不動産投資で地方物件を選ぶメリットとデメリットは?
(画像=ah_fotobox/stock.adobe.com)

目次

  1. 地方物件のメリット
    1. 安く買える
    2. 利回りが高い
    3. プロの投資家が少ない
    4. 地主大家が多いため工夫次第では競争に勝てる
  2. 地方物件のデメリット(リスク)
    1. 空室リスクが高い
    2. 不景気の影響が大きい
    3. 売却の計画を立てるのが難しい
  3. 地方物件の選び方のポイント
    1. 利回りの高さのみで物件選定をしない
    2. 駅から遠い物件でも投資対象になり得る(地域の事情や賃貸需要をよく調べておく)
    3. 可能な限り現地を視察する
    4. 賃貸需要を特定の施設(大学や工場など)に依存しない
    5. 専有面積が広めの物件を購入する
    6. 駐車場のない物件の購入を避ける
    7. 入居者ニーズを熟知した管理会社に委託する
    8. 高額な物件の購入を慎重に考える
  4. 地方物件による不動産投資で避けたいエリアとは?
    1. 人口が極端に少ない地方都市だと物件の流動性が低い
    2. 一定数の人口があるエリアでも避けたほうがよいこともある
  5. 公的データでチェック!いま人口減少が進んでいるエリアはここ
    1. 人口減少率の高い都道府県トップ10
    2. 転出超過数が多い都道府県トップ10
  6. メリットとデメリットを天秤にかけたうえで投資判断を下そう
  7. 地方物件による不動産投資に関するQ&A
    1. Q:地方物件のメリットとは?
    2. Q:地方物件のポイントとは?
    3. Q:人口減少が進んでいるエリアとは?

「不動産投資を始める」と決めている人にとって、気になるのが「どのような物件を購入すれば良いか」ということだろう。物件選定のポイントはいくつかあるが、そのなかでも意見が分かれるのは「東京の都心物件にするか、それとも地方物件にするか」ということだ。

これを決めるためには、都心物件と地方物件それぞれのメリットとデメリットを理解することが重要だ。そこで今回は、不動産投資で地方物件を選ぶメリットとデメリット、そして地方物件の選び方のポイントなどについて解説していこう。

地方物件のメリット

「地方物件」と一言で言ってもさまざまな物件がある。RC造の新築物件もあれば、木造の築古物件も存在する。そのため、全ての地方物件に当てはまるとは限らないが、「東京23区と比べて、相対的に、一般的に言えること」という観点から、地方物件のメリットを列挙してみよう。

安く買える

地方物件の大きなメリットの1つが「安く買える」ということだ。地方は東京23区に比べて地価が低いため、都心で同じようなグレードの物件を買うときに比べて、不動産価格が低くなりやすい。実際に、東京23区と主な地方の1棟アパート価格を比較してみると、下記のように大きな開きがある。

<主要都市の1棟アパートの平均価格>

主要地方都市1棟アパートの平均価格
東京23区1億585万円
広島市9,353万円
大阪市7,328万円
名古屋市7,114万円
福岡市6,429万円
京都市5,180万円
札幌市4,795万円
仙台市4,460万円
神戸市4,172万円
出典:健美家「収益物件 市場動向 四半期レポート <2022年4月~6月期>」より株式会社ZUU作成

東京23区の1棟アパートの平均価格1億585万円に対し、地方の平均価格は4,000万円台〜7,000万円台が中心であり、地方物件の割安感がよく分かる。

安く買えるということは、ローンを活用して購入する場合においても、ローン返済総額が少なくなるということだ。したがって、ローン返済リスクや支払利息も低減できる。

利回りが高い

「利回りが高い」ということもメリットの1つだ。まずは定量的なデータを確認してみよう。日本最大級の収益物件情報サイトの「健美家」の「収益物件 市場動向 四半期レポート <2022年4月~6月期>」によると、主要地方都市における1棟アパートの利回りは以下のようになっている。

<主要都市の1棟アパート利回り>

主要地方都市1棟アパートの利回り
東京23区6.40%
札幌市9.41%
神戸市9.53%
仙台市10.90%
京都市9.05%
大阪市7.44%
名古屋市7.30%
福岡市7.05%
広島市7.44%
出典:健美家「収益物件 市場動向 四半期レポート <2022年4月~6月期>」より株式会社ZUU作成

