
空き家を放置すると、不動産という資産を眠らせてしまうだけでなく、固定資産税の支払いなどのコストが生じてしまいます。また、場合によっては罰金や強制収去などの罰則を受ける可能性があります。
そこで本コラムでは、空き家はなぜ活用したほうがいいのか、具体的な活用方法、活用時の注意点などを詳しく解説します。
空き家は放置せず活用するのがおすすめ

空き家とは、誰も居住しておらず使用していない建物を指します。ここでは2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」を中心に、空き家を放置することのリスクを紹介します。
空家等対策の推進に関する特別措置法での定義は以下の通りです。
空き家
「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む)。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものは除く」
特定空家等
「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空き家等」
出典:e-Govポータル(https://www.e-gov.go.jp)
空き家を放置すると罰金や強制収去の対象となる
法律に基づき、空き家が「特定空家等」に認定された場合、物件の所有者は行政から段階的な措置を受けることとなります。
まず助言や指導が行われ、改善が見られない場合は勧告が出されます。それでも状況が改善されない場合は、命令が発せられ、最終的には行政代執行による強制的な収去が行われます。この場合の撤去費用は所有者負担となるほか、命令に従わない場合は50万円以下の過料が科せられる場合があります。
空き家を放置すると固定資産税が高くなる
特定空家等に認定されると、税制面でも大きな影響が出ます。通常、住宅用地には固定資産税の軽減措置が適用され、200平方メートルまでの小規模住宅用地では評価額の6分の1、それを超える一般住宅用地では3分の1に軽減されています。しかし、特定空家等として認定され、勧告を受けると、この特例が適用されなくなり、税負担が最大で6倍に増加する可能性があります。
具体的な税額は地域や土地の評価額によって異なりますが、年間数十万円の増税となるケースも少なくありません。
特定空き家に関する詳しい情報や、更地と固定資産税の関係については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【関連記事】更地の固定資産税は高い?計算方法や対策方法を紹介
空き家の活用の考え方は大きく4つ
空き家の活用方法を検討する際は、物件の状態や立地、予算などを考慮しながら、最適な選択肢を見つけることが重要です。空き家の活用方法は大きく分けて4つのパターンに分類でき、以下からはそれぞれのメリット・デメリットを紹介します。
空き家のまま売却する
手間とコストをかけずに空き家を活用したい方には、空き家をそのまま売却する方法がおすすめです。特に、物件の状態が比較的良好で、立地条件に恵まれている場合は、リフォームなどの追加投資をせずに売却できる可能性があります。
ただし、建物の経年劣化が進んでいる場合は、土地の価格のみで評価され、建物の解体費用の分だけ土地の価格が低下してしまうこともあるため注意が必要です。
空き家を貸し出す
空き家を賃貸物件として貸し出すことで、定期的な収入源として活用できます。しかし、最低限の設備更新やリフォームを行わないと、借り手が見つからなかったり、賃料が低くなったりする可能性があるため、一定の初期費用が必要な場合もあります。
また、賃貸管理会社に委託する場合には、管理手数料などのランニングコストが必要となるため、しっかりと収支シミュレーションを行うようにしましょう。
建て替えて貸し出す
新築物件として貸し出すことで安定した収入が期待できます。特に、立地条件が良好な場合は、店舗やオフィスとして建て替えることで、住居用の賃貸よりも高い収益性を実現できる可能性があります。
しかし建て替えには初期費用が必要になるため、地域のニーズや市場動向を十分に調査し、計画を立てることが重要です。
更地にして活用する
建物を解体して更地にすることで、土地の活用幅を広げられる可能性があります。
特に、建物の築年数が長い場合には、更地とすることで土地の売却価格が上がる可能性があり、買い手の選択肢も広がります。ただし、解体費用などが必要となるため、予算と相談しながら検討を進める必要があります。
