会社に年金手帳を預けるのはマストではないが、預けるのには理由がある。
本文では会社に年金手帳を預ける理由や、預ける場合の注意点、紛失した際の対応について解説していく。
目次
会社に年金手帳を預ける理由
年金手帳に記載されている注意事項には「この年金手帳は、あなたが将来年金を受けるために必要となりますので、大切に保管して下さい」などと書かれている。しかし、このように「大切に保管して下さい」と書かれているのに、なぜ企業に就職すると会社に年金手帳を預けるのだろうか。
ちなみに企業によっては年金手帳を預からないケースもあるが、この記事では企業が年金手帳を預かるケースについて説明する。
紛失防止のため
結論から言えば、企業が年金手帳を従業員から預かる一番の理由は、年金手帳の紛失を防止するためだ。個人で年金手帳を管理していると、年金手帳を紛失してしまうケースが結構多い。
しかし、なぜ企業はわざわざ従業員の年金手帳が紛失しないよう努めるのだろうか。その理由は、従業員の住所が引っ越しで変わったり、結婚して苗字が変わったりした場合、企業が従業員の代わりに住所や苗字の変更手続きを行うからだ。
従業員の住所や氏名が変わる度に、その都度、企業が従業員に年金手帳の提出を指示してもいいが、もし従業員が年金手帳を紛失していたら、従業員に再発行の手続きをしてもらわなければならない。つまり、再発行されるまで手続きができない状態となる。
こうしたことを防ぐために、会社で年金手帳を預かっておくわけだ。また、企業があらかじめ年金手帳を預かっていれば、年金手帳の提出をそのつど指示する手間もなくなり、従業員にとっても都度提出する手間がかからない。
つまり企業が年金手帳を預かる仕組みは、企業にとっても従業員にとってもメリットがある仕組みであると言える。
年金手帳の役割
年金手帳を会社に預ける理由を考える上で、年金手帳にはどのような役割があり、何が記載されているのかを知っておく必要がある。
年金手帳とは:公的年金に加入している人に交付される紙の手帳
年金手帳は、公的年金に加入している人に交付される紙の手帳だ。
1996年12月までに被保険者資格の取得手続きを行った人は「オレンジ色」の手帳、「基礎年金番号」が導入された1997年1月以降に被保険者資格の取得手続きを行った人は「青色」の手帳が発行されている。
年金手帳を使うシーンとしては、国民年金から厚生年金、もしくは厚生年金から国民年金への切り替えのとき、年金の請求手続きを行うとき、氏名や住所が変わったとき、などが挙げられる。
記載事項は?
現行の年金手帳には、年金の加入記録を管理するため基礎年金番号や、加入者の氏名・性別や生年月日、年金の加入年月日などが記載されているほか、年金手帳に関する注意事項なども書かれている。
- 基礎年金番号
- 加入者の氏名・性別や生年月日
- 年金の加入年月日
- 年金手帳に関する注意事項
年金手帳を預けることはマストではない
会社員が企業に年金手帳を預けるのは、決してマストではない。法律で義務付けられているわけではないので、断ることもできる。しかし前述の通り、預けた方が従業員側にも企業側にもメリットがあるので、基本的には預けるのが無難だと考えておこう。
年金手帳を預ける場合の注意点
ただし勤め先に年金手帳を預けた際には、1つ注意が必要だ。それは、その企業を退職したときに年金手帳の受け取り漏れがないようにすることだ。基本的には退職時に企業側から年金手帳を返してもらえるが、総務部の担当者が返却を忘れてしまうケースもあるだろう。
退職後は、厚生年金から国民年金への切り替えで年金手帳が必要になったり、新たな就職先で年金手帳の提出が必要になったりする。そんなときに年金手帳が手元になければ、前にいた会社に連絡をしなければならない。
退職の仕方によっては、前いた会社に連絡したくないケースもあるはずだ。もし退職時に企業側から年金手帳の返却がなかったら、自分から返してほしい旨を忘れずに伝えるようにしよう。
年金手帳を紛失した時はどうすればいい?
2022年4月以降、被保険者資格の取得手続きをとり初めて年金制度を加入する方には、これまでの年金手帳に代わり「基礎年金番号通知書」が発行される。
すでに年金手帳をお持ちの場合には「基礎年金番号通知書」は発行されず、引き続き年金手帳を保管が必要だ。
そのため、年金手帳をなくした場合や基礎年金番号通知書をなくした場合、どちらも基礎年金番号通知書が再発行される。
提出先は加入している公的年金によって異なる。 例えば「国民年金第1号被保険者」の場合は「住所地の市区町村役場」、「厚生年金保険または船員保険の被保険者」の場合は「勤務する事業所を経由して、または直接事務所の所在地を管轄する年金事務所」となっている。
年金手帳や年金全般に関するQ&A
Q1:年金手帳以外に年金加入状況や納付状況について知る手段はあるのか?
日本年金機構が年1回発行する「ねんきん定期便」や同機構が運営するWEBサービス「ねんきんネット」(パソコンとスマートフォンから利用可能)を利用すれば、年金手帳が自身の手元にない場合でも知ることができる。
利用できるのは被保険者と年金受給者だ。ただし、昭和61年4月1日前に年金受給権が発生した老齢年金を受けている場合は利用できない。
なお、サービスにより対象者が異なる場合があるため、詳しくは日本年金機構に確認するといいだろう。
Q2:年金手帳を会社に預けているため基礎年金番号がわからない。調べる方法は?
基本的に、個人情報保護のためメールや電話では回答してもらえない。
すでに送付されている「基礎年金番号通知書」「国民年金保険料の口座振替額通知書」「国民年金保険料の納付書、領収書」「年金証書」「各種通知書等(年金額改定通知書、年金振込通知書等)」「ねんきん定期便」で確認できる。
それらの資料が見当たらない場合は近くの年金事務所に相談しよう。
Q3:年金手帳を再発行した場合、どれくらいで手元に届くのか?
2022年4月より、年金手帳は基礎年金番号通知書に切り替わった。そのため、年金手帳を紛失した場合や基礎年金番号通知書を紛失した場合、どちらも基礎年金番号通知書が再発行される。
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