東京23区のほうが各地方都市よりも利回りが低い結果となった。なぜ、このような結果になるのだろうか。

利回りは原則として、家賃収入を物件価格で割り戻して算出する。物件価格は前述のように、地方物件のほうが安いことが多い。一方、家賃相場に関しては、地方のほうが都心よりも安い傾向にあるものの、物件価格の差ほど大きな差がなく、結果として利回りが高く算出されやすいというわけだ。

プロの投資家が少ない

地方は都心に比べて、プロの投資家が少ないこともメリットの1つだ。プロの投資家とは、ここでは不動産投資を専業で行っている人を指す。

都心の場合はプロの投資家が常に「良い物件はないか」「良い物件があればすぐに買い付けを入れよう」と虎視眈々と優良物件を狙っている。そのため、一般の投資家は買い付け競争に負けてしまうことも多い。

また、相続対策で不動産投資物件を購入しようとする人も存在する。プロの投資家に加えて、そうした層も競争相手となるのが都心である。プロの投資家、相続税対策層の数が少ない地方であれば、競争のハードルが下がるというわけだ。

地主大家が多いため工夫次第では競争に勝てる

地方には都心に比べて、先祖代々の不動産を受け継ぎ、家業を営んでいる地主大家が多い。一般論になるが、地主大家は相続で不動産を受け継いでいることもあり、時代に合わせた革新的な経営努力をしていない場合も少なくない。

したがって、新規参入する投資家であっても、時代のニーズに合ったデザインや内装、設備の導入などを行うことによって、工夫次第では地主大家にも競争で勝てる可能性はあると言えるだろう。

地方物件のデメリット(リスク)

それでは、地方物件のデメリット(リスク)にはどのようなことが挙げられるのだろうか。前述のメリットと同様に、「都心物件と比べて、相対的に、一般的に言えること」という観点から列挙してみよう。

空室リスクが高い

地方物件は都心物件より空室リスクが高いと言える。日本は今後さらに人口が減少していくと言われており、地方は都心に比べて人口減少の傾向が強いためだ。

空室リスクは、不動産投資における大きなリスクの1つだ。「都心であれば空室リスクがない」というわけではないが、地方物件は都心に比べて空室リスクが高くなりやすいということには注意したい。

不景気の影響が大きい

地方は元々の人口が少ないこともあり、経済変動(特に景気悪化)の影響が大きいと言える。

例えば、景気が悪化すると、都心に本社がある会社が地方支社を縮小したり、撤退したりすることも想定される。このような経済変動は不動産市況や空室率に影響を与えるため、経済変動の影響が大きいことにも注意が必要だ。

売却の計画を立てるのが難しい

地方は前述のように人口減少が続いており、中長期的には不動産価格の大幅な上昇は望みにくい。 さらに、都心であれば景気変動が賃貸需要に影響する度合いも少ないと考えられるが、地方では景気変動の波が賃貸需要に大きく影響しやすい。そうしたことからも、地方物件は売却の計画が立てづらいと言えるだろう。

また、上記と表裏一体の話であるが、地方物件は都心物件に比べて成約数が少なく、流動性が低い。地方物件を購入する際は、売却まで見据えた投資戦略を立てて購入するようにしたい。

地方物件の選び方のポイント

ここからは、地方物件の選び方のポイントについて解説していこう。

利回りの高さのみで物件選定をしない

地方物件は利回りが高いことが多い。しかし、ハイ・リターンの裏側にはリスクがあるものだ。地方は都心に比べて、人口減少や経済変動のリスクが大きく、それが高い利回りに反映されているとも言える。

まず想定されるのは物件価格の値下がりリスクだ。ただし、不動産投資はインカムゲイン(賃料収入)とキャピタルゲイン(売買益)を合計したリターンが重要なので、物件価格が下がってキャピタルロスが発生しても、それを上回るインカムゲインを積み上げれば良いという考え方もあるだろう。

その点、高い利回りは上記戦略を実行しやすいと感じるかもしれない。しかし、地方であるがゆえに、一度空室がでたら、埋まるまで長い時間がかかることも想定される。高い利回りにつられて安易に購入するのではなく、入念な調査とシミュレーションをしたうえで購入するようにしよう。

駅から遠い物件でも投資対象になり得る(地域の事情や賃貸需要をよく調べておく)

都心物件の場合、「最寄り駅から徒歩○分圏内であるか」という点が注目されることが多い。一般的に、入居者が特に気にするポイントの1つであるためだ。しかし、交通機関の利便性が悪く、車の保有が前提になっているような地域の場合は、駅から遠い物件でも投資対象になり得る。

