厚生労働省の「患者調査」を見ると、30代以降、年齢を重ねるのと比例して受療率が高まっているのがわかるだろう。生命保険はいつでも加入できるわけではなく、その時の体の状態によっては加入できないこともある。40代というのは、将来を見据えて、現在加入している保険を見直すのに良い時期といえる。では、今後の人生において必要な保障を考える際には、どのような点を重視するべきなのだろうか。
<年齢階級別にみた受療率(人口10万人対)>
(平成29年10月調査)
年齢 | 入院 | 外来 |
---|---|---|
0〜9歳 | 1,422人 | 18,170人 |
10〜19歳 | 207人 | 4,687人 |
20〜29歳 | 393人 | 4,859人 |
30〜39歳 | 587人 | 6,307人 |
40〜49歳 | 709人 | 7,144人 |
50〜59歳 | 1,310人 | 9,714人 |
60〜69歳 | 2,302人 | 14,103人 |
70〜79歳 | 4,160人 | 22,297人 |
80〜89歳 | 8,959人 | 24,159人 |
90歳以上 | 7,815人 | 9,968人 |
出典:厚生労働省「患者調査」より株式会社ZUU作成
40代の保険加入傾向
生命保険文化センターが2018年に全国の約4,000世帯を対象に実施した「生命保険に関する全国実態調査」の結果によると、世帯主が40代の世帯では生命保険および個人年金保険の加入率が90%を超えており、何らかの備えをしていることがうかがえる。さらに細かく保障内容を見てみると、死亡保障については約3,000万円と、50代前半の約3,200万円に比べると若干少ないもののほかの年代に比べると高額の保障を準備していることがわかる。
40代における生活上の不安に対する調査
生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(全国の男女約4,000人を対象として2019年に実施)によると、40代における最も不安な生活上の不安項目について以下のような内容になっている。どちらかといえば肉体的、精神的に負担のかかる親の介護を除けば自身や家族の死、病気、事故に対する不安の傾向が高いようだ。特に男性は自身の死亡や病気、事故に遭うことに不安を感じ、女性は自身よりも家族の死亡や病気、事故に遭うことに不安を感じる傾向が高くなっており、一家の大黒柱を失うことや不測の医療費が発生することによる家計への負担に対する不安を反映していると推察できる。
男性 | 女性 | |
自分の不慮の死により家族の者に負担をかけること | 18.2% | 8.8% |
家族の者が死亡するようなことが起こること | 9.4% | 11.8% |
自分が病気や事故にあうこと | 18.0% | 11.2% |
家族の者が病気や事故にあうこと | 5.3% | 15.5% |
自分の介護が必要となること | 8.4% | 7.1% |
親の介護が必要となること | 15.9% | 16.3% |
配偶者の介護が必要となること | 2.0% | 3.3% |
年をとって体の自由がきかなくなり、病気がちになること | 7.8% | 5.5% |
老後の生活が経済的に苦しくなること | 10.9% | 13.2% |
交通事故などの事故を起こしたり、相手にケガを負わせたりすること | 2.0% | 5.1% |
その他 | 0.0% | 0.4% |
わからない | 2.0% | 1.8% |
出典:生命保険文化センター「生活保障に関する調査」より株式会社ZUU作成
以降では40代のこうした不安に対して保障面でどのように備えるべきなのか紹介していく。
40代の死亡保険選び
死亡時の保障については、独身かそれとも家族がいるのかによって異なる。独身であれば、葬儀代や自分が亡くなった後の遺品整理費用などを考える必要がある。全国の葬儀費用の平均値(2020年)は119万円(「第4回お葬式に関する全国調査/2020年/株式会社鎌倉新書」による)だが、葬式の内容により費用にばらつきがあるほか、墓やその後の供養料も考慮するのであれば更に費用がかかることになる。葬儀に対する自身の意向により保障金額を決めるのがよいだろう。
しかし家族がいる場合は、自分が亡くなった後に残された家族が負担なく生活していける必要保障額を算出し、それに対応した保障を用意しておく必要がある。
必要保障額の算出方法
家族がいる場合の必要保障額は、自分が亡くなった後の収入である公的保障(遺族年金)や現在の預貯金と、子どもが独立するまでの生活費や教育費、そして子どもが独立した後の配偶者の生活費との差額を計算することで求められる。なお、計算においては、妻が専業主婦の片働き世帯を想定する。
具体的な計算方法および確認方法は以下のとおりである。(計算方法はあくまで1例であり、各家庭の実態に合わせて計算する必要がある。)
- 子どもが独立するまでの生活費・・・現在の生活費の70%
- 子どもが独立した後の配偶者の生活費・・・現在の生活費の50%
- 教育費用・・・子どもが希望している進路における教育費用の平均値(文部科学省「子供の学習費調査」、「私立大学の初年度学生納付金等の推移」、「国公私立大学の授業料等の推移」などを参考にして算出)
- 公的保障(遺族年金)・・・遺族基礎年金:780,900円+子の加算、遺族厚生年金:ねんきん定期便に記載されている標準報酬月額に基づき計算
