結論から述べると、家賃が安いのはワンルームなら宮崎県、ファミリー向けは富山県だ。また住みやすさを移動率の高さと捉えると東京都となった。なお、物価が一番安いのは宮崎県であった。本コラムでは、家賃が安くて住みやすい県ランキングやよくある質問について詳しく解説する。
家賃が安い都道府県ランキング
家賃が安い都道府県ランキングをワンルームマンションとファミリー向けに分けて紹介していく。データは、総務省統計局の「平成30年住宅・土地統計調査」を参考にした。
47都道府県別ワンルームマンションの1ヵ月平均家賃が安いトップ10
都道府県別ワンルームマンションの1ヵ月平均家賃が安いトップ10は、以下のとおりだ。
<47都道府県別ワンルームマンションの1ヵ月平均家賃が安いトップ10>
最も家賃が安いのは宮崎県だ。10位の山口県と比べても約3,000円抑えられる。上図に記載していないが、同調査で最も家賃が高いのは東京都の6万9,706円だ。宮崎県は東京都の家賃の約半分である。
47都道府県別ファミリー向けの1ヵ月平均家賃が安いトップ10
都道府県別ファミリー向けマンションの1ヵ月平均家賃が安いトップ10は、以下のとおりだ。
<47都道府県別ファミリー向けマンションの1ヵ月平均家賃が安いトップ10>
1位は富山県で10位の徳島県と比べても約6,000円安くなっている。またワンルームマンションでもトップ10に入っていた宮崎県、徳島県、富山県、愛媛県、大分県、山口県はファミリー向けでも安いことが分かった。
住みやすい都道府県ランキング
ここでは、「住みやすい=他都道府県からの転入が多い」と仮定して、都道府県別にランキングをつけている。
他都道府県からの転入者の移動率が高いランキング
総務省の「住民基本台帳人口移動報告 年報(移動率)2020年~」によると、他都道府県からの転入者の移動率が高いランキングは以下のとおりだ。
<他都道府県からの転入者の移動率が高いトップ10>
2020年以降は、新型コロナウイルスの影響によりリモートワークを導入する企業が増えた。そのため「大都市や都市部に住む必要性がない」と指摘されているが、移動率の1位は東京都となっている。転居先の実態は、都心から30分〜1時間圏内のエリアがほとんどであり、地方への移住はそれほど増えていないと考えられる。
他都道府県から子ども(0~14歳)の転入者の移動率が高いランキングトップ10
同年報によると、他都道府県から子ども(0~14歳)の転入者の移動率が高いランキングトップ10は、以下のとおりだ。
<他都道府県から子ども(0~14歳)の転入者の移動率が高いトップ10>
順位 | エリア | 0~4歳 | 5~9歳 | 10~14歳 | 0~14歳合計 |
---|---|---|---|---|---|
1位 | 千葉県 | 4.27% | 1.64% | 0.74% | 6.65% |
2位 | 奈良県 | 4.02% | 1.64% | 0.68% | 6.34% |
3位 | 埼玉県 | 4.03% | 1.44% | 0.67% | 6.14% |
4位 | 佐賀県 | 3.45% | 1.42% | 0.68% | 5.55% |
5位 | 茨城県 | 3.43% | 1.39% | 0.56% | 5.38% |
5位 | 神奈川県 | 3.36% | 1.37% | 0.65% | 5.38% |
7位 | 宮城県 | 3.16% | 1.48% | 0.73% | 5.37% |
8位 | 福岡県 | 3.02% | 1.56% | 0.76% | 5.34% |
9位 | 香川県 | 3.11% | 1.37% | 0.57% | 5.05% |
10位 | 京都府 | 3.09% | 1.28% | 0.64% | 5.01% |
0〜14歳の合計では千葉県が1位で6.65%であった。子どもの移動率は0~4歳が多く、子どもが小学校に進学する前に転居していることが予想される。また、出産によってマイホーム購入を検討する家庭もあり、子育て環境も良好な郊外を選ぶケースも多いのだろう。
他都道府県から高齢(65歳以上)の転入者の移動率が高いランキングトップ10
同年報によると、他都道府県から高齢(65歳以上)の転入者の移動率が高いランキングトップ10は、以下のとおりだ。
