不動産売却時の手数料・諸費用のすべて|仲介手数料やその他費用を徹底網羅

不動産を売却する際には、仲介手数料や登記費用などの費用が必要となり、売却価格によっては数百万円単位の支出が必要となるケースもあります。これらの費用について理解することで不動産を売却した際に発生する譲渡所得(利益)の金額と納税額を知ることができるため、しっかりと内容を把握しておく必要があります。

本コラムでは、不動産売却に必要な費用の詳細に加え、仲介手数料の負担を抑える具体的な方法を解説します。

不動産売却に必要な手数料・経費一覧

不動産売却に必要な手数料・経費一覧
(画像:PIXTA)

不動産売却に必要な費用は、主に次の6種類です。

①仲介手数料
②登記費用(司法書士報酬・登録免許税)
③印紙税
④譲渡所得税と復興特別所得税
⑤繰り上げ返済手数料
⑥その他の費用

これらの費用は、不動産の価格や取引方法、取引の背景などさまざまな条件によって変わるため、しっかりと事前に確認しておくことが重要です。特に「⑥その他の費用」で後述する修繕費用や解体費用など、場合によっては数百万円単位の支出となるため、依頼内容に応じて業者や専門家に見積もりを依頼するなどあらかじめ把握しておきましょう。

①仲介手数料

仲介手数料とは、不動産会社に売却を依頼し、売却が成立した際に支払う成功報酬のことをいいます。

仲介手数料は、法律により上限額が定められているほか、特例が設けられていることもあるため、基本的な知識をしっかりと確認しておきましょう。

仲介手数料には上限がある

仲介手数料の金額には法律で定められた上限があります。これは消費者を保護する目的で設定されたもので、不動産会社はこの上限を超えて仲介手数料を請求することはできません

上限金額の具体的な計算方法は以下の通りです。

売却価格 仲介手数料の上限
売却価格が200万円以下の部分 売却価格×5%+消費税
売却価格の200万円超~400万円以下の部分 売却価格×4%+消費税
売却価格の400万円を超えた部分 売却価格×3%+消費税
出典:国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bf_000013.html)」

さらに、国土交通省は2024年6月21日に「不動産業による空き家対策推進プログラム」を策定しました。具体的には、2024年7月1日以降の契約を対象とし、収益性が低い低廉な空き家等の売買を促す目的で特例規定が拡充されました。

収益性が低い低廉な空き家等とは、(1)売買価格が税別800万円以下の宅地・建物(2)使用の状態は問わない、とされています。

売主・買主双方が合意している場合に限り、上記の料率を超える報酬を得ることができる措置が認められています。たとえば200万円の物件の場合は通常であれば報酬額の上限は10万円(+消費税)となりますが、収益性が低い低廉な空き家等に該当した場合、最大で30万円(+消費税)を仲介手数料の報酬の上限として求めることができるというものです。

出典:国土交通省「不動産業による空き家対策推進プログラムについて」

仲介手数料の計算例

仲介手数料は、単純に売却価格に一定のパーセンテージをかけて算出するのではなく、価格帯ごとに区分けして、それぞれの部分に対応する割合を乗じてから合計するという、やや特殊な計算方法が採用されています。

たとえば売却価格が3,000万円(税抜)の物件を売却する場合、まず200万円までの部分に対して5%(10万円)、次に200万円超400万円以下の部分に4%(8万円)、そして残りの2,600万円に対して3%(78万円)を乗じ、合計96万円が仲介手数料の上限額となります。

この金額に消費税(10%)を加算すると、最終的な支払額は105.6万円となります。

売却価格のうち 計算式 計算結果(上限額)
200万円以下の部分 200万円×5% 10万円
200万円超~400万円以下の部分 200万円×4% 8万円
400万円超の部分 2,600万円×3% 78万円
消費税 ×10% 9.6万円
合計 105.6万円

下記のように簡易計算式を利用すると、より手軽に目安を算出することが可能です。この簡易計算式を使って、前述の売却価格3,000万円の物件の計算をした場合も(3,000万円×3%+6万円)+消費税で同様に105.6万円となります。

売却価格 仲介手数料の上限
200万円以下の場合 売却価格×5%+消費税
200万円超~400万円以下の場合 (売却価格×4%+2万円)+消費税
400万円超の場合 (売却価格×3%+6万円)+消費税

広告費などの費用も請求される

不動産売却時に支払う仲介手数料は、あくまで成功報酬であり、それとは別に費用が請求されるケースもあります。

具体例としては、不動産会社が売却活動を行う際に、通常の業務範囲を超える特別な対応をした場合が挙げられます。一般的な費用を上回る高額な大手新聞への広告や売主が特別に依頼した広告といった通常の広告の範疇を超えて行った広告宣伝費用、または売主が遠方に住んでいる場合などで、契約や現地確認のためにかかった交通費などが特別な営業活動費用として請求される場合があります。

