不動産投資は生命保険の代わりにならない?団体信用生命保険について解説

不動産投資と生命保険は異なる商品で、それぞれが果たす役割も異なりますが、不動産投資が生命保険の代わりになるという考え方もあります。

本コラムでは、不動産投資は生命保険の代わりになるのかどうか、不動産投資がどのような状況で生命保険の代わりになると考えられるか、そのメリットとデメリットなどについて詳しく解説します。

不動産投資は生命保険の代わりになるのか?

不動産投資は生命保険の代わりにならない?団体信用生命保険について解説
(画像:PIXTA)

不動産投資で物件購入時に金融機関からの融資を利用した場合、団体信用生命保険に加入することが一般的です。「不動産投資が生命保険の代わりになる」というのは、団体信用生命保険に加入することによって、ローン契約者の死亡時に保険金により残債が一括で支払われ、不動産を残債なしで資産として残すことができることから言われています。

生命保険は遺族に現金を残すのに対し、不動産投資(団体信用生命保険)は遺族に不動産を残します。これにより、不動産がローンの返済なしで遺族に残され、さらにその不動産から月々の収益が得られるため、不労所得が発生し、一定の収入が生まれるといった点が異なります。

団体信用生命保険とは?
団体信用生命保険(団信)は、住宅ローンや不動産投資ローンを組む際に加入する保険で、ローン契約者が死亡したり高度障害を負ったりした場合に、ローンの残債が一括で返済される仕組み。

生活費の補填にはならないため別で生命保険に加入すべき

団体信用生命保険の保険金は契約者ではなく金融機関に支払われることで、残債がなくなります。そのため、ローンの返済は不要になりますが、契約者に直接保険金が支払われるわけではないので、生活費の補填等にお金を使うことはできません。

一方で生命保険は、契約者が亡くなった場合や病気・けがをした場合に、指定された受取人に対して現金で保険金が支払われます。この保険金は、残された家族の生活費、教育費、その他の必要経費に充てることができます。

団体信用生命保険に加入していても、生活費の補填や経済的なサポートを得たい場合には、別途生命保険に加入する必要があります。生命保険に加入することで、万が一の際に家族が経済的に困らないように備えることができます。例えば、契約者が亡くなった際に2,000万円などの生命保険金を受け取れるようにしておけば、残った家族がその後の生活資金として活用できます。

団体信用生命保険と生命保険の違い

ここでは団体信用生命保険と生命保険の以下の違いについて解説します。

・加入のタイミング
・保険金の受取人
・保険料の支払い
・保障内容の柔軟性

加入のタイミング

生命保険は被保険者の自由なタイミングで加入できるのに対し、団体信用生命保険は主に住宅ローンや不動産投資ローンの借り入れをする際に加入するものであり、中途加入はできません。

生命保険は被保険者が自分のライフステージや経済状況に応じて柔軟に加入時期を選べます。例えば、結婚や子供の誕生など、家族が増えるタイミングで生命保険に加入して、収入が増えたタイミングや住宅ローンを組む前後など、経済状況に応じて見直しを行うことができます。

一方、団体信用生命保険はローン借入時にのみ加入が認められ、借入後に追加で加入することや条件を変更することはできません。このため、ローン借入検討時に団体信用生命保険の加入についても検討し、適切な保障内容の商品を選ぶ必要があります。また、金融機関ごとに取り扱っている商品が異なるほか、同じ金融機関でも複数の団体信用生命保険を取り扱っているケースもあるため、ローン借入にあたっては金利や手数料のみならず、団体信用生命保険の保障内容も含めた総合的な比較検討をしましょう。

保険金の受取人

生命保険の保険金は契約者が指定した受取人に直接支払われます。これに対し、団体信用生命保険の保険金は金融機関に支払われ、ローンの残債に充当されます。そのため、団体信用生命保険は主に金融機関側のリスクヘッジを目的とした保険となります。

保険料の支払い

生命保険の保険料は契約者が直接支払うのに対し、団体信用生命保険の保険料はローンの金利に含まれることが一般的です。そのため、団体信用生命保険に加入することで追加の保険料負担はありませんが、その分ローンの金利が若干高く設定されることがあります。例えば、生活習慣病団信だと+0.1%など、保障範囲を追加すると金利も上乗せされるといった仕組みが一般的です。

保障内容の柔軟性

生命保険は、契約内容や保障内容を柔軟に設定でき、必要に応じて特約を追加したり、契約を変更したりすることが可能です。例えば、生命保険に医療特約やがん特約を追加することで、病気やケガに対する保障を強化することができます。また、契約者のライフステージや経済状況に応じて、保険金額や保険期間を変更することもできます。

一方、団体信用生命保険は一度加入すると契約内容の変更や特約の追加が難しく、基本的には契約時の条件がそのまま適用されます。住宅ローンを組む際に加入した団体信用生命保険の契約内容を見直したい場合には、借換などで新たにローンを組み直す必要があるものの、手続きが煩雑であることに加えて費用もかかる一方、付加できる特約の選択肢は限られていることから、契約内容を見直すことはあまり現実的ではありません。そのため、ローン借入時にしっかりと比較検討しておくことが重要です。

