アパート経営の経費にできるもの、できないものは?
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アパート経営を考えているなら「何を経費にすることができるのか」を理解しておくことも大事だ。なぜなら賃貸経営は、確定申告の際に経費が増えると課税所得を圧縮でき所得税・住民税が少なくなる仕組みだからだ。ここでは、アパート経営の経費にできるもの、できないものを具体的に解説する。

アパート経営の経費にできるものは?主な10項目を紹介

一口に「アパート経営の経費にできるもの」といっても種類はさまざまだ。主な10項目を一覧化すると次のようになる。

項目内容
1.減価償却費建物や住宅附属設備などの購入費を一定年数(法定耐用年数)で分けて経費計上
2.借入金の利息投資用不動産ローンの返済額のうち利息部分
3.保険料所有するアパートにかけている保険料
4.各種税金(租税公課)固定資産税/都市計画税、不動産取得税、印紙税など
5.共用部の諸費用水道光熱費、清掃費、ホームセキュリティの料金など
6.入居者募集費用仲介会社の広告料(AD)、賃貸情報メディアの掲載費など
7.修繕費建物や住宅附属設備の劣化・破損した部分の修繕費(交換含む)
8.専門家の報酬アパート経営に関わる税理士、司法書士、弁護士の報酬
9.青色事業専従者給与アパート経営を手伝ってくれる家族の報酬
10.管理委託費入居者や建物の管理を専門業者に代行してもらう費用

上記の各項目の内容について注意点を交えながら紹介していく。

1.減価償却費

減価償却費は、アパート経営の経費のなかでも特に金額が大きいため、重要だ。不動産投資における減価償却費とは、建物や住宅附属設備などの購入費を一定年数に分けて経費として計上していくものである。ただし建物と住宅附属設備では、経費を計上できる期間が違う点に注意が必要だ。経費計上できる期間を「法定耐用年数」と呼び、建物の構造によって年数が変わってくる。

構造別の法定耐用年数の一例は、以下の通りだ。

構造法定耐用年数
木造22年
軽量鉄骨造19年または27年
重量鉄骨造34年
鉄筋コンクリート造47年
出典:国税庁タックスアンサー「No.2100 減価償却のあらまし」より株式会社ZUU作成

一方、住宅附属設備の法定耐用年数は設備ごとに違う。一例は以下の通りだ。

設備内容法定耐用年数
電気設備や給排水設備15年
冷暖房/通風設備13年または15年
消火/排煙設備8年
出典:国税庁タックスアンサー「No.2100 減価償却のあらまし」より株式会社ZUU作成

2.借入金の利息

アパート経営では、建物・土地の購入費や諸費用を投資用不動産ローンでまかなうケースも多いだろう。借入金の返済額のうち利息部分は、完済するまで毎年経費として計上することができる。

3.保険料

アパート経営に関わる保険料も経費にすることができる。例えば以下のような種類の保険が対象だ。

  • 火災保険
  • 地震保険
  • 水災保険
  • 施設賠償責任保険
  • 孤独死保険 など

ただし複数年の保険料を一括で支払った場合は、対象の年の保険料だけを計算して経費計上することに注意が必要である。

4.各種税金(租税公課)

アパート経営で発生する各種税金も経費にすることができる。具体的には、以下の種類の税金だ。

  • 固定資産税/都市計画税
  • 不動産取得税
  • 登録免許税
  • 印紙税
  • 事業税(一定規模の場合、個人でもかかる)

5.共用部の諸費用

アパート共用部にかかった水道光熱費や清掃費用なども経費にすることが可能だ。またアパート一棟で契約しているホームセキュリティ(警備・防犯)サービスの料金なども経費として扱える。

6.入居者募集費用

入居者募集にかかった費用もアパート経営の経費にすることができる。具体的には、賃貸情報サイトで物件情報を紹介する際の掲載料などだ。あわせて仲介会社が入居者を見つけたときの広告料も経費にできる。これは、不動産業界の慣例で「広告料(AD)」と呼ばれているが成功報酬の意味合いが強い。

7.修繕費

アパートの建物や住宅附属設備などが劣化したり壊れたりした場合は、その修繕費(交換も含む)も経費にすることが可能だ。ただし修繕は「原状回復=元の状態に戻すこと」が基本という点に注意が必要である。修繕をするときにグレードや性能を高めたりするとその分は「取得原価扱い」になるため、経費算入できない。これを「資本的支出」という。

8.専門家の報酬

アパート経営の確定申告業務などを税理士へ依頼した場合の報酬も経費にすることができる。また司法書士の報酬(不動産登記の代行など)、弁護士の報酬(入居者との折衝やトラブル解決など)も同様に経費算入が可能だ。

