地面師とは?詐欺の仕組みや実例・防衛のポイントを解説
  1. 地面師とは?
  2. 地面師事件の実例と手口
    1. 積水ハウス事件:被害額55億円5,900万円
    2. アパホテル事件:被害額12億6,000万円
    3. 地面師に狙われる物件・土地の特徴
    4. 長年にわたり放置されている空き地・空き家
    5. 長年にわたり登記情報が更新されていない物件
    6. 抵当権の設定がない物件
    7. 高齢の方が所有している物件
    8. 所有関係が複雑な物件
  3. 地面師被害を防ぐためには
    1. 信頼できる不動産会社・専門家に相談する
    2. 本人確認・不動産登記簿の確認を徹底する
    3. 周囲の人や地域住民に相談する
    4. 不動産に関する知識を身につける
  4. 地面師詐欺のよくある疑問
    1. 現地(周辺)調査をすれば詐欺を見破れる?
    2. 地面師に騙し取られた不動産やお金は戻ってくる?
    3. 地面師かもと思ったら誰に相談すべき?
    4. 地面師詐欺の被害に遭ってしまったら?

大胆・緻密なストーリーで話題を読んだドラマ「地面師たち」はご存じでしょうか。このドラマは実話ではありませんが、実際に起きた地面師事件の要素が反映されているのではないかと言われています。

本コラムでは、不動産投資の観点から、地面師詐欺の実例や手口、地面師に狙われる物件の特徴、詐欺被害を防ぐための具体的な対策について解説します。

地面師とは?

地面師とは?詐欺の仕組みや実例・防衛のポイントを解説
(画像:PIXTA)

地面師とは、他人の不動産の所有者を装って不動産を売却し、買主から売買代金を騙し取る詐欺師(またはその手口)のことをいいます。2024年には地面師の犯罪を描くドラマとして「地面師たち」がNetfliixにて配信され、大きな話題を呼びました。

詐欺の犯罪類型としては歴史が長く、古くは第二次世界大戦後の混乱に乗じて流行し、その後は高度経済成長期やバブル期に隆盛を極め、社会問題となりました。近年では、所有者が高齢化して管理が行き届いていない土地や、長期間放置された空き家・空き地が狙われるケースが多数報告されています。

地面師事件の実例と手口

実際に起きた地面師詐欺事件を2つ紹介します。ここで紹介する2つの事件はいずれも大企業が被害者となり、巨額の被害となった事件になります。

積水ハウス事件:被害額55億円5,900万円

2017年6月に発生した積水ハウス事件は、小説・ドラマ「地面師たち」のモデルとなったといわれている巨額詐欺事件であり、被害総額は55億5,900万円におよびました。

地面師グループの手口は、複数のメンバーが役割分担をして犯行を行い、ホログラムシールまで偽造したパスポートや印鑑証明書、さらには公正証書まで用意しており、本人確認ができる状態でした。もっとも、誕生日や干支を言い間違えるなど、不審な点があったことも報告されています。

事件当時は、景気回復や金融緩和を背景に都心のマンション用地が高騰しており、大手ディベロッパーによる取得競争が激化していました。地面師グループはこのことを利用し、積水ハウスに取引を急がせることで、冷静な判断を妨げるよう工夫していました。

結果として、地面師グループ15名が逮捕され、主犯格の男には懲役11年が言い渡されました。また、民事訴訟では主犯格の男らに10億円の賠償が命じられています。詐取された金銭のうち約15億円は国内で回収されたものの、約20億円が海外に流出したことが確認されており、残りの約20億円の行方は今も分かっていません。

アパホテル事件:被害額12億6,000万円

2013年に発生したアパホテル事件は、港区赤坂の土地取引に関する地面師詐欺事件であり、被害総額は約12億6,000万円におよびました。

地面師グループは、所有者が亡くなった駐車場に目をつけ、相続人になりすまして偽造書類(住民基本台帳カード、不動産権利書、固定資産評価証明書、印鑑証明書)を作成。アパホテルは精巧な偽造を見抜けず売買契約を締結し、売買代金を支払ってしまいました。

本件でも総勢9名にのぼる地面師グループ(司法書士を含む)が逮捕されていますが、被害の回復には至っていません

地面師に狙われる物件・土地の特徴

地面師とは?詐欺の仕組みや実例・防衛のポイントを解説
(画像:PIXTA)

地面師詐欺による被害を防ぐためには、地面師がどのような物件をターゲットにしているのかを知ることが重要です。ここでは、地面師に狙われやすい物件の特徴を具体的に解説します。

