相続した空き家で賃貸経営した際のメリット・デメリット
(画像=takasu/stock.adobe.com)

空き家を所有すると意外に維持費がかかるケースがある。所有している空き家を賃貸することで家賃収入を得て維持費と相殺することも可能になるが、損をしないためにメリットだけでなくデメリット(注意点)を把握しておくことが大切だ。あわせて空き家による賃貸経営を始めるまでのステップもしっかりと押さえておきたい。本記事では、これらの情報を初心者にもわかりやすく紹介していく。

空き家の維持にはどんな費用がかかる?

はじめに空き家の維持にかかる費用について整理してみよう。主な維持費の項目は、次の通りだ。

  1. 固定資産税、都市計画税
  2. 庭の除草や剪定(せんてい)
  3. 建物の修繕費
  4. 雪下ろし、除雪

維持費1.固定資産税、都市計画税

たとえ空き家状態でも1月1日時点で所有している土地や建物には、固定資産税(※課税標準×1.4%など)や都市計画税(※課税標準×0.3%など)が毎年かかる。特に地価の高い首都圏や都市部などでは、負担が重くなりやすいため要注意だ。

※固定資産税や都市計画税は自治体によって異なる

維持費2.庭の草刈りや剪定(せんてい)

防犯面や防災面で庭の草刈りや除草が必要になることがあるが、ワンシーズンで作業が数回必要となるケースもある。さらに庭に木が植えてあると剪定なども必要だ。

維持費3.建物の修繕費

なかには「空き家なのに修繕が必要?」感じる人もいるだろう。しかし建物の傷みを最小限に抑えることを考えると窓や外壁などの最低限の修繕は必要だ。

維持費4.雪下ろし、除雪

空き家のある場所が雪国の場合、雪下ろしや除雪などの費用も必須だ。これらの作業を怠ると雪の重みで建物が損壊したり近隣に多大な迷惑をかけたりする可能性がある。

空き家の維持費の一例

空き家の維持費がどれくらいかについては、立地や条件によってケースバイケースだ。以下で一例を見てみよう。

空き家の維持費(年間11万円)の内訳
固定資産税・都市計画税約8.5万円
草刈り
(ワンシーズン1回)
約 2.5万円
※固定資産税は、神奈川県、土地面積約100㎡、建物面積約75㎡、築20年以上の条件で算出

上記の場合、10年間で110万円ほどの維持費がかかる

空き家で賃貸経営することは可能か?

空き家の維持費を捻出する方法の1つが賃貸経営だ。近年は、コロナ禍によって在宅ワークの普及が進み、ワークスペースの確保を考えるようになったことや勤務先への通勤利便性の高い都心に住むメリットが薄れたことで戸建住宅の需要が高まっているようだ。この住まいへのニーズ変化は、空き家で賃貸経営を考える人にとってプラス材料だろう。なぜなら「戸建住宅の購入が難しい」「将来的は戸建住宅に住みたいが頭金がまだ足りない」といった層が賃貸住宅に流入する可能性があるからだ。

参考までに戸建住宅のニーズを確認するため国土交通省の新設住宅着工数データを見てみよう。2022年4月に公表された「新設住宅着工戸数(2021年度)」によると、持ち家が前年比+6.9%、分譲住宅の一戸建てが前年比+11.4%、新設住宅全体では前年比+6.6%であった。

次項で解説する戸建て賃貸のデメリットなどを参考にしながら空き家による賃貸経営を慎重に検討していきたい。

戸建て賃貸とは?1棟物件や区分マンションとの比較

空き家による戸建て賃貸を本格的に考える前に他の種類の賃貸物件との違いも理解しておきたい。1棟物件や区分マンションと比較した場合の戸建て賃貸のメリット・デメリットは、次の通りだ。

戸建て賃貸のメリット

戸建て賃貸の主なメリットは、以下の4つがある。

  • (区分マンションよりも)入居期間が長い傾向がある
  • 競合物件が少ないケースが多い
  • 最寄り駅から多少離れていても経営しやすい
  • 住居用物件として売却することもできる

戸建て賃貸のデメリット

一方で戸建て賃貸の主なデメリットは、以下の3つだ。

  • (区分マンションよりも)維持費や手間もかかる
  • (所有物件数が1戸だと)空室になると収入がゼロになる
  • 対象がファミリー層なのでターゲット層が絞られる

空き家で賃貸経営をしたときのメリット

空き家で賃貸経営をした際の主なメリットとして以下の3つが挙げられる。

  1. 家賃収入で維持費を相殺できる可能性がある
  2. 物件を所有し続けられる
  3. 物件管理が行き届きやすい

メリット1:家賃収入で維持費を相殺できる

空き家で賃貸経営をした際の1番のメリットは、家賃収入が得られることではないだろうか。空き家をそのまま所有し続けても固定資産税や修繕費、庭の草刈り代などの維持費が発生し続ける。空き家を賃貸経営で活用すればこれらの維持費を相殺できるだけでなく余った分は利益となる。

