融資の際に確認されるポイントは?審査に通らないパターンを知っておこう!
(画像=H_Ko/stock.adobe.com)

不動産投資を始めるにあたって「ローン審査について知りたい」という人は多いだろう。そこで本コラムでは、不動産投資ローン(アパートローン含む)の特徴を住宅ローンと比較しながら解説していく。併せて、不動産ローンの審査で重視される項目や審査に通らないパターンについても紹介する。

不動産投資ローンと住宅ローンの違いとは?

不動産投資ローンと住宅ローンは根本が異なるため、両者を比較すれば不動産投資ローンの特徴が理解しやすくなるだろう。ここでは、4つの違いについて解説していく。

<不動産投資ローンと住宅ローンの違い>

不動産投資ローン 住宅ローン
利用目的 収益物件(賃貸物件)の購入 自分の居住物件の購入
返済の原資 基本は家賃収入 契約者の給与などの収入
借入期間 物件の耐用年数に準じた期間 フラット35:最長35年
金利(2023年2月時点) 2%以上が多い フラット35:1.880%(21~35年)

利用目的の違い

住宅ローンは、ローン申込者が居住するための物件を購入するものだ。一方で不動産投資ローンは、収益物件(賃貸物件)を購入するためのものである。収益物件を手に入れるために住宅ローンを利用することはできない。

返済の原資の違い

一般的に住宅ローンは、ローン申込者給与などの収入から返済を行っていく。一方、不動産投資ローンは原則、家賃収入から返済していくのが基本だ。ただし、空室が発生した場合などは、他の収入で返済をカバーしていく必要がある。

借入期間の違い

例えば、代表的な住宅ローン商品「フラット35」の借入期間は最長35年だ。不動産投資ローンも同程度の期間、借り入れできるケースもある。しかし、どちらも購入者の借入時の年齢や担保となる物件の耐用年数によっては、借入期間が短くなることもある。

金利の違い

一般的に住宅ローンのほうが安い傾向だ。例えば、2023年2月時点における「フラット35」の最頻金利は1.880%(21~35年)で、変動金利であればさらに安い金利で借り入れできることが多いが、不動産投資ローンは金利を1%半ばから2%以上に設定している金融機関が一般的だ。

不動産投資ローンの審査で重視される項目とは?

不動産投資ローンの審査で重視される項目を紹介していく。ただし、金融機関ごとに審査方法や基準が異なるため、以下で記載する内容はあくまでも“傾向”であることに留意したい。

借入時・返済時の年齢

多くの金融機関で不動産投資ローンの借入時・返済時の年齢条件が設定されているが、その内容はさまざまだ。例えば、以下のようなものがあり、金融機関によって大きく異なる。

  • 上限年齢が明記されていない
  • 団体信用生命保険の利用時に年齢制限がある
  • 借入時と最終返済時の上限年齢がある など

とはいえ、不動産投資は長期の借入期間が設定されることが多いため、借入開始時の年齢が高齢になるほど借入期間が短くなるのが一般的だ。

居住地など

金融機関によっては、居住地などを制限しているケースもある。具体的には「原則日本に在住している方」「外国人でも永住許可を受けていれば可」といった具合だ。また、信用金庫などの場合は「営業エリア内に在住、または、営業エリア内の企業に勤務」といった条件もある。

勤続年数

不動産投資ローンの商品説明書で申込者の勤務年数を「同一勤務先に3年以上勤務している」などと明記している金融機関もある。なお、ローンの商品説明書に勤務年数の要件がなくても、審査時にチェックされている可能性があるため押さえておきたい。

直近の年収

申込者の直近の年収は、不動産投資ローンの審査で特に重視される項目だ。とはいえ、金融機関によって基準は以下のように違いがある。

金融機関 前年度の税込み年収
A信用金庫 300万円以上
B銀行 500万円以上
C信託銀行 700万円以上

ただし、保有資産が潤沢な方は年収が低くてもローン審査に通るケースもある。

資産背景

「現金化しやすい」「担保評価が高い」といった資産があると、不動産投資ローンの審査で有利になりやすい。

<資産の一例>
・預貯金
・残債のない不動産
・上場株式 など

他ローンの借入額と返済遅延

どれくらいの借入額があると不動産投資ローンの審査に影響するかは、ケースバイケースだ。しかし、少なくともローン返済の遅延があった場合は著しく不利になる点は押さえておきたい。例えば、「直近1年以内に遅延のない方」といった要件がある金融機関も存在する。

健康状況

不動産投資ローンの利用にあたり「団信(団体信用生命保険)への加入」を前提にしている金融機関も多い。団信は、申込時に健康状態の告知義務があり、内容によっては加入できない(=ローンが利用できない)こともある。ただし、健康上の理由で団信に加入するのが難しい場合は、借入金利は高くなるものの、持病があっても加入がしやすいタイプの団信を選べる金融機関もある。

