元ローン担当者の少しマニアな独り言~不動産投資家になられる方に知っていただきたい不動産のお話~

不動産関連業務キャリア数十年のオリックス銀行元ローン担当者が、いままでの経験から皆さまに知っていただきたい不動産のお話を連載で綴っていきます。

第3話
「融資審査書類が改ざんされてる!?そのときオリックス銀行は」

不動産の価格が上がってきたり、金融緩和が進んできたり、不動産投資の環境が良くなると往々にして起きるのが業界の不祥事です。

私も過去に何度か市場の波に翻弄されたものです。思い起こせば、特に30年以上前のいわゆるバブル期の「浮かれ過ぎた日本社会」で起きたさまざまな不祥事の何とも情けないこと。できればその時代のことも語りたいのですが、ここでは語り尽くせないので、またいつかの機会に。

今回は、ほんの3~4年前に起きた「シェアハウス問題」に絡んだ一連の不祥事が世間を賑わせたころの、「自己資金」に関連した審査書類の改ざんにまつわる問題に少々触れてみたいと思います。

なぜ預金通帳コピーの改ざんが起きたのか

当社では、お客さまの融資審査をする際に預金額を確認させていただいています。もちろん年間の給与所得、すなわちフローの数値だけで資力を推し量ることができる場合もありますが、一般的なサラリーマン投資家にとってやや金額の張る投資用不動産の借り入れ申し込みですので、万一に備えて資産背景、すなわちストックをチェックさせていただくのが原則です。

「シェアハウス問題」に関与した金融機関も、おおむね似た理由で預金額を審査資料としてチェックしていたのではないかと察しますが、そこで起きたのが預金通帳のコピーの改ざんでした。「融資が通らなければ物件を売ることができない不動産業者」を取り巻く当事者のさまざまな思惑が、この不祥事を生んだのだと思います。

預金通帳のコピーに手を加えて預金残高を膨らますことなどは、現代の画像処理技術をもってすればいとも簡単で、その手法はテレビ報道で紹介されたりしていました(念のため申し添えますが、私文書偽造は当然のことながら立派な犯罪行為です)。

不動産業者の手により簡単に預金通帳のコピーの改ざんが行われ、本来であれば融資審査に通らないはずのお客さまが過剰融資を受ける羽目に陥り、社会問題に発展しました。そして、不動産業者と金融機関の職員が通謀していたという衝撃的な事実も露呈したのでした。

証左確認に対するオリックス銀行の姿勢

当社はどうなのかと申しますと、審査時に確認した預金通帳のコピーの中に偽造されたものが一切無かったと断言するのは難しいのが正直なところです。ただし、融資を行う前にお客さまと面談をしていますので、その際に、お客さまに提出していただいた資料を直接再確認したり、内容について再度尋ねたりしています。

ですから、万一、不動産業者が預金通帳のコピーを改ざんしていたら、この時に気付くはずです。少なくともお客さまが知らないうちに不動産業者が勝手に預金通帳のコピーを改ざんしていた、ということは起き得ない体制になっているのです。

当社は、常にお客さまの立場にたって考えることが重要と考えています。面談の場でいろいろな説明や確認をさせていただくのも、お客さまが予期せぬ損害を受けないようにするためです。その面談の場を経てもなお、明るみに出ずに融資を行うことがあれば、それは当社側の落ち度か、あるいは、お客さまと不動産業者が口裏を合わせているか、いずれかのケースだと思わざるを得ません。

自己資金投入割合の改ざん

さて、預金通帳のコピーの改ざんの他に、売買契約書を2種類作成、あるいは売買契約書のコピーの金額を改ざんして、自己資金投入割合を大きく見せようとする手法が昔はよく見受けられました。手の込んだ悪知恵と言うか、おそらく金融機関を騙そうとしたに違いないと思われる事例を2つ紹介します。

これらは信義則の問題であって、言うならば「金融機関に対する不信行為」とされるものですが、程度によっては起訴になってもおかしくないものもあると私は思っています。

事例1

一つ目は、不動産売買の契約時に交わした売買価格を、決済引渡日の当日に売主と買主との間の合意で減額する、という行為が悪用された事例です。

契約は当事者間の合意で成立しますので、この行為自体は何ら違法なものではありません。しかし、最終的に決済引渡日に売買価格を減額することを、最初の売買契約の締結の際に前もって決めていたとしたらどうでしょうか。その場合には、売買代金を本来よりも高く見せかけて金融機関に持ち込み、望み通りの融資額を金融機関から引き出すことが目的だったと、ほぼ推定できます。自己資金投入割合は金融機関や案件ごとにさまざまですが、買主の自己資金が足りない場合に、不動産業者がこのような手段を提案していたのだと思います。

