前回「外部のセルフチェックポイント編」で、地盤など建物の外からの影響や、自然環境による破損や経年劣化、施工不良による不具合などを見つけるポイントを紹介しました。
外部からのチェックで見つけた劣化や不具合は、売買の判断材料になりますが、中にはどの程度建物にダメージを与えているのかわからず、判断が難しいものもあります。
例えば、屋根に破損があっても、雨漏りになっているかは外側だけでは判断できません。
その場合、内部(室内)をチェックすることによって、外からのダメージがどの程度内部まで及んでいるのかを想定できます。また、交換に比較的費用が掛かる水まわりの設備は、室内でしか確認できません。
今回は、物件の内見時に内部(室内)からできるセルフチェックの方法を解説します。情報を追加・補完して、収益物件購入の検討にあたり更に有益な判断材料を得られるようにしましょう。
収益物件の購入時に確認したい室内の5つのチェックポイント
1.床の傾斜やたわみを歩いてチェック
まずは、玄関から入って各部屋、水まわりなどをくまなく歩いて、違和感や足元の感覚が異なる箇所がないかをチェックします。違和感などがある場合は、床が傾斜していたり、たわんでいたりすることがあります。
2.床・壁・天井を目視でチェック
床・壁・天井に変色やひび割れ、破損などがないかをチェックします。変色がある場合は、雨漏りや設備漏水の可能性があります。ひび割れがある場合は、地震による影響や建物の構造に不具合を抱えていることがあります。
3.窓や扉の開閉をチェック
窓や室内の扉を動作してみて開閉不良がないかをチェックします。スムーズに開閉できない場合は、窓・建具の劣化や建て付け不良の他、建物のゆがみや変形ということもあります。
4.水まわりは吐水・排水をチェック
キッチン、浴室、洗面室、トイレなどの水まわりの設備の吐水・排水を行い、異常がないかをチェックします。水漏れがある場合は、配管の接続不良や劣化などが考えられます。また、吐水の量が少なかったり、変色が見られたりする場合は、給水管の劣化の可能性があります。排水に時間が掛かったり、逆流したりする場合は、詰まりや配管不良の可能性もあります。
5.バルコニーの状況をチェック
室内からバルコニーの状況もチェックしましょう。床や手すり壁に変色や破損がないか、床にたわみがないかを確認します。異常がある場合は、防水の劣化や雨漏りなどの可能性があります。
防水や構造に関わる不具合は致命的な問題になることも
収益物件の場合、室内やバルコニーは空室がある場合にのみチェックが可能です。満室の場合には、外まわりしかチェックできません。
一戸建ての場合は空き家であれば建物全体の様子がわかりますが、複数の住戸があるアパートなどの場合、空室の住戸はチェックできても、建物全体をチェックすることは難しくなります。
しかしながら、雨漏りや設備漏水など水にかかわる不具合は構造材の腐食やシロアリを呼び寄せて耐震性を低下させます。また、建物の傾斜は入居者に健康被害を与え、構造を破損させる恐れがあります。入居者の安全にかかわりますので、賃貸だからといって放置するわけにはいきません。修繕に大きな費用が掛かれば収益物件として致命的な問題にもなります。そうならないためにも、建物全体の状態・影響をしっかりと把握したいところです。
以上を参考にして、物件の内見時には外まわりと内部(室内)のセルフチェックを可能な限り行いましょう。劣化や不具合が認められた場合には、建物への影響の範囲と程度から修繕の時期や費用を推測し、収益性の検討を行ってから売買の判断をする必要があります。
例えば、外壁の塗装の劣化が全体に及んでいる場合は、今すぐに直す必要はなくても、劣化や不具合が進行した際に大規模修繕費用が掛かります。そのため、近い将来の修繕費用を見込んでおく必要があり、収益性に影響が考えられます。一方で、室内の建具の1箇所が使い方により破損していた場合は、すぐに直すべきではあるものの少額で修繕可能なため、収益性に大きな影響はないと考えられます。
どうしても判断が難しいケースや、大きな不安やリスクを感じる場合には、ホームインスペクター(住宅診断士)や建築士等の専門家への相談をお勧めします。数多くの物件の調査実績があれば、確認できる事象から、総合的に見てどのようなことが考えられるのかなどのアドバイスも可能です。
ポイントをしっかりチェックし、リスクを把握したうえで、納得して購入することをお勧めします。
1999年、業界で初めて個人向け不動産コンサルティング業務をスタート。
建築士やマンション管理士など多様で実績豊富な専門家が在籍し、
不動産取引・建物調査・管理組合運営など不動産に関する総合的なアドバイスを行う。
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