不動産価格の推移がわかる「不動産価格指数」と「公示価格」を知ろう
  1. 不動産価格の推移を知る:不動産価格指数・公示地価
    1. 不動産価格指数:不動産価格の動向を指数化したもの
    2. 公示価格:地価公示法による1月1日時点の標準地の正常な価格
    3. 不動産価格指数と公示地価との違い
  2. 最新の不動産価格の推移を把握する
    1. 最新の全国不動産価格指数の推移
    2. 地方エリア別の不動産価格指数の推移
    3. 全国住宅地の公示価格の推移
  3. 不動産価格指数の公表内容と算出方法
    1. 住宅
    2. 商業用不動産
    3. 不動産価格指数の算出方法
  4. 不動産投資における不動産価格指数の活用法
  5. 不動産価格の変動要因
    1. 通常要因
    2. 時事要因
  6. 不動産価格の推移に関するQ&A
    1. Q.不動産価格は下がる可能性はあるのか
    2. Q.2023年の不動産価格指数は?
    3. Q.バブル崩壊で不動産価格はどのくらい下落したか?

不動産投資で適切な投資判断を行うべく不動産価格の動向を確認したい場合は「不動産価格指数」が便利だ。国土交通省が公表しているデータで、物件種類や地域ごとの不動産価格推移を確認できる。今回は、不動産価格指数の概要や算出方法、読み方、不動産投資における活用法を紹介していく。

不動産価格の推移を知る:不動産価格指数・公示地価

不動産投資でキャピタルゲイン(売却益)を上げるには、購入価格よりも高い価格で売却しなければならない。そのため不動産価格の推移を知り、今後の動きを予測することが極めて重要だ。

不動産価格の推移を知るには、国土交通省から発表される「不動産価格指数」と「公示地価」を見る必要がある。

不動産価格指数:不動産価格の動向を指数化したもの

不動産価格指数とは、年間約30万件の取引価格情報をもとに不動産価格の動向を指数化したものだ。国土交通省が全国・ブロック別・都市圏別に物件種類ごとの不動産価格指数を毎月公表している。四半期ごとに指数の動向をまとめた資料も公表しており、過去15年の不動産価格推移を確認することも可能だ。

また、不動産価格指数を補完するものとして、所有権移転登記情報をもとに毎月の取引件数や面積をまとめた「不動産取引件数・面積」も公表している。

・不動産価格指数の目的
不動産価格指数は、IMF(国際通貨基金)やEurostat(欧州委員会統計局)などの国際機関の協力のもと国土交通省によって国際指針に基づいて開発され、2012年8月から公表を開始した。公表に至った経緯としては、2008年に発生した金融危機をきっかけに、国際的な共通ルールに則った不動産価格の指標を作成・公表する必要性が高まったことが背景にある。

不動産価格指数は、不動産市場の過熱や冷え込みを適時・適切に把握し、不動産取引の透明性や活性化を図ることが目的だ。また経済動向の判断に活用し、土地政策や金融政策などに寄与することも期待されている。

公示価格:地価公示法による1月1日時点の標準地の正常な価格

公示地価とは、不動産価格動向を示す公的なデータの一つであり、地価公示制度に基づいて国土交通省土地鑑定員会が毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公表している。

土地の価格を知るための客観的な評価指標として、不動産鑑定や固定資産税評価などに活用されている。

・公示価格の目的
土地の価格が基になって税額が決まる税金がいくつかあり、それらの税額を決めることが公示価格の目的といえます。固定資産税・相続税・登録免許税・不動産取得税などが挙げられます。

例えば、不動産取得税は以下の計算式で求められる。「取得した不動産の固定資産税評価額」は土地の公示価格の70%程度とするため、公示価格が必要になる。

取得した不動産の固定資産税評価額✕税率

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また、国道や県道、市道などの道路の幅を広げる工事を行う際や道路を新しく造る場合に、土地を買い取るケースがある。その際の価格の根拠となるのが公示価格だ。そのため、国が毎年、土地の価格を調査している。

不動産価格指数と公示地価との違い

不動産価格指数と公示地価の主な違いは、以下の通りだ。

不動産価格指数公示地価
対象不動産・住宅
・商業用不動産
・一般の土地(住宅地、商業地)
対象地域・全国
・ブロック別
・都市圏別
・都道県別
・全国
・三大都市圏別
・地方圏別
・都道府県別
・標準値(全国2万6,000地点)
公表頻度毎月年1回(3月)
算出内容基準時点と比較した指数(2010年の平均値を100として基準化)毎年1月1日時点における標準的な価格