9.青色事業専従者給与

アパート経営の業務を(同じ生計の)配偶者や家族にサポートしてもらった場合、その分の費用は経費にすることができる。具体的な業務例は、以下の通りだ。

  • 入居者や業者とのコミュニケーション業務
  • アパート周辺や共有部の清掃
  • 入居者募集に関する業務
  • 確定申告に関する業務 など

配偶者や家族の人件費を経費にする仕組みを「青色事業専従者給与」というが、これを使うためには、条件がいくつかある。例えば「家族の年齢が15歳以上」「所得税を青色申告で行っている」「税務署に家族を青色事業専従者として届け出ている」などだ。

10.委託管理費

入居者や建物の管理を専門の管理会社に代行してもらう場合の「委託管理費」もアパート経営の経費として計上できる。管理委託費の相場は、地域によって異なるが家賃の5%(3~8%程度)が相場として認識しておきたい。

アパート経営の経費にできないものは?

アパート経営に関連する費用でも経費にできないものもある。その代表的な項目は、以下の通りだ。

土地の購入費はアパート経営の経費にならない

アパート経営における初期費用のうち土地の購入費は、経費にできない。「建物は減価償却費にできるのに土地が経費にできないのはなぜだろう」と感じる人もいるのではないだろうか。しかし土地は、建物と異なり年数が経過しても価値が減らないと考えられているため、減価償却はできない。これは、アパートの売却時をイメージするとわかりやすいだろう。

例えば建物は、年数が経つほど劣化して価値が減っていくため、売却時にはその分を考慮して取引される。一方で土地は、年数が経っても価値は変わらず地価が同じであれば購入時に近い価格で取引されやすい。

借入金の元本や所得税・住民税も経費にならない

投資用不動産ローンにおける借入金の返済額のうち元本は、アパート経営の経費にすることができない。またオーナーが納める所得税や住民税も経費計上はできない。これらは、利息や他の税金と混同しやすいため、要注意だ。

飲食費、旅費交通費、車両費……アパート経営の経費になる?

「アパート経営の経費として計上できるもの」というテーマでよくある疑問は、以下のような項目を経費にできるか否かというものだ。

  • 飲食費(管理会社との打ち合わせなど)
  • 旅費交通費(物件の管理・視察の交通費や宿泊費など)
  • 新聞図書費(書籍代、新聞や雑誌の購読費など)
  • 消耗品費(日用品や事務機器の代金など)
  • 通信費(電話やネットの料金、切手代など)
  • 車両費(ガソリン代や整備費など)

これらの項目が経費として計上できるかは、次の3つの基準でおおむね判断できる。

  1. アパート経営に欠かせない経費か?
  2. アパート経営と直接関わる経費か?
  3. 「アパート経営の分」と「そうでない分」を明確に線引きできるか?

上記の基準にあてはまる場合は、アパート経営の経費として扱える可能性が高い。

特に要注意なアパート経営の経費は?

ここでは「アパート経営の経費にできるもの、できないもの」について解説してきた。その内容をまとめると次のようになる。

アパート経営の経費になるもの(アパート経営に直接関わる)
減価償却費、借入金の利息、保険料、各種税金、共用部の諸費用、入居者募集費用、修繕費、専門家の報酬、青色事業専従者給与、委託管理費など
条件にあてはまればアパート経営の経費になるもの飲食費、旅費交通費、新聞図書費、消耗品費、通信費、車両費など
アパート経営の経費にならないもの土地の購入費、借入金の元本、所得税・住民税など

上記のうち要注意なのは「条件にあてはまればアパート経営の経費になるもの」だ。判断が難しいケースも多いため、条件に本当にあてはまっているかを税理士に確認するのが無難だろう。またアパート経営と私用の両方で使った費用は、適切な割合を決めて経費算入する必要がある。「どれくらいの割合にするか」については感覚ではなく税理士の助言・指導に基づいて決めるのが得策だ。

宮路 幸人
税務に関する記述の監修

宮路 幸人
税理士・CFP・宅建士・マンション管理士

会計事務所での長い勤務経験で培った豊富な実務知識により、会計処理・税務処理および経営や税務に関する相談など、さまざまな問題に対応。宅地建物取引士、マンション管理士等の資格を保有し、不動産と相続関連に強みを発揮する。特に相続関連では、税務面だけでなく、家族の幸せを重視したトータルでの提案を行っており、軽いフットワークでお客さまのニーズに応えることをモットーとする。離島支援活動にも積極的。
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