底地(そこち)とは、借地権が設定された土地のことを指します。底地を所有し、地代を受け取る権利を指す底地権は「不完全所有権」とも呼ばれており、評価額や売却価格に影響を及ぼします。一方で、底地は、地代により長期的な収益を生み出す資産としての側面を持っています。
本コラムでは、底地・底地権の基本的な仕組みから、借地権との違い、売却方法、保有時のリスクまで、不動産投資初心者にもわかりやすく解説します。
底地・底地権とは?
底地(そこち)とは、建物の所有を目的とした賃貸借や地上権(借地権)が設定されている土地のことを指します。底地を所有し、地代を受け取る権利を「底地権」といい、底地を所有する人のことを底地権者(底地人)といいます。
本来、土地の所有権には、①利用(建物を建てて居住する等)、②収益(土地を貸して利益を得ること等)、③処分(売却等)といった権利が含まれています。しかし、底地とすることで、①土地の利用権を、底地権者が他人(借地権者)に貸し出すことになります。
底地権者は、その土地から②収益を得たり③処分(売却)したりすることが可能です。しかし、自ら利用することができません。この点から、底地権は「不完全所有権」と呼ばれることもあります。
逆に、土地の①利用権、②収益権、③処分権が一体になったとき、所有権は再び完全なものに戻ります。例えば、借地契約の終了により借地権が底地権者に戻った場合や、底地権者が底地権を借地権者に譲渡(売却)するような場合です。
底地や底地権について理解するためには、まず土地の所有権がどのような権利から構成されているかを把握することが重要です。加えて、借地権によってどう変化するのかも理解する必要があります。
底地権と借地権(地上権・賃借権)の違い
底地と借地は同じ土地を表します。また、底地権と借地権(地上権・賃借権)の違いは、同じ土地に対して「誰が・どの範囲の権利を持ち、どこまで自由に処分できるか」という法的性質にあります。
借地権が設定されている土地は、底地権者(地主)の側から見れば「底地」であり、その土地の所有権を「底地権」と呼びます。
このように、同じ土地であっても立場によって呼び方や権利の内容が異なります。そのため、投資判断や売却方法を考えるうえでは、双方の権利関係を整理して理解しておくことが重要です。
ここでは、借地権の概要を確認したうえで、底地権と借地権(地上権・賃借権)の具体的な法的性質の違いを整理します。
借地権とは?|建物を所有するために土地を借りる権利のこと
借地権とは、他人の土地に建物を建てて利用するための権利のことを指します。大きく分けて「地上権」と「賃借権」の二種類があります。いずれも、土地を持たない借地権者を保護するため、借地借家法で強く保護されています。
借地権付きの住宅として取引されている物件の多くは賃借権ですが、地上権の物件も一部では流通しているため、違いを正しく理解しておきましょう。
| 地上権 | 他人の土地を物権(直接の権利)として利用できる権利 |
|---|---|
| 賃借権 | 他人の土地を債権(賃貸借契約)に基づいて利用できる権利 |
なお、借地権が土地所有者との契約によって発生する場合には、契約が自動更新される「普通借地権」と、期間満了をもって借地権が消滅する「定期借地権」に分けられます。これらの違いや法律上の扱いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
【関連記事】借地権とは?|種類やメリット・デメリットなどをわかりやすく説明
底地権・借地権(地上権・賃借権)の違い
投資判断や売却方針を考える上では、底地権・地上権・賃借権それぞれの法的性質の違いを押さえることが重要です。代表的なポイントを整理すると、次のようになります。
| 所有権(地主の権利) | 借地権(借主の権利) | |||
|---|---|---|---|---|
| 所有権 (完全所有権) |
底地権 (不完全所有権) |
地上権 | 賃借権 | |
| 法的性質 | 物権(最も強い権利) | 物権(地主による利用は制限される) | 物権(他人の土地を直接かつ排他的に使用・収益できる権利) | 債権(賃貸借契約に基づき賃料を支払って他人の土地や建物を使用できる権利) |
