老後資金の不安は不動産投資で解決できる?必要額と注意点を解説
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目次

  1. 老後資金は今から準備しておく必要がある
    1. ゆとりある生活をおくるには年金だけでは厳しい状況
  2. 老後資金のために不動産投資をするメリット
    1. ローン完済後は家賃収入が収入源として期待できる
    2. 「団体信用生命保険」に加入することで節約した生命保険料を老後資金にする
  3. 老後資金のために不動産投資をする場合のポイント
    1. 収支シミュレーションをする
    2. 定年時に残ローンがある場合に繰上返済する資金を想定しておく
    3. 家賃が下がりにくい立地の物件を選ぶ
    4. 稼働率を上げるために修繕を怠らない
  4. 不動産投資に必要な資金
    1. 自己資金は物件価格の10~30%
    2. 自己資金に加え諸経費と税金も考慮する必要がある
    3. 建物修繕、管理にかかる費用をあらかじめ考慮する
  5. まとめ

2019年に「老後2,000万円不足問題」がマスコミに取り上げられたことで、公的年金だけに頼らない人生設計を考える必要性を感じている人も多いかもしれない。そこで今回は、老後の収入源の一つとして期待できる不動産投資を取り上げる。老後資金を考えた際に不動産投資が適している理由や不動産投資するときに必要な資金、失敗しないための注意点などについて解説していく。

老後資金は今から準備しておく必要がある

老後資金の準備は「老後になってから」では遅い。なぜなら実収入と支出の差によってひっ迫した経済状態になることが予想されるからだ。では、老後資金はいくら必要なのか、「2022(令和4)年度生活保障に関する調査《速報版》」をもとに考察してみよう。

ゆとりある生活をおくるには年金だけでは厳しい状況

公益財団法人生命保険文化センターが実施した「2022(令和4)年度生活保障に関する調査《速報版》」によると、「老後の夫婦2人暮らしで必要になる日常生活費はいくらだと思うか」という問いの回答は「月額平均23万2,000円」という結果になっている。

<老後の最低日常生活費(月額)>

老後の最低日常生活費
(画像=老後の最低日常生活費)
出典:公益財団法人生命保険文化センター「2022(令和4)年度生活保障に関する調査《速報版》」※この先は外部サイトに遷移します。より株式会社ZUU作成


また同調査では「ゆとりのある生活をするために必要な上乗せ額は?」というアンケートも行っており、回答平均額は月額14万8,000円だった。ゆとりがある生活をするには、最低限必要な日常生活費23万2,000円に14万8,000円を加えた額、つまり合計で1ヵ月37万9,000円※となるのだ。
※サンプルごとに合計した値の平均値であるため、合計額が一致しない

<ゆとりある老後生活費(月額)>

ゆとりある老後生活費
(画像=ゆとりある老後生活費)
出典:公益財団法人生命保険文化センター「2022(令和4)年度生活保障に関する調査《速報版》」※この先は外部サイトに遷移します。より株式会社ZUU作成


総務省の「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)」※この先は外部サイトに遷移します。によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の月額社会保障給付は21万6,519円であり、余裕のある老後生活をおくるためには、公的年金以外にももう少し資金がほしいと考える方は少なくないだろう。

老後資金のために不動産投資をするメリット

なぜ老後資金を作る際に不動産投資が適しているといわれるのだろうか。一番のメリットとして、ローン完済後は家賃収入が収入源として期待できることが挙げられる。また、その他でも団体信用生命保険に加入することで、すでに加入している生命保険を見直し、節約できる可能性もある。

ローン完済後は家賃収入が収入源として期待できる

不動産投資の最大のメリットは、滞納がない限り、物件を人に貸している間は毎月家賃が入ってくるため、中長期にわたって不労所得を得られることである。ローンが残っているうちは家賃からローンを返済していくことになるが、ローンを完済すると、その家賃収入から固定費(修繕費や税金など)を引いた金額は、年金以外の定期収入源として期待できるだろう。

なお、例えばローン返済中に空室になったり家賃滞納があったりした場合、ローンを返済するとマイナスになるケースがある。ローン完済後もしかりで、築年数の経過から修繕費がかかったり家賃を下げざるを得なかったりといったことがあると、当初より家賃収入が減ってしまう可能性があることは想定しておきたい。

「団体信用生命保険」に加入することで節約した生命保険料を老後資金にする

ローンを組む際に団体信用生命保険に加入すれば、万が一借入申込人が返済途中に死亡・重度の障害を受けた場合は、ローンの残債を保険金で相殺することができる。団体信用生命保険は、生命保険の代わりとしても使えるため、現在加入している生命保険を見直して節約することも可能だ。

生命保険文化センターによる「生命保険に関する全国実態調査(2021年9月発行)」※この先は外部サイトに遷移します。によれば、生命保険(個人年金保険を含む)の世帯平均年間払込保険料は37.1万円であり、月額3万円程度生命保険に掛けていることになる。この部分を老後資金として貯蓄していけることはメリットになるだろう。

老後資金のために不動産投資をする場合のポイント

老後資金のために不動産投資を考える場合のポイントを見ていこう。特に以下の点に注意する必要がある。

  • 収支シミュレーションをする
  • 定年時にローンが残っている場合に繰上返済する資金を想定しておく
  • 立地の良い物件を選ぶ
  • 修繕を怠らない

収支シミュレーションをする

不動産投資は中長期の視点での投資になるケースが多い。長い期間の中では、築年数の経過に伴う家賃下落や空室の発生、または修繕が必要になることもある。金利が上昇することもあるかもしれない。事前に長期でのシミュレーションをしておくことで、将来的に必要な資金の確保が可能になる。