このように、地域の事情や賃貸需要によって、見るべきポイントは変わってくる。事前に、地域の事情や賃貸需要をよく調べておくことが重要だ。

可能な限り現地を視察する

特に地方物件の購入の検討をする際は、可能な限り現地を視察するようにしよう。その際、物件そのものはもちろん、物件周辺の環境もチェックするようにしたい。

都合がつけば、その地域に詳しい地場の不動産会社を訪ねることも有効だ。「その地域ならではの確認ポイント」も教えてくれることだろう。

賃貸需要を特定の施設(大学や工場など)に依存しない

地方によっては、大企業の工場や大学があることによって、大きな賃貸需要が生まれている地域もある。これらは存在する限り、周辺の物件に安定した賃貸需要をもたらしてくれるが、それらが閉鎖や移転する可能性はないわけではない。

「賃貸需要を生む特定の施設」の近くに物件を保有することは1つの戦略ではあるものの、それに依存しすぎないようにすることも重要だ。

専有面積が広めの物件を購入する

地方物件を購入するなら、専有面積が広めの物件を選ぶことも大事だ。なぜなら、地方は東京と比べて、1世帯あたりの人数が多いからである。その分、専有面積が広めの物件の賃貸ニーズが強いと考えられる。参考までに、主要都市のある都道府県の1世帯あたりの平均人数を比較すると以下のようになる。

<1世帯あたりの平均人数の比較>

都道府県1世帯あたりの平均人数
東京都1.92人
宮城県2.30人
愛知県2.29人
兵庫県2.23人
福岡県2.15人
京都府2.12人
大阪府2.10人
広島県2.20人
北海道2.04人
出典:総務省統計局より株式会社ZUU作成

ただし、地方でも、都市部、大学キャンパスや大規模工場の近くなどはワンルームのニーズがあるため注意したい。最終的には、対象エリアの入居者ニーズのリサーチが必須だ。

駐車場のない物件の購入を避ける

「1人に車1台」とも言われる地方では、駐車場のない物件は、車を持たない学生などに対象が限定されてしまう。その結果、空室リスクが高まったり、相場よりも家賃が下がったりしてしまう。

例えば、東京都と宮城県を比較してみると、人口1人あたりの車の保有台数は、東京都の0.22台に対して、宮城県は0.57台もある。地方ではそれだけ、車や駐車場の重要性が高いということだ。

東京都宮城県
人口1人当たりの乗用車の保有台数0.22台0.57台
人口1,402.9万人228.1万人
乗用車の保有台数314.0万台130.1万台
出典:東京都公式サイト※この先は外部サイトに遷移します。 宮城県公式サイト※この先は外部サイトに遷移します。 自動車検査登録情報協会「都道府県別・車種別保有台数表より株式会社ZUU作成

ただ、こちらも前項同様、最終的には対象エリアのリサーチが必要だろう。交通網が発達している都市部では、車を所有していない割合が高いことも考えられる。

入居者ニーズを熟知した管理会社に委託する

地方物件による不動産投資では、オーナーが遠方に住んでいるケースも多いだろう。加えて、それぞれの地方ごとの入居者ニーズの違いもある。例えば、雪の多い地方であれば、駐車場の融雪装置や排気を屋外に出すFF式ストーブなどに魅力を感じる入居者が多かったりする。

このような背景があるため、地方物件では、そのエリアの入居者ニーズを熟知し、集客力のある管理会社の存在が欠かせない。

高額な物件の購入を慎重に考える

一般的に、東京都心に比べて地方は、不動産の流動性が低い傾向にある。とくに人口が少ない都市は、流動性が極端に低かったりする。売買数が少ないということは、売却に予想外の期間がかかったり、思うような価格で売却ができなかったりするリスクがあるということだ。

流動性の低さを意識すると、大型の一棟マンションなど高価格帯の物件の購入を検討する際は、より慎重な判断が必要だ。

地方物件による不動産投資で避けたいエリアとは?

