収益物件の利回りを見るうえで気をつけるべき5つのポイント
(画像=mimi@TOKYO/stock.adobe.com)

不動産投資を始めようと検討している人にとって気になるのが、収益物件の利回りだろう。投資である以上、利回りが高いことに越したことはないように思える。しかし、利回りについて深く理解せずに、利回りの数字だけで収益物件の価値を判断してしまうと、思わぬ失敗につながりかねない。

今回は、アパート経営を始めようか検討している人に向けて、収益物件の利回りとは何か、表面利回りと実質利回りの違い、実例や気をつけるポイントなどを解説する。

収益物件の利回りとは?

収益物件の利回りとは、投資金額に対してどれくらいの利益を得られるかを見極める指標だ。収益物件の利回りには、大きく分けて「表面利回り」と「実質利回り」の2つがある。それぞれを解説しよう。

表面利回りとは何か

「表面利回り」とは、年間の家賃収入の総額を物件価格で割り戻した数字だ。「グロス(利回り)」と呼ばれることもある。表面利回りを計算式で表すと、

表面利回り(%)=年間収入÷物件価格×100

となる。収益物件を探す際に最初の目安として用いられることが多い。例えば「〜〜エリアで表面利回り○%以上の物件をスクリーニングする」といった具合だ。

実質利回りとは何か

「実質利回り」とは、年間の家賃収入から年間の諸経費(管理費や固定資産税など)を差し引いたものを、物件価格に購入時の諸経費(登記費用、不動産取得税といった税金、不動産仲介手数料、ローン手数料などのこと)を足したもので割った数字だ。「ネット(利回り)」と呼ばれることもある。購入時諸経費を含めずに計算をする方法も他のインターネットサイトでは見かけることもあるが、購入時諸経費も投資資金の一環であることから本コラムでは購入時諸経費を含めたものを実質利回りとする。

実質利回りの計算式は実質利回り(%)=(年間収入-年間の諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100
となる。年間収入から年間の諸経費を引いたり、物件価格に購入時の諸経費を足したりしているので、表面利回りに比べて、支出を考慮している分だけより実態を表す指標となっている。

収益物件の利回りの実例

収益物件の実例として、「物件価格1億円、年間の家賃収入700万円、年間の諸経費200万円、購入時の諸経費800万円」の場合、表面利回りと実質利回りはどれくらいになるだろうか。

表面利回りは、700万円÷1億円×100=7%だ。一方で実質利回りは、(700万円−200万円)÷(1億円+800万円)×100=約4.6%となる。このように、同じ物件であっても表面利回りと実質利回りは大きく異なるため、両方の利回りの意味を理解したうえで物件を購入することが重要だ。

収益物件の利回りを見るうえで気をつける5つのポイント

ここからは、収益物件の利回りを見るうえで気をつけるべきポイントを解説していく。

1.利回りの高さだけを見ない

まず、利回りの高さだけを見ないということが重要だ。表面利回りは「満室想定の家賃収入」で計算されていることがある。例えば、全10部屋のアパートが表面利回り10%で売りに出ていたとしよう(部屋の賃料は全て同一とする)。しかし、よく調べると、現状は10部屋中5部屋が空室になっている。全部屋が埋まれば確かに表面利回り10%だが、埋まらない限りは、現状の表面利回りは5%だ。

ここまで極端なことはあまりないかもしれないが、その表面利回りの計算は「現況の賃料収入」なのか「満室想定の賃料収入」を確認するようにしよう。不動産ポータルサイトや不動産業者の物件資料では満室想定の賃料収入をベースとした表面利回りが記載されることが多い。満室状態でない物件を購入した場合で空室を埋めることができなければ期待していた収益は見込めない。さらには後述するランニングコストやローンの返済、修繕費支払い後のキャッシュフローが最悪マイナス(この場合には自身の資産から手出しをすることになる)になるリスクもあることは常に念頭に置いておきたい。

また、現況が満室状態だったとしても、極端に表面利回りが高い場合も注意が必要だ。例えば、地方の中古アパート(満室状態)で表面利回り20%で売りに出ていたとしよう。一般的に、表面利回り20%はかなりの高利回りだが、前のオーナーがあまりメンテナンスや修繕を行っていなかった場合、購入してすぐに大きな設備交換費用が発生する可能性もある。