長年にわたり放置されている空き地・空き家

長期間にわたって放置されている空き地や空き家は、所有者の所在が不明確であると判断されやすいため、地面師の格好のターゲットとなります。また、近隣住民との交流が少ない場合、所有者について確認することが難しく、不正な取引が見過ごされてしまう可能性があります。

空き家を放置することは、地面師詐欺のリスクを高めてしまうだけではなく、法的なペナルティを受ける可能性もあるため、以下の記事も参考にしながら具体的な活用方法を検討しましょう。

【関連記事】空き家を活用して収益に!活用方法12選と注意点を解説

長年にわたり登記情報が更新されていない物件

登記情報が長年にわたり更新されていない物件も、地面師に狙われる危険性が高くなります。登記情報は不動産の所有者や権利関係を明らかにする重要な情報であり、長期間更新されていないと、その物件の管理が十分ではないと判断されるためです。

特に2024年4月からは、相続の日から3年以内に相続登記を申請することが義務づけられたため、登記情報を放置している物件がないかを地面師が探っている可能性があります。

したがって、物件の所有者が変わった場合や、権利者の住所変更等があった場合、抵当権が抹消された場合等には、速やかに登記情報を更新することが重要です。

抵当権の設定がない物件

抵当権が設定されていない物件は、売却の際に金融機関の審査などを経る必要がないため、比較的スムーズに取引が可能です。地面師は、この点を悪用し、迅速に現金化できる抵当権が設定されていない物件を狙う傾向にあります

所有者にとって抵当権の設定がないことは、すぐに売却できるというメリットにもなりますが、地面師にとっては格好の標的となる可能性があるということを認識しておきましょう。

高齢の方が所有している物件

物件の所有者が高齢者の場合、地面師に狙われやすい傾向にあります。高齢者は地面師の巧妙な手口に騙されてしまう危険性があるからです。また、高齢者が所有する物件は、相続問題が複雑化しているケースも多く、その隙を突いて不正な取引が行われる可能性があります。

高齢者本人が不動産管理を行うことが難しい場合は、家族や信頼できる専門家に管理を委託することを検討しましょう。

所有関係が複雑な物件

相続や分筆などにより複数の共有者がいる物件は、所有関係が複雑になりやすく、地面師の標的となるリスクが高まります。特に、共有者同士の意見がまとまらず、管理が疎かになっている物件は注意が必要です。具体的には、共有者全員の同意を得ずに、一部の共有者になりすまして不正な取引を行うケースなどが考えられます。

詐欺被害を防ぐためには、共有者全員で定期的に連絡を取り合い、物件の状況を確認することが重要です。また、共有名義の不動産を売却する場合は、事前に専門家に相談し、トラブルを未然に防ぐようにしましょう。

地面師被害を防ぐためには

地面師とは?詐欺の仕組みや実例・防衛のポイントを解説
(画像:PIXTA)

ここでは、地面師被害を未然に防ぐための具体的な方法を紹介します。

巧妙化する地面師の手口から大切な資産を守るためには、日頃からの備えと対策が非常に重要です。不動産取引は高額な取引になるため、少しでも不審な点があれば、立ち止まって慎重に確認することを心がけましょう。

信頼できる不動産会社・専門家に相談する

不動産取引を行う際、信頼できる不動産会社や、弁護士・司法書士などの専門家に相談することで、契約内容の妥当性やリスクについて客観的なアドバイスを受けることができます。これらの専門家は、地面師の手口や最新の詐欺情報にも詳しいため、適切な助言が期待できます。

特に、初めて不動産取引を行う場合や、高額な取引を行う場合は、必ず専門家の意見を聞くようにしましょう。売却は自己責任になります。騙されないためにもしっかりと知識を身に着け、自分自身で判断できるように日頃から備えましょう。

本人確認・不動産登記簿の確認を徹底する

地面師被害を防ぐためには、売主の本人確認と不動産登記簿の確認を徹底することが重要です。売主が提示する身分証明書だけでなく、運転免許証・パスポート・マイナンバーカード等の顔写真付きの公的身分証明書を複数確認するなど、入念にチェックしましょう。

さらに、法務局で取得できる登記簿謄本を確認し、所有者情報や権利関係に間違いがないか、最新の情報に更新されているかを必ず確認しましょう。少しでも不審な点があれば、取引を中止し、専門家に相談することをおすすめします。

周囲の人や地域住民に相談する

不動産取引を行う際には、周囲の人や地域住民に相談することも有効な対策です。特に、長年その地域に住んでいる人や、地域の事情に詳しい人は、土地の状況や過去の取引に関する貴重な情報をもっている可能性があります。

