不動産投資家サラリーマン

目次

  1. 不動産投資経験者の属性分析
    1. 職業は「会社員」が最多の41.5%
    2. 業種は「サービス業」が最多の23.7%
    3. 世帯年収は「500万~800万円未満」が最多の22.9%
    4. 金融資産保有額は「1,000万~3,000万円未満」が最多の20.9%
  2. 不動産投資経験者の割合は12.6%
  3. 不動産投資未経験者が不動産投資をしない理由は?
  4. 別の調査ではサラリーマンの割合が61.06%という結果も
  5. サラリーマンが情報収集をする際に注意すべきポイント
    1. サラリーマンが失敗につながりやすい要素
  6. サラリーマンが有利な2つの理由
    1. 金融機関からの融資を受けやすい
    2. 投資可能な可処分所得を作りやすい
  7. サラリーマンの強みを生かして不動産投資で資産を形成するのも選択肢の1つ
  8. サラリーマンの不動産投資にはどのような選択肢がある?
    1. 投資対象は4種類に大別される
    2. 区分マンションの10年間収支シミュレーション
    3. 初心者は小さい物件からスタートするのも選択肢の1つ
  9. 不動産投資をスタートするまでの流れを9つのステップで解説
  10. 不動産投資の経験者に関するQ&A
    1. Q.不動産投資をやっている人の割合は?
    2. Q.不動産投資家の平均年収は?


本コラムでは、国土交通省が約2万人を対象に実施した「個人投資家への不動産投資に関するアンケート」の結果を基に、不動産投資経験者の属性や割合、サラリーマンが不動産投資に向いている理由について解説する。

不動産投資経験者の属性分析

「個人投資家への不動産投資に関するアンケート」は、国土交通省によって2019年7月25日(木)~7月29日(月)に実施された。

【概要】
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国の個人投資家約2万人
目的:
「個人投資家の不動産に関する知識・不動産投資の経験、トラブルの事例について調査・分析を行い、分析結果を個人投資家の知識向上および不動産トラブルの抑制を通じた健全な不動産投資市場形成に寄与させるための方策検討に向けた基礎資料とする」(出典:国土交通省)

質問:

スクリーニング調査(回答者の属性、不動産に関する知識、不動産投資経験の有無など) 14問
本調査(不動産投資経験がある回答者を対象に、不動産投資の内容、不動産投資による被害内容) 28問
その他(インタビュー調査への参加意向、自由意見) 6問

まず、アンケートに回答した約2万人のうち、不動産投資経験者(2,530人)の属性について、以下の4項目で分析していく。

・職業
・業種
・世帯年収
・金融資産保有額

職業は「会社員」が最多の41.5%

会社員 41.5%
無職 13.0%
自営業 10.9%
専業主婦・主夫 7.5%
パート・アルバイト 6.2%
会社役員 5.7%
公務員・教職員 4.4%
オーナー経営者 4.3%
不動産経営 3.8%
その他 1.4%
医師 0.7%
弁護士・会計士・税理士など 0.7%

会社員が4割超と最多で、無職、自営業と続いている。「不動産投資経験あり」と回答した人の中で、オーナー経営者は4.3%、医師は0.7%、士業(弁護士、会計士、税理士等)は0.7%だった。

高収入の職業よりも、会社員のほうが不動産投資を行っている比率が高いのは意外に思えるが、絶対人数の違いと思われる。

業種は「サービス業」が最多の23.7%

サービス業 23.7%
その他 23.5%
不動産業 12.5%
製造業 12.1%
建設業 5.1%
情報通信業 4.4%
小売業 4.1%
卸売業 3.4%
金融業 3.2%
運輸業 3.0%
保険業 1.7%
水産・農林業 1.5%
電気・ガス業 1.5%
鉱業 0.2%

サービス業が不動産業よりも多いという結果だった。不動産業は、同様に地主とのつながりや不動産投資に関する情報を得やすい建設業(5.1%)と合わせても17.6%にとどまる。資産形成という面で不動産業と競合関係にある金融業や保険業の割合が低いのは理解できるが、その他の業種が23.5%を占めているように、業種は多岐にわたる印象だ。

