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ゼッチマンション(ZEH-M)は、環境にやさしいマンションとして注目されており地球温暖化対策やエネルギー需給の安定を目的に普及が進んでいる。しかしゼッチマンションの認知度は、まだ低いため、どのような特徴があるかよく分からない人も多いのではないだろうか。今回は、実際にゼッチマンションを購入することを検討している方に、ゼッチマンションの概要やメリット・デメリットについて詳しく解説する。
ゼッチとは
ゼッチ(ZEH)とは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(Net Zero Energy House)を略した言葉だ。断熱性能の向上や高効率設備・再生可能エネルギーの導入によって年間の一次エネルギー消費量の収支が正味(ネット)でおおむねゼロ以下になることを目指した住宅を意味する。一次エネルギー消費量の対象は、冷暖房や換気、給湯、照明、エレベーターのことで冷蔵庫などの家電製品は含まれない。
国は、エネルギー政策や地球温暖化対策の観点から住宅の省エネ・省CO2化に取り組んでいる。ZEHロードマップを作成し「2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」という政府目標の達成に向けてZEH支援事業(補助金)を実施している状況だ。一定の要件を満たすハウスメーカーや工務店、建築事務所、リフォーム業者などを「ZEHビルダー」として公募・登録している。
補助金を交付することでZEHの普及を進めているのが現状だ。以前は、戸建住宅のみが支援対象だったが2018年度から集合住宅も補助金制度の支援対象となっている。
ゼッチマンションとは
ゼッチマンションとは、ZEHの要件を満たす省エネマンションのことだ。2018年度には、これまであいまいだった集合住宅におけるZEHの定義が明確化された。ゼッチマンションには、省エネ率や再生可能エネルギーの導入状況によって以下の4種類がある。
ゼッチマンションの種類 | 概要 | 目指すべき水準 |
---|---|---|
ZEH-M | 住棟全体で省エネ率正味100%以上 (再エネ含む) | 1~3階建 |
Nearly ZEH-M | 住棟全体で省エネ率正味75%以上100%未満 (再エネ含む) | 1~3階建 |
ZEH-M Ready | 住棟全体で省エネ率正味50%以上75%未満 (再エネ含む) | 4~5階建 |
ZEH-M Oriented | 住棟全体で省エネ率正味20%以上50%未満 (再エネ必要なし) | 6階建以上 |
出典:経済産業省資源エネルギー庁「ZEHの定義(改訂版)<集合住宅>」※この先は外部サイトに遷移します。より株式会社ZUU作成
100%以上の省エネ率を実現する「ZEH-M(ゼッチ・マンション)」から再生可能エネルギーの導入が条件に含まれない「ZEH-M Oriented(ゼッチ・マンション オリエンテッド)」までの4つに分かれている。マンションは、太陽光パネルが設置できる面積が限られるため、階数が高くなると住戸数に対して太陽光パネルの数が不足する傾向だ。そのため高層マンションほど省エネ率の基準を緩めている。
ゼッチマンションでは、高効率のエアコンや省エネルギー性の高い給湯器を設置するなどして消費エネルギーを削減しているのだ。また外壁や屋根、床などに高性能の素材を使用したり窓ガラスやサッシの断熱性を高めたりすることでエネルギーを極力必要としない住宅を実現している。
ゼッチマンションのメリット
ゼッチマンションは、エネルギー消費量が少なく環境にやさしいのが特徴だが、マンションの住人にどのような恩恵があるのだろうか。ここでは、ゼッチマンションのメリットを紹介する。
断熱性能の向上により快適に過ごせる
ゼッチマンションは、断熱性能の向上により一般的なマンションに比べると外気の影響を受けにくい。年中室温が一定に保たれるため、夏は涼しく冬は暖かく過ごせる点は大きなメリットだ。寒暖差が激しい冬は、浴室などでヒートショックのリスクが高まるがゼッチマンションなら冬でも暖かく過ごせるため、心筋梗塞や脳卒中などの事故を防ぐ効果が期待できる。
また暑い夏も室内の温度が上がりにくく涼しい状態が維持されるため、熱中症のリスクを下げる効果も考えられる。
光熱費を安く抑えられる
ゼッチマンションは、高断熱および高効率の設備を利用しているため、一般的なマンションに比べて光熱費を安く抑えられる点はメリットだ。高断熱により室内の温度が一定に保たれればエアコンなどを使用する機会が減り光熱費の節約につながる。
税制優遇を受けられる
低炭素住宅やゼッチの認定を受けているマンションは、税制面での優遇を受けられる。住宅ローンを利用してマンションを購入する場合、一定の要件を満たせば住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)が利用可能だ。住宅ローン控除は、住宅ローン年末残高に控除率を乗じた金額が各年分の所得税額から控除される制度である。
