登記簿謄本の取得方法と読み方

不動産投資を行うには、不動産取引に関する法律や実務の基本的知識が不可欠です。

基礎知識がないと、不動産業者や金融機関、専門職等と取引を進めるときにも、自分の思い通りに取引が進められなくなる危険性があるからです。

本コラムでは、3回シリーズで、皆様が不動産投資で後悔しないためのノウハウとして、司法書士である専門家の立場から、不動産投資家がまず知っておくべき法務・実務の基礎知識をご紹介します。

第1回は、『登記簿謄本の取得方法と読み方』です。

登記簿謄本の取得方法と読み方

不動産取引を行う際に、まず必要なのは「登記簿謄本」の取得です。実は、物件の「住所」のみ把握できていても、「登記簿謄本」を取得することはできないということをご存じでしょうか? 

登記簿謄本を取得するためには、不動産の「地番」や「家屋番号」が必要だからです。

ここでは、「登記簿謄本」の取得方法と、基本的な読み方について、初心者でもわかりやすくご紹介します。

登記簿謄本(登記事項証明書)とは

土地や建物など不動産の情報を得たい場合、まず確認するのが、不動産の客観的現況や権利関係等の登記事項を記載した「登記事項証明書」です。

かつては登記簿の原本が各管轄法務局に保管されており、交付請求があれば職員がその写しをとって交付していたため、「登記簿謄本」と呼ばれていました。

現在は、登記記録の原本は電子データで保管され、それを各法務局の登記官の認証付きで緑色の用紙(地紋紙)にプリントアウトした状態で交付されるため、「登記事項証明書」といいます。

主に不動産登記を扱う我々司法書士が、単に「謄本」といったら概ねこの「登記事項証明書」のことです。昨今では登記情報提供サービスhttps://www1.touki.or.jp)という、法務局の認証入りの登記事項証明書と同様の情報をよりコンパクトなPDFデータで取得できるサービスもあります。

ここでは、不動産の実務にならって登記事項証明書のことを単に「謄本」と呼ぶことにします。

登記簿謄本の取得方法

さて、この「謄本」には、不動産の現況や不動産に関する権利関係、権利を有する人の氏名・住所などが記載されています。

不動産登記制度というのは、そもそも権利関係を公示するのが狙いであるため、不動産に関する情報を知っていれば誰でも取得可能なのがこの「謄本」です。

「謄本」は、土地であれば地番、建物であれば家屋番号が分かってさえいれば、法務局で簡単に取得することができます。

不動産のことを調べる際は、まずこの謄本の取得がすべてのスタートとなります。もっとも、地番や家屋番号は、一般に使われている「住所」とは異なることに注意が必要です。

「住所」というのは基本的に、建物に付されるものですが、同じ「住所」が複数の建物に振られていることもあります。

このいわゆる「住所」と異なり、土地の地番や建物の家屋番号は、不動産を特定するためのものですので、基本的には一つの不動産につき一つ振られています。

「住所」から地番や家屋番号を割り出したいというニーズはとても多いのですが、実はこれが一筋縄ではいかず、謄本取得の際の最初のハードルといえます。

地番・家屋番号の調査

まずは各不動産の管轄法務局が設けている「地番照会」の番号に電話して、住所から地番を調べてもらうことになります。

法務局が提供するこの地番照会サービスにおいて電話を受けている職員は、ブルーマップという、住所と地番が記載された地図のデータを参照しながら、その住所に合致する地番を教えてくれます。

ブルーマップは各法務局にその管轄地域について、書籍またはデータ端末が備え付けられ、一般人も閲覧できるため、管轄法務局に赴いて自ら調べることもできます。

地番照会サービスのご案内電話では、原則として住所が分かれば土地の地番と、分譲マンションの家屋番号を調べることはできますが、戸建てや賃貸アパート等の家屋番号を照会することはできません。

また、土地でも一つの住所にいくつもの地番が存在する土地は、地番の特定が難しい場合もあります。

分譲マンション以外の、戸建てやビルなどの建物の家屋番号を調べる具体的な方法としては、まず建物の底地の地番を調べ、その土地上に建っている建物の家屋番号を調べるという手順を踏むことになります。

一筆の土地にいくつもの建物が建っていたり、建物が建った後に土地が分筆されて、当初の土地の地番がなくなっていたりすることもよくあるので、家屋番号の調査は慣れていないと結構大変な作業になることもあります。