世帯年収は「500万~800万円未満」が最多の22.9%

500万~800万円未満 22.9%
1,000万~1,500万円未満 16.8%
300万~500万円未満 15.6%
800万~1,000万円未満 14.0%
1,500万円以上 12.7%
わからない・答えたくない 9.1%
100万~300万円未満 6.8%
100万円未満 2.1%

1,000万円以上1,500万円未満の高所得世帯よりも500万円以上800万円未満の世帯のほうが多く、300万円以上500万円未満の世帯が3番目に多いという結果だった。1,500万円以上の世帯は12.7%と、あまり多くない。

金融資産保有額は「1,000万~3,000万円未満」が最多の20.9%

1,000万~3,000万円未満 20.9%
わからない・答えたくない 15.3%
3,000万~5,000万円未満 14.3%
500万~1,000万円未満 12.8%
5,000万円~1億円未満 11.1%
100万~500万円未満 9.8%
1億円以上 8.6%
50万円未満 3.6%
50万~100万円未満 3.6%
※金融資産保有額:現預金、外貨、株式、債券、投資信託(ETF含む)、不動産小口化商品、暗号資産などを含めた保有額(土地や不動産、保険は除く)
出典:国土交通省のアンケート「個人投資家への不動産投資に関するアンケート調査結果について」※外部サイトに遷移します。より株式会社ZUU作成

最も割合が高かったのは1,000万~3,000万円未満で20.9%であった。不動産投資経験者は、金融資産も多く保有していることがわかる。

賃貸経営に係る突発的な出費に備えて現預金を確保していたり、不動産以外の資産にも分散投資をしたりしているのだろう。

不動産投資経験者の割合は12.6%

「個人投資家への不動産投資に関するアンケート」の結果によれば、2万人の個人投資家の中で不動産投資の経験がある人の割合は12.6%だ。

<不動産投資の経験がある人の割合>

ただし近年は、J-REIT(上場不動産投資信託)や不動産投資型クラウドファンディングなどの不動産小口化商品に投資する人が増えているため、間接的な不動産投資経験者はもっと多いと考えることもできる。

不動産投資未経験者が不動産投資をしない理由は?

同じアンケートで不動産投資未経験者を対象とした「不動産投資経験がない理由」という問いへの回答は、以下の通りだ。なお以下の表は、四捨五入の関係で合計は100%にならない。

まとまった資金がないから 7,892人 約25.3%
不動産投資の知識がないから 6,970人 約22.3%
不動産投資は損をしそうで怖いから 5,377人 約17.2%
わからない・何となく 3,020人 約9.7%
不動産投資を行う時間的なゆとりがないから 2,735人 約8.8%
投資は金持ちが行うものだと思っている 2,502人 約8.0%
投資に対するイメージを良く思っていない 2,323人 約7.4%
その他 374人 約1.2%

一般の個人投資家にとっては、株式や投資信託は投資対象に関するあらゆる情報がオープンになっているのに対して、不動産投資は知識の習得や情報(エリアごとの相場や過去の価格推移など)収集が難しいのだろう。

別の調査ではサラリーマンの割合が61.06%という結果も

もう1つ民間企業によって行われた調査についても見ておこう。R&C株式会社が、2022年12月23日に全国の18歳以上65歳以下の男女2万人を対象に現物不動産投資について調査を行った。調査方法は、アイブリッジ株式会社の「Freeasy」を使ったインターネット調査だ。男女2万人のうち現物不動産投資をしたことがあるのは434人で全体の2.17%だった。