購入してすぐに大きな設備交換費用が発生すると、年間の諸経費が増えるため、表面利回りは20%でも、実質利回りは大きく低下してしまう。また、地方であるがゆえに、一度空室になったら、埋まるまで長い時間がかかることも想定される。

高い利回りには、高いなりの理由があるものだ。一概に高利回り物件が悪というわけではないが、高利回りにつられて安易に購入するのではなく、なぜ利回りが高いのか、入念な調査とシミュレーションをしたうえで購入するようにしよう。

2.家賃は変動するので、利回りは永続的なものではない

前述のように、表面利回りも実質利回りも計算するうえで年間収入額が大きな要素となる。年間収入とは、要するに1ヵ月の家賃(賃料)の12ヵ月分だ。

ここで気をつけたいことは、家賃は経済状況や物件の管理状態、築年数、周辺環境の変化によって変動するということだ。年間の家賃収入が700万円の物件があったとしても、5年後や10年後も700万円の家賃を得られるかは分からない。

家賃は上がる可能性もあるものの、一般的には築年数の経過とともに下落していくものだ。収益物件の利回りを見る際は、その利回りは永続的なものではなく、あくまで「いま現在」のものだということに気をつけよう。

3.近隣の同じような物件と比較する

収益物件の利回りは、立地や築年数、構造などによって大きく異なる。極端に言えば、「地方の中古木造アパート」と「都心の一等地の新築RC造マンション」の利回りを比べても、諸条件が違いすぎて、あまり意味はないということだ。

収益物件の利回りを見るときは、近隣の物件と比較するようにしよう。その際、同じような築年数、同じような構造、同じような間取りの物件と比較すると、検討している物件が投資すべきなのか、そうではないかのヒントが多く見つかるだろう。

4.借り入れをする場合は利回りほどの手残りはない

借り入れをしている場合は利益から返済を行う必要があるため、表面利回りはもちろん、その収益物件の実態を表している実質利回りほどの手残りがあるわけではない。例えば「表面利回り10%の1億円の物件」を購入したとしても、購入金額のほとんどを借り入れで賄った場合、ローン返済や修繕費、固定資産税などのランニングコストの支払いをすると、表面利回りから算出される収入1,000万円がすべて手元に残るわけではない。毎月かかる諸経費の見通しも緻密に行っておくことが重要だ。

しかし、だからといって「数%ほどの利回りしかない」というわけではない。返済を続けると残元本が減っていくため、手元のキャッシュフローは大きくなくても、着実に自分の純資産は増えていく。

5.物件があるエリアの長期的な賃貸需要をリサーチする

長期的な需要があり、空室率の低い物件であったとしても、どのような層による賃貸需要なのかをリサーチすることも重要だ。よくあるケースとして、物件の近くに大学や企業、工場があるといった要因による賃貸需要の場合、大学の移転や企業の統廃合、工場の撤退となった場合に一気に空室になってしまうことがある。

上記のような要因ではない長期の賃貸需要があるのかをリサーチすることも必要だろう。

それぞれの違いや見るべきポイントを把握したうえで進めよう

ここまで、アパート経営を始めようか検討している人に向けて、収益物件の利回りとは何か、表面利回りと実質利回りの違い、収益物件の利回りの実例、収益物件の利回りを見るうえで気をつけるポイントなどを解説してきた。

それぞれの違いや見るべきポイントを把握したうえで、不動産投資を進めるようにしよう。

manabu不動産投資に会員登録することで、下の3つの特典を受け取ることができます。

①会員限定のオリジナル記事が読める
②気になる著者をフォローできる
③気になる記事をクリップしてまとめ読みできる

- コラムに関する注意事項 -

本コラムは一般的な情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的とするものではありません。
当社が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づきますが、その正確性や確実性を保証するものではありません。
外部執筆者の方に本コラムを執筆いただいていますが、その内容は執筆者本人の見解等に基づくものであり、当社の見解等を示すものではありません。
本コラムの記載内容は、予告なしに変更されることがあります。