公示地価は、地域ごとに住宅地と商業地の地価動向が毎年3月に公表されるため、全国や特定地点の土地価格の推移を知りたいときに便利だ。一方、不動産価格指数は価格ではなく基準値と比較した指数が毎月公表される。土地に限定せず、「戸建住宅」「マンション(区分所有)」「マンション・アパート(一棟)」なども対象に含まれるのも特徴だ。

不動産投資に取り組む場合は、両者の違いを理解したうえでうまく使い分けるといいだろう。

最新の不動産価格の推移を把握する

今回は、執筆時点の最新となる2023年8月分(2023年11月30日公表分)の不動産価格指数と公示地価のデータ推移からトレンドを分析してみよう。両者の大きな違いは、不動産価格指数がマンションや戸建て住宅など建物の価格が中心であるのに対し、公示地価は土地の価格を示すものであるという点だ。

最新の全国不動産価格指数の推移

<不動産価格指数(住宅)※2010年平均=100>

不動産価格は、2013年を境に二極化が進んでいる。2013年までは住宅地、戸建住宅、マンション(区分所有)はほぼ同じような動きをしていた。しかし2013年からマンション価格が突然上昇を始め、以降2023年まで右肩上がりで上昇を続けている。2010年平均を100としたマンション価格指数は2023年8月時点で192.1となっており、2023年12月現在でも上昇が止まる気配はない。

また長期的に横ばいを続けていた住宅地や戸建住宅は、新型コロナウイルス感染が拡大した2020年以降になぜか上昇を始め、2023年8月時点で住宅地価格指数が113.6、戸建住宅価格指数が115.3となっている。

地方エリア別の不動産価格指数の推移

下表では「全国」「ブロック別」「都市圏別」「都道府県別」の不動産価格指数と対前月比が表でまとめられている。対前月比の「▲」はマイナスを意味し、前月に比べて価格が下がっていることを示している。直近の不動産価格の動向を知りたい場合は、こちらの表を確認するといいだろう。

<不動産価格指数(住宅)※2010 年平均=100>

地方エリア別に不動産価格指数を見ると、以下の通りとなる。

・北海道エリア
北海道エリアは、不動産価格指数の4部門で各1位と最も上昇率が高いエリアだ。住宅総合は、158.3で対前月比+3.9%と伸びている。戸建住宅が+16.2%と大幅に伸びているほか、マンションも254.9と高い指数になっている。

・東北エリア
東北エリアは、住宅総合が132.2で5位だが、戸建住宅が126.2で2位、マンションが238.8で3位と高い指数になっている。

・関東エリア
東京を擁する関東エリアは、住宅総合が139.5で2位だが、その他の指数はそれほど高くない。もともとの価格が高いため、伸び率が地方よりも低いことが推測できる。

・北陸エリア
北陸エリアは、住宅総合が124.3で6位とあまり高くない。マンションは200.4と高いが、サンプル数が少ないので参考数値となっている。参考にしにくいエリアといえるだろう。

・中部エリア
名古屋を擁する中部エリアは、住宅総合が113.4で8位と大きな伸びは見られていない。他の部門も低いため、関東同様にもともとの水準が高いことが要因と考えられる。

・近畿エリア
大阪を擁する近畿エリアは、住宅総合が136.0で3位と高い。住宅地とマンションは、関東エリアの伸び率を上回っている。2025年の大阪万博による都市開発の影響がどのように出るかも注目される。

・中国エリア
中国エリアは、住宅総合が123.9で7位と低い。しかしマンションは、216.2で4位と高い順位になっている。こちらも参考数値となっているため参考にしにくいエリアだ。

・四国エリア
四国エリアは、住宅総合が107.8で最も低くなっている。住宅地が99.3、戸建住宅が95.3と、2010年に比べてマイナス成長になっているのは四国エリアだけである。ただし、住宅地とマンションは参考数値である。

・九州沖縄エリア
九州沖縄エリアは、住宅総合が134.7で4位と高い伸びを示している。なかでも住宅地が119.2で2位、マンションが239.6で2位と高いのが目立つ。

都市圏別では、東京・神奈川・千葉・埼玉を擁する南関東エリアが143.9で1位。また都道府県別の3大都市では、東京都が154.7で1位、大阪府が142.0で2位、愛知県が123.8で3位の順となっている。

