宅建業法改正で説明が義務化された「建物状況調査」
2018年4月、国土交通省は、中古建物の売買において安心して取引できる市場環境を整備するため、宅地建物取引業法改正により「建物状況調査」の活用を促しました。
取引の際に、不具合や劣化状況の情報として「建物状況調査」の実施有無やその結果についての説明を義務付けるものです。
施行から2年たちましたが、特に収益物件の場合、まだまだ調査の重要性は普及しておらず、実施している物件はほとんどありません。建物の不具合については、いまだに売主の告知と不動産仲介会社の確認による情報に頼っているのが現状です。
収益物件の取得後の予測外の不具合発覚や、予定外の修繕などによる出費リスクを回避するために物件の候補が見つかる都度行うホームインスペクション(住宅診断)の重要性は前回紹介したとおりです。
今回は、物件の内見時に外観からできるチェックの方法を解説します。せめて最低限のポイントだけでもセルフチェックで押さえておきましょう。
外観セルフチェックの5つのポイント
1.敷地の内外をチェック
敷地内や付近に擁壁や土留めなどの高低差がないか、隣地の状況から以前は田・畑などで地盤が弱い可能性がないかを確認します。高低差があったり、以前に田・畑の場合には盛土(土を盛って敷地を平らに造成すること)をしている可能性があり、経年とともに地盤の不同沈下から建物が傾斜しているケースもあります。
2.屋根・軒裏・樋をチェック
なるべく屋根・樋の全体が見える位置から双眼鏡を使って変形や破損、ひび割れ、変色などがないか確認します。暴風などで剥がれたり、瓦がずれたり、テレビアンテナが倒れていることもあります。
また、変色や剥がれ、ひび割れていたりする場合は、雨漏りが生じている可能性もあります。日中でも影になっているところがあるのでライトを使用するといいでしょう。
3.外壁をチェック
間近に見たり、見上げながら破損やひび割れ、変色などがないか確認します。また外壁に付いているサッシや雨戸、庇、樋、物干しの金物などの付属物も破損したり変形していないか確認をします。長いひび割れがある場合には構造的な不具合を抱えている可能性があります。
4.基礎部分をチェック
基礎も外壁と同様に破損やひび割れ、変色がないか確認をします。錆がある場合には、基礎内部の鉄筋が錆びていることが考えられます。また、木くずのようなものが線状に付いている場合はシロアリ被害があるかもしれません。
5.鉄骨部をチェック
2階建て以上のアパートの場合、共用の廊下や階段は鉄骨でできていることが多いです。またバルコニーの床・柱が鉄骨という場合もあります。その鉄骨に錆がないかを確認します。錆の状況が表面的なものであれば、錆を落として再塗装をすることによって簡単に修繕もできますが、錆が進行して内部から錆が生じていたり、錆によって破損まで至っていると溶接による穴埋めや交換などが必要になり、大きな修繕となることがあります。
判断がつかない、不安があれば、納得するまで調べましょう
中古の収益物件の場合、ある程度劣化があるのは致し方ありません。その劣化や不具合がどの程度の状態であり、いつ修繕が必要になるか、費用はいくらぐらい掛かるのかを把握し、収支計画の予測を立てておくことが重要です。
まずは上記のようなチェックポイントをご自身で確認し、修繕の必要があるか予測しましょう。
劣化や不具合の事象に不安を感じた場合は、臆せず仲介会社など物件の紹介者に確認するといいでしょう。それでも良し悪しの判断がつかない場合には、実績のあるホームインスペクターや建築士等専門家に調査を依頼するなどしてとことん調べ、納得したうえで購入することをお勧めします。
1999年、業界で初めて個人向け不動産コンサルティング業務をスタート。
建築士やマンション管理士など多様で実績豊富な専門家が在籍し、
不動産取引・建物調査・管理組合運営など不動産に関する総合的なアドバイスを行う。
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