「2040年問題」の恐ろしさとは?準備不足なら大変なことに
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

人口減少という長期トレンド下で高齢化・少子化が進むなか、高齢者人口が最多となる2040年ごろに懸念される問題がある。いわゆる「2040年問題」だ。本コラムでは、2040年問題の概要や懸念される問題、対応策などについて解説していく。

2040年問題とは?

「2040年」は、ちょうど少子化による人口減少と団塊ジュニア世代の高齢化が重なり、高齢者人口がピークを迎えることが見込まれている。国立社会保障・人口問題研究所が発表する「日本の将来推計人口」によると、日本の総人口は2040 年に1億 1,092 万人となり、そのうち65歳以上の老年人口は3,921 万人で高齢化率は35%を超えると予測されているのだ。そのため、国内でさまざまな行政上の問題が表面化する可能性があるのだ。

出典:国立社会保障・人口問題研究所※この先は外部サイトに遷移します。「日本の将来推計人口(平成29年推計)」より株式会社ZUU作成
(画像=出典:国立社会保障・人口問題研究所※この先は外部サイトに遷移します。「日本の将来推計人口(平成29年推計)」より株式会社ZUU作成)

総務省は、この状況に対応するため、2017年10月から総務大臣主催の「自治体戦略2040構想研究会」を開催し、2018年4月に第一次報告、同年7月に第二次報告を公表した。

同研究会では、2040年ごろの自治体が抱える可能性がある課題を整理し、行政が早急に取り組むべき対応策を検討することを目的としている。2040年にかけて発生する内政上の危機としてまとめたのは、大きく分けて以下の3つだ。

・若者を吸収しながら老いていく東京圏と支え手を失う地方圏
・標準的な人生設計の消滅による雇用・教育の機能不全
・スポンジ化する都市と朽ち果てるインフラ

三大都市圏も地方も同じく従来の人口構成ではなくなり、そのことで行政サービスにほころびが生まれる。つまり産業構造や企業の各種制度も時代に合わなくなるなかで、人口増加時代に完成したインフラの維持管理に費用がかかり、財政を圧迫する可能性があるということだ。

2040年問題で年金支給年齢が引き上げられる可能性

上記のように2040年ごろに直面すると見込まれる諸問題の影響により、国の財政状況が悪化する可能性がある。2019年5月に厚生労働省が公表した「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部のとりまとめについて」※この先は外部サイトに遷移します。では、健康寿命を75歳以上まで延ばすとともに70歳までの就業機会を確保する制度の創設が盛り込まれた。

国は、そのままなら膨らむばかりの社会保障費を抑制する必要があるため、年金の支給年齢が引き上げられたり支給額が切り下げられたりする見方が強まっている。

もし定年後に再就職できなければ……

昨今、経済界では定年年齢を引き上げる流れがあるが、会社側の制度によっては引き上げられた年金支給開始年齢に至るまで預貯金を切り崩す生活を余儀なくされる可能性もある。現状、老齢基礎・厚生年金は原則として65歳から受け取ることが可能だ。ただ希望すれば60~65歳になるまでの間に繰り上げて受け取ることができる。

そう聞くと繰り上げ受給をしたほうが得をするように感じる人もいるかもしれない。しかし繰り上げ受給の請求をしたタイミングに応じて総支給額が減額され、その減額率は一生変わらないため、注意が必要だ。

こうした問題のための対処法

高齢になってから生活困窮とならないためには、どのような対策が有効だろうか。例えば、対策の一つとして運用によって将来のための資産を増やしておくことが挙げられる。ただし、資産運用といっても「元金を増やして再投資するようなタイプ」「定期的に収入を得るようなタイプ」などがあるため、しっかりと把握しておきたい。

投資はギャンブルではないが、注意すべき点は多いためよく考えてから始めたい。

資産運用で押さえておくべきこと

次に、将来のために資産運用したいと考えたときに、押さえておきたいポイントについて解説する。

リスクとリターンは表裏一体

「無条件でおいしい話」というのは、そうそうない。なぜなら、投資にはリスクとリターンがつきもので、大きく儲かる可能性がある商品は逆に大きく損をする可能性があるという表裏一体の一面があるからだ。高齢になってから活用するための資金作りが目的ならば失敗は許されない。そういう意味では、できるかぎり手堅い方法での資産運用が望ましいといえる。

主な投資商品の種類

近年は、老後資金の確保が大きなテーマとなり、さまざまな投資ノウハウが紹介されている。そのなかで、最も身近なのは株式投資だろう。個別の企業の株式を買うのはもちろん、他にも株式指数などに連動する投資信託商品、国や自治体、企業が発行する債券に対する投資もある。

また、住んでいる地域によっては不動産投資も資産運用の手段の一になる。リタイア後に働かない場合、当然定期収入は年金以外になくなるが、「資金に余裕がある」「人気の高いエリアになじみのある」といった人は、不動産投資を行うことで家賃収入を得ることが期待できるだろう。

NISAやiDeCoの存在

2024年からのNISA(少額投資非課税制度)の恒久化も話題となっている。NISAは、国が個人の資産運用を後押しする仕組みとして一定金額の範囲内の投資に限り、株式や投資信託の譲渡益、配当収入に課税しないとする制度だ。ただ現行NISA(2023年時点)では、せっかく金融商品を買っても保有できる期間が5年、20年などと限られているため、長期の資産形成には不十分な点もあった。

今後は、資金が必要になるまで長期間保有して運用できるようになる。個人が有利に資産運用を進める制度としては、個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」も選択肢の一つだ。これは、自分で投資対象の金融商品を選択して運用する仕組みで、毎月の掛け金は所得から控除できるほか、運用益を非課税で再投資できる。

ただし、掛け金の上限は「自営業か」「会社員か」といった雇用形態によって別々に定められており、原則60歳を超えるまでは受給できない仕組みのため、注意が必要だ。

今から2040年問題の対応を考えておこう

人生100年時代を迎え、定年後の時間は長くなるにもかかわらず、国の社会保障制度には先行きに不透明感が増している。肝心なのは、自分の資産運用を他人任せにしすぎず将来のために自ら積極的に準備する姿勢だ。

なかには「2040年問題なんて、まだまだ先のことだろう」と思っている人もいるのではないだろうか。しかし思い出してみてほしい。「2000年問題」「ミレニアム」と世間が騒いだのは、もう20年以上も昔の話であり、一方で2040年は今から17年後のことだ。そう考えると2040年は決して「まだまだ先ではない」といえるだろう。

manabu不動産投資に会員登録することで、下の3つの特典を受け取ることができます。

①会員限定のオリジナル記事が読める
②気になる著者をフォローできる
③気になる記事をクリップしてまとめ読みできる

- コラムに関する注意事項 -

本コラムは一般的な情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘することを目的とするものではありません。
当社が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づきますが、その正確性や確実性を保証するものではありません。
外部執筆者の方に本コラムを執筆いただいていますが、その内容は執筆者本人の見解等に基づくものであり、当社の見解等を示すものではありません。
本コラムの記載内容は、予告なしに変更されることがあります。