ただし、これらの費用を不動産会社が勝手に請求することは認められていません。あくまで、売主の希望で実施している場合や売主にあらかじめ明確な同意を得ていることが条件となります。

そのため、売却を依頼する際には、媒介契約書の内容をしっかりと確認し、どのような広告活動を行う予定であるか、その費用がどのように発生するのかについて把握しておくことが重要です。

仲介手数料を支払うタイミング

仲介手数料は、不動産売買契約の締結時に半額、物件の引き渡し時に残りの半額を支払うことが一般的です。ただし、場合によっては契約締結時に全額を求められることもあるため、事前に支払時期について確認しておきましょう。

また、仲介手数料はあくまで成功報酬であるため、売却が成立するまでは最終的な金額が確定しません。そのため、売買契約が結ばれる前に具体的な金額を明示してくる場合は注意が必要です。

不動産会社と媒介契約を結ぶ際には、仲介手数料の金額だけでなく、支払時期や支払方法についても丁寧な説明があるかを確認し、契約を進めるようにしましょう。

不動産売却時に仲介手数料を抑える方法

不動産売却にかかる仲介手数料は、法律により上限が定められてはいるものの、実際に支払う金額は不動産会社との契約内容によって変わります。ここでは、仲介手数料を少しでも抑えるための具体的な方法について解説します。

(1)不動産会社と交渉する

まず、第一に考えられるのが、不動産会社との直接交渉です。

仲介手数料には法定の上限が設けられていますが、それを下回る金額であれば、売主と不動産会社との合意によって自由に設定することができます。実際に、不動産会社によっては「手数料割引キャンペーン」などを行っている場合もあります。

ただし、仲介手数料を大きく下げることで不動産会社側の利益が圧迫され、売却活動に十分な労力を割いてもらえず、物件の売却が遅くなる、もしくは売れない状態が続いてしまうといったリスクもあるため、強引な交渉は避けましょう。売却にあたっては、不動産会社と良好な関係を維持することが必要不可欠であり、適切にバランスを取りながら進めていくことが大切です。

(2)不動産買取サービスや三為契約を利用する

仲介手数料が発生するのは、不動産会社が売主と買主の間に立って「仲介」する場合です。したがって、不動産会社が直接物件を買い取る「不動産買取サービス」を利用すれば、仲介手数料は不要になります。

また、第三者のためにする契約、いわゆる「三為契約(さんためけいやく)」を活用する場合も仲介という形式をとらないため、同様に仲介手数料は発生しません。

ただし、これらのスキームでは、仲介取引の場合と比較し買取価格が安く設定されることが一般的です。そのため、どの方法で売却するのが良いかは仲介手数料だけでなく売却価格も考慮して判断する必要があります。

また、一般的に仲介取引では成約までに一定の時間がかかるとされているものの、不動産買取サービスや三為契約は比較的短期間で成約に至るため、仲介手数料や売却価格だけでなく、どれくらいの期間内で売却をしたいのかといったスケジュール面も踏まえ、売却方法を判断すると良いでしょう。

また、三為契約で売却を進める場合には、仕組みが複雑であるため、十分な理解と注意が必要であることも認識しておきましょう。

三為契約の仕組みや注意点、メリット・デメリットについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

【関連記事】三為契約とは?ワンルーム投資でサラリーマンが注意すべき理由

(3)個人間で直接売買する

不動産会社を介さずに売主と買主が直接売買契約を結ぶ個人間売買では仲介者がいないため、仲介手数料は発生しません。ただし、個人間売買には多くの注意点があります。

まず、不動産は高額かつ専門的な手続きが必要な取引であるため、契約書の作成や登記の手続き、税金の処理などを個人で対応するのは非常に困難です。また、買主との間で条件に食い違いがあったり、引き渡し後にトラブルが生じたりするケースも少なくありません。さらに、そもそも個人で買主を見つけること自体が難しいです。

このように、仲介手数料を節約できるメリットはあるものの、それに伴うリスクや労力を考えると、不動産会社を介さずに個人間取引で進めることは現実的ではなく、おすすめできません。費用を抑えたいと思ったとしても、まずは安全に取引を行うことを優先し、その上で不動産会社との信頼関係を崩さない範囲で交渉する方法が現実的といえるでしょう。

②登記費用(司法書士報酬・登録免許税)

登記費用(司法書士報酬・登録免許税)
(画像:PIXTA)

不動産売買において必要な登記には、主に次の2つの種類があります。

登記の種類 費用 負担者
抵当権抹消登記 不動産ひとつあたり1,000円 売主
所有権移転登記 売買の場合、固定資産税評価額 ×税率(2.0%) 買主

売却する物件に住宅ローンなどの抵当権が設定されている場合、まずは売主の負担で抵当権抹消登記を行う必要があります。所有権移転登記は法的な義務ではありませんが、第三者から権利を侵害されるリスクがあるため、必ず行うようにしましょう