物件の収益性と資産価値

物件自体の評価も不動産投資ローンの審査に大きな影響を与える。主な物件評価の方法としては「積算価格」「収益還元評価」の2つがあるが、どちらをどれくらい重視するかは金融機関次第だ。いずれにせよ、積算評価と収益性の両方が高い物件が有利といえるだろう。

法定耐用年数

賃貸物件の法定耐用年数も不動産投資ローンの審査を左右する。基本的に耐用年数が残っている物件ほど借入期間を長く設定しやすい。多くの金融機関で法定耐用年数以内の借入期間となる傾向がある。

オーナーの賃貸経営の知識・経験・適性

アパートやマンションの経営は「不動産投資」と呼ばれているが、実際は「賃貸経営」という事業である。事業である以上、経営者(オーナー)には賃貸経営をするための知識・経験・適性などが求められる。特に、一棟マンションやアパートなどの賃貸経営では一度に所有する戸数が多いため、経営者としての資質といった部分を重視される可能性もある。

不動産投資ローンの審査に通らない3パターンとは?

不動産投資ローン審査の可否は、各金融機関が物件の内容や申込者の内容を見て総合的に判断している。審査に落ちた場合、申込者にその理由を明確に伝えられることはないが、審査に通らないパターンは主に以下の3つがある。

1.申込者に問題があるパターン

申込者に問題があり不動産投資ローンの審査に通らなくなるパターンの典型例は「利用者の要件に合っていない」「ローンの延滞履歴がある」などである。

  • 利用者の要件に合っていない
    各金融機関の不動産投資ローンの商品説明書に目を通せば「自分がローン利用者の要件を満たしているか」について判断できるだろう。なおローンの商品説明書は、各金融機関の公式サイト上で確認できる。まずは不動産投資ローンを申し込む前に必ず確認したい。

  • ローンの延滞歴がある
    少なくとも信用情報機関に延滞履歴が残っている間は、審査にマイナスに働く可能性が高い。例えば、信用情報機関の一つであるCICには、延滞の情報が「契約期間中および契約終了後5年以内」保有されている。

ただ、延滞があってから5年以上経てば不動産投資ローンに必ず通るかというと、そういうわけではなく、他の要因から審査に通らないことは当然ある。ローン返済の延滞があった方は、一定期間をおいて実際にローン審査を受けてみて判断するしかない。

2.個人の属性が金融機関との相性が悪いパターン

「収入が低い」「資産が少ない」「勤務年数が短い」なども不動産投資ローンの審査に影響する要因になり得るが、金融機関によって基準はさまざまだ。なぜなら、それらの基準は各金融機関がこれまでの融資ノウハウによって独自に決めているものであるからだ。そのため、「収入・資産・勤務年数などが原因でローンの審査に落ちたのではないか?」と感じた場合は、他の金融機関に相談してみるのも一案だ。

また、多くの金融機関では不動産投資ローンの審査において「自己資金」を重視している。一般的に物件価格の1~3割程度の自己資金を求められるケースが多いが、自己資金の割合が多いほどプラスに働きやすい。もし、十分な自己資金を用意するのが難しい場合で、自宅など別に所有する不動産がある場合は追加で担保設定するのも一案だ。

3.融資対象の物件が金融機関との相性が悪いパターン

「積算評価や収益性が低い」「建物の耐用年数が短い」など、融資対象の物件の条件が要因で審査に落ちるパターンもある。この場合は「審査に通りやすい物件に変更する」「(同じ物件で)再度、他の金融機関にあたってみる」といったことで改善の余地があるだろう。

なかには、後者の改善方法は「そもそも選んだ物件が悪ければ金融機関を変えても結果が同じでは?」と感じる人もいるかもしれない。しかし、上述したように「積算評価や収益性」や「耐用年数」の考え方や基準は金融機関ごとに異なる。その物件にこだわりたいなら金融機関を変えて再チャレンジするのもよいだろう。

ムダな審査を受けないために商品説明書をしっかりチェック!

最終的に自分と相性のよい金融機関は、不動産投資ローンの審査や相談を繰り返し受けていくうちに徐々に金融機関の特徴が掴めてくる面もある。また、その経験のなかでローン審査に通りやすい物件の傾向もつかめてくるだろう。つまり、仮に不動産投資ローンの審査に通らなかった場合でも「投資家としての経験値が得られる」ということだ。だからといって、やみくもに審査を受けても効率が悪い。

まずは各金融機関の不動産投資ローンの商品説明書に目を通し、自分にとって利用可能な金融機関に申し込もう。

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