元ローン担当者の少しマニアな独り言~不動産投資家になられる方に知っていただきたい不動産のお話~

不動産関連業務キャリア数十年のオリックス銀行元ローン担当者が、いままでの経験から皆さまに知っていただきたい不動産のお話を連載で綴っていきます。

第2話
「コロナ禍で東京23区の人口が減少している!?」

先日(2021年8月4日)、総務省の人口動態調査が発表されました。「日本の人口が12年連続で減少」、「東京圏(一都三県)の人口の伸びが鈍った」などの内容でした。なるほど、社会の現状もしくは将来を考えるうえで大切な調査であろうと思いますし、不動産投資家にとっても人口問題は念頭に置くべき重要な課題であると感じます。

ところで、実はこの調査は2021年1月1日時点が基準になっています。それはそれで学術的に貴重ですが、おや?半年前の状況の発表でしたか、と若干の嘆息感があります。

コロナ禍で全く新しい流れが出て来ているので、私個人的には常に直近の情報を知りたく、毎月各自治体のホームページで人口を確認しています。例えば東京23区の人口は、今年1月から半年間、途中増減の起伏があったものの減少基調は変わっておらず、この流れは今も進行しているのです。

街角景気ウォッチャーならぬ、街角不動産ウォッチャーとして、これらをどう読み取るべきか?後ほど私見をお話ししたいと思います。

その前に、参考までに、皆さんがホームページなどで「人口」を見る時の基礎知識を一つ。

人口には、大きくわけて「住民基本台帳登録人口」と「推計人口」の2種類があり、おおむね各自治体は、それぞれ数値の異なる2つの人口を発表しています。

前者はいわゆる「住民票」の登録数で確定していますが、ご存じのとおり、住民票を移さず転居している事例(学生・単身赴任者・高齢者施設入居者など)も多く、その自治体に本当に住んでいる人口の実態を表しているとは言えません。

そこで、5年に一度の国勢調査(直近2020年10月)の人口をベースに、5年間の途中は住民票登録数を基に特別な計算式で算出したものを「推計人口」と呼びます。実態に近い人口を表しているため、単に「人口」と言う時は、後者の「推計人口」を指しているケースが多いようです。

ただし、あくまで推計のため、特に5年前と直近の国勢調査で住民票とのズレが大きかった自治体は、大幅に推計値を変えざるを得なくなります。ちょうど昨年の国勢調査結果がまとまりつつある現在、あちこちの自治体で推計人口の修正発表が続出しています。過去からの連続性も考慮して修正しなくてはならないので、大変な作業と推察します。

東京23区の人口推移をどう読み取るべきか?

さて、東京23区の人口推移に話を戻します。

なぜ「東京都」の中でも「東京23区」に限定してお話しするかと言いますと、「多摩地区」は都心部と異なり、転入が増えている「神奈川県」「千葉県」「埼玉県」といった近郊都市の動きに似ているため、コロナ禍における人口減少については、「東京23区」で考察すべきと思うからです。

東京23区は2020年の春まで人口増加を続けてきました。1年のうちでも3月から4月にかけて大きく伸びるグラフ線の描かれ方すら、ほぼ毎年同じように一定割合で増えていたのです。しかし、2020年5月頃をピークとしておおむね減少傾向に変わりました。これは実にエポックメイキングなことですが、コロナ禍の一時的なことと捉えるべきか、今後も減少傾向が続くと考えるべきか、まさに思案のしどころです。

大ざっぱなたとえで言えば、ピーク時には、東京23区内に少なくとも約977万人分の容れ物が存在していたわけです。それが約5万人減少したということは、それだけ容れ物が余ってきたということです。現実では2人住まいが1人住まいに変化したり、古家が取り壊されたりと、いろいろな事情が加味されるので、人口減少がストレートに空室増加につながるわけではありませんが、なんとなくコロナ禍における人口減少が賃貸マーケットに影響を及ぼすように思えてきます。果たして本当にそうなのでしょうか。

元ローン担当者の少しマニアな独り言~不動産投資家になられる方に知っていただきたい不動産のお話~
(出典:東京都公表「人口推計」より筆者編集)