実際に積水ハウスが地面師事件で多額の被害を受けた際、被害に遭わなかった別のディベロッパーは、近隣住民に「売主」とされる人物の写真を見せて本人確認を行うことで、売主が偽物であることが判明し、被害を免れることができました。

地域住民との情報共有は、地面師被害を防ぐ上で、非常に効果的な手段といえるでしょう。

不動産に関する知識を身につける

地面師被害を防ぐためには、不動産取引に関する知識を自ら深めることも大切です。不動産取引の流れ、必要な書類、確認すべきポイントなどを理解しておくことで、地面師の巧妙な手口を見抜くことができるようになります。

また、相場からかけ離れた価格で取引を持ちかけられた場合など、不審な点に気づくためには、不動産取引の相場観を養っておくことも重要です。不動産関連の書籍やセミナーなどを活用するほか、不動産情報サイトの販売物件情報などから積極的に知識や相場観を習得しましょう。

地面師詐欺のよくある疑問

ここでは、地面師詐欺に関する疑問について、詳しく解説します。

現地(周辺)調査をすれば詐欺を見破れる?

現地調査を行ったとしても、それだけで地面師詐欺を完全に見破ることは難しいです。

なぜなら、地面師は空き家や更地など管理が行き届いていない物件をターゲットにすることが多く、現地調査をしたとしても真の所有者や、真の所有者を知る人と遭遇する可能性が低いからです。また、地面師は事前に建物や敷地の鍵を交換しておくこともあり、一見しただけでは所有者になりすましていることを見抜くことは困難です。

また、不動産会社によっては近隣住民への聞き込み調査に消極的な場合があります。これは、売主とのトラブルを避けたい、取引をスムーズに進めたいという心理が働くためです。

とはいえ、現地調査をきっかけに詐欺と判明した事例も多く、仮に詐欺ではなかったとしても、現地調査により物件の実情を目視することは不動産投資における重要なステップであるため、できる限り実施するようにしましょう。

地面師に騙し取られた不動産やお金は戻ってくる?

残念ながら、地面師に騙し取られた不動産やお金を取り戻すことは非常に困難です。実際に積水ハウス事件では、詐取された金銭は海外に流出したとみられており、回収は絶望的とされています。また、不動産に関しても法律上、善意の第三者(事情を知らずに購入した人)に所有権が移転してしまうと、元の所有者はその権利を主張することができなくなります

詐欺師本人や、過失のある仲介者(不動産会社や司法書士、場合によっては国)に対して損害賠償請求ができることもありますが、被害者本人にも一定の過失がある場合、過失相殺により被害金額の全額を回収することはできなくなります。

地面師かもと思ったら誰に相談すべき?

地面師詐欺の疑いがある場合、早急に専門家に相談することが重要です。ただし、取引相手が専門家を紹介してくる場合、その「専門家」自身が地面師チームの用意した偽物である可能性も否定できません。また、巧妙な手口の地面師詐欺では、本物の士業等が関わっていることもあります。

そのため、紹介された専門家を鵜呑みにするのではなく、自分自身で信頼できる専門家を探すことが大切です。以下のように、目的に応じて自身で専門家を探すようにしましょう。

相談先 相談内容
弁護士 法的問題全般、損害賠償請求など
司法書士 登記関係、所有権移転登記の抹消など
税理士 相続税・贈与税に関する相談
不動産鑑定士 不動産価格の適正評価

地面師詐欺の被害に遭ってしまったら?

地面師詐欺の被害に遭ってしまった場合は、一刻も早く警察や弁護士に相談しましょう。また、金融機関や不動産業者など関係各所への連絡も必ず行うようにしてください。

地面師は迅速に資金を移動させたり、不動産を転売したりするため、対応が遅くなるにつれて被害回復も困難となってしまいます。被害が発覚したタイミング等によって採るべき措置も変わってくるため、何よりも早めに専門家に相談することが重要です。

manabu不動産投資に会員登録することで、下の3つの特典を受け取ることができます。

①会員限定のオリジナル記事が読める
②気になる著者をフォローできる
③気になる記事をクリップしてまとめ読みできる

- コラムに関する注意事項 -

本コラムは一般的な情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的とするものではありません。
当社が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づきますが、その正確性や確実性を保証するものではありません。
外部執筆者の方に本コラムを執筆いただいていますが、その内容は執筆者本人の見解等に基づくものであり、当社の見解等を示すものではありません。
本コラムの記載内容は、予告なしに変更されることがあります。