オーナーとして知っておこう!アパート経営でのトラブルと対処法8選
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アパート経営には、入居者や管理会社、仲介会社をはじめとする多くの利害関係者が携わるため、互いの利益が相反してトラブルになることも少なくない。各利害関係者の存在なくしてアパート経営は成り立たないため、トラブルを未然に防ぐと同時にトラブルが発生した際に穏便かつ円滑に対処する力がオーナーには求められる。

本記事では、アパート経営をするうえで特に重要な利害関係者である入居者・不動産会社との間で生じ得るトラブルと対処法を8つ解説していく。

入居者とのトラブル4選

入居者との間で起こり得る主なトラブルとしては、以下の4つが挙げられる。

  • 家賃滞納が続いている入居者がいる
  • 設備の故障を理由に家賃減額を求められた
  • 入居者が物件内で死亡した
  • 原状回復工事費用のオーナー負担割合が大きい

入居者は、アパート経営の主な収入源である家賃収入をもたらす存在だ。入居者への対応は、経営の根幹である家賃収入に影響するため、迅速かつ適切な対応を心がけよう。

家賃滞納が続いている入居者がいる

家賃滞納があると入居者がいても家賃収入が得られない。また入居者が家賃滞納をしたまま入居し続けると次の入居者の募集もできない事態に発展するため、迅速に対応することが求められる。家賃滞納の対処法は、以下2パターンだ。

  • 入居者や連帯保証人、家賃保証会社のいずれかに支払ってもらう
  • 法的手続きに則って退去させる

まずは、入居者や連帯保証人、家賃保証会社のいずれかに滞納分を支払ってもらうよう交渉する。例えば家賃滞納が一時的な要因など本人に支払い能力がある場合は入居を継続し、支払い能力がない場合は法的手続きに則り退去させる対処が無難と言えるだろう。滞納分の回収ができず退去させることになった場合は、法律に則り以下の流れで対応しよう。

  • 督促状の送付
  • 内容証明郵便の送付
  • 家賃支払いまたは退去を求める裁判

裁判にまで発展することはできれば避けたいところではあるが、いずれの手続きでも法律に則って正しく行うことが重要なため、弁護士などの法律の専門家に相談することも選択肢の一つだ。

設備の故障を理由に家賃減額を求められた

住戸内のエアコンや給湯器などが故障すると入居者の生活に支障が出る可能性が高く、家賃減額を求められる可能性がある。2020年4月に改正された民法第611条には、賃借物の一部が使用できなくなった場合、それが入居者の責任によるものではないときは賃料が減額される旨が定められている。

民法611条
賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。

2賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。

引用:法令検索サイト「e-Gov 法令検索 民法第六百十一条」※この先は外部サイトに遷移します。

減額家賃を算出する際には、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が2020年3月に発表した「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」※この先は外部サイトに遷移します。を目安として参照して入居者と交渉するのが適切だろう。

入居者が物件内で死亡した

入居者が物件内で死亡した場合、住戸の賃借権や死亡した入居者の所有物は相続されるため、まずは入居者の相続人に以下の点を確認しよう。

  • 賃貸借契約を継続するか終了するか
  • 住戸内の残置物の処分方法

入居者の死因が自殺の場合、相続人に対して損害賠償を請求できる可能性がある。なぜなら自殺が心理的瑕疵となり建物の経済的価値が下がる可能性が高くなるからだ。裁判例によると「建物の経済的価値を下げないようにする」という入居者としての義務に違反する。入居者の死亡という「心理的瑕疵」がある場合、一定期間にわたって賃貸・売買の際に借主・買主に対してその旨を告知する義務がある。(自然死の場合は原則不要)

そのため自殺の場合は、取引において不利益が生じる可能性もあわせて認識しておこう。入居者の死亡に起因する家賃下落や空室などの損失が発生した場合に備えて損害保険や特約に加入しておくことも選択肢の一つだ。

原状回復工事費用のオーナー負担割合が大きい

退去時の原状回復工事では、工事項目ごとに入居者(賃借人)とオーナー(賃貸人)の費用負担が分かれている。管理会社から提示された見積書でオーナー負担の費用割合が高い場合には、見積書の内容と退去直後の住戸内の状況を照合してみるといいだろう。

国土交通省住宅局発表の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」には、費用負担の区分について以下の表のように一般化されている。

工事内容負担者
賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても発生すると考えられるものオーナー
建物価値を増大させるような修繕等
賃借人の住まい方、使い方次第で発生したりしなかったりすると考えられるもの入居者
賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても発生するものであるが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、損耗が発生・拡大したと考えられるもの