その際、通常のシミュレーションとより保守的なシミュレーションを作成しておくとよいだろう。保守的なシミュレーションでは家賃下落、空室率、金利上昇などを固めにシミュレーションすることで、どの程度まで指標が悪化したら、どの程度の資金が必要になるかを想定しておくことが重要である。

定年時に残ローンがある場合に繰上返済する資金を想定しておく

不動産投資を将来の年金対策としている場合、定年退職後もローンが残ってしまっていては、目的は達成できない。もし定年退職後もローンが残る場合については、繰上返済を積極的に利用してローンの残期間を短くしていくとよいだろう。

家賃が下がりにくい立地の物件を選ぶ

不動産投資で継続的に家賃収入を得やすくするためには、家賃が下がりにくい立地の物件を選ぶことが非常に重要だ。立地が悪い物件だと、そもそも入居者が集まりにくいし、家賃を下げるなどして他物件と差別化を図る必要も出てくる可能性がある。つまり立地が悪い物件は「家賃収入が減るリスク」「空室リスク」の両方を高めてしまうのだ。

多くのケースでは、ローンを組んで不動産投資を行うため、家賃収入が途絶えるのは致命的といえる。このような事態を防ぐためにも、主に以下の項目を目安に立地条件の良い物件を選ぶようにしたい。

  • 駅から徒歩圏内
  • スーパーやコンビニが近くにある
  • 通勤通学しやすい路線である
  • 物件のセキュリティ・防犯性が高い
  • 日当たりが良い
  • 周辺に公共施設がある

稼働率を上げるために修繕を怠らない

経年劣化による家賃の下落はある程度は避けられないが、それを放置しておくと空室の長期化を起こし、安定した家賃収入が望めなくなる。一定期間、家賃を維持する、あるいは物件の状態を維持するための修繕費はあらかじめ想定しておきたい。一時的にキャッシュフローはマイナスになるが、家賃下落・空室期間の長期化を避けるためにも、定期的に建物へ投資をすることは必要だ。

家賃下落・空室期間の長期化といったリスクを低減できれば、長期的な視点でキャッシュフローの改善が期待できる。そのためにも、修繕についてきちんと計画を立て、管理しよう。

不動産投資に必要な資金

不動産投資に必要な資金や税金を確認しておくことも大切である。併せてローンを組む際の注意点もチェックしておこう。

自己資金は物件価格の10~30%

不動産を購入する際の自己資金は、「購入する物件価格の10〜30%程度」と覚えておこう。本人の属性や物件の担保価値が高い場合は、物件価格の10%程度の自己資金でもローン審査に通過することがある。一方で築年数が古く担保価値が低い物件は、自己資金は物件価格の30%(場合によってはそれ以上)になるケースがあることは認識しておきたい。

自己資金は物件価格の10〜30%程度は用意したいとしたが、自己資金ゼロの場合はどうなのだろうか。自己資金ゼロでの融資(フルローン)は、貸し倒れのリスクを嫌う金融機関に敬遠される可能性が高い。2018年に金融庁が金融機関に対して行った「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」※この先は外部サイトに遷移します。によると、自己資金の投入を一切求めていない銀行は5%、信用金庫・信用組合では13%となっている。

<物件の購入金額の一部を顧客の自己資金で賄わせているかどうかの分布>

銀行 信用金庫・信用組合
必ず行っている 15% 17%
概ね3分の2以上の案件で行っている 63% 30%
概ね3分の1〜3分の2の案件で行っている 10% 20%
概ね3分の1未満の案件で行っている 6% 20%
一切行っていない 5% 13%
集計対象:有効回答のあった115の銀行、305の信用金庫・信用組合
出典:金融庁「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」※この先は外部サイトに遷移します。より株式会社ZUU作成


この結果からも多くの金融機関は頭金が必要であり、頭金を含めた自己資金の目安は物件価格の10〜30%程度と覚えておきたい。

自己資金に加え諸経費と税金も考慮する必要がある

不動産を購入する際に必要な諸経費と税金も確認しておこう。

【主な諸経費】

  • 仲介手数料(業者を介する場合のみ)
  • 司法書士へ支払う報酬
  • 金融機関へ支払う事務手数料
  • 保証会社へ支払う保証料
  • 火災保険料など

【主な税金】

  • 登録免許税
  • 不動産取得税(購入から半年〜1年後に通知が来る)
  • 固定資産税・都市計画税(中古の場合は按分で清算する傾向)
  • 印紙税など

上記のほかに物件を事前に調査する場合の費用や交通費なども発生するので覚えておこう。また、以下の記事も参考にしてほしい。
【関連記事】
不動産投資を始める時に知っておきたいコストとは?
アパート経営に必要な初期費用は?気をつけたいポイントも解説

建物修繕、管理にかかる費用をあらかじめ考慮する

不動産投資を成功させるためには、長期的なプランを作成しておくことも大切だ。特に重要なのは修繕計画である。事前に修繕計画を立てておけば、想定外の出費による赤字を予防することが可能だ。

また建物全体の修繕のほかに、部屋の中にあるエアコンや給湯器などの設備の修理や、部屋の内装の原状回復は基本的に通常消耗の場合はオーナー負担となる。機器の耐用年数は交換目安の参考になるが、中には突発的に壊れるケースも少なくない。そのような突発的な出費に備えて手元に資金を残しておくことも重要である。

まとめ

老後資金の問題は誰もが抱える悩みの一つだろう。年金以外の収入源として収益不動産の保有は有効な手段の一つだが、不動産投資を始めるにあたり、資金や知識、リスクに対する理解が必要だ。ぜひこの記事や他の記事も参考にして、知識を深めてから始めてほしい。

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