一棟アパート投資のメリットとデメリット!失敗しないための注意点も合わせて解説
(画像=oka/stock.adobe.com)

不動産投資を検討している方の中には、たとえ空室があっても家賃収入がゼロになりにくい一棟アパート投資に興味を持っている方もいるのではないだろうか。しかし一棟アパートに投資するためには、多額の投資金額が必要だ。アパート投資を実際に始めようとする場合、どのような注意点やメリット、デメリットがあるのだろうか。

そこで今回は、一棟アパート投資のメリット・デメリットや失敗しないための注意点について解説していく。本記事を読むことでアパート投資への理解が深まり、どのようなことに気をつけて進めていけばいいのかが分かるだろう。

一棟アパート投資とは?

一棟アパート投資とは、一棟の建物を所有・管理かつ複数の入居者へ貸し出して賃料収入を得る投資方法である。複数の部屋を貸し出すだめ、多くの収入が得られる可能性がある点は魅力だ。

一棟アパートのメリット

一棟アパートの主なメリットは、以下のとおりだ。

  • 部屋が複数あるため、家賃収入がゼロになるリスクを低減できる
  • キャッシュフローがいいケースが多い
  • 土地を所有している場合、土地活用など売却戦略が立てやすい
  • 自分の判断で建物全体の運営方針を決めることができる

部屋が複数あるため、家賃収入がゼロになるリスクを低減ができる

一棟アパートは、一つの建物に複数の部屋があるため、一部退去する入居者が出ても家賃収入がゼロになるリスクを低減できる。区分マンションや戸建ての場合、入居者が1組しかいないため、入居者が退去した際や家賃の滞納が発生すると家賃収入がゼロになってしまう。しかし一棟アパートは、部屋が複数あるため、一部の部屋の入居者が退去した場合や家賃滞納が発生した場合でも他の部屋の家賃収入で補えることが期待できる。

キャッシュフローがいいケースが多い

一棟アパート投資は、他の不動産投資と比べてキャッシュフロー(手残り金額)がよいケースが多い。一般的に不動産投資では、賃料収入の中から「ローンの返済」「固定資産税」「メンテナンス費用」といった諸経費を支払う。

区分マンション投資の場合は購入金額によってはローン返済が大きくなり、これらの費用を支払ってしまうとキャッシュフローがわずか、もしくは赤字になるケースもある。しかし一棟アパートの場合は、部屋数が多くトータルで得られる賃料収入が多くなることが考えられる。ただし、一棟アパートであっても、購入する物件が高額だったり、築年が古かったりすると毎月のローン返済額や修繕費が高くなったり、空室率が高かったりしてキャッシュフローがマイナスになる場合もある。物件選定の段階でキャッシュフローがどのようになるのかシミュレーションすることが重要だ。

土地を所有している場合、土地活用など売却戦略が立てやすい

一棟アパート経営で土地を所有している場合、将来の売却戦略が立てやすい。なぜなら収益物件としての売却だけでなく事業用地としての売却や戸建て用地としての売却など幅広い層に向けて売却できるからだ。ただし、アパートの入居者に退去してもらうには正当な事由が必要であり(借地借家法第28条)、単に土地を売却したいという理由だけで退去してもらうことはできないということを念頭においておこう。また、土地があることで売却方法の選択肢が増えることと、高い値段で売却できることとは別なので注意したい。

自分の判断で全体の運営方針を決めることができる

一棟アパートは、土地・建物の所有権が自分にあるため、自分の判断で物件全体の運営方針を決定できる。区分マンションの場合は、各部屋に所有者がおり管理組合を発足して管理しているため、自分の思い通りの管理ができるとは限らない。しかし一棟アパートであれば、自分でルールを決めやすい状態にあるのだ。

一棟アパートのデメリット

一棟アパートの主なデメリットは、以下のとおりだ。

  • 築年数が古いアパートは空室になりやすい
  • マンションと比較して家賃相場が低い傾向にある
  • 管理の手間や修繕、メンテナンス費用がかかる

築年数が古いアパートは空室になりやすい

同じような立地条件の新しい物件と古い物件で家賃が同じであれば新しい物件を選ぶ方は多いだろう。こういった状況下で空室を埋めるには、賃料を下げるもしくはリフォームを行うなどのバリューアップ施策が必要だろう。

マンションと比較して家賃相場が低い傾向にある

一般的にマンションのほうが構造やセキュリティ面で優れているケースが多く、その分家賃に反映されている。そのため1部屋あたりの賃料で考える場合、アパートの家賃相場が低くなりやすい。例えば最寄り駅がJR巣鴨駅かつ以下の条件の場合、マンションとアパート物件の賃貸相場を見てみよう。

  • 専用面積:25~30平方メートル
  • 駅徒歩分:5~10分
  • 築年数:5~10年
  • 間取り:1K

LIFULL HOME’Sが公表している家賃相場データを見ると以下のようになる(2021年11月25日時点)。

  • マンションの家賃相場:10万7,300円
  • アパートの家賃相場:8万7,800円

なお、東京の一人暮らし向けマンションの家賃相場については以下のコラムで詳しく解説している。

【関連記事】東京の家賃相場|一人暮らし向けランキングや治安についても解説!

