違法建築とは?違法建築になる場合や既存不適格建築との違い、注意点を解説
  1. 違法建築とは?違法建築の定義と特徴
  2. 違法建築になる主なケース
    1. 建ぺい率や容積率をオーバーしている
    2. 防火規制に違反している
    3. 接道義務に違反している
    4. 完了検査を受けていない
    5. 違法増築を行っている
  3. 違法建築と既存不適格建築物の違い
  4. 気をつけるべき違法建築のリスクと注意点
    1. 入居者や利用者の安全を脅かす恐れがある
    2. 行政指導で取り壊し命令が出される可能性がある
    3. 金融機関からの融資が出づらい
    4. 大規模なリフォームが行えない
    5. スムーズな売却が困難になり出口戦略への支障が出る
  5. 違法建築かどうかを確認する方法
    1. 検査済証の確認
    2. 専門家による診断
    3. 行政への確認
  6. 違法建築でも購入してよいパターンはある?

不動産投資を始める際には、物件選びだけでなく法律や規制に関する知識も重要になります。特に「違法建築」や「既存不適格建築」といった用語に関しては、投資家にとってリスクとなり得る要素があるため、これらを理解せずに物件を購入すると、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。

そこで本コラムでは、不動産投資家が知っておくべき違法建築の基本、既存不適格建築との違い、そして投資の際に注意すべきポイントを解説します。

違法建築とは?違法建築の定義と特徴

違法建築とは?違法建築になる場合や既存不適格建築との違い、注意点を解説
(画像:PIXTA)

違法建築とは、建築基準法や地域の条例などの法令に違反して建てられた建築物のことを指します。具体的には、建ぺい率や容積率を超えた建築物、構造が基準を満たしていない建物、あるいは無許可で増改築されたものなどが該当します。

こうした物件は、通常の相場価格よりも安価で取引されていることが多いため、高い利回りで市場に出回っています。しかし、違法建築は購入後に行政から是正を求められたり、安全基準を満たしていないために周辺に悪影響を及ぼすリスクがあったりと、大きな問題に発展する可能性があります。

また、法的には売買や賃貸が可能なため、不動産市場に流通しているケースも少なくありません。不動産投資家にとって、こうした物件を見極める目を養うことが重要です。購入を検討する際は、建物が法律を遵守しているか、十分に確認する必要があります。

違法建築になる主なケース

違法建築になるケースはさまざまですが、主なケースとしては以下のようなものがあります。

  • 建ぺい率や容積率をオーバーしている
  • 防火規制に違反している
  • 接道義務に違反している
  • 完了検査を受けていない
  • 違法増築を行っている

建ぺい率や容積率をオーバーしている

建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積(建物が占める面積)の割合で平面的な規則になります。容積率は敷地面積に対する延べ床面積の割合で立体的な規制を指します。

建ぺい率や容積率の制限は、過密な建築を防ぎ、適切な都市環境を維持するために設けられています。例えば店舗や住居が集まる商業地域では、敷地を有効活用するために緩やかな規制となっているのに対し、住宅が集まる住居系では、良好な住環境のために厳しく規制されており、用途地域によって規制内容が異なります。

これらの基準を超過すると、周辺環境への悪影響や防犯上の問題が生じる可能性があります。違反した場合、是正命令や罰則の対象となる可能性があり、不動産取引にも支障をきたす恐れがあります。

用途地域ごとの建ぺい率や容積率の規制については以下の記事で詳しく解説しています。

【関連記事】都市計画法の用途地域とは?13種類の一覧・特徴と制限をわかりやすく解説

防火規制に違反している

都市計画によって火災を防止するための建築制限が行われている地域を防火地域や準防火地域といいます。防火地域や準防火地域に指定されている場合、建物を建築するには周囲への延焼を防止するための一定水準の防火性能を備えなければなりません。

また、10㎡以内の増築、改築、移転であっても、他の地域とは異なり確認申請が必要になるなど、厳しい制限があります。

そもそも防火地域や準防火地域では火災を防止するために制限が設けられているので、これらの基準に違反すると、建物や地域の安全性を損なう可能性があり、増築ができなかったり、売却が困難になったりします。

接道義務に違反している

建物が建てられる土地とは、建築基準法で定められた幅員の道路に一定以上接している土地になります。しかし、「建築基準法上の道路」に接していない土地に建てられている場合、接道義務違反となります。この規制は建物の安全性や防犯性を確保するために設けられており、一般的に敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接していることが求められます。

