不動産売買のローン特約(融資特約)とは?トラブルを防ぐために確認すべき7つの注意点

不動産投資ではローンを活用して投資用物件を購入することが一般的です。ローンの審査が通らなかったときに売買契約を解除できる「ローン特約(融資特約)」という契約条項がありますが、場合によっては適用できないケースがあります。

そこで本コラムでは、ローン特約とはなにか、ローン特約を受けるために注意すべき点について解説します。不動産投資を検討中の方はぜひ最後までご覧ください。

ローン特約(融資特約)とは?

不動産売買のローン特約(融資特約)とは?トラブルを防ぐために確認すべき7つの注意点
(画像:PIXTA)

ローン特約とは不動産売買の際に買主と売主が合意の上で定める契約条項の一つです。ローン特約があることによって、ローンの審査が通らなかった際に、売買契約を白紙に戻すことができます。また、契約時に事前に支払った手付金は全額返還され、違約金等も発生しません。

なお、不動産会社と金融機関が協定に基づいて提供する提携ローンで融資を受ける場合には、重要事項説明書の項目の一つである「金銭貸借のあっせん」にローン特約を付けることが義務化されています。そのほかのローンでは義務付けられていませんが、希望すればローン特約として追加することができます。

ローン特約は手付金などの損失を防ぐことができ、安心して不動産売買をするために重要な特約といえます。

ローン特約の種類

ローン特約は大きく2つの種類があります。ここでは「解除条件型」と「解除権留保型」について紹介します。

・解除条件型
・解除権留保型

解除条件型

解除条件型とは、当初定めた期限までに不動産投資ローンの審査で承認が得られなかった場合に自動的に売買契約が解除されるローン特約です。買主から意思表示をする必要なく適用され、売主もローン審査が通らない買主への対応を早期に対処することができます。

解除権留保型

解除権留保型とは、審査で承認を得られなかった場合に、買主による解除の意思表示をもって売買契約が解除されるローン特約です。解除を申し出ない限りは売買契約の効力が継続するため、ローン審査に落ちてしまっても別のローン審査結果を待てるようになります。しかし、権利を行使するための通告期限を1日でも過ぎると、解除権はなくなってしまうため注意しましょう。

ローン特約で必ず確認すべき7つの注意点

不動産売買のローン特約(融資特約)とは?トラブルを防ぐために確認すべき7つの注意点
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ローン特約はただ単に契約条項に入れるだけでは不十分で、対応に不備があるとローン特約を利用できない場合があります。ここではローン特約で必ず確認すべき7つの注意点を紹介します。

・金融機関名を明記する
・融資金額を明記する
・ローン特約の期間を明記する
・ローンの申し込みを不備なく行う
・諸費用をしっかり準備する
・融資に落ちたことを解除期日までに売主にしっかりと伝える
・ローンが承認されない以外の理由では適用されにくい

金融機関名を明記する

解除条件型の特約であっても融資申込金融機関に「金融機関等」、「A銀行、B銀行等」と記載されている場合には注意が必要です。ローンを申し込む金融機関名が具体的に記載されていない場合、ローン特約の解除条件にあたらないと判断されてしまうことがあります。

「ローンを希望する銀行で審査が通らなくても、他の銀行では審査が通る可能性がある」と解釈されてしまい、ローン特約が適用されないこともあります。また、売買契約の解除ができないため、現金一括で購入できない場合は融資条件の悪いローンを紹介され、申し込みをしないといけない状況になってしまうこともあります。

そのため、契約締結前に必ずローンの条件を比較して最適な金融機関を選定し、特約に記載された金融機関の審査基準やローン条件についてしっかりと確認しましょう。

融資金額を明記する

重要事項説明書の特約に融資金額の記載がない場合は、たとえ希望する金額に満たない融資の実行であってもローン特約を利用できないことがあります。例えば3,000万円の融資を前提に不動産の購入を検討したものの、重要事項説明書上に「融資金額3,000万円」など金額が明記されていない場合どのようなことが起こり得るでしょうか。