登記の手続きは一般的に、売買を仲介した不動産会社が提携している司法書士に依頼するケースが多いです。司法書士に対する報酬の金額は依頼先によって異なるため、事前に見積もりを取ると安心です。不動産登記に必要な費用や、負担を抑える方法については、こちらの記事で解説しています。

【関連記事】不動産の登記費用はどのくらい?相場や計算方法、費用を抑えるポイントを解説

③印紙税

不動産の売買契約書には、印紙税として収入印紙を貼付する必要があります。印紙税の額は、契約書に記載された売買価格に応じて下記のように変わります。2027年3月31日までの軽減税率が適用されています。

契約金額 本則税率 軽減税率
10万円超50万円以下 400円 200円
50万円超100万円以下 1,000円 500円
100万円超500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超1,000万円以下 1万円 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 2万円 1万円
5,000万円超1億円以下 6万円 3万円
1億円超5億円以下 10万円 6万円
5億円超10億円以下 20万円 16万円
10億円超50億円以下 40万円 32万円
50億円超 60万円 48万円
出典:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置(https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/08/10.htm)」を加工して作成

2022年5月18日より、宅地建物取引業法にかかる書面の電子化が可能になりました。そのため近年では、不動産の取引にかかる契約書類でも電子契約で行うものが増えています。不動産売買契約が電子契約によって行われる場合、印紙税は課税されません。ただし、電子契約に対応していない不動産会社や司法書士も多いため、事前に確認しておきましょう。

④譲渡所得税と復興特別所得税

譲渡所得税と復興特別所得税
(画像:PIXTA)

不動産を売却して利益が出た場合、その利益には譲渡所得税が課されます。

譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間によって大きく異なります。譲渡した年の1月1日に所有期間が5年を超えていれば「長期譲渡所得(所得税15%、住民税5%)」、5年以下であれば「短期譲渡所得(所得税30%、住民税9%)」となり、後者のほうが税率は高く設定されています。そのため、不動産の売却タイミングによっては、数百万円単位で納税額が変わることもあります。

売却時には、売却する年の1月1日時点の所有期間をしっかりと確認し、どちらの区分に該当するのかを把握したうえで、譲渡所得税の計算を行いましょう。また、確定申告は不動産を売却した翌年に行う必要があり、申告漏れがあると延滞税や加算税が発生する可能性があるため、注意が必要です。

また、東日本大震災からの復興財源確保として、2037年12月31日までは所得税額の2.1%が復興特別所得税として課される点にも注意しましょう。

譲渡所得税について、長期譲渡所得と短期譲渡所得の違いや計算方法、注意すべきポイントはこちらの記事で詳しく解説しています。

【関連記事】長期譲渡所得と短期譲渡所得とは?5年以内の不動産売却は注意が必要

⑤繰り上げ返済手数料

不動産を売却する際、住宅ローンなどの残債が残っている場合は、そのローンを完済する必要があります。多くの場合は、売却代金を充てて一括返済、いわゆる「繰り上げ返済」を行うことになりますが、このときに金融機関に対して繰り上げ返済手数料が発生する場合があります。

繰り上げ返済手数料の金額は金融機関によって異なり、数千円から数万円程度が一般的です。ただし、近年ではインターネットバンキングでの返済手続きに限り手数料が無料になる金融機関などもあるため、あらかじめ確認しておきましょう。

また、売却代金だけで残債を賄えない場合は、手元の預貯金などから不足分を支払う必要があります。

繰り上げ返済には「全額返済」と「一部返済」の2種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。繰り上げ返済に関する詳しい情報については、こちらの記事でも解説しています。

【関連記事】不動産投資で繰り上げ返済するのはあり?メリット・デメリットを解説

⑥その他の費用

不動産売却に伴って発生する費用として、ここまでに紹介したもの以外にも発生する可能性があるのが下記の費用です。必ず発生するわけでもありませんが、条件次第では高額になることもあるため、事前に把握しておいた方が良いでしょう。

・修繕費用
・建物解体費用
・測量費用
・不動産鑑定費用
・住宅診断費用(ホームインスペクション)
・賃貸管理契約違約金(サブリース物件含む)
・証明書取得費用(登記簿謄本・公図・固定資産評価証明書等)
など

特に、修繕費用や建物解体費用、土地の測量費用、不動産鑑定費用などは、数十万円から数百万円の大きな出費となるケースもあるため、売却を決める前に不動産会社と相談し、見積もりを取ったうえで、売却によって得られる利益と比較することが大切です。

また、こちらの記事でも、不動産売却での消費税について詳しく解説しています。

【関連記事】不動産売却では消費税に注意!課税されるケースとされないケースを解説

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