434人の職業の内訳は、以下の通りである。

  職業 合計人数 男性 女性 比率
1 会社員(一般) 265人 217人 48人 61.06%
2 会社員(役員) 62人 58人 4人 14.29%
3 自営業 31人 27人 4人 7.14%
4 不動産業(オーナー) 25人 22人 3人 5.76%
5 その他 20人 16人 4人 4.60%
6 公務員 16人 13人 3人 3.69%
7 医師・弁護士・仕業など 14人 13人 1人 3.23%
8 不動産業(従業員) 1人 1人 0人 0.23%
出典:R&Cプレスリリース「実物不動産投資家の6割はサラリーマン!世帯収入500〜800万円未満・新築マンションでの運用が人気。ただし大成功をおさめているのは全体の13%」より株式会社ZUU作成

不動産投資家の約6割がサラリーマンという結果になっている。国土交通省のアンケート調査では約4割であったことから、おおむね不動産投資家10人のうち4~6人はサラリーマンと考えてよいだろう

では、サラリーマンなど一般の個人投資家がしっかりと情報収集をしたうえで不動産投資を始める場合、どのようなことに注意すればよいのだろうか?また、どのようなケースが不動産投資で損をしやすいのか次項で触れていきたい。

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サラリーマンが情報収集をする際に注意すべきポイント

サラリーマンが不動産投資の情報収集をする際は、以下5つに注意するとよいだろう。収集する情報は多岐にわたるため、ネットのみならず不動産会社をはじめ専門家へのヒアリングなども併せて行うことが必要といえそうだ。

サラリーマンが情報収集をする際に注意すべきポイント

1.収支の項目を理解する

不動産投資における収入源やコストにはどのようなものがあるかを知ることで、年間でいくらのキャッシュを手元に残せるのかを見積もることができる。

コストには、月や年単位で発生し金額の変動が小さい固定コスト、突発的に発生し金額の予測が困難な変動コストがあるため、それらを全て1つの資金計画に落とし込もう。

不動産投資をするとサラリーマンであっても確定申告をすることになるため、収支の項目を事前に正しく理解しておく必要がある。

2.周辺の家賃相場を調査する

投資を検討する物件が見つかったら、その物件の周辺における家賃相場を調査しよう。家賃相場を調査しておく理由は以下2つだ。

・その物件の現行家賃が適正かどうかを判断するため
・長期的な家賃収入シミュレーションの精度を高めるため

現行家賃が相場よりも高い場合、相場よりも高値で物件を買うことになったり、家賃収入のシミュレーションが誤ったものになったりする可能性があるため、注意しよう。

3.物件の賃貸・購買ニーズが長期的にありそうかを確認する

「物件の賃貸・購買ニーズ」とは、その物件を借りたいというニーズ(賃貸ニーズ)と購入したいというニーズ(購買ニーズ)のことだ。

賃貸ニーズが旺盛であれば、長期の空室リスクや大幅な家賃下落リスクを低減させられる。購買ニーズが旺盛であれば、売りたい時に物件が売れず価格を下げざるを得ないリスクを抑えることにつながる。

借り手・買い手がともに多い物件が不動産投資においては理想的であるため、賃貸・購買ニーズの旺盛さは重要だ。実際に現地を視察して生活環境を確かめたり、人口動態や再開発計画の有無を調べたりしてみよう。

4.どのようなリスクがあるかを知る

不動産投資も投資である以上はリスクがあり、損失を出してしまうこともあり得る。どのようなリスク要因があり、それらが顕在化した場合に何が起こるのかを事前に知っておくことが重要だ。

不動産投資におけるリスクには以下のようなものが挙げられる。

空室リスク
家賃滞納リスク
家賃下落リスク
物件価格下落リスク
災害リスク
事件事故リスク
金利上昇リスク など

全てのリスクをゼロにすることは現実的でないが、事前にリスクを知り、回避策や善後策を準備しておくことで、経済的・心理的なダメージを抑えることは可能だ。立地を厳選する、家賃保証会社を利用する、保険に加入するといった対策もよく理解しておこう。

5.会社の副業に関する規定を確認する

会社によっては副業が認められていない場合もあるため、就業規則などを確認し、副業が禁止されているか、不動産投資が副業に該当するかを確認しておこう。

裁判例および厚生労働省の見解では、社員の副業を会社が制限できるのは、以下4つのいずれかに該当する場合とされている。

労務提供上の支障となる場合
企業秘密が漏えいする場合
企業の名誉・信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
競業により企業の利益を害する場合

