【第13話】事例から見るシリーズ 建築確認のことと権利の話は、別の問題

前回、いくつかの「再建築不可」となる物件の事例を紹介しました。再建築可能かどうか判断するには「接道」が重要であることを話しました。

「接道」という言葉は不動産を扱ううえでは極めて重要なのです。しかし、その意味する所について、やや混同されて使われてしまう場合もあるので、今回はおさらいしましょう。

接道とは?

①建築基準法上の「接道」

建築基準法において建物が建てられる土地とは、「建築基準法上の道路」に間口2m以上で「接道」している土地のことをいいます。それ以外は原則として建物は建てられません。

不動産業界では、再建築可能かどうかを判別するために「接道している」「接道していない」という言い方をすることが多いです。

しかし、再建築可能かどうかを判断する際に必要な「接道」とは「建築基準法上の道路」であるかが重要なのであって、一般用語で言う「道路」とは異なります。

<建築基準法第42条の規定による道路>

建築基準法第42条1項1号道路 道路法の道路(国道、都道および市町村道)で、幅員4m以上のものです。
建築基準法第42条1項2号道路 都市計画法、土地区画整理法、旧住宅地造成事業に関する法律などに基づき許認可等を受けて築造した道路で、幅員4m以上のものです。工事完了後に市町村に移管され道路法の道路となる場合が多く、その場合には法第42条1項1号の道路にも該当します。
建築基準法第42条1項3号道路 「基準時(建築基準法が施行された昭和25年(1950年)11月23日と当該市町村が都市計画区域に指定された時点とのいずれか遅い時点)」に既に幅員4m以上の道として存在し、現在に至っているものです。
建築基準法第42条1項4号道路 道路法、都市計画法その他の法律による新設または変更の事業計画のある道路で、事業者の申請に基づき、2年以内にその事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したものです。
建築基準法第42条1項5号道路 いわゆる「位置指定道路」です。
土地の所有者が築造する幅員4m以上の道で、申請を受けて、特定行政庁がその位置の指定をしたものです。
建築基準法第42条2項道路 基準時(建築基準法が施行された昭和25年(1950年)11月23日と当該市町村が都市計画区域に指定された時点とのいずれか遅い時点)」に存在する幅員4m未満の道で、既に建築物が建ち並んでおり、その他特定行政庁が定める基準を満たすものです。
この道路に面している敷地は、基準時の道の中心線から水平距離2mの線を道路の境界線とみなします。中心線から水平距離2m未満にがけや河川等が存在する場合は、これらの境界から水平距離4mの線を道路の境界線とみなします。
建築基準法第43条1項ただし書きの適用を受けたことがある道
※平成30年(2018年)9月25日建築基準法改正により現行では、43条2項1号、2項2号の取り扱いとなっています。過去の43条ただし書きと2項についての詳細は下記URLを参照ください。
建築基準法第43条第1項ただし書きの取り扱い※この先は外部サイトに遷移します。
法42条に定める道路に該当しませんが、法43条第1項ただし書きの適用を受けたことがある建築物の敷地が接する道です。
平成11年(1999年)12月22日の法改正により、法43条第1項ただし書きの適用を受ける場合は、特定行政庁の許可が必要になりました。法改正(平成11年12月22日)以前に法第43条第1項ただし書きの適用を受けた道等であっても、道等の状況・建築計画の内容等により許可基準に適合しない場合は許可を受けられない場合があります。
※本表に着色のないものについては現在、法上の道路として扱っていないものもしくは未判定のものです。現状のままでは建築確認ができませんので、相談が必要です。
出典:東京都都市整備局「1 建築基準法第42条の規定による道路」※この先は外部サイトに遷移します。より

②権利上の「接道」

建物が建てられる土地かどうかを判断するには、権利基準法上の道路に「接道」しているか判断することが重要でしたが、単純に土地が道路に接しているかどうかを判断する場合は、「道路となっている土地」に接しているかどうかをみます。

それは一般的な意味での「道路」に接しているかどうかであり、「建築基準法上の道路」ではありません。 その道路が直に接しているのか、別の地権者の土地を挟んで接しているのかは、権利関係上の問題となり、必ずしも建築基準法とは関係ありません。

他人の敷地を経由しなければ、その土地に辿り着くことができない場合、その地権者の人の承諾がなければ使えない土地となります。同じ権利関係でも、建築の観点とは異なり、「通行権」などの権利の話になります。

公道に接しているのであれば基本的に問題ないですが、私道と接している場合は、「通行掘削承諾」を地権者から得られるかどうかが重要になります。「通行」の承諾以外にも、上下水道管やガス管などを通せるかどうか、上空だとしても電線を通していいかの承諾も必要になります。それが「掘削」の承諾という意味になります。

「私権」社会において、考え方の大原則から地権者の承諾は必要なことですが、すべてにおいて承諾などを得ているようにも思えません。詳細は後述します。

土地の筆の位置関係は、法務局の「公図」によって把握することができます。「公図」は、平面での土地と土地の接し方や位置関係が確かめられます。また、登記簿の地目を確認すれば、その土地が「道」なのか等も、おおむね判明はします。

ところで、広義で言う道路とは、「建築基準法上の道路」とは限りません。

ややこしいのは、一般的な道路のように見えて基準法上の道路ではない土地もあれば、その逆に、基準法上の道路に指定されていながら見た目は道路ではない土地、などもあります。

