能性がある。しかし、木造築25年の中古アパートの場合は、すでに法定耐用年数を超えているため融資は難しい、もしくは融資期間が十分に取れない可能性がある。

ただし、金融機関によって審査基準は異なるため、初めから諦めるのではなく確認するのも大切だ。金融機関によっては、頭金を多めに入れるなどの代替案提示してくれるかもしれない。

一棟物件のため管理会社の選択が重要

アパートは、一棟物件のため、管理会社の役割が非常に大きい点にも注意したい。清掃やゴミ出しなどはそれほど大差ないかもしれないが、空室が出た場合の入居者募集では管理会社の力量によって結果に差が出る可能性がある。管理委託料は、家賃の5%程度を支払うことになるため、費用対効果の高い管理会社を選びたいものだ。

中古アパートのオーナーチェンジ物件についても知っておこう

中古アパートの大半はオーナーチェンジ物件である。オーナーチェンジ物件とは、入居者が住んでいる状態で売りに出される物件を指す。賃貸借契約がそのまま引き継がれるため、新オーナーが家賃などの諸条件を変えることはできない。

オーナーチェンジ物件の場合、入居者が住んでいることから部屋を内覧できないことが大きなデメリットだ。当該アパートが満室の場合は、どの部屋も見ることができないため、物件の空室時の写真で判断するしかできない。

なお、オーナーチェンジ物件のメリットとデメリットについては以下のコラムで詳しく解説している。

【関連記事】収益物件のオーナーチェンジとは?メリットとデメリットを解説

中古アパート経営を始めるまでにやるべきこと

最後に中古アパート経営を始めるまでにやるべきことを確認しておこう。主に以下の手順で進めるのが一般的だ。

1.中古アパートの物件調査を行う
2.選んだ物件の現地調査を行う
3.不動産会社を介して売主に購入する意思を伝える
4.売買契約を締結する
5.物件の引き渡し
6.リフォームが必要な場合はリフォーム業者に依頼する

入居者が付いている物件はリフォームできない場合もあるが、可能な限り整えて心機一転アパート経営をスタートすることが望ましい。アパートは、一棟物件のため、区分マンションのように空室時に収入が途絶えるリスクは低くなる。本記事でシミュレーションした8室の物件では、2室空いても残りの6室は稼働することになるので収入が途絶える可能性は低い。

また中古アパートは、購入費用も安い傾向のため、利回りが高くなる点でも有利といえる。はじめてアパート経営に取り組むのであれば、まずは新築アパートよりも購入コストの低い中古アパートから始めてみてはいかがだろうか。

※記事中のシミュレーションは一例であり、結果を保証するものではありません。物件や融資の条件によって結果は変化しますので、参考程度にお考えください。

manabu不動産投資に会員登録することで、下の3つの特典を受け取ることができます。

①会員限定のオリジナル記事が読める
②気になる著者をフォローできる
③気になる記事をクリップしてまとめ読みできる

- コラムに関する注意事項 -

本コラムは一般的な情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的とするものではありません。
当社が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づきますが、その正確性や確実性を保証するものではありません。
外部執筆者の方に本コラムを執筆いただいていますが、その内容は執筆者本人の見解等に基づくものであり、当社の見解等を示すものではありません。
本コラムの記載内容は、予告なしに変更されることがあります。