| 第三者対抗要件 | 登記 | 登記 | 登記 | 登記または建物登記(賃借権の登記は実務上まれ) |
| 譲渡の可否 | 自由に可能 | 自由に可能 | 自由に譲渡・転貸可能 | 地主の承諾が必要 |
| 相続の可否 | 相続・遺贈とも承諾不要で可能 | 相続・遺贈とも承諾不要で可能 | 相続・遺贈とも承諾不要で可能 | 承諾不要で相続可能(ただし相続人以外の第三者に遺贈する場合は譲渡とみなされ地主の承諾が必要) |
| 担保設定の可否 | 設定可能 | 設定可能 | 地上権・建物のいずれも設定可能 | 原則として賃借権は担保にできない。建物は地主の承諾を得ることで抵当権の設定が可能 |
| 存続期間 | 無期限 | 無期限 | 契約により任意(建物所有目的の借地権として設定する場合、最低30年以上) | ・一般借地:30年→更新20年→以後10年 ・定期借地:50年以上など |
| 更新可否 | 更新不要 | 更新不要 | 契約により定める | ・普通借地権:更新あり ・定期借地権:更新なし |
| 特徴 | 価値安定・融資が通りやすい | 完全所有権より取引価格は安価 | 所有権物件と比べて取引価格が安価 | 地上権よりもさらに取引価格は安価だが、融資は付きにくい |
この表からわかるように、底地権は物権としての性質を持ちながらも借地権者が土地を利用しているため、完全所有権と比べて制約が多く、取引価格も低くなる傾向にあります。
一方、地上権は借地権の一種ではあるものの、物権として強い権利を持ち、自由に譲渡や転貸ができる点が特徴です。これに対して賃借権は債権であるため、譲渡には地主の承諾が必要となり、担保設定にも制限があります。
底地や借地権付き物件への投資を行う際には、これらの違いをしっかりと理解しておくことが重要です。
地上権・賃借権については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
【関連記事】地上権とは?借地権・賃借権・所有権との違いや成立するケースを解説
【関連記事】賃借権とは?借地権・地上権・旧法賃借権との違いを解説
底地権の取引価格や土地の担保評価額は低くなる
底地には借地権が設定されているため、その土地の利用権は借地権者の側にあり、底地権者は自由に土地を利用することができません。
そのため、購入希望者にとっては用途が限られ、需要が所有権の土地に比べて小さくなりがちです。結果として、底地の取引価格は、同じ場所・同じ面積の「完全所有権の土地」と比べると低くなるのが一般的です。金融機関が担保評価を行う際も、将来の処分可能性や収益性を慎重に見ることにより、結果として「完全所有権の土地」と比べると、評価額は低く算定することになります。
一方で、地代収入が長期的に見込めることは底地ならではの特徴です。また、借地権者への売却・借地権との一体売却によって将来的な価値向上の余地がある点も特徴です。
このように、底地は担保評価や取引価格が伸びにくいというデメリットがある一方で、安定した地代収入や将来的な価値向上の可能性もあります。そのため、底地投資を検討する際には、「単純な路線価や近隣事例」だけでなく、「権利関係の複雑さ」「処分のしやすさ」「収益の継続性」を総合的に考えて検討する必要があります。
底地権の売却方法と売却先の選び方
底地は、土地を自ら利用することができず、一般の土地に比べて購入する層が限られるため、不動産市場では売れにくい傾向にあります。ここでは、底地の主な売却先3つと、それぞれの特徴を解説します。
借地権者への売却
まず考えられるのが、現在その土地を利用している借地権者に底地を売却する方法です。借地権者にとっては、底地を購入することで完全所有権を得られるメリットがあるため、市場の相場価格と同額程度以上での取引が成立する可能性があります。
一方で、実務上は「借地権者に資金力がない」「現状の借地契約のままで十分と考えている」などの理由で、話がまとまらないケースもあります。
