人生100年時代を見据えて、長期的な資産形成という視点から「不動産投資」がますます注目を集めています。「不動産投資」は、立派な賃貸事業ですので、個人名義で購入される場合であっても、年度末に確定申告が必要になります。
このように、初めて「不動産投資」をする人にとっては、どのような手続きが必要なのか?どんな時に税金がかかるのか?また、どうすれば節税に結び付くのか?などを含め、税金面は難しいと感じる人も少なくないようです。
今回は、不動産投資の際に役にたつよう、初心者にとってもわかりやすく、
①「不動産投資」の際に、購入時と購入後にかかる税金編
②確定申告編
③売却時にかかる税金編
と、3回シリーズで実務に役立つ税金についてご紹介していきたいと思います。
では、早速、「不動産購入時と購入してからかかる税金編」についてご紹介していきましょう。
(1)購入時にかかる税金
購入時にかかる税金は、主に印紙税、消費税、登録免許税、不動産取得税です。
売買契約をする前にどのような税金がどのぐらいかかるのかを確認しておきましょう。
印紙税
売買契約書に貼付して支払う税金です。売買契約金額によって印紙税額が異なりますので、あらかじめ確認しておきましょう。
たとえば記載された売買契約金額が、1000万円超5000万円以下であれば、2万円(※平成26年4月1日から令和4年3月31日までに作成された契約書については1万円)となります。なお、2022年より不動産取引における電子契約が開始されます。電子契約を利用すれば印紙税はかかりません。
消費税
不動産投資を目的として不動産を購入する際は、個人・法人を問わず、土地を除くアパート・マンションの購入費用に対して消費税(10%)が課税されます。
ひと頃、この不動産を購入する際の建物にかかわる消費税を還付するスキームが流行りましたが、現在はそうした還付を目的としたスキームは一切封じられています。なお、不動産売買契約書において消費税の記載の有無は建物金額の把握につながります。その後の減価償却や将来売却時の計算に影響しますからしっかりチェックしましょう。
登録免許税
不動産の所有権移転登記等のために必要な登録免許税等は、下記のとおりです。司法書士の手数料は司法書士により異なりますが、司法書士手数料とあわせ登記費用(物件価格のおおむね1~1.5%程度が目安)として必要となります。
区分 | 課税標準 | 税率 | 軽減措置 |
---|---|---|---|
土地所有権の移転 (売買) | 不動産の価額 | 20/1000 | 令和5年3月31日までは15/1000 |
建物所有権の保存 | 不動産の価額 | 4/1000 | 令和4年3月31日まで住宅用家屋の軽減あり |
建物所有権の移転 (売買、競売) | 不動産の価額 | 20/1000 | 同上 |
※不動産の価額・・・固定資産税評価額
(2)購入後にかかる一時的な税金
不動産取得税
購入時にかかる税金の一つである、不動産取得税(不動産購入時に一回だけかかる税金)は、実務上では、購入後おおむね3か月から半年後に納税通知書が届きます。投資用マンションの購入の他、土地や建物を購入、建築したりすると登記の有無にかかわらず取得した人に対して都道府県が課す税金です。後から支払う税金としてはボリューム感があるのであらかじめ金額を織り込んでおきましょう。なお、この不動産取得税は取得時の経費にすることができます。
<基本的な計算方法>
不動産の価格(固定資産評価額)×標準税率
区分 | 計算方法 | |
---|---|---|
住宅用 | 土地 | 固定資産税評価額×1/2×3%−減額措置 |
家屋 | (固定資産税評価額−1300万円(最大))×3% | |
住宅用以外 | 土地※ | 固定資産税評価額×1/2×3% |
家屋 | 固定資産税評価額×4% |
※宅地でない場合は1/2なし
(3)購入後に毎年かかる税金
購入後に毎年かかる税金は、固定資産税と都市計画税です。
意外と盲点なのは、不動産投資で得られる家賃収入についてです。得られる家賃収入により消費税がかかる場合とかからない場合がありますので、注意が必要です。
固定資産税・都市計画税
不動産を保有している間は、土地及び建物の所有者に対して、毎年課されるランニングコスト的な税金です。
購入時は前所有者と保有期間に応じて按分して負担することになります。なお、固定資産税も毎期の不動産経費として計上できます。
<基本的な計算方法>
課税標準(固定資産税の価格等※)×標準税率1.4%(都市計画税は0.3%の範囲内)
※住宅用地には課税標準の軽減措置あり(※下記は固定資産税の例)
住宅用地の区分 | 課税標準の特例 | |
---|---|---|
一般住宅用地 | 下記以外 | 1/3(※1) |
小規模住宅用宅地 | 1戸200㎡までの部分 | 1/6(※2) |
都市計画税の場合は、(※1)は2/3 (※2)は1/3
なお、一例として新築投資用マンション(40㎡以上280㎡以下)を購入し、賃貸する場合においては、新たに課税される年度から5年間(3階建て以上の中高層耐火建築物の場合)新築住宅の税額軽減特例も使えるので、押さえておきましょう。
消費税
不動産投資で得られる家賃収入には、消費税がかかるものと、かからないものがあります。
アパートやマンションなどの「住宅用賃貸」であれば、「非課税取引」
事務所や店舗、倉庫などの「事業用賃貸」であれば、「課税取引」になります。
これは、借主が法人か個人かではなく、利用目的により判断されます。
「事業用賃貸」の場合、消費税の「課税取引」になりますが、年間の課税売上高の合計が1000万円以下のうちは、消費税について免税を続けることができます。
不動産取引は本体価格が大きい分、それにともなう税金については十分注意を払いたいものです。不動産の目利きとあわせ税金感覚を身に着けることであなたの不動産投資はいっそう安定、確実なものになるはずです。税金面は細かい点も多いため、我々プロの税理士にお任せいただければ幸いです。
次回は不動産の税金 “確定申告編”です。
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水本昌克税理士行政書士事務所所長
株式会社リーガル・アカウンティング・パートナーズ代表取締役
水本昌克税理士行政書士事務所所長
1966年8月16日東京都生まれ。
平成2年 慶應義塾大学経済学部卒。
損害保険会社、税理士法人タクトコンサルティング(医療福祉チーム)を経て、平成20年税理士法人および株式会社リーガル・アカウンティング・パートナーズを設立し、各法人の代表に就任。
その他医療法人、社会福祉法人の監事、NPO理事を務める。
現在、医療経営、相続・事業承継対策を中心とした業務に取り組んでいる。
「医療法人制度改正と今後の対応」、「ドクターのための経営セミナー~開業から承継まで」など多数のセミナーで講師として登壇。
著書に
『オーナー社長の税金虎の巻』(大蔵財務協会)
『上手な不動産組替え虎の巻』(大蔵財務協会)
『企業目利き力養成講座~医療事業・介護福祉事業』(きんざい)
など。
【特集一覧はこちら:不動産投資の税金講座 税理士がわかりやすく解説】
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