自己資金を抑えた不動産投資!フルローンのメリットとリスク3つ
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不動産投資では、物件購入時に金融機関から融資を受けることも多いだろう。その際に「フルローン」という言葉を聞いたことはないだろうか。

「フルローン」とは不動産投資において頻繁に用いられる言葉だが、その意味や投資上の効用を正しく理解している投資家はそう多くないかもしれない。

本記事では、フルローンの意味および金融機関の融資情勢について述べたうえで、不動産投資におけるフルローンのメリット・デメリットを解説する。

フルローンとは?

フルローンとは、頭金を出さずに物件価格の満額の融資を受けることを指す。

融資を受ける際には、初期費用および頭金を自己資金から拠出しなければならないことも多いが、フルローンを活用することで頭金も借入金から支払うことができる。

フルローンでの融資は可能?金融機関の状況から分析

2022年において、フルローンで融資を受けることは可能だろうか?以下のアンケートをもとに分析してみよう。

金融機関への調査

金融庁が2018年に実施した「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」※この先は外部サイトに遷移します。を参照する。なお、調査した金融機関の内訳は、銀行121、信用金庫261、信用組合148である。

同調査において、「物件の購入金額の一部を顧客の自己資金で賄わせているか」という問いに対して、「一切行っていない(全ての案件でフルローンを行っている)」と回答した割合は以下の通りだった。

  • 銀行:5%
  • 信用金庫および信用組合:13%

裏を返せば、銀行では95%、信用金庫および信用組合では87%において、必ずしもフルローンで融資を受けられるわけではないということがいえる。

概ね3分の1以上の案件で顧客に自己資金を求めていると回答した金融機関が、銀行で88%、信用金庫および信用組合で67%であったため、フルローンで融資を受けるハードルは高そうだ。

フルローンのメリット3つ

フルローンで融資を受ける主なメリットは以下の3つ。

  • 自己資金を抑えることができる
  • 手元の運営資金を残しておける
  • 投資効率を高めることができる

手元資金の拠出を抑えて合理的に投資を行うことができるという点がフルローンのメリットといえる。

自己資金を抑えることができる

融資を受けるにあたって考えなければならないのが自己資金だ。購入者の属性(年収、金融資産等)や購入物件によって大きく異なるが、物件価格の20%以上の自己資金が求められることもある。

物件価格の20%となると5,000万円の物件の場合は1,000万円以上、1億円の物件の場合は2,000万円以上の自己資金が求められる可能性があるということだ。

不動産投資に回せる1,000万円単位の余裕資金を一度に拠出できる人はそう多くはいないだろう。

フルローンで融資を受けることで、頭金を借入金でカバーすることができ、初期費用分のみの自己資金で物件を購入できるチャンスが生まれる。

手元の運営資金を残しておける

賃貸経営には、以下の表のような固定コスト(発生時期および金額が比較的予測しやすいコスト)と変動コスト(金額に変動があり予測が困難なコスト)がかかる。

項目固定コスト変動コスト
・ローン返済
・管理委託費
・固定資産税、都市計画税
・損害保険料
・管理費、修繕積立金(区分マンションの場合)
・共用部分の水道光熱費(一棟物件の場合)
・原状回復工事費用
・入居者募集費用
・修繕費

両コストともに家賃収入の有無に関わらず発生するコストであるため、手元資金の管理には要注意だ。

コストの金額が大きい場合や家賃収入が減少した場合など、家賃収入の中からコストを支払うことができない場合に備えて、常時一定の手元資金を温存しておく必要がある。

物件購入時に多額の自己資金を拠出すると物件購入後の手元資金が手薄になるリスクがあるが、フルローンで融資を受けることで手元資金を温存できるため、余裕をもって賃貸経営を始めることができるだろう。

投資効率を高めることができる

フルローンで物件を購入することで、少ない自己資金で大きな金額の投資ができる(レバレッジが効く)ため、投資効率を高めることができる。

自己資金と投資効率について、以下のような投資事例をもとに解説する。

<投資条件>

物件条件融資条件
物件価格※15,000万円借入期間30年
実質家賃収入(年間)※2400万円金利2%
※1.購入時の初期費用込み
※2.額面の家賃収入から諸経費(ローン返済以外)を差し引いた金額

<自己資金と投資効率の関係性>

 投資①投資②投資③
自己資金(万円)a5,000万円1,500万円500万円
融資金額(万円)0円3,500万円4,500万円
年間返済総額※3.40円155万円200万円
年間キャッシュフロー(CF)b ※5.6400万円245万円200万円
自己資金に対するCFの割合(b/a)8.0%16.3%40.0%
※3.元利均等返済、固定金利とする
※4.千円以下の端数は四捨五入
※5.実質家賃収入からローン返済を控除した金額
※6.簡略化のため空室率や変動コストは加味していない

自己資金に対するCFの割合が高いほど、少ない自己資金で効率良く利益を上げられていると評価できる。

上掲表では、拠出する自己資金が少なくなるにつれて、自己資金に対するCFの割合、すなわち投資効率が高くなっていることが分かる。

フルローンのリスク3つ

フルローンで融資を受ける主なリスクは以下の3つ。

  • キャッシュフローを出しにくい
  • 余裕のない資金計画になる可能性がある
  • 物件売却が困難になるリスクがある

キャッシュフローを出しにくい

不動産投資におけるキャッシュフローとは、家賃収入から各種コストを差し引いた手残りの金額をいう。

フルローンにおいては家賃収入に占めるローン返済の割合が高くなるため、キャッシュフローは減少する。キャッシュフローが減少するということは、毎月の手残り金額が少なくなるということであるため、キャッシュフローを得ることを主眼においた不動産投資には適さないかもしれない。

余裕のない資金計画になる可能性がある

フルローンにおいてはキャッシュフローが減少し、資金的に余裕がない状態になる可能性がある。融資の金利や投資物件の利回りによっては、各種コストの金額が家賃収入を上回り、収支が赤字になる事態も想定されるだろう。

フルローンで融資を受ける際は、変動コストも加味した資金計画を立て、キャッシュフローの見込める物件を選定するなどの対策をしておこう。

物件売却が困難になるリスクがある

フルローンでは物件価格の満額で融資を受けることになるため、売却時の価格に対するローン残高の割合が高くなりやすい。

フルローンで融資を受けることで、以下のような場合に物件売却が困難になる可能性があることを認識しておこう。

  • 購入後に物件価格が下落し、売却価格がローン残高を下回った場合
  • 短期間での売却の場合

売却時の価格がローン残高を下回っている場合には、ローン完済のために自己資金を拠出しなければならないことから難航しやすいと言える。

投資目的によってフルローンの良し悪しは分かれる

フルローンは上手に使えば資産規模の拡大を加速度的に行うための合理的な手段になり得る。半面、使いこなせないと資金面の健全性が損なわれて危険な投資になってしまうリスクもある。

フルローンの特性を正しく理解し、投資の健全性と合理性を両立させられる範囲で活用するのがいいだろう。

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