団体信用生命保険のメリット

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(画像:PIXTA)

団体信用生命保険には、以下のようなメリットが存在します。

・ローン返済の安心感
・特定の疾病にも対応
・保険料の負担が軽減
・金融機関のリスク軽減

ローン返済の安心感

団体信用生命保険に加入することで、ローン契約者が死亡した場合や高度障害を負った場合に(死亡時のみ適用の保険もあります)、残された家族にローンの返済義務が生じません。保険金で残債が一括返済されるため、不動産を家族に対して残すことができます。そのため、家族がローン返済に追われることなく、物件を所有し続けることができ、大きな安心感を得ることができます。

特定の疾病にも対応

最近では、基本的な死亡・高度障害保障だけでなく、がんや3大疾病(がん、心筋梗塞、脳卒中)、さらには7大疾病や9大疾病など保障内容がより充実した団体信用生命保険商品も増えています。これにより、契約者が重い疾病に罹患した場合でも、ローン返済の負担を軽減することができます。

例えば、がん特約付きの団体信用生命保険に加入している場合、契約者ががんと診断された際に、保険金によりローンの残債が一括返済されます。このように、特定の疾病に対する保障があることで、契約者は治療に必要な資金を確保しつつ、経済的な心配を減らすことができます。

保険料の負担が軽減

団体信用生命保険の加入時に、すでに加入している生命保険や医療保険の見直しを検討するケースもあります。基本的な死亡・高度障害保障に加え、がんや3大疾病などの取り扱いも増えてきており、すでに加入している保険の見直しをすることで、結果として毎月の保険料の負担が軽減できる場合もあります。

金融機関のリスク軽減

団体信用生命保険は、金融機関にとっても大きなメリットがあります。ローン契約者が返済不能となった場合でも、保険金で残債がカバーされるため、貸し倒れリスクを大幅に軽減できます。

金融機関にとっては、リスク管理の一環として団体信用生命保険が重要な役割を果たしており、融資の安定性と信頼性を高める要素となります。このように団体信用生命保険は、金融機関と契約者の双方にリスクを軽減するものです。

団体信用生命保険のデメリット

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(画像:PIXTA)

団体信用生命保険には以下のようなデメリットも存在します。

・健康状態によって加入できない場合がある
・契約を変更できない場合がある
・特約料が所得控除の対象外になる
・不動産投資リスクを考慮する必要がある

健康状態によって加入できない場合がある

団体信用生命保険に加入するためには、契約者が一定の健康状態を満たす必要があります。契約者の過去の病歴や現在の健康状態が審査され、その結果によっては加入を拒否されることがあります。

例えば、過去に重篤な病気を患ったことがある場合や、現在の健康状態が不安定な場合には、団体信用生命保険の加入が認められないことがあります。これにより、住宅ローンや不動産投資ローンを利用する際に、団体信用生命保険に加入できず、ローンが組めないこともあります。

契約を変更できない場合がある

前述した通り、団体信用生命保険は基本的にローン借入時に加入し、その後の契約内容の変更や特約の追加が難しいです。借入時に設定された条件がそのまま適用されるため、契約後に保障内容を見直したい場合や、新たな特約を追加したい場合には、借換などで新たにローンを組み直す必要があります。

この手続きは煩雑で時間と労力がかかり、費用もかかるため、契約者にとっては大きな負担となります。また、特約の追加に関しても選択肢が限られているため、契約者のニーズに完全に対応できない場合があります。

特約料が所得控除の対象外になる

団体信用生命保険には基本的な死亡保障に加えて、がんや三大疾病(がん、心筋梗塞、脳卒中)に対応する特約が付加されることがあります。しかし、一般的な生命保険とは違い、これらの特約に対する保険料は、所得税の控除対象とはなりません。

特約付きの団体信用生命保険に加入する場合、その費用は全額自己負担となり、税金の負担軽減には寄与しません。特約の追加を検討する際には、総合的な費用負担を十分に考慮する必要があります。

不動産投資リスクを考慮する必要がある

団体信用生命保険は、死亡や病気など万一の際のローン返済に備えた保険であり、不動産投資自体のリスクを軽減するものではありません。不動産市場の変動、空室リスク、維持管理費用など、投資物件の収益性に影響を与える要因は依然として存在します。

例えば、不動産市場が下落した場合、物件の価値が減少し、売却益を得ることが難しくなる可能性があります。また、賃貸物件に空室が続いた場合、賃料収入が減少し、ローン返済や維持管理費用の負担が増加するリスクがあります。そのため、団体信用生命保険に加入しているからといって、そのほかの不動産投資のリスクが解消されるわけではなく、投資物件の選定や市場動向を監視することが重要となります。

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