接道義務に違反すると緊急車の進入が困難になったり、避難経路が確保できなくなったりするといった命に関わるような問題も発生します。また、建築確認申請が通らず、新築や大規模な改修が困難になることも少なくありません。接道義務違反の是正には、敷地の一部を道路として提供するなどの対応が必要になります。

建築基準法上の「接道」については以下の記事で詳しく解説しています。

【関連記事】【第13話】事例から見るシリーズ|建築確認のことと権利の話は、別問題

完了検査を受けていない

完了検査とは、建築工事完了時に確認申請通りの工事が施行できているかを確認する工程です。建築工事完了後に行政による完了検査を受けていない、または検査済証が交付されていない建物が必ずしも違法建築であるとは限らないものの、安全性や法令適合性が確認されていないため、潜在的なリスクを抱えている場合があります。

例えば、構造的な欠陥や安全性の問題があったり、保険の適用外で災害時に保険金が支払われなかったりするといったリスクが考えられます。

違法増築を行っている

違法増築とは、必要な許可や手続きを経ずに建物を増築することを指します。10㎡以上の増築の場合でも建築確認申請が必要となり、これを怠ると違法となります。なお、10㎡未満の増築でも建ぺい率や容積率オーバーとなることで違法建築となる場合もあります。

違法増築は建物の安全性を損なう可能性があるだけでなく、将来の売買や相続の際に問題となる可能性があります。

違法建築と既存不適格建築物の違い

違法建築は、建築時から建築基準法や地域の条例に違反して建てられた建物を指します。安全性や耐久性に問題がある可能性が高く、行政による是正指導や罰則の対象となることがあります。

一方、既存不適格建築物は、建築当時は適法だったものの、法改正や都市計画の変更により現行の基準に合致しなくなった建物ですが、既存不適格建築物は違法ではありません。とはいえ、増改築や建て替えの際には現行法令に適合させる必要があります。

最大の違いは、違法建築が建築段階から法的に問題があるのに対して、既存不適格建築物は建築時には法令を遵守していた点です。また、違法建築は行政指導の対象となる可能性がありますが、既存不適格建築物はそのまま使用できます。

既存不適格建築物について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

【関連記事】既存不適格物件は避けるべき?定義や原因、購入しても良い場合を解説

気をつけるべき違法建築のリスクと注意点

違法建築とは?違法建築になる場合や既存不適格建築との違い、注意点を解説
(画像:PIXTA)

違法建築にはリスクや注意点が多く存在します。適切な不動産投資を行うためにも、違法建築の以下のようなリスクや注意点を理解しておきましょう。

  • 入居者や利用者の安全を脅かす恐れがある
  • 行政指導で取り壊し命令が出される可能性がある
  • 金融機関からの融資が出づらい
  • 大規模なリフォームが行えない
  • スムーズな売却が困難になり出口戦略への支障が出る

入居者や利用者の安全を脅かす恐れがある

違法建築物件は建築基準法や消防法などの安全基準を満たしていないことが多く、入居者や利用者の生命や財産を危険に晒す可能性があります。例えば、耐震性能が不十分であったり、防火設備が適切に設置されていなかったりした場合、地震や火災などの災害時に深刻な被害をもたらす恐れがあります。

また、日常的な使用においても、構造上の欠陥や設備の不備により事故が発生するリスクが高まるため、所有者や管理者はこのような安全性の問題に対して、法的責任を問われることもあります。

行政指導で取り壊し命令が出される可能性がある

違法建築物件の所有者や管理者は、行政からの是正命令や罰金などの処分を受ける可能性があります。違反の内容や程度によっては、口頭や文書などによる助言や指導、勧告などの行政指導で済む場合もあります。

しかし、是正が困難な場合や行政指導を無視した場合、建物の取り壊しを命じられる可能性があります。これらの処分に従わない場合、強制的に取り壊され、費用を請求されることもあるため注意が必要です。

金融機関からの融資が出づらい

違法建築は、通常の物件と比較するとローンが組みにくいことがあります。特に近年では、コンプライアンス強化の流れにより、違法建築物件への融資を控える傾向が強まっています。

仮に融資が可能な場合でも、違法建築物件が持つリスクを融資条件に反映させるため、通常の物件と比べて融資期間や金利などの条件が厳しくなる可能性もあります。

大規模なリフォームが行えない

建築基準法に違反している物件では、建築確認申請が必要な大規模リフォームを実施することができません。リフォーム時に現行の建築基準法に適合させる必要があるためです。小規模な修繕や内装の変更は可能な場合もありますが、構造に関わる改修や大規模な増築は困難です。