上記見解も併せて会社に確認しておくのが無難だろう。

サラリーマンが不動産投資の情報収集をする際に注意すべきポイントを5つ解説したが、これらを押さえたうえでも不動産投資で成功するのは簡単なことではない。サラリーマンが不動産投資をするうえで起こり得る失敗について事例から学ぼう。

サラリーマンが失敗につながりやすい要素

不動産投資は「投資」である以上、必ず損を避けることはできない。しかし、失敗する要素がどこにあるのかあらかじめ理解しておくことは有用だ。サラリーマンが不動産投資をするうえで失敗につながりやすい要素は以下の3つだ。

1.キャッシュフローがマイナスな物件の購入
2.周辺の相場よりも割高な価格での物件購入
3.節税効果をよく理解しないまま節税目的で物件を購入してしまう

各事例において失敗の要因も併せて確認しておこう。

1.キャッシュフローがマイナスの物件の購入

不動産投資におけるキャッシュフローとは、月間ないし年間の家賃収入から各種コストを差し引いて最終的に手元に残るお金のことである。不動産投資には売却によって利益を得られたり、節税、保険効果など副次的効果によって利益を得られたりする場合があるので、キャッシュフローがマイナスの物件の購入が全て失敗につながるとは限らない。

しかし、そういった利益は不動産市況や投資家それぞれの個別要因が関与するので予測が困難だ。仮に売却による利益や節税、保険効果を狙ってキャッシュフローがマイナスの物件に投資し、当てが外れた場合は単に赤字物件を保有することとなってしまい、失敗につながりやすい。

表面利回りが高い物件でも、ローンの金利が高い、返済期間が短い、空室率が高めなエリアであるといった点を加味してシミュレーションをしてみると、キャッシュフローがマイナスということもあり得る。コストを漏れなく織り込み、家賃下落率や空室率も反映させて、キャッシュフローがプラスになるかを確認しよう。

2.周辺の相場よりも割高な価格での物件購入

不動産投資でお金を増やす方法にはキャッシュフローをプラスにしてインカムゲインによって資金を増やす方法と「相場より安く買い、相場より高く売る」というキャピタルゲインによって資金を増やす2つの方法が挙げられる。売るときの価格がいくらになっているかの予想は非常に困難だが、少なくとも相場よりも高値で物件を購入してしまうと売却益を得られる可能性が低くなる。

本失敗の原因の多くは、不動産会社の営業トークを鵜呑みにして自らの相場調査を怠ったことにある。不動産会社から提示された価格の妥当性を自分自身でも十分に調査し、相場よりも高いのであれば価格交渉をするといった賃貸経営者としての努力が求められる。

物件価格の妥当性を調査するにあたっては、周辺の類似物件について以下の点に注目するとよいだろう。

平米単価(1平方メートルあたりの価格)
利回り

周辺の類似物件よりも平米単価が高い、または利回りが低い物件は割高に価格設定されている可能性がある。

しかし、相場価格を知り、相場並みの価格で物件を購入することができても、売却するときに利益が得られるとは限らない。不動産市況は刻一刻と変わり、購入した物件も基本的には経年劣化で価値が下落していくからだ。このことから、キャピタルゲインに絞った不動産投資はあまり推奨しない。

3.節税効果をよく理解しないまま節税目的で物件を購入してしまう

不動産投資における節税効果は投資家の所得および購入する物件によって大きく変わるため、全ての投資家が全ての物件において節税効果を受けられるわけではない点に注意しよう。

減価償却や購入時の諸費用で所得を圧縮できたとしても、節税効果は最初の年のみであり、翌年以降は節税効果が大幅に薄まることもあり得る。

具体的には、物件を購入した年は仲介手数料や司法書士への報酬、不動産取得税といった単発の費用に大きく経費がかかるため、所得の圧縮による節税効果が得られるが、翌年以降は計上できる経費が大きく減るため、所得の圧縮ができなくなるということだ。