<他都道府県から高齢(65歳以上)の転入者の移動率が高いトップ10>
順位 | エリア | 65~69歳 | 65~69歳 | 65~69歳 | 80~84歳 | 85歳以上 | 65歳以上合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1位 | 埼玉県 | 0.52% | 0.41% | 0.39% | 0.51% | 0.90% | 2.73% |
2位 | 千葉県 | 0.60% | 0.43% | 0.40% | 0.48% | 0.77% | 2.68% |
3位 | 神奈川県 | 0.53% | 0.40% | 0.38% | 0.49% | 0.75% | 2.55% |
4位 | 東京都 | 0.55% | 0.41% | 0.38% | 0.46% | 0.58% | 2.38% |
5位 | 群馬県 | 0.46% | 0.36% | 0.37% | 0.52% | 0.58% | 2.29% |
6位 | 奈良県 | 0.53% | 0.35% | 0.34% | 0.41% | 0.65% | 2.28% |
7位 | 茨城県 | 0.42% | 0.35% | 0.35% | 0.43% | 0.55% | 2.10% |
8位 | 山梨県 | 0.60% | 0.39% | 0.35% | 0.34% | 0.38% | 2.06% |
8位 | 滋賀県 | 0.43% | 0.35% | 0.32% | 0.39% | 0.57% | 2.06% |
10位 | 栃木県 | 0.43% | 0.32% | 0.27% | 0.34% | 0.44% | 1.80% |
高齢(65歳以上)の転入者の移動率が多い都道府県は、埼玉県、千葉県、神奈川県が上位にランクインし、意外にも都市部への移動率の高さが分かる。おそらく高齢者にとって都市部のほうが医療や福祉の面で充実しており、子育て世帯とも会いやすいことから住み心地が良いのだろう。
21大都市で他都道府県からの転入者が多いランキング一覧
以下では、総務省の「住民基本台帳人口移動報告 2023年(令和5年)8月結果」をもとに、21大都市で他都道府県からの転入者が多い率のランキングを一覧にまとめた。
順位 | エリア | 転入者数 | |||
---|---|---|---|---|---|
2023年8月 | 2022年8月 | 対前年同月増減 | |||
実数 | 率(※) | ||||
1位 | 浜松市 | 1,451人 | 1,348人 | 103人 | 7.6% |
2位 | 福岡市 | 5,183人 | 5,213人 | -30人 | -0.6% |
3位 | 川崎市 | 5,984人 | 6,034人 | -50人 | -0.8% |
4位 | 堺市 | 1,862人 | 1,886人 | -24人 | -1.3% |
5位 | 岡山市 | 1,394人 | 1,416人 | -22人 | -1.6% |
6位 | 熊本市 | 1,842人 | 1,886人 | -44人 | -2.3% |
7位 | 千葉市 | 2,810人 | 2,904人 | -94人 | -3.2% |
8位 | 京都市 | 2,670人 | 2,776人 | -106人 | -3.8% |
9位 | 大阪市 | 8,634人 | 8,990人 | -356人 | -4.0% |
10位 | 東京都特別区部 | 2万6,982人 | 2万8,134人 | -1,152人 | -4.1% |
11位 | 仙台市 | 2,604人 | 2,723人 | -119人 | -4.4% |
12位 | さいたま市 | 4,061人 | 4,284人 | -223人 | -5.2% |
13位 | 静岡市 | 1,011人 | 1,071人 | -60人 | -5.6% |
14位 | 札幌市 | 3,658人 | 3,880人 | -222人 | -5.7% |
15位 | 横浜市 | 8,824人 | 9,507人 | -683人 | -7.2% |
15位 | 広島市 | 2,192人 | 2,361人 | -169人 | -7.2% |
17位 | 名古屋市 | 6,155人 | 6,661人 | -506人 | -7.6% |