2021年12月24日に閣議決定された令和4年度税制改正大綱において、住宅ローン減税の内容に変更が生じている。税制改正大綱によれば控除対象限度額において、認定低炭素住宅は、最大控除限度額となっている。また、ZEH住宅の限度額が拡大される一方、一般住宅の限度額は縮小されており、今後も縮小される方針である。また、これらの適用は、自己の居住用に限られるため、投資用の物件には適用されない。
<2022年、2023年(入居年)>
住宅の種類 | 控除対象限度額 | 控除期間 | 控除率※ | 最大控除額 |
---|---|---|---|---|
認定低炭素住宅 | 5,000万円 | 13年 | 0.7% | 455万円 |
ZEH住宅 | 4,500万円 | 13年 | 0.7% | 409.5万円 |
一般住宅 | 3,000万円 | 13年 | 0.7% | 273万円 |
出典:財務省「令和4年度税制改正の大綱(令和3年12月24日閣議決定)」※この先は外部サイトに遷移します。より株式会社ZUU作成
※一定の要件を満たせば控除率は従来通りの1.0%とされるが、2021年11月末までの不動産売買契約締結が要件となるため、今回は原則の0.7%のみの記載としている。
認定低炭素住宅、ZEH住宅は、一般住宅よりも最大控除額が多い。上記の住宅ローン控除の優遇を受けるには、引き渡しから6ヵ月以内かつ12月31日までに入居するなどの一定の条件を満たす必要がある。また低炭素住宅は登録免許税の優遇もある。2022年3月31日までに取得する場合、所有権保存登記等の税率が一般住宅特例よりも引き下げられている。詳細は以下の通りだ。
登記の種類 | 本則 | 一般住宅特例 | 認定低炭素住宅 |
---|---|---|---|
所有権保存登記 | 0.4% | 0.15% | 0.1% |
所有権移転登記 | 2.0% | 0.3% | 0.1% |
出典:国土交通省「長寿命住宅(200年住宅)税制の創設 (登録免許税・不動産取得税・固定資産税)」※この先は外部サイトに遷移します。より株式会社ZUU作成
所有権保存登記は、新築マンションを購入する際に行う登記だ。一方、所有権移転登記は、中古マンションを購入する際に売主から所有権を変更するために行う登記を意味する。例えば新築分譲のゼッチマンションの場合は、所有権保存登記が必要だ。
金融機関によっては認定低炭素住宅用のローン商品を用意してあり、一般の住宅ローンよりも金利を優遇しているケースがあり、そういった金融機関を利用すれば低い金利でローンを借りることができる可能性がある。
資産価値の維持・向上が期待できる
国は、ZEHの普及を進めており今後はゼッチマンションの供給が増えていくと考えられる。しかし現状では、ゼッチマンションの認知度は低く数も少ない。認知度が高まって人気化すれば一般的なマンションよりも資産価値が高く評価される可能性があるだろう。
環境問題の改善に貢献できる
ゼッチマンションは、エネルギー消費量が少なく環境にやさしい住宅だ。住居としてゼッチマンションを選択することで地球温暖化などの環境問題の改善に貢献できる。
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ゼッチマンションのデメリット
ゼッチマンションは、一般的な集合住宅に比べて物件価格が割高な傾向にある。2021年現在は、補助金制度があるが「今後もZEH支援事業が継続されるか」「物件価格の水準がどうなるか」については不透明だ。高効率の設備や太陽光発電などを維持するために修繕積立金が将来値上げされる可能性も考えられる。
まとめ
ゼッチマンションは、断熱性能の向上と高効率設備の導入などによってエネルギー収支ゼロを実現している。住人にとっては、年中快適な環境で生活ができ光熱費の削減が期待できるのが主なメリットだ。「健康のために快適な環境で暮らしたい」「環境問題の改善に貢献したい」という思いがあるならゼッチマンションの購入を検討してみてはいかがだろうか。
6.ゼッチマンションに関するQ&A
6-1.Q1:ゼッチマンションのメリットとは?
「断熱性能の向上」によって快適に住め、かつ環境にもやさしいのがメリットの1つだ。また、光熱費削減・税制優遇などコスト面でもメリットがある。マンションの購入を検討している方は、本稿で具体的な控除額を確認して、通常のマンションと比較検討するといいだろう。
6-2.Q2:ゼッチマンションのデメリットとは?
一般的な集合住宅に比べて、物件価格が割高な傾向にある点がデメリットだ。ただし、光熱費が削減できたり、税制優遇があったりなど、ゼッチマンションにすることでの価格的なメリットは少なくない。本稿を参考に比較検討するといいだろう。
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宮路 幸人
会計事務所での長い勤務経験で培った豊富な実務知識により、会計処理・税務処理および経営や税務に関する相談など、さまざまな問題に対応。宅地建物取引士、マンション管理士等の資格を保有し、不動産と相続関連に強みを発揮する。特に相続関連では、税務面だけでなく、家族の幸せを重視したトータルでの提案を行っており、軽いフットワークでお客さまのニーズに応えることをモットーとする。離島支援活動にも積極的。
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