「役職定年」とは?65歳定年制で増える導入事例、メリットとデメリットは?
(画像=One/stock.adobe.com)

「役職定年」という制度をご存じだろうか。一定の年齢になると管理職から外す制度で、一般的には55歳や60歳で線引きされる。ただし、制度の導入で世代交代が盛んになるが、役職定年した人のやる気の低下が起きやすいという意見もある。制度導入の是非を考えてみよう。

そもそも役職定年とは?

役職定年は、民間企業で導入が義務付けられている制度というわけではない。導入するかどうかはあくまで各企業の人事権にもとづいて経営者が決めることだ。

しかし、1980年代後半から1990年代にかけて、この役職定年を導入する企業があった。その背景には、1980年代に「55歳定年制」から「60歳定年制」へと移行が進んだことがある。

定年の年齢が上がると、管理職のポストが空きにくくなる。そのため、ポスト不足を解消しようと民間企業において役職定年の導入が進んだわけだ。

そして最近、また役職定年の導入をするかどうかを検討する企業が増えてきているという。高年齢者雇用安定法の改正に伴い、2025年4月から民間企業に「65歳定年制」の導入が義務付けられるからだ。

さらに、定年延長などによって70歳まで就業機会を確保することも努力目標とされ、役職定年の制度を導入していない企業の場合、これまでよりもさらに管理職のポストは空きにくくなってしまう。

役職定年の導入率:全体平均で43.5%

こうした背景もあり、今後、役職定年を導入する企業はさらに増えていくことが考えられる。ちなみに人材派遣・紹介大手の「マンパワーグループ」が企業の人事担当者を務める20代~50代の男女400名を対象に実施した「シニア雇用制度の導入状況」の調査(2021年1月)によれば、役職定年制を導入している企業は43.5%で、現時点では導入していない企業の方が多い。

ちなみに以下の表の通り、従業員数が少ない企業であるほど、導入率は低くなっている。

<役職定年を導入している企業の割合>

従業員数 導入している 導入していない わからない
〜100人 24.4% 63.4% 12.2%
101〜500人 43.5% 45.0% 11.5%
501人〜 59.6% 32.2% 8.2%

出典:マンパワーグループ「シニア雇用制度の導入状況」の調査データより株式会社ZUU作成

現状、役職定年を導入していない企業の方が多い理由としては、単にこうした制度に関心がない企業が少なくないという可能性もあるが、役職定年の導入におけるデメリットが足かせとなっているケースも多いと考えられる。以下、メリットとデメリットを整理して説明する。

役職定年の2つのメリット

ここでは、役職定年を導入する企業のメリットについて解説する。

世代交代が盛んになる

役職定年の導入の何よりのメリットは、企業内で世代交代が盛んになることだ。そうすることで、消費を牽引する中堅世代のフレッシュな感覚を事業に取り込みやすくなり、業績にもプラス効果が出てくることが考えられる。

若手のモチベーションが高まる

早い時期に管理職になれる可能性があるというキャリアプランを企業側が提示できれば、若手のモチベーションアップにもつながる。モチベーションが上がれば業務の生産性も上がるほか、離職率を低く抑えられるといった効果も期待できるだろう。

役職定年のデメリット

降格や降給によってやる気がダウン

管理職を外れることは事実上の降格となり、社内で持つ影響力や裁量権も小さくなる。降格と同時に給料も下がることが多いこともあり、それまで管理職だった人のモチベーションが大きく低下するケースがある。

役職定年導入の成否は「デメリットのケア」にある

この記事では、役職定年の導入の背景や導入のメリットとデメリットを説明してきた。

2025年には65歳定年制の導入が義務付けられていることを考えると、多くの企業が役職定年の制度を導入せざるを得ない状況となっていくはずだ。しかし前述の通り、役職定年の導入にはデメリットもある。では企業はどうすればいいのか。

重要なことは、導入によるデメリットの部分を見据えた対策を、導入当初から打っていくことだ。要するに、管理職だった社員のモチベーションの低下や業務の生産性の低下をどう防ぐか、ということに尽きる。

モチベーションの低下や業務の生産性の低下を防ぐためには、その人が働きがいを感じる業務やポジションを用意することが重要になってくる。例えば、これまでの業務経験を生かして社内メンターとして活躍してもらったり、スキルを生かして専門職として働いてもらったり、といった具合だ。

また、給与が減ることに対するケアも重要になってくる。例えば、キャリアアップを見込んだ転職を支援するのもよいだろう。また、早めにセカンドキャリアに関する研修などを行うことで、社員側も資産運用を始めたり保険の見直しをしたりというように、準備をしやすい。

デメリットをきちんとケアしていけば、役職定年は企業にとってプラスの効果が多い制度となるだろう。この点をしっかりと頭に入れておきたい。

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