理屈としては最も望ましい相手ですが、必ずしもスムーズに売却できるとは限らない点には注意が必要です。
底地買取業者への売却
借地権者への売却が難しい場合や、短期間で現金化したい場合には、底地買取業者への売却も検討しましょう。底地買取業者は、借地権者との交渉や権利調整が得意で、一般の買主が敬遠しがちな案件でも買い取るノウハウを持っています。
買取価格は、借地権者への売却などと比べると低くなることが多いものの、「査定から決済までが比較的スムーズ」「権利関係の説明や調整を業者側が主導してくれる」といったメリットもあります。
底地買取業者を選ぶ際には、以下の点を確認しましょう。
・底地・借地取引の実績
・借地権者との交渉姿勢(関係悪化を招かない配慮)
・査定条件や手数料の明確さ
これらを確認し、複数社の見積もりを比較することが大切です。
底地権と借地権をセットで売却
借地権者の協力のもとで底地・借地をまとめて売ることで、市場価値を引き上げる方法もあります。
底地と借地権をセットにすることで、完全所有権として通常の土地と同等に市場に売り出すことができるため、最も高い価格での売却が期待できます。成約した場合、売却代金は底地権と借地権の評価割合に応じて按分されることが一般的です。
ただし、借地権者との調整が必須であり、条件交渉やスケジュールの調整など、手続きが複雑になりやすい点に注意が必要です。借地権者と協力的な関係性を築きつつ、底地の取引に強い不動産会社などにサポートしてもらいながら進めるようにしましょう。
底地権を保有・売却する際のリスク
底地には、見えにくい管理負担や法的注意点があります。底地を保有したり売却したりする際には、以下のようなリスクを理解しておくことが重要です。
借地権者との関係が悪化する
底地は借地権者との関係が非常に重要であり、調整を誤るとトラブルにつながります。地代の増額請求や借地契約の更新条件をめぐって対立が生じると、法的紛争に発展する可能性もあります。
特に、相続などで底地を引き継いだ場合、それまでの経緯や借地権者との関係性を十分に把握していないと、意図せずトラブルを引き起こすことがあります。借地権者との良好な関係を維持するためには、定期的なコミュニケーションと、相互の権利を尊重する姿勢が欠かせません。
また、底地の売却を検討する際には、借地権者への事前の説明や相談を行うことで、スムーズな取引につながる可能性を高められます。
収益性が低い
底地から得られる収入は、基本的に借地権者からの地代のみです。地代は長期間にわたって同じ水準で据え置かれているケースも多く、現在の地価や物価水準から見ると「割安」であることも少なくありません。
地代の増額を図るには、借地借家法の地代増減請求権に基づく借地権者との合意が必要であり、合意に至らない場合は裁判所に増額請求を申し立てることになります。ただし、その場合、裁判所は「土地価格の変動」「近隣の地代相場」「経済事情の変動」などから総合的に判断するため、希望通りの増額が認められず手間とコストに見合わない結果となる可能性もあります。
相続時の評価・税務上のリスク
底地は、同じ場所の更地に比べると、相続税評価額が低く算定されるのが一般的です。これは、土地の一部の価値が借地権者の権利として評価され、底地側の価値が差し引かれて評価されるためです。
一方で、評価額が低いからといって、相続人にとって必ずしも「扱いやすい資産」とは限りません。実際には、売却先が限られて簡単には現金化できなかったり、地代収入もそれほど多くないのに固定資産税や管理の手間だけはかかったりするなど、「税金はそれほど高くないが、処分や運用に手間のかかる資産」になりやすい点が負担となり得ます。
また、複数の相続人がいる場合、「誰が引き継いで管理するのか」「売却するならどのタイミングで、いくらなら合意できるのか」といった点で意見が分かれることもあります。相続後に権利調整や売却をめぐってトラブルとならないよう、将来の処分方針や引き継ぐ人をあらかじめ話し合っておくことが重要といえます。
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