不動産投資を資産管理法人で行うメリット・デメリット・注意点
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不動産投資を行ううえで多くの人を悩ませるのが「個人名義で物件を購入するのか、資産管理法人を設立して法人名義で購入するのか」ということだ。

今回はどのような形で物件を購入すべきか悩んでいる人に向けて、「不動産投資を法人名義で行う」とは何か、不動産投資を法人で行うメリット・デメリット、注意点などを解説する。

「不動産投資を法人名義で行う」とは?

まず、「不動産投資を法人名義で行う」とはどのようなことなのだろうか。これは、不動産を保有するための法人(資産管理法人)を設立して、その資産管理法人で不動産を購入したり、保有したりすることだ。

一般的に、資産管理法人は投資家個人が100%出資、少なくとも50%超を出資する。そうすれば、投資家個人はその資産管理法人の実質的な支配者となるため、資産管理法人が購入・所有する不動産を間接的に購入・所有することになるというわけだ。

なお、不動産を購入する際にローンを活用する場合も、資産管理法人の名義で融資を受けることになる。

不動産投資を法人で行うメリット

なぜ投資家個人が直接不動産を購入・保有せずに、わざわざ資産管理法人を間に挟む形式を取るのだろうか。理由は、主に税金面でメリットが大きいためだ。詳細を解説していこう。

①税金が抑えられる

1つめの理由は、税金が抑えられることだ。不動産投資を含めて、個人で収入(利益)を得た場合は所得税がかかる。この所得税は累進課税なので、稼げば稼ぐほど税負担が重くなる。所得税の最高税率は45%で、加えて住民税10%がかかってしまう。

一方で法人税は累進課税ではなく、どんなに稼いでも普通の法人は23.20%課税だ。さらに、資本金1億円以下など一定の条件を満たす法人の場合、800万円までの所得は原則15%課税で済む。この他、地方法人税や法人住民税、法人事業税も加味した実効税率で考えると、2021年時点における資本金1億円以下の法人への課税の税率は33.58%~34.59%に収まる。

例えば5,000万円の所得を個人で受け取る場合は所得税と住民税を合わせて55%が課せられるが、それを資本金1億円以下の法人で受け取れば、33.58〜34.59%で済む。このような個人と法人の税率の違いから、所得が大きい場合は原則として、収益を個人で受け取るのではなく、なるべく法人で受け取ったほうが、税金が抑えられて、手残りが大きくなる。

②経費の範囲が広がる

2つめの理由は、個人に比べて経費の範囲が広がることだ。経費として扱えるということは、損金計上できるということだ。損金計上されれば、そのぶん所得が減るので、税負担を減らすことができる。

法人における経費にはいろいろなものがあるが、例えば、法人で車を購入したり、役員のための社宅を借りたりすることもできる。期末資本金が1億円以下の中小企業であれば、交際費も800万円まで損金計上できる。

しかし、どんなものでも経費として計上できるわけではない。業務に直接必要だと認められるものでなければ経費には計上できない。役員の個人的な支出を経費に計上するのはもってのほかだ。

さまざまな出費をできる限り法人の経費として計上することで、個人法人を合算した実質的な手残りを大きくすることが可能になるが、税務申告は正しくする必要がある。

③家族へ給与を支払うことができる

3つめの理由は、家族を法人の役員や従業員として雇うことで、家族へ給与を支払えることだ。前述のように所得税は累進課税なので、法人から1人で2,000万円の給与を受け取るよりも、「自分は1,000万円、配偶者は500万円、長男は250万円、次男は250万円」と分散させたほうが、家族トータルの手残りは大きくなる。

また、家族に給与を支払うことは相続対策にもつながる。ただし、金額に見合う業務に従事している必要があることには注意が必要だ。この他、家族に支払う給与にも所得税や住民税、社会保険料がかかることも留意しておきたい。

不動産投資を法人で行うデメリット

それでは、不動産投資を法人で行うデメリットにはどのようなことが挙げられるのだろうか。

コストがかかる

不動産投資を法人で行うデメリットとしては、個人で行う以上にコストがかかることが挙げられる。ここで言うコストとは、金銭コスト、時間コストの両方を指す。

金銭コストから考えてみよう。法人を設立する際は、法人形態は株式会社か合同会社か、紙での申請か電子申請か、などによっても異なるが、登録免許税、公証人費用、収入印紙代、印鑑作成費などが発生する。また、法人設立手続きを司法書士などに依頼する場合は、その依頼料が別途かかる。