私個人がこの状況をどのように見ているかと申しますと、決して悲観的に見ているわけではありません。

なぜなら、今のところ、減少と言ってもまだ2年前の人口水準に戻るかどうかというラインですし、ピーク時の人口約977万人の内の約5万人ということは、割合で言えばマイナス0.5%程度に留まっているからです。また、新型コロナウイルスのワクチン接種が進捗して景気回復が実現すれば、東京23区の人口減少傾向はもうじき底を打つことも考えられます。

確かに条件が悪い物件は賃貸付けが厳しいかもしれず、また、一部の局所的現象として供給過多は起きていると思いますが、東京23区の賃貸マーケットはまだまだ安定的であり、相場観を無視した高額な賃料の追求などをしなければ(相場並みの賃料に調節さえすれば)、入居者を見つけることはそう難しくないと言えるかもしれません。

約四半世紀もの間、東京23区人口は増え続けて来たが…

ただ私は、ここで一つ警鐘を鳴らしたいのです。ある意味こちらが今回のテーマです。

不動産業界の方や、少しでも東京23区で不動産賃貸をした経験のある方こそ陥りやすいのですが、今までのように「楽な」東京23区の賃貸マーケットの感覚のままでいてほしくない、ということを申し上げたいのです。

実は、1996年頃から東京23区の人口はおおむね継続的に増加基調でした。

では、その前は?と言うと、高度経済成長で人口集中し過ぎた反動や、バブル期に地価が上がり過ぎて東京中心部に住める人が減り、郊外流出が起きるなど、意外にも人口減少基調の時代もあったのです。その頃の東京23区では、住宅がオフィスビルなどに置き換わっていました。

元ローン担当者の少しマニアな独り言~不動産投資家になられる方に知っていただきたい不動産のお話~
(出典:東京都公表「人口推計」より筆者編集)

さて、バブル崩壊後に都心回帰が起きて以降、この四半世紀の間にどれだけ東京23区の人口が増えたかと言うと、約180万人です。この数字は、県で言えば福島県や三重県、都市で言えば札幌市より少なく福岡市より多いぐらいの人口に値します。

この「住むための容れ物」をそれだけ必要とした約25年間の東京23区の成長時期にサラリーマン人生の過半を捧げた私ですので、投資用不動産ローンの業務でも、デベロッパー部門にて賃貸マンションを造っていた業務でも、リーマンショック後の一時期を除けば、住居系の賃貸付けで非常に苦労したという記憶はありません。

つまり、常に人口が増え続けている「東京23区」という、ある意味、賃貸住宅を造るうえでも賃貸募集するうえでも、とても楽なマーケットに慣れてしまっていて、私自身、今も昔も変わらない感覚のままになってしまっている可能性があります。リーマンショック直後にマーケットの厳しい時期を経験はしていますが、四半世紀の長い期間の中で後から振り返れば、一時の苦労話に過ぎません。

そのような慣れが、変化に備える対処を思い描かず、これからの局面に対する見通しに甘さを生じさせかねない、と気を付けなければならないと自戒の念を込めて思うのです。

不動産投資の初心者の方も、必要以上に弱気になることはありませんが、不動産会社の営業マンが「楽なマーケット感」に染まっているとすれば、その意見は、少し割り引いて聞いた方が良いかもしれません。

現地を見たり、賃貸の情報を収集して相場を調べたり、自身の目で確かめ、自身の力で学んでいただきたいと思います。当たり前ですが、最終判断は投資家自身で下していただくしかないのです。

シニアコンサルタント 真保雅人
大学卒業後、鉄道会社約4年を経て1989年5月オリックス株式会社に入社し、投資用不動産ローン業務を約10年担当。その後、オリックス不動産株式会社にて約10年間の賃貸マンション用地仕入開発業務経験を経て、2010年11月オリックス銀行株式会社に出向。オリックス銀行では投資用不動産ローン業務に責任者として約10年従事し、現在に至る。

【特集一覧はこちら:元ローン担当者の少しマニアな独り言

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