土地の位置関係を「公図」「地積測量図」「建物図面」といった法務局備え付けの図面や、Googleマップ等の現況の地図と照らし合わせながら確認し、法務局において、地番と建物の情報を合わせて提供して申請したり、登記情報サービスの「土地からの建物検索」という機能を利用したりして、当たりをつけた土地上の家屋を洗い出し、建物を特定することになります。

この不動産の地番・家屋番号を調べる作業は、実は大変奥が深く、場合によってはかなり専門的な知識を要するため、基本的には不動産業者や司法書士・土地家屋調査士等の専門家にお任せすることになると思います。

それでも、不動産投資家を目指す方なら、登記情報サービスや地番照会サービスといった基本的なツールを知っておいても損はないはずです。

登記事項証明書の読み方の基本(出典:法務局「全部事項証明書(不動産登記)の見本」)

登記簿謄本の取得方法と読み方
(出典:法務局「全部事項証明書(不動産登記)の見本」)

  「謄本」は不動産の物理的現況について記録した表題部と、権利関係についた記録した権利部(甲区、乙区)からなっています。

【表題部】

登記簿謄本の取得方法と読み方
(出典:法務局「全部事項証明書(不動産登記)の見本」より一部加工)

土地であれば、所在、地番、地目、地積等からなる表題部。ここに記載されている所有者はあくまで表題部所有者(この登記記録がおこされた時の所有者)として表示されているだけで、正式に権利を主張できる者ではありません。

【権利部(甲区)】

登記簿謄本の取得方法と読み方
(出典:法務局「全部事項証明書(不動産登記)の見本」より一部加工)

権利関係を示す権利部の甲区には、所有権に関する事項が入ります。ここに所有者として登記されて初めて、対抗力(所有者であることを主張できる力)が備えられます。

この謄本からは、法務五郎さんという個人が、令和1年5月7日に表題部所有者である甲野太郎さんという個人から、売買により取得した土地であるということがわかります。

【権利部(乙区)】

登記簿謄本の取得方法と読み方
(出典:法務局「全部事項証明書(不動産登記)の見本」より一部加工)

権利関係でも、抵当権や地上権など、所有権以外の権利に関する事項が入ります。法務五郎さんはこの土地を買うために、南北銀行から4,000万円の融資を受けたことが分かります。

【共同担保目録】

登記簿謄本の取得方法と読み方
(出典:法務局「全部事項証明書(不動産登記)の見本」より一部加工)

担保権が設定されていて、この物件のほかにも共同で担保が設定されている場合に、目録に記載されます。 

共同担保の情報を取得したい場合は謄本の交付を申請する際に、共同担保目録を付す旨、請求する必要があります。

この謄本からは、当該土地とともに、その土地上の建物にも共同の抵当権が設定されていることが読み取れます。

皆様、いかがでしたでしょうか?登記簿謄本の取得方法と、基本的な読み方はよく理解できましたか?

次回は、謄本と同様に不動産取引に欠かせない『売買契約書及び重要事項説明書の盲点とチェックポイント』について解説します。

荻島一将司法書士
荻島一将
司法書士・行政書士ゆかり事務所 代表

住宅資材販売の会社で建具店、工務店、建設会社、ハウスメーカー、デベロッパー、設計事務所、ゼネコンを中心にルートセールスおよび新規顧客開拓に従事したのち、2013年に司法書士試験合格。
大手司法書士法人を経て、2018年に司法書士ゆかり事務所開業を開業。

司法書士(東京司法書士会所属)、行政書士(東京都行政書士会所属)、CFP®認定者(ファイナンシャル・プランナー)、宅地建物取引士。
manabu不動産投資に会員登録することで、下の3つの特典を受け取ることができます。

①会員限定のオリジナル記事が読める
②気になる著者をフォローできる
③気になる記事をクリップしてまとめ読みできる

- コラムの注意事項 -

- コラムに関する注意事項 - 本コラムは一般的な情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的とするものではありません。 当社が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づきますが、その正確性や確実性を保証するものではありません。 外部執筆者の方に本コラムを執筆いただいていますが、その内容は執筆者本人の見解等に基づくものであり、当社の見解等を示すものではありません。 本コラムの記載内容は、予告なしに変更されることがあります。