常に、この二つの観点で確認しなければならないが、不動産に従事する者であっても、公図や登記簿謄本を調べただけで接道しているから再建築可と勘違いしたり、逆に、建築確認が下りているから接道していると判断し、間に他の地権者の細い土地が挟まっていたことによる通行権があるのだろうか等の権利関係の問題を、見逃したりしてしまいがちです。

調べ方

①「基準法上の道路」の調べ方

例えば横浜市においてはウェブ(「横浜市行政地図情報提供システム」)にて、地図上に建築基準法上の道路を種別ごとに色分けをして描いています。後述しますが、市区町村により対応は異なります。

下の図は、ある場所「+印の土地」を一例として、ピックアップしてみました。(凡例のうち3種類の色の分だけ掲載)

ここで注目していただきたいのは、ピンク色の線(否道路)です。

これは、建築基準法上の道路ではないということを表しています。

もちろん基準法上の道路でなければ、本来、色も何もつけず、記載すらしないこともありますが、横浜市では、基準法上の道路であると誤認しそうな道(現地に行けば、いかにも道路の様相)について、あえて否道路であると示しているのでしょう。

【第13話】事例から見るシリーズ 建築確認のことと権利の話は、別の問題

<建築基準法道路種別(指定道路図) 凡例>

【第13話】事例から見るシリーズ|建築確認のことと権利の話は、別の問題
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【第13話】事例から見るシリーズ|建築確認のことと権利の話は、別の問題

出典:横浜市行政地図情報提供システムより、一部を抜粋

【第13話】事例から見るシリーズ|建築確認のことと権利の話は、別の問題

上の図、左側の<A図>では、前出の図のピンク色(否道路)の部分を消してみました。すると地図上でもまさしく道路のように見えます。実際に現地も地図と同じように道路に見えます。

しかし権利関係でいうと、右側の<B図>のように、2棟のアパートの敷地の旗竿地の通路部分だったのです。幅員4m以上ありますが、それぞれの幅員2m以上の通路が合わさったもので、私道というには違和感があり、私有地といった方が適しているのかもしれません。凡例にも説明されているように、建築物の敷地の一部が表示されていたケースに該当します。

このように、横浜市と同様にウェブサイトで基準法上の道路を公開する市町村は増えてきました。

しかし、対応は自治体ごとにバラバラで、システムが異なり、地図上での描き方もさまざまなので、統一感は全くありません。統一感はないものの、昔は役所に出向かない限り、基準法上の道路であることの確認はできなかったので、ある程度インターネットで調べられるようになったことは、画期的なことです。 現在も窓口でないと判明しない市区町村はまだまだ残っていて、インターネットですべて解決する段階にはなってないです。

②権利の問題として、道路に接しているかどうか

前述のとおり、道路に接しているかどうかは公図(務局備付)で調査・確認するものです。

【第13話】事例から見るシリーズ 建築確認のことと権利の話は、別の問題

さっそく事例で説明しましょう。上の公図における「地番85-3」(赤色枠)の土地が対象物件(以下、対象地という)とします。

この対象地は、現地で見ると東西2方向で道路に接しています。しかし、実は、西側に接している「地番87-1」(橙色枠)は私有地で、地目や基準法上の道路であることが判明。東側の「地番85-2」(緑色枠)は、道路のように見えるが道路ではなく、そのさらに東側にある細い土地が道だったのです(公図上は無地番の公有地、俗に言う里道)。

さらに「地番85-2」(緑色枠)は、まったく関係ない所有者の私有地なので、この対象地の利用者は、承諾を得ない限り、原則として東側は使用できません。

このように現地の見た目では接しているように見えても、細い土地が間に挟まっていて、権利上の観点から「道に接していない」土地が存在したりするので、注意して調べる必要があります。

私道の場合の「共有」あるいは「分有」について

さて、私有地が挟まっていることの問題について解説しました。

前述では、前面道路がまったく関係のない他人の所有地である場合の問題ですが、実は、私道共有持分を持っている場合は、基本的に通行可能と考えて問題ありません。(下図①)

また、共有ではないとしても、下図②~④のように「分有」(タスキ掛けのようにして持ち合っていることを、俗に分有と言ったりする。)している場合もあります。厳密に言えば他人地を通るものの、このような場合の多くは、黙示の通行権をお互いに認め合っていると見做されます(判例あり)。

【第13話】事例から見るシリーズ 建築確認のことと権利の話は、別の問題
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建築基準法の道路に指定されていることで、通行権が認められる(場合がある)

共有や分有ではない、まったくの他人の私有地であったとして、それでも通行できるのは、どういう場合でしょうか。

もちろん、正式に通行承諾を取っている場合は当然のこと、そうでなくても慣例的に使ってしまっている場合(法的には好意通行と称する)も多々あります。ただし後者は、何か揉め事が起きた際には地権者が通行を妨害することもあります。

私道の地権者の妨害とは少々不穏な話ですが、これらを含めて、次回はもう少し通行権等について、いくつかの事例を見ていきたいと思います。

シニアコンサルタント 真保雅人
(大学卒業後、鉄道会社約4年を経て1989年5月オリックス株式会社に入社し、投資用不動産ローン業務を約10年担当。その後、オリックス不動産株式会社にて約10年間の賃貸マンション用地仕入開発業務経験を経て、2010年11月オリックス銀行株式会社に出向。オリックス銀行では投資用不動産ローン業務に責任者として約10年従事し、現在に至る。)

【特集一覧はこちら:元ローン担当者の少しマニアな独り言

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