借地権とは?|種類やメリット・デメリットなどをわかりやすく説明
  1. 借地権とは:地代を支払い借りた土地に建物を建てる権利
    1. 借地権の特徴と権利
  2. 借地権割合とは:土地の権利で借地が占める割合
    1. 借地権割合の求め方
  3. 借地権に関する根拠法は旧借地法・借地借家法
    1. 1.旧借地法(賃借権)
    2. 2.借地借家法
    3. 地上権(物権):自由に借地権を譲渡・転貸できる
  4. 借地権の更新について
    1. 更新についての注意点
  5. 借地権のメリット・デメリット
    1. 借地権のメリット:税負担なし、安価で購入可
    2. 借地権のデメリット:地代や更新料発生、土地が所有できない
  6. 土地が売却されたケースの対抗要件
  7. 底地買取の成功事例
  8. 借地権の有効活用法:不動産投資
    1. 借地を生かした不動産投資のメリット
    2. 借地を生かした不動産投資のデメリット・注意点
  9. 借地権に関するQ&A
    1. Q.借地権とはどういう意味?
    2. Q.借地権と土地所有権の違いは何?
    3. Q.借地権は資産か?
  10. 【限定eBook 無料プレゼント!】

本コラムでは、借地権についてその種類や権利関係、メリットやデメリットについて解説する。

借地権とは:地代を支払い借りた土地に建物を建てる権利

借地権とは、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権のことである。一般的に土地の上に建物を建てる際には、その土地も所有する必要があると考えられがちだ。しかし他人の土地を借りて建物を建てることも可能であり、その際に設定するのが借地権である。

土地の貸主は所有権があるが、土地の借主は貸主へ地代を支払うことで借地権が発生する仕組みだ。借主は、借地権のある土地に建物を建てられ、その建物は借主の所有となる。

借地権とは?|種類やメリット・デメリットなどをわかりやすく説明

・借地権の主な種類

借地権の主な種類は以下のとおりだ。

借地権概要
普通借地権存続期間:30年以上
利用目的:用途制限なし
借地関係の終了:①法定更新される。②更新を拒否するには正当事由が必要。
定期借地権・一般定期借地権
存続期間:50年以上
利用目的:用途制限なし
借地関係の終了:期間満了による
・事業用定期借地権
存続期間:10年以上50年未満
利用目的:事業用建物所有に限る(居住用は不可)
借地関係の終了:期間満了による
・建物譲渡特約付借地権
存続期間:30年以上
利用目的:用途制限なし
借地関係の終了:建物譲渡による

そのほか、「一時使用目的の借地権(臨時設備などで一時使用することが明らかな借地権)」などもある。

・借地権の相続
借地権は、借主が死亡した場合、その相続人に承継される。その際、貸主の承諾を得る必要はなく、承諾料(名義変更料)も払わなくていい。ただし、貸主との関係性を良好に保ちたいと考えるのであれば、連絡を入れておくことも必要だ。

なお、法定相続人以外への遺贈の場合は貸主の承諾が必要になる。また、建物の名義変更は忘れずに行っておきたい。

借地権の特徴と権利

前述したように自己所有の土地ではなくても借地権があれば、借地に建物を建てることができる。地代をきちんと支払っていれば借地権によって保証されている借主の権利だ。また、借地権は権利そのものを売買することもできる

ただし、借地権を売買したり借りている土地の上に建っている建物を借地権付きで売買したりする場合などの取引を行う際は、貸主の承諾が必要だ。これらの点を含めて、借地権者と土地所有者の権利と責任について違いを一覧表にした。

借地権者(借主)土地所有者(貸主)
土地の所有権なしあり
建物の所有権ありなし
建物の売却貸主の承諾が必要
(承諾料を支払う)
借主の求めに応じて承諾をする
(承諾料を受け取る)
建物の建て替え貸主への連額が必要
(承諾料を支払う)
借主の連絡に応じて承諾をする
(承諾料を受け取る)
地代支払う受け取る
契約更新更新料を支払う更新料を受け取る