出典:国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」※この先は外部サイトに遷移します。より株式会社ZUU作成作成

喫煙によるクロスの変色や臭い、入居期間中に日常清掃を怠ったことによる汚損等は入居者負担での修繕となる可能性があるため、入居者と交渉してみよう。

不動産会社(仲介会社・管理会社・サブリース会社)とのトラブル4選

不動産会社との間で起こり得る主なトラブルは、以下の4つだ。

  • 契約に適合しない箇所があったことが購入後に発覚した
  • 管理会社の対応に不満がある
  • サブリース会社から家賃減額の通知があった
  • サブリースを解約したい

不動産会社は物件の購入・運営・売却のいずれにおいてもかかわる存在のため、どのフェーズでどのようなトラブルが起こり得るかを確認しておこう。

契約に適合しない箇所があったことが購入後に発覚した

アパートを購入した後に契約に適合しない箇所が発覚するトラブルも起こり得る。瑕疵について売買契約書や重要事項説明書に記載がなく売主側からその旨の説明を受けていない場合は、原則売主側に対して以下4つの主張が可能だ。

  • 追完請求(修補、代替物または不足分の引渡し)
  • 代金減額請求
  • 契約解除
  • 損害賠償請求

当該瑕疵が買主の帰責性(故意または過失)によって発生したものの場合、上記主張はできない。

管理会社の対応に不満がある

管理会社は、アパート経営における実務の多くをオーナーに代わって行う存在だ。そのため管理会社の対応の品質やスピードによって入居者の満足度や空室率などに影響する可能性がある。現管理会社の対応に不満がある場合は、別の管理会社に管理を委託するのも選択肢の一つだ。管理会社を変更する際には、以下の点に注意し円滑に管理業務の引き継ぎをしてもらうように差配しよう。

  • 現管理会社との解約にあたっての違約金の有無
  • 管理会社の連絡先や家賃の振込先などが変わる旨を入居者に通知してもらう
  • 対応中のクレーム案件などがある場合は漏れなく引き継いでもらう

変更先の管理会社を選ぶ際は、「管理物件の空室率が低い」「対応が迅速」などアパート経営で課題となる事項に対して対応力を持っているかを基準にするといいだろう。

サブリース会社から家賃減額の通知があった

アパートを一括で借り上げているサブリース会社から家賃改定時に家賃減額の通知が来る場合がある。サブリース会社は、以下の図のようにオーナーから借りた物件を入居者に転貸している仕組みだ。家賃①と②の差額がサブリース会社の利益となる。②が減少するとサブリース会社は、自社の利益を確保するために①を減額する必要に迫られるのだ。

オーナーとして知っておこう!アパート経営でのトラブルと対処法8選

家賃減額の通知を受けた場合、オーナーとして取り得る対処法は以下の3つだ。

  • 全面的に応じる
  • 部分的に応じる
  • 全面的に拒絶する

必ずしも全面的に応じる義務はない点は認識しておきたい。しかしサブリース会社との交渉が決裂するとサブリース契約を解除される場合がある。サブリース契約が解除されるとオーナーが空室リスクを負担することになるため、サブリース会社との交渉は契約書をよく確認したうえで賃料減額の妥当性について慎重に協議するのが得策だ。

サブリースを解約したい

サブリース契約は、一度契約を締結するとオーナー側から簡単に解約することができない点は認識しておこう。なぜなら借地借家法第28条に「建物の賃貸借契約を更新しない旨の通知または解約の申入れを賃貸人(オーナー)から行う場合、正当の事由あると認められる必要がある」とうたわれているからだ。

借地借家法第28条
建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

「正当の事由」には、債務不履行で契約当事者間の信頼関係が破壊されていること(裁判例の見解)などが挙げられている。そのためオーナー側からサブリース契約を解約するのは容易ではないと考えられる。サブリースを解約する際には、契約書の解約条項において解約申し出の期限や解約に伴う違約金などに関する規定があるかを確認したうえで、サブリース会社に解約する旨の通知をしたい。

サブリース会社と合意が得られれば解約が成立するが、拒否された場合は、弁護士などの法律の専門家を交えた法的解決が必要になることから、まずは専門家に相談するのが無難だろう。

起こり得るトラブルを知り、スマートに対処しよう

アパート経営は、利害関係者が複数いるためさまざまなトラブルが起こり得る。トラブルを予見してコントロールすることは、オーナーとしての重要な素養の一つだ。トラブルを解決するにあたっては、適切な解決策を迅速に講じる必要がある。法律や各種ガイドラインについての知識を深めるとともに相談できる専門家との関係性を築いておけばスマートに対処することが期待できるだろう。

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