本稿では、個人事業主として開業する方法やメリット・デメリットについて解説する。
目次
法人を設立せずに個人で継続的な事業収入を得ている人
法人を設立せずに個人で継続的な事業収入を得ている人を個人事業主という。会社員として給与を得る場合とは税制上の立場などが大きく異なる。ただし副業をスタートするからといって必ずしも個人事業主になる必要はない。副業の収入状況や個人事業主のメリット・デメリットを比較しながら検討することが重要だ。
個人事業主として開業した場合としていない場合の違いには、以下のようなものがある。
項目 | 個人事業主の場合 | 個人事業主ではない場合 |
副業収入の税制区分 | 事業所得 | 雑所得 |
確定申告の方法 | 青色申告(事前申請が必要) | 白色申告 |
個人事業主になるための方法・手続き
個人事業主が開業する際に必要な手続きと主な提出書類は、以下の通りだ。
- 開業届
- 青色申告承認申請書
- 都道府県の個人事業税に関する申告書類
従業員を雇う場合は「青色事業専従者給与に関する届出書」や「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」などが必要となる。
開業届
開業届は、正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」といい納税地の税務署に提出する。個人事業主になるには、まずこの届け出が不可欠だ。手数料はかからず提出時はマイナンバーカードなどの本人確認書類が必要となる。罰則はないが提出期限は、原則開業から1ヵ月以内だ。
青色申告承認申請書
「所得税の青色申告承認申請書」は、確定申告において青色申告をするために税務署に提出する書類だ。特別控除などのメリットを得るためには出しておきたい。開業届と同時に提出することができる。1月16日以降を事業開始日とする場合は、事業開始日から2ヵ月以内に提出しないとその年は青色申告ができなくなり白色申告となる。
都道府県の個人事業税に関する申告書類
税務署への提出書類とは別に都道府県税事務所にも個人事業の開始を申告する。都道府県が管轄する個人事業税のためで、書類の名称は自治体によって異なる。
個人事業主になるメリット
副業でも個人事業主として開業すると以下のようなメリットがある。
青色申告特別控除などで節税できる
税務署に開業届を出したうえで事前に「青色申告承認申請書」も提出すれば確定申告で青色申告が可能となる。青色申告は、白色申告より最大65万円(電子申告または電子帳簿保存を行う場合)多く控除が受けられるため、節税しやすい。副業で一定以上の収入が見込める場合は、大きなメリットといえる。
副業の損失に対応しやすい
いざ副業を始めてみたものの最初のうちは経費が上回り赤字となってしまうことも考えられる。個人事業主で青色申告をする場合、損失や赤字を繰り越すことが可能だ。3年以内であれば、黒字が出たときに赤字を相殺できる。また異なる収入源の利益と損失を相殺する「損益通算」もある。会社員としての給与・賞与による収入と副業の損失を相殺できる仕組みだ。
社会的信用につながる
副業の業務において開業届を提出して個人事業主となっていることで信用を得やすく契約などで有利になる可能性がある。開業届では、任意で屋号をつけることも可能だ。そのため「屋号+個人名」の銀行口座の開設なども可能となる。
個人事業主になるデメリット
個人事業主となる場合は、メリットだけでなく以下のようなデメリットもある。
確定申告や経費管理の手間
上述したように青色申告によって節税対策ができることは、個人事業主になる大きなメリットの1つだ。しかし青色申告で最大65万円の特別控除を利用するには、確定申告で複式簿記が必要なだけでなく賃借対照表と損益計算書の添付やe-Taxを使った電子申告が必要となる。確定申告時はもちろん日々の経費管理も煩雑になる点もデメリットだ。
会計や簿記の知識がない人には、ハードルが高く感じるかもしれない。また副業の場合は、本業の仕事にも専念する必要があるため、スケジュール管理や休息時間の確保が難しい一面もある。
失業保険がもらえないことも
万一本業の仕事を失った場合は、通常雇用保険をかけているため、失業保険を受け取ることができる。しかし個人事業主として開業していると無職(失業の状態)にはならないため、失業保険をもらうことができない。
会社員でもできる副業・投資はどんなものがある?
会社員を続けながら別の方法で収入を増やしたい場合、本業への支障がないことが大前提だ。そのため時間や体力を多く費やしたり日時や場所を制限されたりするような業務を副業にすることは難しいかもしれない。副業に向いている事例としては、クラウドソーシングなどでの自分のスキルに合った仕事の受注やアフィリエイトやSNSを使って収入を得る方法もある。
また株式投資や不動産投資なども選択肢の1つだ。これらは、副業として会社からの規制を受ける可能性が低いという特徴がある。ただし、株式投資自体が禁止されている職業や不動産投資を事業的な規模で行うときは規制を受けるため、注意が必要だ。会社員の不動産投資については、以下の記事で触れている。
【関連記事】サラリーマンの不動産投資は副業になる?副業として制限を受ける可能性が低い理由を解説
いずれの場合も自身の職業や会社における副業制限の有無や内容を事前にきちんと把握しておくことが重要だ。
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