また設立以降も、多くの場合はランニングコストがかかる。具体的には、顧問税理士と契約している場合は顧問料や決算料、社会保険料の支払いなどが発生する。後述するが、法人税や住民税といった税金もコストだ。

時間コストの観点からも考えてみよう。上記の多くは専門家に委託することが可能だが、それでも投資家個人側に一定の工数は発生する。また、法人は個人とは別人格なので、資金は明確に分けないといけない。そのため、正確な収支の管理や帳簿への記帳が求められる。役員に給与を支払うなら、源泉徴収や納税、年末調整といった手間もかかる。

株主総会や取締役会の開催および議事録の作成なども必要だ。資産管理法人とはいえ、法人を設立して運営していくとなると、個人で不動産投資をする際に比べて、多大な工数と労力がかかることに注意が必要だ。

赤字でも納税が必要

次に、赤字でも納税が必要であることが挙げられる。法人の住民税は「法人税割」と「均等割」があり、均等割は赤字でも納税が必要だ。例えば東京都の場合は、資本金が1,000万円以下かつ従業員数が50人以下の場合(資産管理法人は一般的に、従業員は多くても数名で、資本金も1,000万円以下であることが多い)、年間7万円の均等割がかかる。

不動産投資を法人で行う際の注意点

ここからは、不動産投資を法人で行う際の注意点について解説していく。

個人の所得水準によっては、個人のほうが有利な場合もある

資産管理法人は適切に活用すれば、税負担の圧縮効果が期待できるが、個人の所得水準によっては、資産管理法人を設立せずに、個人で不動産を購入したほうが有利な場合もある。

法人のほうが有利になる目安は「所得900万円以上」と言われている。国税庁のウェブアイトに掲載されている所得税の速算表を見ると、所得899万9,000円までは税率23%であることに対し、所得900万円から1,799万9,000円までは33%となる。一方で法人税は、前述のように15%〜23.2%なので、所得900万円を超えると、個人の所得税率より法人税率のほうが明確に低くなる。

したがって、目安は「所得900万円以上」というわけだ。ただし、実際にどちらが有利なのかは一概には言えない。住民税や事業税といった他の税金や社会保険料といった公的負担を含めて計算しないと「本当に法人化した方が得なのか」がわからないのだ。詳細は税理士などの専門家に相談してほしい。

法人のお金は自分のお金ではない

法人のお金は自分のお金ではないということにも注意が必要だ。投資家個人が100%出資する資産管理法人であったとしても、投資家個人と資産管理法人は別人格なので、資産管理法人にプールされている資金を投資家個人が勝手に使うことはできない。

資産管理法人で上手に税負担を圧縮して、たくさんの利益を得たとしても、それを投資家個人が自由に使いたい場合は、役員給与(賞与)、配当、退職金などで投資家個人に還流させる必要がある。ただし、その際は投資家個人に所得税や住民税、社会保険料がかかる。

法人は畳むのも引き継ぐのも大変

一度法人を設立したら、畳むことも引き継ぐこともそれなりに大変だ。少子高齢化が進む昨今、後継者がいない中小企業は少しずつM&Aや解散、清算を迎えている。また、引き継ぐとなった場合、株価評価が高額であると、多額の現金が必要になる可能性もある。

不動産投資を目的として資産管理法人は、他に本業あっても比較的運営はしやすいとは言え、「畳むとき」や「引き継ぐとき」に費用や手間がかかるリスクは想定しておきたい。

詳細は税理士に確認しよう

ここまで、どのような形で物件を購入すべきか悩んでいる人に向けて、「不動産投資を法人名義で行う」とは何か、不動産投資を法人で行うメリット・デメリット、注意点などを解説してきた。

わざわざ資産管理法人を設立して、法人名義で物件を購入・保有する主な理由は税金対策だ。原則として、所得が大きければ大きいほど、資産管理法人を設立したほうがタックスメリットは大きい。

その目安は所得900万円と言われているが、諸条件によって判断は異なる。自分はどうするべきか判断がつかない人は、税理士など専門家に相談するようにしよう。

鈴木 まゆ子
税務に関する記述の監修

鈴木 まゆ子
税理士・税務ライター

中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。
「ZUU Online」「KaikeiZine」「朝日新聞『相続会議』」「マネーの達人」「納税通信」などWEBや紙面で税務・会計に関する記事を多数執筆。
著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著)」。

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