【税務監修】サラリーマン投資家が不動産投資で得られる具体的な節税効果はどのくらい?算出方法を徹底シミュレーション!
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給与収入以外で収入を得る不動産投資が注目を集めている。また、場合によっては不動産投資を行うことで節税効果を得られることもある。実際に、給与所得者が不動産投資で得られる節税効果はどのくらいなのだろうか。

不動産投資に欠かせない不動産所得の計算や具体的な事例を基に、不動産投資で得られる節税効果について解説する。

日本における所得税の仕組み

給与所得以外に不動産投資による不動産所得がある場合、給与所得と不動産所得を合算し、社会保険料などの各種控除がなされた後の課税所得金額に税率を乗じることで所得税と住民税が確定する。

つまり、総合課税により算出された所得によって税額が確定するわけだが、日本の所得税制では所得が増えるほど税率が高くなる「超過累進課税制度」が採用されている。現状の所得税率は、課税所得195万円以下の5%を下限とし、10%、20%、23%、33%、40%と上がっていき、4,000万円超の45%が最高税率だ。

ちなみに住民税は所得に関わらず同額が適用される「均等割」と「所得割」から計算され、所得割の税率は一律10%となっていることから、所得税と合わせると55%が最高税率となる。

そして、2037(令和19)年までは、原則として所得税にその年の基準所得税額の2.1%で計算された「復興特別所得税」を合わせて納める必要がある。

不動産投資で得られる節税効果とは?

では、実際に不動産投資を行うことで得られる節税効果について、以下の条件を想定してシミュレーションしていこう。

(条件)
・サラリーマン年収900万円(38才)
・23区の中古一棟アパート(全8戸)・木造・築10年
・物件価格9,000万円(土地:5,000万円、建物:4,000万円)
・購入時にかかった諸費用:物件価格の5%=450万円
・年間家賃収入:満室時624万円(=6万5,000円×8戸×12ヵ月)
・空室:8戸中2戸が3ヵ月間空室
・運営費用:年間満室想定家賃収入の20%(125万円)
・減価償却期間(耐用年数):法定耐用年数22年-築年数10年+築年数10年×20%=14年
・減価償却費: 4,000万円×耐用年数14年の定額法償却率0.072=288万円
・自己資金:物件取得費の10%(900万円)
・ローン:借入期間20年、借入金額8,100万円、金利2%

まず不動産所得金額を計算する

不動産所得の金額は、不動産収入からそれにかかった費用を差し引くことで求められる。この場合の収入は、実効総収入:年間満室時賃料(624万円)−空室期間の賃料(6万5,000円×2戸×3ヵ月)=585万円となる。

また費用には、運営費用や購入時にかかった諸費用、さらには減価償却費も含まれるため、最終的な不動産所得金額は、純営業収益:585万円-運営費用(125万円)-物件購入時の諸費用(450万円)-減価償却費(288万円)−初年度ローン利息(約158万円)=-436万円となる。

不動産投資を行わなかった場合の給与所得金額

給与所得金額は、給与収入から給与所得控除額そして各種所得控除を差し引いた額となる。ちなみに年収900万円における給与所得控除額は195万円なので、給与所得金額は705万円だ。所得控除が「社会保険料控除」「基礎控除」のみの場合、年収900万円の年間社会保険料は約115万円であることから、課税所得金額は705万円-社会保険料控除(115万円)-基礎控除(48万円)=542万円であり、それに対する所得税率は20%(控除額427,500円)であることから、最終的な所得税額は65万6,500円となる。

住民税の場合は基礎控除額が43万円となることから、住民税の所得割を計算する際の課税所得金額は705万円-社会保険料控除(115万円)-基礎控除(43万円)=547万円となり、その10%である約55万円が住民税の所得割額となる。

不動産投資でマイナスが出た場合は損益通算可能

不動産投資における不動産所得金額にマイナスが発生した場合は、給与所得金額と損益通算が可能だ。したがって、総所得金額は705万円-436万円=269万円となり、そこから社会保険料控除および基礎控除額を差し引いた106万円が課税所得金額となる。

そして106万円に対する所得税率は5%(控除額なし)となり、最終的な所得税は5万3,000円である。さらに住民税の所得割額は、106万円-社会保険料控除(115万円)−基礎控除(43万円)=0円となり、均等割額である5,000円のみの負担となる。

このように不動産投資を行うことで、所得税では65万6,500円-5万3,000円=約60万円、住民税では55万円、合計で115万円の節税効果を得ることができる。不動産所得のマイナスを損益通算することで、かなりの節税効果を生む結果につながるということだ。

節税のポイントは減価償却

上の計算では、取得時の初期費用を含めた不動産投資開始1年目を想定している。不動産を購入した年においては、その不動産の取得に関わる費用を経費計上することができるため、節税効果が高いといえる。

しかし、その後も毎年288万円の減価償却費を経費として計上することで、収入を圧縮することができ、最終的に節税効果を生むことが可能である。

減価償却費を考えるうえでのポイント

減価償却費は耐用年数に基づいた乗率を用いて計算する。その際、中古物件の場合、法定耐用年数から経過年数を差し引いた年数に経過年数の20%にあたる年数を加えて計算する。さらに、耐用年数を過ぎている物件であれば、その法定耐用年数に20%を乗じた年数が耐用年数となる。

したがって、中古物件で、耐用年数を超えている場合でも、減価償却は可能であることを覚えておこう。ただし、あまりに耐用年数を過ぎた物件の場合、修繕費用が想定外にかかってしまうというリスクも考慮し、購入の際には、これまでに修繕工事を行っているか、これから発生する修繕工事費用はどのくらいかなどを見極めたうえで購入を決めることをおすすめする。また、減価償却費が計上できるのは耐用年数までであることにも注意しておきたい。

青色申告の制度を併用し、更なる節税効果を

不動産所得がある場合、できれば青色申告で行うことをおすすめする。青色申告は最大65万円の控除や専従者給与を経費に計上できるほか、不動産所得における損失合計所得金額がマイナスとなった場合はこれを3年間繰り越すことができるメリットがある。

また、事業規模を拡大することを視野に入れているなら、個人よりも税率が低く設定されている法人化を検討してもいいだろう。法人化することで、経費の範囲が広がる。

自分がどのような不動産投資を行っていきたいのかを考えながら、不動産投資の形態を考えていくことも、節税を考えるうえで重要なポイントだといえる。

宮路 幸人
税務に関する記述の監修

宮路 幸人
税理士・CFP・宅建士・マンション管理士

会計事務所での長い勤務経験で培った豊富な実務知識により、会計処理・税務処理および経営や税務に関する相談など、さまざまな問題に対応。宅地建物取引士、マンション管理士等の資格を保有し、不動産と相続関連に強みを発揮する。特に相続関連では、税務面だけでなく、家族の幸せを重視したトータルでの提案を行っており、軽いフットワークでお客さまのニーズに応えることをモットーとする。離島支援活動にも積極的。
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