18位 | 北九州市 | 1,599人 | 1,749人 | -150人 | -8.6% |
19位 | 相模原市 | 2,016人 | 2,222人 | -206人 | -9.3% |
20位 | 神戸市 | 2,723人 | 3,048人 | -325人 | -10.7% |
21位 | 新潟市 | 944人 | 1,129人 | -185人 | -16.4% |
対前年同月で増加だったのは浜松市だけだ。浜松市が1位の理由は、東京都や大阪府に近い立地や温暖な気候といった住みやすい環境が理由の一つだと考えられる。
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入居者は家賃だけで物件を決めるわけではない
入居者自身が住む物件を決める際、さまざまな要素から決めているだろう。家賃も1つの要素だろう。入居者の状況や優先事項に応じて物件が選ばれるため、安くても不便であれば空室になりやすい。
一般的には、次の要素を鑑みて物件を決める人が多いといわれている。
・交通アクセス:主要駅や勤務先へのアクセスの良さ
・周辺環境:スーパーや公園が近いなどの生活しやすさ、安全性、騒音はないかなど
・家賃:一般的な適正家賃は収入の25~30%程度
・階数や間取り:防犯面から上階が好まれ、日当たりやユニットバスかどうかなど
・築年数:築浅が好まれ、築古は敬遠されやすい傾向
住みやすい都道府県に関するQ&A
Q.物価が安い県はどこか?
総務省が2023年6月に公表した「消費者物価地域差指数」によると、物価が安い県は5年連続で宮崎県(96.1)である。
<10大費目別消費者物価地域差指数(都道府県)>
高い都道府県 | 低い都道府県 | ||||
---|---|---|---|---|---|
順位 | 都道府県 | 指数(%) | 順位 | 都道府県 | 指数(%) |
1位 | 東京都 | 104.7 | 1位 | 宮崎県 | 96.1 |
2位 | 神奈川県 | 103.1 | 2位 | 群馬県 | 96.2 |
3位 | 北海道 | 101.1 | 3位 | 鹿児島県 | 96.6 |
4位 | 千葉県 | 101.0 | 4位 | 奈良県 | 97.0 |
5位 | 京都府 | 100.9 | 5位 | 岐阜県 | 97.2 |
6位 | 山形県 | 100.7 | 6位 | 福岡県 | 97.3 |
7位 | 埼玉県 | 100.5 | 7位 | 大分県 | 97.4 |
8位 | 山口県 | 99.9 | 8位 | 長野県 | 97.5 |
9位 | 滋賀県 | 99.6 | 9位 | 岡山県 | 97.8 |
9位 | 島根県 | 99.6 | 10位 | 佐賀県 | 97.9 |
Q.一番家賃が高い都道府県はどこか?
総務省統計局が発表した「平成30年住宅・土地統計調査」※この先は外部サイトに遷移します。によると、一番家賃が高いのはワンルームマンション(非木造・29㎡以下)で東京都の6万9,706円だ。ファミリー向け(非木造・70~99㎡)も同じく東京都で14万8,966円となっている。
Q.住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキングは?
LIFULL HOME'S PRESS(ライフルホームズプレス)によると「住みやすさのわりに家賃が安い駅ランキング2023」は、1位が「亀有」、2位が「川口」、3位が「金町」だった。これは、都心の職場に通いやすい駅であり、かつ駅周辺の施設充実度が高いことを住みやすさの定義としている。
Q.日本一物価が安い街はどこか?
「物価」と「家賃」がリーズナブルな都道府県は群馬県だ。総務省が2023年6月に公表した「消費者物価地域差指数」の総合指数で群馬県は全国で2番目に低く、住居指数は87.0%と1位の宮崎県(90.5%)よりも低い。
総合指数 | 住居指数 | |
---|---|---|
宮崎県 | 96.1%(47位) | 90.5%(26位) |
群馬県 | 96.2%(46位) | 80.7%(36位) |
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