【ESG投資入門】日本のESG市場が本格化、個人投資家にも注目
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今、世界的に自然災害や異常気象が増えているなかESG市場への関心が高まっている。ESG投資とは、企業の環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)に対する取り組みを重視して投資先を選ぶ手法だ。企業にはESGに関連するリスクを管理し、情報公開する努力が求められている。ここではESG投資をこれから始めたい、あるいは、ESG投資に興味があるという人向けに「ESG投資市場とESGを推進する国の動き」「個人投資家がESG投資をするときの選択肢」などをくわしく解説する。

機関投資家だけでなく、個人投資家の間でもESG投資が広がっている

ESG投資の統計をグローバルに集計しているGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)が2020年に発行した報告書によれば、ESG市場に流入しているマネーは世界の運用総資産の3分の1に当たるおよそ35兆ドル(約3,800兆円※8月30日11時現在、1ドル=109円で換算)に達している。そのうちの82%がヨーロッパ※、アメリカによるESG投資であり、日本のESG投資は8%を占めているに過ぎない。
※ヨーロッパはオーストリア、ベルギー、ブルガリア、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、スペイン、オランダ、ポーランド、ポルトガル、スロベニア、スウェーデン、英国、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタインとする

ただし、上記は2020年段階の数値なので、ここ数年のESG投資の盛り上がりを考えれば、世界・日本のESG投資額はさらに高まっているだろう。

まず、機関投資家のESG投資への機運を確認したい。日本に拠点を置く機関投資家に対して2020年7月~9月に実施した調査では、今後1年間で「ESG投資は増える」と回答したのは33社中20社(61%)。「現状維持(39%)」と回答した企業数(33社中13社)を約30%上回った(QUICK ESG研究所「QUICK ESG投資実態調査2020」)。これだけで機運が高まっているとはいえないが、ESG投資を本格化させる機関投資家が台頭する可能性を感じさせる。

個人投資家のESG投資への興味の高まりについては、野村アセットマネジメントが18歳以上69歳までの男女およそ11,000人を対象に2020年7月に実施した「ESG投資に関する意識調査」が参考になる。この調査では、株式・投資信託を保有している人のうち、52%は「ESG投資関心あり」と回答している。

<証券投資とESG投資関心度>

ESG投資関心ありESG投資関心なし
株式・投資信託の保有状況現在保有52%48%
非保有28%72%
非回答18%82%

出典:野村アセットマネジメント「ESG投資に関する意識調査(2020年9月発表)」より株式会社ZUU作成

今回の野村アセットマネジメントの調査では、ESG投資に興味がある層に世代間の差がほとんど見られないことがわかる。

<年代別のESG投資に対する意識>
単一回答

ESG投資関心層無関心層
全体30%70%
18~29歳32%68%
30~39歳30%70%
40~49歳29%71%
50~59歳29%71%
60~69歳30%70%

出典:野村アセットマネジメント「ESG投資に関する意識調査(2020年9月発表)」より株式会社ZUU作成

国も環境白書でESG投資にフォーカス ESG関連のタスクフォースも

もう1つ、今後もESG投資が広がる可能性としては、国がESG投資(ESG金融)を推していることが挙げられる。

政府が2021年6月に閣議決定した「令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書(以下「環境白書」という)」では、日本のESG市場が着実に拡大していることを解説している。日本のESG市場は、2016年の段階で0.5兆米ドルだったが、2018年には2.1兆米ドルと2年で4.2倍増加。世界市場で見ると、日本が占める市場規模は全体の7%程度とまだ小さいが「成長率では世界一」と「環境白書」では述べている。

加えて、「環境白書」内では国がいかにESG金融を推し進めているか、具体的な活動を紹介する。一例としては、金融・投資分野の各業界トップと国が連携してESG金融の議論を行う「ESG金融ハイレベル・パネル」を2019年2月からスタートしている。このパネルは行動する場でもあり、次の2つのタスクフォース(※)を立ち上げ、これからのESG金融の指針を示している。
※:タスクフォース=特定の課題に取り組むために設置される特別チーム

名称主な活動
ポジティブ インパクト
ファイナンスタスクフォース
・ポジティブなインパクトを生む金融の確立に向けた議論を行う
・ESG投資の発展型である「インパクトファイナンス」の基本的考え方を取りまとめ
ESG地域金融タスクフォース・ESG地域金融の普及展開に向けた「共通ビジョン」を取りまとめ

出典:環境省「令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」より株式会社ZUU作成

このような国の動きを見ても、ESG投資が一時的なトレンドではないことがわかる。ここまで見てきたように、ESG投資に対して機関投資家や個人投資家も関心を示し、国もその拡大に力を入れている。このような背景を踏まえると、ESG投資は時代の潮流ととらえたほうがよいだろう。

個人投資家がESG投資をするときの選択肢

では、具体的に個人投資家がESG投資を始めようと思ったら、どのような選択肢があるだろうか。「株式投資」「投資信託」などが考えられる。

ESG投資1:株式投資

ESGに積極的な上場株式に投資する方法はいくつかある。たとえば、ESG評価の高い企業やESGに関する表彰企業に投資する方法だ(例:ESGファイナンス・アワード・ジャパン、SUSTAINA ESG AWARDSなど)。

また、ESG指数に組み込まれている企業の株式を購入する方法もある。たとえば、日本の年金マネーを運用する巨大ファンドであり、日本のESG投資に先鞭をつけたとされるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が採用しているESG指数には以下のようなものがある。

指数名概要
FTSE Blossom Japan Index総合型指数。ESGのすべてを総合的に評価
MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数総合型指数。公的、民間両方の幅広いデータをもとに評価
MSCI日本株女性活躍指数S(社会)に特化した指数。女性の従業員・管理職・取締役の比率で評価

ESG投資2:投資信託

QUICK資産運用研究所の調べによると、ESGをテーマにした国内の投資信託は2020年末時点で約150本。2021年以降も新たなESG投資信託が数多く誕生する見込みであることを日本経済新聞では報じている(2021年6月13日付)。

ESG投資信託は組成されている本数が多い分、どれをセレクトするか迷いやすい。同じESGを打ち出している投資信託でも、評価指数やどの分野を重視しているかなど中身が変わってくるだけに目論見書をしっかり確認したうえで購入すべきだろう。

ウォッシュ企業を選ぶと資産が急減するリスクも

ここで解説してきたことを振り返ってみよう。全世界のESG投資を見ると、欧米諸国の占める割合が高い。日本のESG投資は、また全世界のESG投資に占める割合が小さいものの、ハイペースで成長している点は見逃せない。

ESG投資への機運は高まっているとまでは言い切れないが、機関投資家61%が「ESG投資は増える」と回答、株式または投資信託を保有している個人投資家の52%が「ESG投資関心あり」と回答している。また、2021年版の「環境白書」では、ESG投資(金融)にフォーカス。国でもESGに関わるいくつかの指針が作成されている。

上記の材料から今後、ESG投資が時代の潮流になる可能性はあると考えられるだろう。
一方で、実際にESG投資(株式投資)をするときには注意点もある。その1つとして、グリーン(ESG)ウォッシュを警戒することが挙げられる。グリーンウォッシュとは環境に貢献しているように見せかける行為のことだ。ウォッシュ行為が露呈したり、疑われたりすれば、株価が急落する可能性が高い。E(環境)だけでなく、S(社会)・G(ガバナンス)も同様だろう。

しかし、一般的な個人投資家ではウォッシュ企業を見破ることは難しいため、複数の株式に分散する、上場株式以外のジャンルにも分散するといったことを意識する必要がありそうだ。

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