借地権があると土地の上に建物を建てたり、権利付き建物を売却したりすることも可能だが、さまざまなシーンにおいて貸主の承諾が必要になることが見て取れる。承諾を得るためには、承諾料を支払うことが慣習になっているため、借地権者は留意しておこう。

借地権割合とは:土地の権利で借地が占める割合

借地として利用されている土地には、借地権割合の概念がある。前述のとおり土地の所有者には所有権(底地)があり、借主には借地権がある。この両者を合わせたものが10割だとすると、そのうち借地権が何割を占めているのかを示すのが借地権割合だ。

このような概念がある理由は、相続時に土地の価値を評価するためだ。利用価値の高い土地ほど借地としての利用価値も高いと考えられるため、一般的に借地権割合は高くなる。その一方で郊外や過疎地など、利用価値が高くないと考えられる土地では、借地権割合が定められていない場合も少なくない。

借地権割合の求め方

借地権割合は、国税庁が定めており、国税庁が設置しているサイト「路線価図・評価倍率表」でも調べることができる。東京の代々木駅周辺の路線価図を見ると、借地権割合が以下のように設定されている。

A:90%
B:80%
C:70%
D:60%
E:50%
F:40%
G:30%

ここで得られた借地権割合に基づき、相続時には「所有した場合の価値(自用地評価額)」に借地権割を掛けて評価額を求めることができる。

例えば、自用地評価額が3,000万円の土地を借り、その土地の借地権割合が50%の場合、相続時の評価額は以下のように算出する。

自用地評価額3,000万円×借地権割合50%=1,500万円

相続時、この土地の借地権には1,500万円の価値があると見なされる。なお、今回の例では普通借地で算出している。定期借地などの場合は、以下のようにさらに複雑な算出方法になる。

自用地評価額 ×{(①÷②)×(③÷④)}=定期借地権の評価額
①定期借地権の設定の時における借地権者に帰属する経済的利益の総額
②定期借地権の設定の時におけるその宅地の通常の取引価額
③課税時期におけるその定期借地権等の残存期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率
④定期借地権等の設定期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率

出典:国税庁※この先は外部サイトに遷移します。「No.4611 借地権の評価」より株式会社ZUU作成

借地権に関する根拠法は旧借地法・借地借家法

借地権に関する根拠法は、旧借地法・借地借家法の2つである。適用範囲は以下のとおりだ。

根拠法適用範囲
1.旧借地法1992年7月31日までに締結された借地契約に適用
2.借地借家法1992年8月1日以降に締結された借地契約に適用
※同日以降の締結であっても旧借地法を適用したい場合は、借地借家法の規定と異なる特約を付加することで旧借地法の規定を適用することも可能

1.旧借地法(賃借権)

1つは借地法でもう1つは1992(平成4)年8月に施行された借地借家法だ。前者は旧法なので「旧借地法」、後者は新法なので「新借地借家法」と呼ばれることもある。

以後、旧法と新法との区別を分かりやすくするために、「旧借地法」「新借地借家法」の名称を用いる。1992年8月よりも前から借りている土地については、旧借地法が適用される。借主の権利が強く守られているのが大きな特徴だ。貸主は、正当な事由なく契約更新の拒絶や建物の明け渡しなどを要求できない。

旧借地法は、大正~平成時代まで存続した法律だ。法整備された当時は、地主と店子(借家人)の関係において地主の権限が圧倒的に強く、法律で店子の権利を守る必要性が高かった背景がある。しかし平成になって現実に即していない部分が大きくなったことから再び法整備がなされ、1991年に現行法である借地借家法が制定され、翌1992年8月から施行された。

そのため旧借地法が適用される1992年7月末日までに借りた土地については旧法が適用されるため、借地権についても借主に有利だ。

2.借地借家法

前項で解説した旧借地法に代わって現行法となっているのが、借地借家法だ。1992年8月から施行されており、同月1日以降に借りた土地についてはこの借地借家法が適用される。借地借家法では、借地権に複数の種類を設け土地の用途や契約者の事情になどに合わせてすみ分けられている。