地方物件による不動産投資では、全国の数多くの都市のなかから、どこを選ぶかが成功を大きく左右する。この重要テーマである、地方都市選びについて深掘りしていこう。

人口が極端に少ない地方都市だと物件の流動性が低い

前提として、地方都市を選ぶ際、「人口減少エリアは避けるべき」といった固定観念に縛られ過ぎないほうがよいだろう。たとえ人口減少が進んでいても、再開発で活性化しているエリアや利便性が高い人気エリアなど、賃貸ニーズが期待できる立地もある。

一定数の人口があるエリアでも避けたほうがよいこともある

地方都市を選ぶとき、40〜50万人程度などの人口の中核都市なら安心と考える人もいるかもしれないが、「一定の人口の都市=賃貸ニーズがある」とは言い切れない。需要(賃貸ニーズ)と供給(賃貸物件の戸数)のバランスによっては避けたほうがよいこともある。

例えば、人口の近い2つの地方都市があったとして、一方は賃貸ニーズが高く競合が少ない、一方は賃貸ニーズがなく競合が多いということも考えられる(当然ながら、選択すべきは前者だ)。ある程度の人口がいても賃貸ニーズが少ない理由としては、地場産業の衰退などによる雇用の減少、交通や病院などの社会インフラの不足、良質な大学の不足などが挙げられる。

なお、その地方都市の需要と供給については、現地の賃貸会社をリサーチしたり、物件状況を視察したりするのがよいだろう。

公的データでチェック!いま人口減少が進んでいるエリアはここ

前述のように、単純に「人口減少エリア=不動産投資に向かない」とは言えないものの、人口減少が著しいエリアの物件は慎重に選ぶべきだろう。参考までに、地方のなかでとくに人口減少が著しく進んでいるエリアを確認するために「人口減少率」、補足データとして「転出超過数」を確認してみよう。

人口減少率の高い都道府県トップ10

まずは、人口減少率の高い都道府県トップ10である。宮城県を除く東北の各県と長崎県が上位を占めている。

※人口増減率について
人口増減率は前年10月1日時点の人口に比して前年10月~当年9月の人口がどれだけ増減しているかの比率を示したもので、計算式は以下の通りだ。2021年の全国平均の人口増減率は-0.51%であった。
人口増減率=人口増減(前年10月~当年9月)÷前年10月1日時点の人口×100

都道府県人口減少率
秋田県-1.52%
青森県-1.35%
山形県-1.23%
長崎県-1.18%
福島県-1.16%
岩手県-1.16%
新潟県-1.10%
高知県-1.08%
山口県-1.08%
徳島県-1.05%

再三になるが、上記の都道府県のすべてのエリアが不動産投資に不向きということではない。例えば、都道府県自体の人口が減っていても、大規模再開発などによって、不動産の売買・賃貸ニーズが旺盛なエリアもあったりする。

転出超過数が多い都道府県トップ10

もう一つの公的データとして、転出超過数が多い都道府県トップ10を見てみよう。ここでいう転出超過数とは、各都道府県の転入者数から転出者数を差し引いたマイナス分の人数を指す。

転出超過は人口減少と異なる視点のデータだが、相当数の人数が転出超過になっている状況が続けば、不動産投資の需要減少に影響がある。

都道府県人口減少数
広島県-7,159人
福島県-6,116人
長崎県-5,899人
新潟県-5,774人
兵庫県-5,344人
岐阜県-5,127人
青森県-4,309人
静岡県-3,978人
京都府-3,874人
岡山県-3,195人

メリットとデメリットを天秤にかけたうえで投資判断を下そう

ここまで、不動産投資で地方物件を選ぶメリットとデメリット、地方物件の選び方などについて解説してきた。当然ながら、地方物件にはメリットもあり、一方でデメリットもある。

重要なことは、デメリット(リスク)をしっかりと認識し、メリットと天秤にかけたうえで投資判断を下すことだ。地方物件のメリットとデメリットをしっかりと理解して、不動産投資を進めていこう。

地方物件による不動産投資に関するQ&A

Q:地方物件のメリットとは?

東京都心の物件と比較した際の地方物件のメリットとして、次の4つが挙げられる。①安く買える②利回りが高い③プロの投資家が少ない④地主大家が多いため工夫次第では競争に勝てる、である。

Q:地方物件のポイントとは?

地方物件を購入・検討する際のポイントとして、次の7つが挙げられる。①利回りの高さのみで物件選定をしない②地域の事情や賃貸需要をよく調べておく③可能な限り現地を視察する④特定の施設(大学や工場など)に依存しない⑤専有面積が広い物件を購入する⑥駐車場のない物件の購入を避ける⑦入居者ニーズを熟知した管理会社に委託する、である。

Q:人口減少が進んでいるエリアとは?

人口減少が進んでいるエリアの指標としては「人口減少率」がある。人口減少率が高い都道府県トップ10を見てみると、宮城県を除く東北の各県(青森県、秋田県、山形県、福島県)と長崎県が上位を占めている。

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