管理の手間や修繕、メンテナンス費用がかかる

一棟アパートは、管理の手間や費用がかかる。区分マンションや戸建てであれば1組の入居者とのやりとりなのでさほど手間にならない。しかし一棟アパートでは、複数の入居者とやりとりをすることが必要だ。例えば家賃滞納があった際は、個別に対応しなければならない。また入居者間でトラブルなどが発生した際は、オーナーの負担となってしまう。

管理会社に委託すれば手間は減るが、それでも入居者審査、修繕計画のチェックなどさまざまな確認事項の対応が必要だ。さらに一棟アパートは、面積が大きい分、外壁や屋根の塗装費用なども戸建てと比べて高く、修繕費も多めに見積もっておく必要がある。また、各部屋に設備があるため、メンテナンス費用もかかる点はデメリットとなるだろう。

一棟アパート投資で失敗しないための注意点

一棟アパート投資で失敗しないためには、以下の4つの注意点を押さえておきたい。

  • リスクを考慮したシミュレーションをする
  • 突発的な出費に備えて自己資金を確保しておく
  • 賃貸ニーズがあるエリアをリサーチして、物件を選ぶ
  • 収入と物件価格、残債のバランスを鑑みて、売却戦略を考慮しておく

リスクを考慮したシミュレーションをする

一棟アパート投資を始める際には、リスクを考慮したシミュレーションが必要だ。「空室率を考慮しない家賃収入」「金利上昇を考慮しない返済額」など大雑把な収支シミュレーションでは、いずれ当初の計画通りには回らなくなる。不動産会社から提出されたシミュレーションをベースにセカンドオピニオンとして専門家に相談することも有効だ。

特に10年後、20年後の賃料の下落率や空室リスクもきちんと考慮することが重要である。一棟アパート投資を成功させるためには、必ず長期目線でシミュレーションをしよう。

突発的な出費に備えて自己資金を確保しておく

一棟アパート投資では、突発的な出費が発生する場合があるため、自己資金を確保しておこう。一棟アパートは部屋数が多いため、いつどの部屋でどんな突発的なトラブルが起こるかは分からない。急に室内の設備に不具合が生じたり台風で屋根が破損したりする可能性もあるだろう。不動産投資のような長期間の投資では、不測の事態に備えて余剰資金を用意しておきたい。

賃貸ニーズがあるエリアをリサーチして、物件を選ぶ

一棟アパート投資を始める前には、賃貸ニーズの高いエリアの物件を選びたい。賃貸ニーズの低いエリアは、空室率が高くなり赤字になってしまうリスクがある。特に築年数が経過した後は、より賃貸ニーズの高さが重要だ。

住環境が整っているエリアだと感じたとしても「持ち家の割合が高い」「高齢者が多い」といったケースもあるだろう。どのような入居者をターゲットにするのかを十分に踏まえたうえでエリアの人口や年齢層、家族構成などを調べることが大切だ。

収入と物件価格、残債のバランスを鑑みて、売却戦略を考慮しておく

一棟アパート投資では、収入と物件価格、残債のバランスを鑑みて売却戦略を立てよう。ただし、将来的に高く売れるのであればトータルで利益になるといった売却ありきの考えは危険だ。特に木造や軽量鉄骨造のアパートの場合は、鉄骨造・鉄筋コンクリート造よりも法定耐用年数が短いため、価格の下落傾向が強い。売却資金だけで黒字化するのは難しいだろう。

不動産投資において売却も視野に入れる場合、保有する期間で得る収益と売却の損益がトータルでプラスにならなければ不動産投資で成功したとは言えない。どれくらいで物件を売却できればトータルでの収支がプラスになるのかといった戦略を立てておきたい。

まとめ

本記事では、一棟アパート投資のメリット・デメリットと失敗しないための注意点について解説した。一棟アパート投資は、区分マンションに比べて投資額が大きくなるため、よりリスクに目を向けなければならない。リスクに備えるためにもある程度の余裕資金を持ったうえで参入することが望ましい。実際に一棟アパート投資を始める際には、不動産会社や税理士、FPなど専門家と相談をしながら進めよう。

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