全国住宅地の公示価格の推移

一方の公示地価は、逆に新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、2021年(R3)の住宅地公示地価は全国、三大都市圏、地方圏がいずれも前年比で下落した。新型コロナウイルスが感染症の5類に移行した2023年(R5)は住宅地が三大都市圏で+1.7%、地方圏で+1.2%とコロナ前の伸び率を上回っている(下表参照)。

かつて住宅地・商業地は東京の一極集中が懸念されていたが、近年は名古屋圏のほうが伸び率は高くなっている点に注目したい。また地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)の伸び率が8%台の高い伸び率を示しているのが特徴的だ。

全用途平均の伸び率は、すでにコロナ前を上回っているが、今後は商業地の伸び率がコロナ前まで回復できるかかが焦点になるだろう。

不動産価格指数の公表内容と算出方法

不動産価格指数の公表内容は「住宅」と「商業用不動産」の2つに分けられる。

住宅

住宅は、以下3つの用途が対象だ。

・住宅地
・戸建住宅
・マンション(区分所有)

住宅地は、登記上の地目が「宅地」で現地調査に基づく類型が「更地」もしくは「底地」であるもの。戸建住宅は、建物付きの住宅地を意味する。マンション(区分所有)は、「区分所有建物(の敷地)」として登記され専有・種類が「居宅」であるものだ。移転登記されたものを対象としているため、基本的に中古マンションとなる。

また上記3つの用途を加重平均した「住宅総合」の指数も公表されている。

商業用不動産

商業用不動産は、以下7つの用途が対象だ。

・店舗
・オフィス
・倉庫
・工場
・マンション・アパート(一棟)
・商業地
・工業地

上記のうち「マンション・アパート(一棟)」は、次のいずれかに該当するものを指す。

  1. 登記上の建物種類が「共同住宅」であるもの
  2. 不動産取引事業者へのアンケート調査において、今後の主な利用目的が「住宅」であるもので、かつ建物所有権移転登記に突合されなかったもの(主に新築物件)のうち、「建物延床面積/敷地面積」の割合が300%超のもの(同300%以下のものは不動産価格指数(住宅)の「戸建住宅」に分類)

不動産価格指数の算出方法

不動産価格指数は、国土交通省「不動産の取引価格情報提供制度」の取引事例データをもとに算出される。

取引事例データは「登記異動情報」「アンケート調査票」「現地調査」の3ステップで作成。住宅については、主に「登記異動情報」「アンケート調査票」に基づいて推計を行うが、過去データや一部項目は「現地調査」も情報に加えている。

商業用不動産は、取引事例データのほかにJ-REIT適時開示資料から収集したデータも加えて推計しているのが特徴だ。

不動産投資における不動産価格指数の活用法

不動産価格指数は、どのような場面で利用すればよいのだろうか。ここでは、不動産投資における不動産価格指数の活用法を紹介する。

<不動産市場動向の確認>
不動産価格指数は、不動産市場の動向を確認したいときに活用できる。国土交通省が公表しているため、データの信用度が高いのが特徴だ。長期の価格推移はもちろん、毎月公表しているため直近の動向も把握しやすいだろう。

<投資対象不動産・エリアの選定>
不動産価格指数は、幅広い種類の不動産を対象としている。マンション(区分所有)だけでなく、戸建住宅やマンション・アパート(一棟)も含まれているため、投資する不動産の種類を選ぶ際の参考資料として活用できるだろう。また、ブロック別や都市圏別の指数も公表していることから、投資エリアの選定にも役立つ。

<取引タイミングの判断>
不動産価格指数は、取引タイミングの判断に活用することも可能だ。例えば、「購入時は指数が下落傾向にあるエリアは避ける」「指数が上昇傾向にあるときに売却する」といった具合だ。不動産価格指数で直近の価格動向を確認しておけば、物件購入・売却の判断がしやすくなるだろう。

不動産価格の変動要因

不動産価格が変動するには、さまざまな要因がある。大別すると金利や為替の影響による「通常要因」と地政学リスクなどによる「時事要因」の2つだ。

通常要因

・金融政策の変更
通常要因で不動産価格への影響が大きいのが金利動向だ。長期金利の上昇は、住宅ローンや不動産投資ローンの借入金利の上昇を招くため、不動産市場にはマイナスになる。ただし日本銀行は、2023年12月の金融政策会合で低金利政策を現状維持することが決めたため、金利がすぐに大きく上昇する可能性は低いだろう。

