「一帯一路」(いったいいちろ)という言葉を知らなければビジネスパーソンとしては知識不足かもしれない。中国の習近平国家主席の肝いりで始まった広域経済圏構想のことで、アジア圏におけるその影響力の大きさは日本にとって決して無視できないものだ。本稿では一帯一路の最新情報を解説する。
「一帯一路」とは?「一帯」「一路」は何を示す?
「一帯一路」は、習近平国家主席が2013年に提唱してプロジェクトが動きだした。英語では、一般的に「Belt and Road Initiative(BRI)」もしくは「One Belt, One Road(OBOR)」と表現される。一帯一路構想は、中国と世界を陸と海の各ルートを通じて結び中国を拠点とした巨大な経済圏の構築を目指すというものだ。
・一帯
中央アジアと欧州を結ぶ陸路で「シルクロード経済ベルト」と呼ばれている。
・一路
南シナ海・インド洋・欧州をつなぐ海路のことで「21世紀の海上シルクロード」とも呼ばれる。
すでにこの一帯一路の構想に協力を表明している国は多く2021年12月時点で145ヵ国との間で協力文書などが締結。中国は、一帯一路構想を進めるため、陸路と海路の沿線の国で活発なインフラ投資を始めている。
中国の「一帯一路」の狙いは、新中国圏の拡大
中国政府の一帯一路の狙いは、どこにあるのだろうか。習国家主席が最も重要視していると考えられているのが親中圏の拡大だ。陸路と海路の沿線には発展途上国が多く、こうした国でインフラ投資を行えばその国の経済発展に寄与することになる。これらを通じて親中国が増えれば、結果として中国は自国の影響力が強く及ぶ。そのため経済圏を拡大していくことが可能になる。
すでにミャンマーやラオス、パキスタンなどで高速道路の建設や港湾の開発などが進められている。
日本にとっては脅威な存在、悪影響は免れない?
中国の一帯一路プロジェクトは、日本にとって脅威な存在だ。日本の民間企業は東南アジアの国々でビジネスを展開してきたが、一帯一路プロジェクトが進んで親中ムードが高まると日本企業のビジネス環境が悪化する可能性がある。またアジアの発展途上国では、しばしば大規模なインフラプロジェクトの受注をめぐって各国が争いを繰り広げている。
しかし各国政府が日本よりも中国との連携を重視すれば入札で不利になりかねない。特に日本の十八番ともいえる「新幹線」の売り込みには、向かい風となりそうだ。アジアでの中国の存在感の高まりは、こうした民間企業のビジネスやインフラプロジェクトへの影響だけにとどまらない。ある国で親中ムードが高まるということは、一方で親日ムードはしぼんでいく可能性が出てくるということだ。
親日ムードがしぼんでいけば日本のインバウンド観光にも影響が出てきたり日本製品の輸出に陰りが見えたりするかもしれない。そのため日本政府は、中国の一帯一路の動向に目を光らせている。
一帯一路の各国における動きは?
最後に一帯一路において各国で進められているインフラ整備の内容について触れておく。ミャンマーとラオスの例を紹介する。
ミャンマーと一帯一路:港湾や発電所の開発など
ミャンマーでは、一帯一路の取り組みの一環として中国の主導によって港湾や発電所の開発が進んでいる。港湾に関しては、ミャンマー西部ラカイン州チャウピューで開発が進み大型貨物船が入れるようにすることで「21世紀の海上シルクロード」の重要な拠点とする考えだ。具体的には、チャウピューの港湾は、中国南部の雲南省からインド洋への経過地点として機能する。
ラオスと一帯一路:ラオスで初めて本格的な鉄道開通
ラオスでは、中国とラオスを結ぶ国際鉄道が2021年12月3日に開通した。一帯一路では、ラオス・タイ・マレーシア・シンガポールを結ぶ鉄道を完成させる構想があり完成した中国ラオス鉄道はこのルートの起点に当たる。今までラオスには、本格的な鉄道路線がなかったため、ラオス国民にとって中国ラオス鉄道が完成したインパクトは大きい。
一帯一路に日本が対抗する方法はあるのか
一帯一路構想は、リアルタイムに進行しているプロジェクトだ。中国は、さまざまな事業の展開スピードが日本に比べて格段に早いため、日本政府および日本企業にとっては、すでに脅威を感じる存在といえるだろう。そのため一帯一路の対抗策となる議論をより盛んに行うことが必要だ。
2021年は、日本を含む主要7ヵ国(G7)が一帯一路に対抗するための構想として「Build Back Better World (B3W)」を打ち出したことが話題となった。同構想は、途上国向けのインフラ支援に関するものである。2022年も一帯一路に関するニュースがどんどん報じられるはずだ。
海外事業に活路を見出そうとしている日本企業が少なくない中、ビジネスパーソンはこうしたニュースをしっかりとチェックしておきたいところだ。
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