メリット2:物件を所有し続けられる

空き家の維持費の負担が重い場合は、将来的に空き家を手放す可能性もあるだろう。前述したように空き家を賃貸経営で活用して家賃収入を得られれば維持費の負担を軽くすることが期待できる。先祖代々の土地や思い入れのある実家など、自身では住まないものの売却することは躊躇してしまう場合でも保有しやすくなる。

メリット3:物件管理が行き届きやすい

誰も住んでいないと家は、傷みやすいといわれる。例えば強風で窓が割れたままになっているとそこから風雨が侵入して室内を傷めてしまう。また害虫が発生しても気づかれにくく建物の劣化が進みやすい。空き家を賃貸経営で活用すると入居者がいるため、建物が破損したときに適切な修繕が必要になる。その結果、建物の劣化に気づきやすく寿命を延ばすことにつながる。

空き家で賃貸経営をしたときのデメリット

空き家による賃貸経営は、あくまでもメリット・デメリットの両方を把握したうえで判断することが大切だ。主なデメリットとしては、以下の3つが挙げられる。

  1. 修繕コストがかかる
  2. 賃貸経営の手間がかかる
  3. 建物や土地を自由に使えない

デメリット1:修繕コストがかかる

長らく人が住んでいない空き家の場合は、建物がひどく傷んでいたり住宅設備が故障していたりするケースがよくある。これらが入居者募集のネックになりそうなときは、入居者募集を行う前後に大がかりなリフォームの必要に迫られるだろう。しかし建物の状態によっては、リフォーム費用が高額になることもある。

そのためリフォームをする前に「その費用をどれくらいの期間で回収できるか」を確認することが重要だ。

デメリット2:賃貸経営の手間がかかる

多忙で時間がない人にとっては、賃貸経営の手間が負担になるかもしれない。賃貸経営の管理業務を専門業者に委託することは可能だが、それでもオーナーにタスクが発生する。タスクの内容としては、管理会社とのコミュニケーションや確定申告に関する業務などが挙げられる。

デメリット3:建物や土地を自由に使えない

入居者は、借地借家法という手厚い法律で守られている。そのため空き家を貸してしまうと「オーナー自身が住みたい」「他の用途に使いたい」と思っても自由に退去させることはできない。なぜなら一般的な賃貸借契約では、借主が住み続けたい限りオーナー側の正当事由が認められにくく契約解除が難しいからだ。

将来的に自分で空き家を使いたいなら契約期間の満了で契約が終わるのが原則の「定期建物賃貸借契約」を選択するのがよいだろう。

空き家で賃貸経営するまでの4ステップ

空き家で賃貸経営を始めるまでには、以下の4ステップを踏むことが必要だ。各項目の内容をチェックしていこう。

  1. 家賃相場をリサーチする
  2. 仲介会社と契約する
  3. 入居者募集や内覧対応を行う
  4. 入居者と賃貸借契約を交わす

ステップ1:家賃相場をリサーチする

空き家で賃貸経営を行う際は、まず不動産ポータルサイトや近隣の仲介会社などを利用して家賃相場をリサーチする。その際のポイントは、なるべく条件の近い物件の家賃相場を調べること。具体的には、以下の項目を意識するとよいだろう。

  • エリア(立地)
  • 周辺施設の充実度
  • 最寄り駅からの徒歩分数
  • 築年数
  • 間取り
  • 床面積、敷地面積
  • 駐車場の有無 など

ステップ2:仲介会社と媒介契約を交わす

入居者を見つけるための入居者募集・内見対応などの業務は、オーナー自身でもできる。しかし効率を考えると仲介会社に委託するのがよいだろう。一般的には、仲介会社と媒介契約を交わしたうえで管理手数料などの報酬を支払えば委託できる。

ステップ3:入居者募集や内見対応を行う

ステップ2で紹介したように入居者募集・内見対応などの業務は、媒介契約を交わしていれば仲介会社が行ってくれる。ただし見込み客が集まらなかったり内見申し込みはあるが決まらなかったりする場合は、以下のような改善策の検討が必要だ。

  • リフォームをする
  • 家賃を下げる
  • 敷金を減らす(なくす)など

ステップ4:入居者と賃貸借契約を交わす

特に古い空き家の場合、建物が傷んでいるため、建物や設備に不具合があることも少なくない。この不具合を借主が契約前に了承していないと契約後に「契約不適合責任」を追求されるリスクがある。これを解消するには、賃貸借契約に反映したり事前説明を丁寧にしたりするといった対処が必要だ。

【関連記事】戸建ての不動産投資とは?成功するために把握しておきたい物件の選び方

特に大がかりなリフォームが必要な空き家は要注意

本稿で解説してきたように空き家による賃貸経営を検討する際は、家賃収入が得られるメリットだけでなくデメリット(修繕コストや賃貸経営の手間など)を知ることも大切だ。特に空き家を貸し出すにあたって大がかりなリフォームが必要な場合は、コスト負担が重くなることもある。そのため事前に概算費用を確認したり相見積もりをとったりしながら慎重に判断したい。

検討した結果「賃貸経営をしない」と判断した場合は、費用をかけずに維持する方法を模索してみよう。また有利な条件で売却することも方法の1つだ。

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