コンプライアンス意識の高い不動産業者はこのようなことは行わないと思いますが、お客さまが不動産を購入する際に、万一不動産業者から「皆さんやっているから大丈夫ですよ」「違法ではありませんよ」などと言われてこのような行為を持ち掛けられたら、この事例をぜひ思い出してください。過剰な借り入れはお客さまの生活を苦しめることになり得ますので。

事例2

二つ目は、事例1と抱き合わせで行われる預金残高の偽装なのですが、頭金と諸経費の支払いが可能な自己資金を持っているように見せかけ、なおかつ実際に支払った証左として取引履歴も残すことができるように、買主の預金口座で「見せ金」を使った事例です。

不動産業者の営業担当者などが、一定額を他人名義で買主の預金口座に振り込んで、一時的に膨らんだ預金残高をローン審査に使い、後で返金してもらう、というものです。

例えば、本来9千万円の売買価格の不動産があったとします。事例1のように最初の売買契約で売買価格1億円として契約を締結し、自己資金1割を基準とする金融機関にローン審査を申し込んだ場合、借り入れ9千万円、自己資金1千万円という見せかけになります。この時、預金口座に1千万円以上の残高がなければ、自己資金を持っていないことが金融機関にばれてしまいます。これを取り繕うために、不動産業者の営業担当者が買主の預金口座にあらかじめ1千万円を振り込んでおいて、支払能力を十分に示せる預金残高を作ります。その後、売買契約の支払条件に合わせたタイミングで返金すれば、さも実際に売買契約に沿って自己資金を支払ったかのような取引履歴を通帳に装うことができてしまうのです。

当社としては、まとまった大きな入金履歴がある場合には理由を確認させていただくのが通例ですが、物件を買いたいがためにお客さまが上手な嘘をついてしまえば、私たちはこの偽装に気付かずに、本来であればできない融資をしてしまうかもしれません。

この事例も先ほどの事例と合わせて気を付けてください。

不動産投資を始められる方へ、借り入れの際のアドバイス

今回の目的は、偽装テクニックをお話ししたかったのではありません。このような形で不動産投資を始めると、結果的にお客さま自身が過剰な借り入れに苦しむことになるので、そのことをお知らせしたかったのです。

事例1や事例2のケースでは、不動産業者に「周りの皆さんも普通にやってますよ」などと持ち掛けられて、買主は「そんなものかな」と罪悪感なく安易に乗ってしまう場合が多いのでしょう。儲け優先の不動産業者が存在する限り、少なからずそのような誘惑の可能性がある世界なのだと認識し、警戒心をもっていただきたいと思います。

私どもオリックス銀行では、先にも申し上げたように、融資にあたりお客さまと「面談」をさせていただいています。万一提出資料に誤りや訂正があれば、その場で正しく申告してください。時には、こんなこと言ったら審査で不利になるのではないか?と考え、言いそびれることもあるとは思いますが、逆です。言わずにいたことが後日、自分自身に後悔として返ってきてしまうのです。

当社のローンは、お客さまのご事情に合わせて対応することを心掛けていますので、不動産取引の過程で何か引っ掛かる点があった場合には、率直にお話しいただければと思います。場合によっては口うるさく感じることがあるかもしれませんが、お客さまが不動産投資で後悔しないような融資をする、それがオリックス銀行の姿勢です。

シニアコンサルタント 真保雅人
(大学卒業後、鉄道会社約4年を経て1989年5月オリックス株式会社に入社し、投資用不動産ローン業務を約10年担当。その後、オリックス不動産株式会社にて約10年間の賃貸マンション用地仕入開発業務経験を経て、2010年11月オリックス銀行株式会社に出向。オリックス銀行では投資用不動産ローン業務に責任者として約10年従事し、現在に至る。)

【特集一覧はこちら:元ローン担当者の少しマニアな独り言

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- コラムの注意事項 -

本ページの内容については、掲載当時のものであり、将来の相場等や市場環境等、制度の改正等を保証する情報ではありません。