なお、前出の生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(2019年)によれば、40代男性が実際に必要だと考えている死亡保障額については、3,000万円から5,000万円と答えている割合が高くなっている。あくまで目安ではあるが、0代前半であれば4,000万円、40代後半の場合は3,000万円の保障は最低限準備しておきたい。
死亡保険は2段階で準備
死亡の際の保障については、葬儀費用そして生活費と2つの種類に分けられることから、加入する保険についても2つに分けることがポイントである。
葬儀費用は貯蓄性のある終身保険で準備
葬儀費用については、家族の有無を問わず準備しておきたい費用であることから、終身保険で準備しておきたい。保障額は自分がどのような葬儀にしたいのか、お墓を建てる必要があれば、その費用も考慮し、最終的な額を算出するようにしておこう。生活費に対する保障は掛け捨ての収入保障保険を活用
家族の生活費については、子どもの成長につれて必要保障額が減っていくことからも、ずっと同じ保障額が続く定期保険よりも収入保障保険のほうが一般的に保険料を安く抑えることができる。現在加入している保険の内容が一定年齢まで一定額を保障する定期保険であれば、収入保障保険への見直しを考えてもいいだろう。ただし、収入保障保険は期間経過により保障額が逓減していくことから、子どもの教育費がかかる時期と、その時点の保障額を考慮し、不足部分については学資保険などを用意して補填する必要があることも忘れないようにしたい。
40代の医療保険選び
先に引用した生命保険文化センター「生活保障に関する調査」の結果にも見られたように、40代に入ると健康状態に不安を感じる人が少なくない。もちろん日頃から病気にならないように心がけている方もいるだろうが、病気になることも死亡と同様に不測の事態なので、真剣に考えておく必要がある。
精神疾患による入院が増加
厚生労働省が発表している「患者調査の概況(2017年)」を見ると、病気になる人の割合は50歳以上で急激に増加している。さらに35歳~64歳の推計患者数において精神疾患系患者が消化器疾患系患者に次いで2番目に多いであることは注目すべきだろう。このことから、医療保険を考えるのであれば、入院の保障対象に精神疾患があるかどうかを確認することをおすすめする。特にがんなどの外科的な手術入院と比べ、精神疾患に罹った場合の入院は長期になりがちであることから、精神疾患における収入の減少が不安な場合は、別途就業不能状態になった際の保障内容についても確認し、付帯が必要であれば検討するようにしておこう。
40代のがん保険について
厚生労働省の「全国がん登録 罹患数・率 報告」(2018年)によれば、日本人におけるがん罹患率は、男性の場合、最も多いのが前立腺がん、胃がん、大腸がん、肺がん、肝臓がんの順になっており、いずれのがんにおいても50歳からの罹患率が高くなる傾向がある。また、女性においては乳がん、大腸がん、肺がん、胃がん、子宮がんの順となっており、中でも乳がんや子宮がんは30代から罹患する割合が高くなっている。
入院保障と合わせて通院保障も準備しておく
現在、医療技術の進歩、そして患者のQOL(生活の質)を向上させるため、がんにおける手術入院期間は短く、通院治療に移行する傾向が強く見られる。したがって、がん保険において診断給付金はもちろんのこと、通院に対する保障をしっかりと準備しておくことが大切だといえる。
公的医療保険制度について
現在の日本には公的な医療保険制度がある。国民全員が加入している医療保険における高額療養費制度、そして勤務先における傷病手当金制度などの内容を理解しておくことは、民間の保険加入の際にも重要なポイントとなる。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った1ヵ月分の医療費が上限額を超えた場合、その超えた分が支給される制度である。上限額は医療保険加入者の年齢と所得によって異なる。とりわけ70歳以上の加入者の場合、段階的に見直しが進められてきており、70歳以上で一定額以上の所得がある方については上限額が高くなっている。
傷病手当金制度
病気がケガなどで仕事を休まざるを得ない状態が連続した3日間を含み4日以上となった場合に、過去1年間の各月の標準報酬月額を平均した額の3分の2に相当する金額が4日目から支給されるもので、加入している健康保険組合に申請することで受け取ることができる。ただし、同じ病気が原因の場合、支給期間は最大1年6ヵ月となることや休業した期間について給与の支払いがないことなどの細かな規則があることには注意だ。
40代は老後の保障を考え始める時期
民間の保険は年齢とともに保険料も高くなるのが一般的である。したがって、見直すのであれば早い段階で行いたい。その際には、必要な保障に対応しているかどうかはもちろんのこと、認知症や介護についての保険も考え始める必要があるといえる。その際には公的な介護保険の内容をしっかりと理解し、自分が受けたい介護との差分を民間の介護保険で補うことがポイントとなる。また、保険だけに頼るのではなく、今後の社会保障の動向を考えながら、資産運用を取り入れた老後の資産形成もあわせて行うように心がけたい。
最近では死亡保険の1つとして変額保険が販売されはじめている。運用実績により保障額が変わることや、場合によっては基本の保険金額を下回るかもしれないというリスクはあるものの、保障のついた長期運用を考えているのであれば、検討してみてもいいかもしれない。ただし、上で紹介した死亡保険をしっかりと組んだうえで、余剰資金で行うことを忘れないようにしたい。
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