空き家活用のアイデア12選

空き家の活用方法は、土地の特性や地域のニーズによって様々な選択肢があります。ここでは代表的な活用方法を紹介しますが、いずれの方法も、事前に市場調査や収支計算を行い、長期的な視点で検討することが重要です。
駐車場投資
駐車場として活用する方法は、特に都市部や駅周辺で有効な選択肢となります。初期投資として舗装工事や区画線の設置、精算機の導入などが必要ですが、その後の維持管理は比較的容易です。
月極駐車場の場合、毎月一定程度の固定収入が見込め、コインパーキングの場合には立地によってさらに高い収益を期待できます。ただし、周辺の駐車場需要や競合状況を十分に調査する必要があります。
太陽光発電投資
土地に太陽光発電パネルを設置し、電力を電力会社に売却することで利益を得る方法です。土地の広さや日照条件が重要な要素となりますが、適切な条件が揃えば、安定した売電収入を得ることができます。
ただし、初期投資額が大きく、パネルの設置や系統連系の工事費用、維持管理費用なども考慮する必要があります。また、地域の電力会社との協議や近隣住民への配慮も重要です。
戸建て賃貸
空き家を建て直し、戸建て住宅として賃貸活用する方法です。現在の建物を活用するよりも賃料を高く設定できるほか、耐用年数が長くなるため、長期的な資産形成という観点からも有効な選択肢となります。
戸建て住宅の建築費用は2,000万円から3,000万円程度が一般的ですが、土地の立地や建物の仕様によって大きく変動します。また、定期的なメンテナンスや設備の更新なども必要となるため、長期的な資金計画が必要です。
アパート経営
ある程度土地が広く、資金にも余裕があれば、アパートに建て替えて貸し出すこともおすすめです。土地の規模や形状によって建設可能な戸数が変わりますが、一般的な木造アパートでは4戸から8戸程度の規模が多くみられます。
建築費用は1億円程度であり、多くの場合にはアパートローンを利用することとなるため、周辺の賃貸需要や家賃相場、競合物件の状況など、綿密な調査と収支シミュレーションを行う必要があります。
また、長期的な収益を確保するためには、管理会社との連携や定期的な修繕計画の策定など、計画的な運営が求められます。
シェアハウス
建物をリノベーション・建て替えたうえで、シェアハウスとして貸し出すという方法もあります。
シェアハウスではひとつの建物を複数の賃借人に貸し出せるため、エリアによっては、一軒家を貸し出すよりも高い収益率と稼働率を期待できます。特に、大学や企業が集中する地域では、学生や若手社会人からの需要が見込めます。
運営を専門業者に委託することで、入居者の募集や建物の管理、トラブル対応などを任せることも可能です。
賃貸併用住宅
ある程度土地が広い場合や、初期費用に余裕がある場合には、賃貸併用住宅とするのもおすすめです。賃貸併用住宅とは、自宅と賃貸物件を併用した建物のことで、例えば1階を自宅2階と3階を賃貸物件とするような物件を指します。
自宅として利用しながら賃貸収入を得ることができ、その収入をローンの返済に充てられるため、実質的な住宅取得コストを抑えることができます。また、自宅部分が50%を超える場合には住宅ローンを利用できるため、金利負担を軽減できるのも魅力のひとつです。
ただし、賃貸併用住宅では入居者のトラブル対応や、プライバシーの確保などの問題が発生しやすいなどのデメリットもあるため、慎重な検討が必要となります。賃貸併用住宅のメリットやデメリットについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
【関連記事】賃貸併用住宅のメリットとは?「やめとけ・危険」と言われる理由も解説
宿泊施設・民泊施設
都市部や観光地近郊に土地がある場合には、宿泊施設・民泊施設として活用する方法もあります。この場合、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく登録や、旅館業法の許可取得が必要となりますが、一般的な賃貸よりも高い収益性を期待できます。
運営は専門の管理会社に委託することもでき、予約管理やクリーニング、メンテナンスなどのサービスを包括的に依頼することができます。ただし、近隣住民への配慮や、地域の観光需要の変動なども考慮する必要があります。
店舗貸し
建物を店舗やオフィス物件として活用することで、立地によっては賃貸住宅よりも安定した賃料収入が期待できます。特に駅前や幹線道路沿いなど、商業地域に近い立地であれば、飲食店や物販店、サービス業などの事業者からの需要が見込めます。