不動産投資で節税できる理由や仕組みをよく理解し、自分がその物件に投資をすることで節税効果を受けられるのかを確認しよう。

サラリーマンが有利な2つの理由

不動産投資経験のある投資家の中で最も多かったのは、サラリーマンだった(41.5%)。サラリーマンは、不動産投資において有利になる場合があるからだろう。

不動産投資において、サラリーマンには以下の2つの強みがある。

金融機関から融資を受けやすい
投資可能な可処分所得を作りやすい

金融機関からの融資を受けやすい

不動産投資では投資金額が数千万円以上になることもあるため、金融機関から融資を受けるケースが多い。

金融機関は融資の審査にあたって収入の安定性を見るため、安定的な収入が見込めるサラリーマンは、自営業者や個人事業主に比べて金融機関から比較的評価されることが多い

しかし、融資の審査においては収入だけでなく、勤務先の規模や勤続年数、すでに組んでいるローンの有無、金融資産の保有状況などを総合的に判断されるため、収入が安定しているサラリーマンでも必ず融資を受けられるとは限らない。

金融機関ごとの年収や勤続年数の融資基準は、以下の通りだ。年収基準はそれぞれの金融機関において異なっているが、年収が低いからといって不動産投資の融資を受けられないわけではない。ただ勤続年数は同一勤務先におよそ2年以上は勤務していることが条件となっている。不動産投資を予定しているなら頻繁な転職は避けたほうがよい。しかし、あくまで一例となるため、同一勤務先に2年以上勤務していないからといって融資を受けられないというわけではないので、詳細は金融機関に相談してみたほうが良いだろう。

金融機関 年収 勤続年数
A銀行 500万円以上 同一勤務先に3年以上
B銀行 700万円以上
C銀行 100万円以上 同一勤務先に3年以上
D銀行 500万円以上 同一勤務先に2年以上
E銀行 150万円以上
F銀行 150万円以上

投資可能な可処分所得を作りやすい

安定的な収入の見込めるサラリーマンは収入の変動が少なく、収支をコントロールしやすいため、投資のための資金を計画的にプールしやすい

投資したい物件の価格や、融資において求められる自己資金の額から逆算して、毎月投資資金としていくら貯めて、どのタイミングで投資にいくら回すかという資金計画が立てやすい点は、サラリーマンの強みといえるだろう。

物件購入のための自己資金は、物件価格の10~30%程度が一般的だ。不動産投資を始めるのにどの程度の資金が必要かは、購入したい物件の価格によって大きく異なる。一例として20%の自己資金によってどの程度の物件を購入できるかを確認しておこう。

自己資金(20%の場合) 購入可能な物件価格
50万円未満 250万円未満
50万~100万円未満 250万~500万円未満
100万~500万円未満 500万~2,500万円未満
500万~1,000万円未満 2,500万~5,000万円未満
1,000万~3,000万円未満 5,000万~1億5,000万円未満
3,000万~5,000万円未満 1億5,000~2億5,000万円未満
5,000万~1億円未満 2億5,000万~5億円未満
1億円以上 5億円以上

例えば2,500万円の中古マンションを購入したい場合は、上記の表通りだと約500万円の資金があれば実現可能である。しかし5,000万円の新築マンションを購入したい場合は約1,000万円の資金を用意することが必要だ。あくまで目安となるため、購入物件の条件によっては十分な資金が必要となる場合もある。

物件価格1,000万円以下となると、かなりの築古物件か駅から離れた場所にある郊外物件となる可能性が高い。そのため入居者を確保できる物件で始めるための自己資金の最低ラインは200万円以上と考えればよいだろう。

・融資を申し込む際は完済時年齢の規定を確認する

ローンには、金融機関ごとに完済時年齢が規定されている。完済時の年齢が記載されている金融機関の一例は、下表の通りだ。おおむね80歳を少し超えた年齢が完済時年齢の上限となっている。そのため35年ローンを組む場合は、遅くとも45歳までに契約を結ぶことが必要だ。