前述したとおり、5種類ある借地権の内訳は以下のとおりだ。

・普通借地権
・定期借地権
・事業用定期借地権
・建物譲渡特約付借地権
・一時使用目的の借地権

地上権(物権):自由に借地権を譲渡・転貸できる

貸主の承諾を得なくても借地権の譲渡やまた貸しが可能となるのが、地上権だ。借地権とは異なり、独立した物権である。一般的な借地権だと権利関係に変更や移動がある際に所有者の承諾が必要だが、それを必要としないため地上権は借主にとって非常に強い権利(貸主にとっては不利)といえる。

ただし、土地所有者にとって不利な契約となるため、実際に地上権が設定された借地契約はあまり見られない。

借地権の更新について

借地権には契約期限があり、更新をせずに契約が満了すると借地権は消滅する。借地権の更新については、旧借地法と借地借家法によって取り扱いが異なる。

すでに解説したように旧借地法では、借主の権利が強く守られているため、貸主が異を唱えることは難しく借主が契約の更新を希望すれば事実上半永久的に更新が可能だ。一方、借地借家法では定期借地権など種類によっては期限があるため、期限が満了したら自動的に契約は終了し、借主は更地にして土地を返還する必要がある。

旧借地法による借地権の場合は特に言えることだが、借地権を更新する際には借主が貸主である土地所有者に対して更新料を支払うのが一般的だ。特に法的な取り決めがあるわけではないが、借地契約の契約書に明記するなどの方法で更新料の支払いを定めているケースが多い。

更新料については、更地価格に対して3~5%程度としているケースが多いが、これはあくまでも相場であり、土地の立地などによって大きく異なる。双方の合意があればこれと異なる更新料を設定している借地契約もある。なお、更新料の相場は、不動産鑑定士などの専門家に相談するのが良いだろう。

更新についての注意点

・更新料の支払い
借地契約に記載されている場合は支払うのが一般的だ。また、更新料の支払いについて記載がない場合でも、支払いが慣習化している、貸主が支払いを承諾しているといったケースでは支払うことになるだろう。

ただし、更新料の支払いについて契約に記載がない場合は、支払い義務はないという最高裁判所の判例もある。

・更新を拒否された場合
貸主に正当な事由があれば更新を拒否できる。その場合、立退料が発生するケースもあるため、弁護士などに相談するのが賢明だ。

借地権のメリット・デメリット

借地権には、メリットとデメリットがある。借地権者の目線でメリットとデメリットを見てみよう。

借地権のメリット:税負担なし、安価で購入可

・土地に関する税金(固定資産税、都市計画税)が不要
・借地権付きの建物だと取得価格が安くなる
・旧借地法の借地権だと権利が強く半永久的に使用できる

上記のうち2つは、不動産の取得や維持に関するコストが安くなるメリットだ。固定資産税、都市計画税は土地の所有者が納めるため、借主に負担の義務はない。

また所有権付きの不動産よりも借地権付きのほうが権利としては制限されるため、その分安く取得できる可能性が高い。

特に旧借地法が適用される借地権だと借主に有利になることから、1992年8月よりも前の借地契約については借地権のメリットが大きいといえる。

借地権のデメリット:地代や更新料発生、土地が所有できない

・地代の支払義務がある
・多くの場合、更新料や承諾料が発生する
・売却や増改築などには貸主の承諾が必要(承諾料が発生することも)
・地代を支払い続けても土地が手に入るわけではない

メリットのところで税負担がないことをあげたが、その一方で地代の支払義務はある。地代の金額は借地契約書に記載されているため事前に確認しておきたい。さらに地代を長期間支払い続けても土地が手に入るわけではない

また売却や増改築、更新などさまざまな場面で貸主である所有者の承諾が必要で、承諾料や更新料が地代とは別に発生する場合もある。

土地が売却されたケースの対抗要件

借地権を有する土地を貸主である所有者が売却した場合はどうなるのだろうか。購入した新所有者に法的に対抗できない場合、「土地を明け渡す必要があるのではないか」と不安になる方もいるかもしれない。しかし土地上に所有している建物があり、所有権の登記がされている場合は対抗要件が成立し引き続き借地権を維持できる