この場合は、建築基準法や都市計画法による用途制限に注意が必要です。また、防火基準や駐車場の確保など、住宅とは異なる建築要件が求められる場合もあります。用途地域の種類や、それぞれの特徴については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【関連記事】都市計画法の用途地域とは?13種類の一覧・特徴と制限をわかりやすく解説
介護施設
建物をグループホームやデイケア施設にリノベーションし、事業者に貸し出すことで、長期的な賃料収入を見込むことができます。
既存の建物をリノベーションする場合は、バリアフリー化や消防設備の設置など、介護施設としての基準を満たす改修が必要です。施設の規模や間取りによって必要な改修費用は異なりますが、数千万円程度の投資が必要となる場合もあるため、慎重な資金計画が必要です。
コインランドリー投資・無人自動販売投資
コインランドリーや無人自動販売機の設置は、人手をかけずに収益を上げられる活用方法です。立地条件や競合店の有無、周辺の住民層などを綿密に調査することで、安定した収益を期待することができます。
コインランドリーの場合、洗濯機や乾燥機の設置費用、給排水設備の工事費用などの初期投資が必要ですが、その後は比較的少ない手間で運営が可能です。
トランクルーム投資
トランクルーム投資は、特に都市部での需要が高く、比較的安定した収益を期待できる投資方法です。建物を区分けして収納スペースとして貸し出す方法のほか、土地の上にコンテナを設置して貸し出す方法もあります。
防犯カメラや施錠システムなどのセキュリティ設備の設置が必要となりますが、入居者の入れ替わりが少なく、家賃の滞納リスクも低いため、管理面での負担も比較的小さくなります。ただし、競合施設の状況や需要の見込みは慎重に検討する必要があります。
コインランドリー投資やトランクルーム投資など、土地を活用する方法の種類やメリット・デメリットについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
【関連記事】土地投資の種類は?初心者にもできる?メリットやおすすめの人とは
貸し地
空き家を解体して貸し地として活用する方法です。建物の解体費用以外の初期投資が少なく済むメリットがある一方で、近年は土地を借りて建物を建てるケースが減少しており、需要は限定的です。
また、借地権が発生することで、将来の売却や活用の際に制限が生じる可能性もあるほか、固定資産税などの諸経費を考慮すると収益性は必ずしも高いとはいえず、積極的におすすめできる方法ではありません。
空き家を活用する際の注意点

最後に、空き家を活用する際の注意点を3つ紹介します。これらのポイントをしっかり押さえ、慎重に検討を進めるようにしましょう。
収支シミュレーションを徹底する
空き家を活用する際にどの方法をとっても綿密な収支計画を策定しましょう。特に賃貸物件として活用する場合は、地域の賃貸需要や家賃相場を徹底的に調査する必要があります。
また、空室期間や維持管理費用、将来的な修繕費用なども考慮に入れなければなりません。さらに、固定資産税や火災保険料、管理会社への委託費用なども計上し、より現実的な収支計画を立てることが重要です。
最終的な着地点を決めておく
空き家活用を始める前に、将来的な出口戦略を明確にしておくことが重要です。例えば、一時的に賃貸物件として活用した後に売却するのか、あるいは建て替えて長期的な運用を行うのかによって、初期の改修範囲や投資額が大きく変わってきます。
また、相続を見据えた活用計画の場合は、将来の相続人との協議も必要となります。活用方法を決める際は、5年後、10年後の建物の状態や市場環境の変化なども考慮に入れ、計画的に進めることをおすすめします。
行政やNPOにも相談する
空き家活用に関しては、行政やNPO法人による様々な支援制度があります。例えば東京都では、空き家の適正管理、利活用、除却など、状況に応じた支援施策を展開しています。また、自治体によっては、改修費用の補助や、空き家バンクによる活用希望者とのマッチング支援なども行っています。
さらに、空き家活用支援を専門とするNPO法人も全国各地で活動しており、専門的なアドバイスや地域のニーズに合わせた活用提案を受けることができます。これらの支援制度を上手く活用することで、より効果的な空き家活用を実現しましょう。
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