金融機関名 完済時年齢
Z銀行 満80歳未満
Y銀行 満80歳の誕生日まで
X銀行 満82歳未満
W銀行 満82歳未満
V銀行 満81歳未満
U信用金庫 満75歳未満

サラリーマンの強みを生かして不動産投資で資産を形成するのも選択肢の1つ

不動産投資経験者の4割以上がサラリーマンであることから、不動産投資は地主や資産家、富裕層などにしかできない資産形成方法ではなく、サラリーマンでも取り得る選択肢の1つといえる。

金融機関からの融資を活用することで、自己資本を手元に残しつつ外部資本で投資ができるという点で、不動産投資は合理的な資産形成方法の1つだ。

特に30代以下のサラリーマンは、長期間の融資を受けられる可能性もあるため、より有利といえる。ローンの返済期間が長くなるほど毎月の返済額を抑えることができるため、キャッシュフローに余裕が生まれるからだ。

融資の審査ではローン完済時の年齢も考慮されることがあるため、長期の返済計画を組むには早いタイミング(若い年齢)で返済を開始するほうが有利である場合もある。

サラリーマンの強みを活かした資産形成を考えるならば、不動産投資は有力な選択肢になるだろう。

一方、不動産投資の経験がない理由として「不動産投資の知識がないから」という回答が多かったことも認識しておきたい。

不動産投資に関する情報はすべてがオープンになっているわけではないため、不動産投資に関して一般の個人投資家がプロと同じレベルの知識を持つことや、情報をプロと同じ早さで取得することは難しいだろう。

不動産投資は投資金額が数千万円以上になることもあるため、信頼できるパートナー(不動産業者、金融機関、税理士など)を見つけて、知識を身に付けることから始めるのが得策といえそうだ。

サラリーマンの不動産投資にはどのような選択肢がある?

不動産投資には複数の投資対象があり、それぞれにおいて適した投資方針や難易度が大きく異なる。

自分自身の投資目的や経験、不動産投資に割ける時間と労力といった要素を勘案して、どのような物件に投資すればよいかを吟味しよう。

投資対象は4種類に大別される

不動産で投資対象となる物件は大きく4種類に分けられる。

1棟物件:アパートやマンションの土地と建物をまるごと購入して運用
区分マンション:マンションを1室単位で購入して運用
戸建:戸建住宅の土地と建物をまるごと購入して運用
その他:駐車場、コインランドリー、トランクルーム、商業ビル、オフィス等

<それぞれの投資対象の特徴>

種類 特徴
1棟物件 ・1件当たりの投資額が高くなりやすい
・投資判断における裁量やバリエーションが広い
・運用に手間と時間がかかりやすい
区分マンション ・投資単価を抑えやすい
・分散投資がしやすい
・運用にかかる手間と時間を削減しやすい
戸建 ・ターゲットがファミリー層に絞られやすい
・投資判断における裁量やバリエーションが広い
その他 ・投資戦略や物件の運用方法が住宅物件への投資とは大きく異なる
・個々に知識や情報を習得する必要がある

区分マンションの10年間収支シミュレーション

不動産投資は、収支のシミュレーションを行うことが極めて重要だ。区分マンションでの収支を10年目までシミュレーションしてみよう。

前提条件は、以下の通りだ。入居者が10年住み、家賃や金利も同じだったと仮定している。

・住所:東京都新宿区
・構造:中古RC1Kマンション
・築年数:築12年
・価格:2,500万円
・借入:1,800万円(元利均等、返済期間35年、変動金利1.8%)
・毎月返済額:約5万7,796円
・家賃:8万円
・礼金・更新料:各家賃1ヵ月分
・毎月経費:1万6,000円(経費率20%)