つまり新所有者に対して土地を明け渡す必要はない。ただし、借地人と建物の登記で名義が異なる場合は対抗要件が成立しないため、「借地人と建物の登記が同一人物」という条件が必要である点には注意したい。

底地買取の成功事例

先ほど貸主が借地に供している土地を売却した場合を想定した解説をしたが、借地権を有する借主が貸主から土地を買い取る(底地買取)ことも可能だ。

例えば、貸主であるAさんが高齢で相続を予定している子どもが地元から遠く離れた場所に住んでいるとしよう。借地人であるBさんは、この事情を踏まえ、Aさんに底地買取を持ちかけるのは現実味のある行動といえる。幸い、これまで地代の滞納もなく良好な関係を築いてきたAさんとBさんであったことから交渉はスムーズに進み、BさんはAさんから借地を購入し、所有者となることができた。

気になるのは売却価格だが、このときにも借地権割合が考慮される。例えば、借地権割合が50%であればBさんはすでに借地の権利を50%有していることになるため、売却価格は市場価格の50%が妥当だ。こうしてAさんとBさんは借地契約を解消し、Bさんは土地と建物の両方を所有することができた。

借地権の有効活用法:不動産投資

ここまでは、自己居住を前提とした借地権の解説をしてきた。次に不動産投資の観点から借地権の活用についてメリットとデメリットを解説していく。

借地を生かした不動産投資のメリット

借地権は、通常の土地よりも安く購入できるが、借地権を取得すればそこに建物を建てて賃貸経営を始めることも可能だ。さらに借地権のみ所有している場合は、固定資産税や都市計画税の納税義務がないため、取得や維持のコストを抑えながら不動産投資ができる。

借地を生かした不動産投資のデメリット・注意点

低コストで不動産投資を始めることは大きなメリットだが、その一方で注意してきたいデメリットが3つある。

・建物の資産価値が時間の経過に伴って低下する
土地は、劣化によって価値が低下するわけではないが、建物はそうはいかない。借地権と建物による不動産投資だと、建物の資産価値低下による影響を強く受ける

・融資が不利になる
投資目的で金融機関の融資を利用するには、一般的に土地や建物を担保とする。しかし建物部分の担保評価しか受けられないため、融資を受けるには不利となる場合がある

・貸主による承諾の必要性
前述しているように売却や増改築の際は、貸主の承諾を得る必要があり、それには承諾料が発生することが多い。そのため借地権があるからといっても物件について自由にできるわけではないことには注意が必要だ。

借地権に関するQ&A

Q.借地権とはどういう意味?

借地権とは、土地所有者から土地を借りて地代を支払うことにより、その土地に建物を建てることができる権利のことだ。これは、法律で認められた権利である。

Q.借地権と土地所有権の違いは何?

借地権は、借りた土地に建物を建てることができる権利である。一方、「土地」とはその土地の所有権のことを指す。所有権がある場合は、自身の財産であるため、自由に建物を建築して活用することができる。自身が所有者でもあるため、貸主による承諾や承諾料なども不要だ。

Q.借地権は資産か?

借地権には、資産性がある。契約内容や種類によっては土地所有者の承諾が必要になるものの、資産として売買することも可能だ。

manabu不動産投資に会員登録することで、下の3つの特典を受け取ることができます。

①会員限定のオリジナル記事が読める
②気になる著者をフォローできる
③気になる記事をクリップしてまとめ読みできる

- コラムに関する注意事項 -

本コラムは一般的な情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的とするものではありません。
当社が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づきますが、その正確性や確実性を保証するものではありません。
外部執筆者の方に本コラムを執筆いただいていますが、その内容は執筆者本人の見解等に基づくものであり、当社の見解等を示すものではありません。
本コラムの記載内容は、予告なしに変更されることがあります。