日本は、現在賃金が上昇する経済を目指しており、日本銀行も物価安定目標2%を維持する意向だ。加えて国債発行残高が増え続けている現状では、利払い費の増大を招くため、金利上昇を抑えなければならない事情もある。

・為替の動向
もう一つの要因は為替である。円安になるほど海外投資家にとって日本の不動産は割安になるため、円安は不動産市場にとってプラスに働く。さらに円安によって海外から輸入する資材が高騰するため、建築費が増大し、物件価格の上昇につながるという事情もある。

円相場は、米国金利の動向に大きく影響されるため、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策の行方にも注視したい。FRBは、2024年12月末時点の金利見通しの中央値を4.6%に設定している。現在の水準より0.8ポイント低い水準だ。この目標値を達成するには、0.25%の利下げを少なくとも年3回行う必要がある。そうなると日米の金利差が縮小するため、今後は円高米ドル安に向かうとする見方も多い。

時事要因

時事要因で不動産価格に大きな影響を与えるのが、戦争や疫病などの地政学リスク、国際的なイベントなどである。

・新型コロナウイルスなどの疫病拡大
2020年に発生した新型コロナウイルスは、緊急事態宣言による外出自粛で多くのオフィスビルやテナントビルで空室が増え、不動産業界にも大きな影響を与えた。半面、居住用住宅はテレワークに対応するため、新たな住宅購入や賃貸の転居などの需要を生んだ。今後も新たな感染症が発生するリスクは常にあるため、一定の備えは必要だ。

・ウクライナ戦争などによる輸入物価高騰
地政学リスクでは、ウクライナ戦争によって原油や天然ガスの輸入価格が高騰し、エネルギー価格を押し上げたのが代表的なケースである。木材などの資材も高騰し、建築価格に反映されて物件価格の上昇を招いた。イスラエルのガザ地区侵攻も直接の影響は少ないが、イスラエルを支持する米国の国際的信認の低下で景気に悪影響を与える可能性はあるだろう。

・東京五輪などのイベント
国際的イベントの開催も不動産価格の上昇につながる。東京五輪選手村として使われていた超大型マンション「HARUMI FLAG」が、閉幕後に売り出され申し込み殺到となったのは典型的な例の一つだ。2025年に開催される大阪万博の開催もインフラ整備や不動産開発が盛んになり、国際都市としての魅力が上がる要因になる。連動して不動産価格の上昇も期待できるだろう。

・生産緑地問題の影響
2022年に生産緑地法によって税制優遇されてきた農地が一斉に売り出され、地価の下落を招くのではないかと懸念されていた。しかし2023年12月時点では、地価下落などの影響は出ておらず杞憂に終わる見込みだ。

不動産価格の推移に関するQ&A

Q.不動産価格は下がる可能性はあるのか

不動産価格は、上昇傾向だがもちろん下がる可能性もある。その大きな要因の一つが人口減少だ。世帯数が減少すれば空き家が多くなり、一戸建てを中心に不動産価格の下落が想定される。一戸建てと比較すると、マンションは不動産投資としての需要があるため、一定の価格水準を維持する可能性があるだろう。

Q.2023年の不動産価格指数は?

国土交通省が2023年11月末に発表した2023年8月分の不動産価格指数は、以下の通りだ。

・住宅総合:134.9
・マンション:192.1
・戸建住宅:115.3
・住宅地:113.6
・商業用不動産総合:137.0
・オフィス:159.6

※2010年の平均を100とした場合の数値

Q.バブル崩壊で不動産価格はどのくらい下落したか?

当時は、物件利回り3.5%程度になるまで下落するといわれ、最大で40%の下落が見込まれた。

リーマンショックをきっかけにして2008年に起きたのが不動産ファンドのバブル崩壊である。それまで投資ファンドのマネーが流入して不動産バブル状態だったが、外資ファンドのマネーが細り都心の公示地価も下落に転じた。

また、1989〜1990年ころのバブル崩壊の際も大きく不動産価格が下落した。不動産経済研究所によると、1990年の首都圏の新築マンション平均価格は6,123万円まで上昇していたが、バブルがはじけたことにより翌1991年に5,900万円、1992年には4,488万円と2年間で2,000万円近くも下落した。

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