金融機関から3,000万円の融資が承認されれば問題ありませんが、2,000万円までしか融資の承認が下りない場合、融資金額が前提と相違していることを理由にローン特約を利用して契約解除をすることはできません。その結果、購入予定の不動産3,000万円のうち、2,000万円ローンを組み不足している差額1,000万円を自己資金等で補填する必要が出てきてしまいます。

そのため、契約締結前に融資金額が正しく記載されているか確認し、希望金額よりも少ない金額が記載されている場合には正しい金額で契約締結することが必要です。

ローン特約の期間を明記する

売買契約時にローン特約による契約解除が認められる期間である「融資承認取得期日」を明記しましょう。銀行の融資承認が予定通り進まないことも多いため、売買契約締結から少なくとも1か月程度を目安に決めることをおすすめします。

ローンの申し込みを不備なく行う

ローン特約を付けて売買契約を締結した場合でも、書類不備などで借り入れが出来なかった場合にはローン特約は適用されないことがあります。ローン特約で解除をすることができるのはあくまでも金融機関でのローン審査が通らなかったケースのみが一般的です。

過去にはローン特約を意図的に悪用して売買契約を解除しようとする「ローン壊し」が問題視されて裁判となり、ローン特約による解約を認めなかったという事例もあります。買主の不誠実な対応があると認められないケースがあるため注意が必要です。

諸費用をしっかり準備する

ローンなどの諸費用を準備できずに借り入れできない場合にも、ローン特約による解約はできないことがあります。前述のように自己都合による買主の不誠実な対応とみなされてしまいます。

融資に落ちたことを解除期日までに売主にしっかりと伝える

「解除権留保型」を選んだ場合、解除する権利が与えられるだけなので期限内に意思表示をしないとローン特約は適用されないことがあります。自動的に解除されると勘違いをして通告期限を過ぎると、ローン特約による契約解除ができなくなってしまいます。その場合には物件価格の1~2割の手付金を支払う必要があります。

また、通告期限に注意するだけでなく内容証明郵便等を使って書面でしっかりと通告することも大切です。口頭のみで伝える場合に「言った・言わない」のトラブルが生じるリスクがあります。そのため、「解除権留保型」を選んだ場合には、期限内にしっかりと売主に連絡しましょう。

なお、「解除条件型」であればローンの審査に落ちた時点で契約は白紙となるため、契約解除でなにか対応をする必要はありません。

ローンが承認されない以外の理由では適用されにくい

融資が下りなかった場合以外の理由には、ローン特約は適用されないのが一般的です。前述のようにローン特約はローン審査に通らなかったケースのみに適用されるため、想定よりも金利が高かった場合など自己都合で特約を利用することはできません。また、家族や自身の体調不良などを理由に不動産売買契約を破棄することも自己都合での解約となります。

そのため、融資条件にこだわる場合には金融機関や融資条件を詳しく記載してトラブル回避しましょう。

ローン特約を適用できなかった場合の対処法

不動産売買のローン特約(融資特約)とは?トラブルを防ぐために確認すべき7つの注意点
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売買契約を解除する時にローン特約が適用外だった場合は、次の2つの方法を検討しましょう。

1つ目は別の金融機関も検討し、融資を受けられる金融機関を探すことです。ローン特約が適用されない場合には前述の注意点が守られていない可能性があり、契約解除が難しくなっていることが考えられます。金融機関によって審査基準が異なるため、A銀行で融資を受けられなかったとしても他の金融機関では融資を受けられる可能性もあります。

2つ目は手付解除で契約解除を申し込むことです。手付解除とは契約時に支払った手付金を放棄することで契約が解除できる制度です。手付金を失ってしまいますが物件価格の1~2割の金額で契約解除ができるため、悪い条件でローンを組んだり、無理をして資産で支払ったりするよりは支払いを抑えることができます。

以下のコラムで不動産投資ローンの審査落ちの原因と落ちる人の特徴を解説しています。こちらも参考にしてください。

【関連記事】不動産投資ローンの審査は厳しい?審査落ちの原因や通過するポイントを解説

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