  家賃収入 ローン・経費 礼金・更新料 年間収支 累計収支
1年目 96万円 88万5,552円 8万円
(礼金)
15万4,448円 15万4,448円
2年目 96万円 88万5,552円 7万4,448円 22万8,896円
3年目 96万円 88万5,552円 8万円
(更新料)
15万4,448円 38万3,344円
4年目 96万円 88万5,552円 7万4,448円 45万7,792円
5年目 96万円 88万5,552円 8万円
(更新料)
15万4,448円 61万2,240円
6年目 96万円 88万5,552円 7万4,448円 68万6,688円
7年目 96万円 88万5,552円 8万円
(更新料)
15万4,448円 84万1,136円
8年目 96万円 88万5,552円 7万4,448円 91万5,584円
9年目 96万円 88万5,552円 8万円
(更新料)
15万4,448円 107万0,032円
10年目 96万円 88万5,552円 7万4,448円 114万4,480円

机上の計算では、10年間で100万円以上キャッシュフローが得られるが、上記の表は単純計算となる。実際には空室や修繕の発生、金利の上昇といった予期せぬ状況が発生することも想定しなければならない。しかし本記事では、サラリーマンの不動産投資という設定であることから生活費は月給で賄える。

ローンを家賃収入で返済し、ローン完済後の出口戦略で売却したときに、まとまった現金資産になるのが不動産投資のメリットである。

初心者は小さい物件からスタートするのも選択肢の1つ

初心者で最初から大きな規模で投資をすることに抵抗がある場合は、小規模な物件からスタートしてみるのも選択肢の1つだ。

区分マンションへの投資であれば投資単価や物件運用にかかる手間と時間を抑えやすいため、初心者でもスタートしやすいといえる。区分マンションへの投資を通じて不動産投資の知識と経験を積み、資産規模を拡大したいと思ったときに1棟物件など他の種類の物件に投資をするということも十分に可能だ。

不動産投資をスタートするまでの流れを9つのステップで解説

実際に不動産投資をスタートするまでには、一般的に以下9つのステップがある。

ステップ ポイント
1.パートナーとなる不動産会社を探す 物件を購入するにあたっては各種手続きや交渉などが必要になるため、パートナーとなる不動産会社の選定が重要
2.物件を探す 不動産会社から提案を受ける、自分で投資用不動産のポータルサイトで見るなどして物件を探す
3.検討物件を視察する 物件の雰囲気や周辺環境を確かめるために現地を訪問する
4.資金計画を立てる 収支項目を漏れなく織り込み、詳細な資金計画を立て、投資すべきか否かを判断する
5.売買条件を売主と取り決める 価格や引き渡し時期などについて売主と交渉する
6.資金調達をする 金融機関への融資打診や自己資金の準備など、物件購入費用および諸費用を支払う資金を調達する
7.売買契約を締結する 重要事項説明書・売買契約書などの契約条件をよく読み、合意した内容と齟齬がないかを漏れなく確認する
8.決済、引き渡しを行う 売買代金を支払い、物件の引き渡しを受ける
9.管理会社および管理プランを決める その管理会社の空室率や家賃滞納率、対応品質等を勘案して管理会社および管理プランを決定する

不動産投資を始めようと思い立った段階で上記の9ステップを思い起こし、事前準備を万全にしておこう。

不動産投資の経験者に関するQ&A

Q.不動産投資をやっている人の割合は?

国土交通省が2019年に行った「個人投資家への不動産投資に関するアンケート」の結果によると、2万人の個人投資家のうち、「不動産投資の経験がある」と答えた人の割合は12.6%であった。

Q.不動産投資家の平均年収は?

国土交通省発表の「個人投資家への不動産投資に関するアンケート」によれば、不動産投資経験者(2,530人)の世帯年収の割合は以下の表の通りである。

世帯年収 割合
500万~800万円未満 22.9%
1,000万~1,500万円未満 16.8%
300万~500万円未満 15.6%
800万~1,000万円未満 14.0%
1,500万円以上 12.7%
わからない・答えたくない 9.1%
100万~300万円未満 6.8%
100万円未満 2.1%
※本記事は2023年7月24日現在の情報を基に構成しています。金融機関のデータは一例であり、今後変動する場合があります。参考までにお考えください。
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