【新発想のヒントに】注目される「プロセスエコノミー」とは?
(画像=MonsterZtudio/stock.adobe.com)

「プロセスエコノミー」という言葉の意味をご存じだろうか。これまでの商品やサービスの販売とは異なる新しい概念だという。日本の各分野における技術水準は高いため、完成品を見せるだけで差別化することが難しくなっている。そこで注目されているのが「プロセス(過程)を売る」という考え方だ。本記事では、プロセスエコノミーの概要と効果を上げている実例を交えて解説する。

プロセスエコノミーとは

プロセスエコノミーとは、完成品ではなく商品が制作されるプロセス自体を売ることを指す。プロセスエコノミーの対義語は、アウトプットエコノミー(完成した商品やサービスを顧客に提供して売り上げを得ること)である。プロセスエコノミーという言葉は、多くのインターネット企業や事業を立ち上げた起業家の「けんすう(古川健介)氏」がインターネット記事のタイトルに付けたことから広まった。

プロセスエコノミーの大きなメリットは、完成前に資金調達ができることだ。プロジェクトに賛同する人や作品世界に共感する人から投資資金や寄附、会費などを得て作品完成に結び付けることができる。出資者もプロジェクトや作品制作の過程を共有することができプロジェクトや作品が完成したときにより大きな満足感を得られるのがメリットだ。

既存のビジネスモデルの中では、購入型クラウドファンディングがプロセスエコノミーの一つに数えられるだろう。購入型クラウドファンディングとは、インターネット上でプロジェクトに賛同する出資者を募り資金提供してもらう代わりにプロジェクトによって制作された商品などを贈呈する仕組みのことである。

出資者にとっては、普通に完成品を購入するより企画の段階からかかわってきた精神的な付加価値を得ることで満足感が高くなる傾向だ。またプロセスエコノミーによって新たなファンやコアなファンを獲得できるのもメリットとして挙げられる。例えばアーティストの作品制作の様子を見ることができる会員制サイトのケースを考えてみよう。

最初は、興味本位で入会した人も制作過程から参加することで作品世界にハマってコアなファンに変わっていく可能性は十分にある。制作する側も会員を増やすためにより一層発信力を高めようと努力するようになるだろう。半面、デメリットはコアなファンが離反してしまうとアンチに変貌する可能性がある点だ。

なんらかの理由で退会した場合、SNSなどに悪かった点などを投稿してそれがきっかけで炎上するリスクもある。ただしプロセスエコノミーの手法は、どの業界にも当てはまるわけではない。次に紹介するプロセスエコノミーの実例にもあるようにどちらかというとクリエイティブな業界に偏った傾向がある。

プロセスエコノミーの実例

プロセスエコノミーは、商品販売や作品の制作過程でどのように活用されているのか実例で確認してみよう。

芸能人が主宰するオンラインサロン

プロセスエコノミーの概念を体現して最も成功しているのが、芸能人が主宰するオンラインサロンだ。とある芸人が絵本作家としての才能を開花し一躍注目を集めた。その作品は、アニメーション映画化もされ大ヒットを記録した。この芸能人のオンラインサロンは月会費980円~で、同芸能人のFacebook上の非公開グループに投稿するエンタメやビジネスに関する論文を読むことができる。もともと、その芸能人のFacebookに投稿していた論文は、評判が良くコアなファンを獲得していったようだ。

オンラインサロンの公式サイトでは、「作戦会議への参加」「イベントへの参加」といった特典を挙げている。まさにプロセスを販売する新しいビジネスの形といえるだろう。作品完成前の情報も共有されるため、守秘義務が生じるのが特徴だ。

ファン心理を刺激する販売商法

1人のファンに、アイドルのCDを大量に購入させる販売方法も一時大きな話題となった。本来歌を聴きたいだけなら(あるいはジャケット写真が目的であれば)CDを1枚買えば事足りるはずである。ファンは、完成品としてのCDよりもそのプロセスに大量のお金を投じるのだ。とあるアイドルでは、CDにグループ内での選抜総選挙への投票券が付いている。

得票数1位になったメンバーが次に発売されるCDでセンターの位置に抜てきされる仕組みを確立した。ファンは、応援しているメンバーを1位にしよう(あるいは選抜メンバーに入選させよう)と1人で同じCDを何枚も購入するのである。つまり目当ては、完成されたCDではなく「次のCD作りに自分も参加している」というプロセスに満足感を覚えるのだ。これもプロセスエコノミーの成功例といえるだろう。

制作意欲を起こさせる雑誌

プロセスエコノミーの手法を巧みに取り入れて成功している雑誌がある。その出版社が販売するプラモデルなどは、完成品を販売するのではなく毎号プラモデルの部品と解説マガジンを少しずつ読者に提供するスタイルだ。読者は、制作のプロセスを毎号楽しむことができすべての号を購入することで作品を完成することができる。

同社が販売するDVDの場合は、途中で定期購読をやめてもDVDが無駄になることはない。しかしプラモデルの場合は、途中でやめてしまうと意味をなさないため、全号購入する読者を見込めることがメリットだ。また実際に全号購入するとプラモデルとしては結構な値段となるが、この商法にすることで実質分割販売となり読者の負担感を和らげる効果がある。

プロセスエコノミーが不動産業界に与える影響

過程を売るプロセスエコノミーは、不動産業界にどのような影響を与えるのだろうか。マンションなどの住宅は、価格も高くプロセスを売るのに適しているとはいえない。そのため物件を内覧して購入を決めるアウトプットエコノミーの比重が大きい業界といえる。しかし不動産販売もプロセスエコノミーと無縁ではない。

例えば新築マンションの販売においては、物件の完成前にモデルルームを開設するのが一般的だ。設置の狙いは、同タイプの部屋を見せることで買い手のイメージを膨らませ契約に結び付けることである。中古マンションは別だが新築マンションには、プロセスエコノミーの要素が内包しているといえるだろう。

今後は、プロセスエコノミーの手法を発展させ買い手にプロジェクトの企画段階から参加してもらう販売戦略が出てくるかもしれない。買い手は、単に完成品を購入するのではなく「共有スペースにこのような施設が欲しい」などの要望を企画の段階でプロジェクト担当者に伝える。買い手にともに物件を完成させる参加意識を高めることで満足感を上げることが期待できるだろう。

デベロッパー側は、あらかじめ購入予約者を確保できたり話題性で広告効果を高めたりできることはメリットだ。参考例としては、産学連携で2017年に実施した学生マンションの設計や企画案を募るコンペティションがある。学生向けのマンションとなるため、「学生の意見を取り入れるのが最も効果的」という考え方によるものだろう。

コンペティションで最優秀作品に選ばれた企画をもとに建設会社が実際に物件を建築する。竣工までかかわることで学生にとっても実践的に建築を学べることはメリットだ。企画の過程から学生が参加したことで完成後も入居する学生の満足度が上がることが期待できる。

プロセスエコノミーを知って新しい発想のヒントに

人口減少により市場が縮小していく時代では、単に完成品を販売するビジネスモデルだけではない新しい発想が必要となる。完成品を販売するアウトプットエコノミーから過程を重視するプロセスエコノミーへ。自社のビジネスにプロセスエコノミーの手法を応用する方法がないかビジネスパーソンとしては検討する価値がありそうだ。

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