また、2025年4月に施行される改正建築基準法では、建築確認・検査・審査の対象となる範囲が拡大され、より厳格な審査の対象となる可能性があります。そのため、違法建築物件を所有していると、将来的な改修や用途変更に大きな制限を受けることになります。

スムーズな売却が困難になり出口戦略への支障が出る

違法建築は購入希望層が限られていたり、ローンが組みにくかったりといった懸念から、売却が困難になります。

多くの買主は安全性や法的リスクを懸念し、購入を避ける傾向にあります。また、金融機関からの融資が得られにくいため、買主は現金で購入してくれる方に限定されてしまいます。

また、将来的な法改正や行政指導によって、物件の価値がさらに下落するリスクもあるため、大幅な損失を被る可能性が高く、長期的な資産価値の維持が困難になります。

違法建築かどうかを確認する方法

購入を検討している物件が違法建築かどうかを確認する方法としては、以下のようなものがあります。

  • 検査済証の確認
  • 専門家による診断
  • 行政への確認

検査済証の確認

検査済証は建築物が法令に適合していることを証明する重要な書類です。この証明書は、建築工事完了後に行政機関が実施する完了検査に合格した際に発行されます。検査済証の有無を確認することで、建築時点での法令適合性を判断することができます。

ただし、検査済証があってもその後の法改正やリフォームによって違法建築となっている可能性があるため、注意が必要です。また、古い建物では検査済証がない場合もあるため留意しましょう。

専門家による診断

一級建築士などの専門家に依頼することで、詳細な法律適合性の確認ができます。専門家は建築基準法や関連法令、条例に精通しているため、現在の法律に照らし合わせて建物の適法性を判断できます。

また、建物全体の状況を診断することで、将来必要になる可能性のある修繕や潜在的な問題点も指摘してもらえます。専門家による診断は、検査済証の有無だけで判断できない建物の現状に即した確認をすることが可能です。

行政への確認

建築確認申請や完了検査の記録を行政機関で確認することができます。具体的には役所の建築指導課などで取得できる台帳記載事項証明書にて確認可能です。この証明書には、建築確認申請の有無、完了検査の実施日、検査済証の発行年月日や発行番号などが記載されています。

また、行政機関に直接問い合わせることで、当該建物に関する違反の記録や是正指導の履歴なども確認できる場合があります。

違法建築でも購入してよいパターンはある?

違法建築とは?違法建築になる場合や既存不適格建築との違い、注意点を解説
(画像:PIXTA)

違法建築であっても違法部分の撤去や改修によって是正できる場合などには、適法になる場合があります。そのため、一般的には違法建築物の購入は推奨されませんが、検討の余地がある物件も存在します。購入を考える際には、以下の項目についてしっかりと理解したうえで判断しましょう。

①是正できる可能性の高さ
②是正にあたり必要となる費用
③是正後に得られるキャッシュフロー
④購入価格

例えば、建ぺい率や容積率オーバーの物件で更地にして再建築すれば是正できる場合、高額な費用がかかり、再建築後の面積縮小で賃料収入が減少する可能性があります。一方、旗竿地(道路から建物や土地へ通じる通路が狭く、上から見ると旗と竿のように見える形状をした土地)で接道部分が不足している場合、隣地を買い取ることにより是正できる可能性もあります。

とはいえ、仮に是正ができたとしても金融機関の担保評価が低くなることもあるため、将来的な売却や融資の難しさも考慮しなければなりません。

結論として、上記の要素を慎重に検討したうえで投資に値すると判断できる場合、違法建築物の購入は必ずしも購入してはいけないわけではありません。ただし、通常の物件よりもリスクが高いため、十分な調査と専門家のアドバイスを受けることが不可欠です。

manabu不動産投資に会員登録することで、下の3つの特典を受け取ることができます。

①会員限定のオリジナル記事が読める
②気になる著者をフォローできる
③気になる記事をクリップしてまとめ読みできる

- コラムに関する注意事項 -

本コラムは一般的な情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的とするものではありません。
当社が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づきますが、その正確性や確実性を保証するものではありません。
外部執筆者の方に本コラムを執筆いただいていますが、その内容は執筆者本人の見解等に基づくものであり、当社の見解等を示すものではありません。
本コラムの記載内容は、予告なしに変更されることがあります。