
不動産投資を第二の収入源や効率的な資産形成といった目的で検討するサラリーマンも少なくない。しかし、不動産投資は「不動産賃貸業」という側面を持ち合わせているため、「副業」に該当するとして会社から制限されることを懸念するサラリーマンも多いのではないだろうか。
日本における副業の実態
2017年に国家レベルで打ち出された「働き方改革実行計画」では、副業の推進というテーマが挙げられた。
副業の推進が国家レベルで推奨されている一方で、大手人材業者パーソルグループが実施したアンケート調査によれば、実際に副業に取り組んでいると回答した割合は約10%にとどまっている。※1
しかしながら、「副業をしたいと思いますか」という質問に対しては全体の64.3%が「すぐにでもしたい」または「いずれしたい」と回答している。中でも20代の層において、その傾向が顕著に見られ、男性の82%、女性の70%が上記のように回答している。
副業を推奨する流れがあり、副業に対して前向きな姿勢を持つ層が多いにもかかわらず、実際に副業に取り組んでいる割合が低いのはなぜだろう。
上記のアンケート調査では、「あなたがお勤めの会社で『副業』が認められていますか」という質問に対して「認められている」と回答した割合は約30%にとどまっている。
国家や一部の有名企業が積極的に社員の副業を推奨・承認したとしても、日本全体という視点で見れば、サラリーマンの副業が認められない文化が根強く残っていることは否定できない。
※1パーソルプロセス&テクノロジー ワークスイッチコンサルティング調べ 「2020年最新 年代別副業の潜在ニーズに関する意識調査レポート」
不動産投資は「副業」なのか
「副業」には明確な定義付けがなされていない。「副業」を「本業からの収入(会社からの給与収入等)以外の収入を得るための仕事」と広く解釈した場合、不動産投資は「副業」に該当する可能性がある。しかし、サラリーマンの不動産投資が「副業」であるとして会社から制限を受ける可能性は低いだろう。
副業ついての裁判例および厚生労働省の見解※2においては、会社が社員の副業を制限できるのは、以下4つのいずれかに該当する場合である。
- 労務提供上の支障となる場合
- 企業秘密が漏洩する場合
- 企業の名誉・信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
- 競業により企業の利益を害する場合
不動産投資が「副業」に該当するとして会社から全面的な制限を受けるとすると、相続によって偶然に賃貸物件を取得した場合や購入したマンションを転勤期間中のみ賃貸に出すといった場合にも会社から制限を受けることになってしまう。
勤務時間の大部分を個人の不動産投資に費やすことで本業に支障が出ている場合や不動産会社の社員が自社と利益相反になる不動産投資を行なっている場合などを除けば、不動産投資が「副業」であるとして会社から制限を受ける可能性は低いと考えられる。
※2 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
不動産投資を副業で行う際の注意点
サラリーマンが副業として不動産投資を行う際には、会社から制限を受けないような方法で行うという点に注意する必要があるだろう。
会社から制限を受けないようにするために、具体的に以下4つの点に注意して不動産投資を行うのが得策だ。
- 本業に支障をきたさない
- 企業秘密を漏洩しない
- 企業の名誉・信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為をしない
- 競業により企業の利益を害さない
個人の不動産投資に時間を費やして本業が疎かになったり、秘密裏に会社名義で個人用の投資物件を購入したり融資を受けたりするといった事態が発生すると、会社から不動産投資の制限を受けたり刑事訴追されたりすることもあり得るため、注意が必要だ。
サラリーマンが不動産投資に向いている5つの理由
サラリーマンが副収入を確保する方法として、不動産投資は有効な選択肢の一つである。
サラリーマンが不動産投資と相性が良く、不動産投資に向いている理由は以下5つだ。
- 金融機関からの融資を受けやすい
- 少額の自己資金でも始めやすい
- 競争優位性の高い市場で投資ができる
- 節税できる場合がある
- 万が一の事態に備えられる
金融機関からの融資を受けやすい
金融機関からの融資を前提とする不動産投資においては、サラリーマンであることが有利に働くこともあるだろう。
日本の金融機関は融資申込者の年収・勤務先・現職での勤続年数・保有資産といった個人属性を重要視する傾向があることから、サラリーマンは融資を受けやすい。
金融機関には、「サラリーマンは毎月安定的な給与収入があり、勤続年数の経過とともに年収および可処分所得が増える」という考え方が根強いことが多い。そのため、サラリーマンは金融機関からの評価が高くなる傾向にある。
少額の自己資金でも始めやすい
不動産投資においては融資というレバレッジの活用ができれば、自己資金以上の規模で投資をすることが可能である。
たとえば5,000万円分の資産を購入する場合、レバレッジが利かない投資であれば5,000万円のキャッシュが必要になるが、不動産投資の場合は融資というレバレッジの活用によって数百万円程度のキャッシュで5,000万円分の資産を購入できることがある。
このように、融資を活用すれば投資家は少額の自己資金で大きな投資のチャンスを掴むことが可能だ。
競争相手の少ない市場で投資できるチャンスがある
不動産投資においては、物件購入にかかる費用の全額を賄える自己資金、または金融機関の融資審査を通過できる信用が必要だ。そのため、株式投資のように誰もが容易に参入できるものではない。
サラリーマンは金融機関からの融資を受けやすいことから、不動産投資の参入障壁を超えられる可能性が十分にあるため、クローズで競争相手の少ない市場で投資できるチャンスがある。
不動産投資の市場においては、優良物件はオープンに出回る前に水面下でクローズに取引されることがあり、水面下で取引される優良物件の情報がいち早く回ってくるのは「物件を買える人」、すなわち融資を受けられる人だ。
不動産ブローカーは、物件の売買を成立させてはじめて手数料をもらえるビジネスだ。そのため、物件情報は「物件を買える人」にいち早く回すことが多い。
節税できる場合がある
不動産投資においては、所有する建物に発生する減価償却費という経費を活用することで節税できる場合がある。
不動産賃貸業で発生した赤字と本業の給与所得とを合算することで、所得税の還付や翌年度の住民税を減額できる。
減価償却費とは、建物および設備の経年劣化を毎年一定の割合または金額で経費として計上するものであり、実際の出費を伴わずに帳簿上だけの経費を計上することができる。そのため、不動産賃貸業の帳簿上の損益を赤字にすることができる場合がある。
減価償却費は建物の構造や築年数等によって計上できる金額が異なるため、必ず節税できるものではないが、投資する物件によっては節税効果も期待できる。
万が一の事態に備えられる
サラリーマンは、病気や怪我等の万が一の事態で働けなくなってしまうと、給与収入が途絶えてしまうリスクがある。
働けなくなるリスクへの対処は生命保険への加入によって軽減できる場合があるが、不動産投資で第二の収入源を確保しておくことも有効なリスクヘッジの手段の一つになり得るだろう。
サラリーマンでも不動産投資で副収入を作れる時代
サラリーマンの副業への意識が高い現代において、不動産投資は会社から制限を受ける可能性が低い上、サラリーマンであることが有利に働くことがある。そのため、副収入を作る有効な選択肢の一つといえるだろう。
サラリーマンが不動産投資を行う際には、本業に支障をきたしたり勤務先の利益を害したりしないように注意する必要がある。
割く時間と労力の点において、本業とのバランスを考えながら副収入の確保と資産形成を図っていくことがサラリーマンの不動産投資には重要だ。
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