国土交通省が公表する「不動産価格指数」とは?算出方法や読み方、活用法を解説
(画像=Asier/stock.adobe.com)

不動産投資で適切な投資判断を行うべく不動産価格の動向を確認したい場合は「不動産価格指数」が便利だ。国土交通省が公表しているデータで、物件種類や地域ごとの不動産価格推移を確認できる。今回は、不動産価格指数の概要や算出方法、読み方、不動産投資における活用法を紹介していく。

不動産価格指数とは

不動産価格指数とは、年間約30万件の取引価格情報をもとに不動産価格の動向を指数化したものだ。国土交通省が全国・ブロック別・都市圏別に物件種類ごとの不動産価格指数を毎月公表している。四半期ごとに指数の動向をまとめた資料も公表しており、過去15年の不動産価格推移を確認することも可能だ。

また、不動産価格指数を補完するものとして、所有権移転登記情報をもとに毎月の取引件数や面積をまとめた「不動産取引件数・面積」も公表している。

不動産価格指数の目的

不動産価格指数は、IMF(国際通貨基金)やEurostat(欧州委員会統計局)などの国際機関の協力のもと国土交通省によって国際指針に基づいて開発され、2012年8月から公表を開始した。公表に至った経緯としては、2008年に発生した金融危機をきっかけに、国際的な共通ルールに則った不動産価格の指標を作成・公表する必要性が高まったことが背景にある。

不動産価格指数は、不動産市場の過熱や冷え込みを適時・適切に把握し、不動産取引の透明性や活性化を図ることが目的だ。また経済動向の判断に活用し、土地政策や金融政策などに寄与することも期待されている。

公示地価との違い

公示地価も不動産価格動向を示す公的なデータの一つだ。地価公示法に基づいて、国土交通省土地鑑定員会が毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公表している。不動産価格指数と公示地価の主な違いは、以下の通りだ。

不動産価格指数 公示地価
対象不動産 ・住宅
・商業用不動産
・一般の土地(住宅地、商業地)
対象地域 ・全国
・ブロック別
・都市圏別
・都道県別
・全国
・三大都市圏別
・地方圏別
・都道府県別
・標準値(全国2万6,000地点)
公表頻度 毎月 年1回(3月)
算出内容 基準時点と比較した指数(2010年の平均値を100として基準化) 毎年1月1日時点における標準的な価格

公示地価は、地域ごとに住宅地と商業地の地価動向が毎年3月に公表されるため、全国や特定地点の土地価格の推移を知りたいときに便利だ。一方、不動産価格指数は価格ではなく基準値と比較した指数が毎月公表される。土地に限定せず、「戸建住宅」「マンション(区分所有)」「マンション・アパート(一棟)」なども対象に含まれるのも特徴だ。

不動産投資に取り組む場合は、両者の違いを理解したうえでうまく使い分けるといいだろう。

不動産価格指数の公表内容

不動産価格指数の公表内容は「住宅」と「商業用不動産」の2つに分けられる。

住宅

住宅は、以下3つの用途が対象だ。

・住宅地
・戸建住宅
・マンション(区分所有)

住宅地は、登記上の地目が「宅地」で現地調査に基づく類型が「更地」もしくは「底地」であるもの。戸建住宅は、建物付きの住宅地を意味する。マンション(区分所有)は、「区分所有建物(の敷地)」として登記され専有・種類が「居宅」であるものだ。移転登記されたものを対象としているため、基本的に中古マンションとなる。

また上記3つの用途を加重平均した「住宅総合」の指数も公表されている。

商業用不動産

商業用不動産は、以下7つの用途が対象だ。

・店舗
・オフィス
・倉庫
・工場
・マンション・アパート(一棟)
・商業地
・工業地

上記のうち「マンション・アパート(一棟)」は、次のいずれかに該当するものを指す。

  1. 登記上の建物種類が「共同住宅」であるもの
  2. 不動産取引事業者へのアンケート調査において、今後の主な利用目的が「住宅」であるもので、かつ建物所有権移転登記に突合されなかったもの(主に新築物件)のうち、「建物延床面積/敷地面積」の割合が300%超のもの(同300%以下のものは不動産価格指数(住宅)の「戸建住宅」に分類)

不動産価格指数の算出方法

不動産価格指数は、国土交通省「不動産の取引価格情報提供制度」の取引事例データをもとに算出される。取引事例データは「登記異動情報」「アンケート調査票」「現地調査」の3ステップで作成。住宅については、主に「登記異動情報」「アンケート調査票」に基づいて推計を行うが、過去データや一部項目は「現地調査」も情報に加えている。

商業用不動産は、取引事例データのほかにJ-REIT適時開示資料から収集したデータも加えて推計しているのが特徴だ。

不動産価格指数の読み方

ここからは、実際に公表された資料を使いながら不動産価格指数の読み方を確認していこう。

<不動産価格指数(住宅)※2010年平均=100>

上表では、2010年平均を100として2016年からの不動産価格指数の推移をグラフで示している。グラフを見るだけで長期の不動産価格の動向をざっくりと把握することが可能だ。例えば、上記のグラフからは「2016年以降マンション(区分所有)の価格上昇が続いていること」「2020年以降は住宅地と戸建住宅も上昇傾向にあること」が読み取れる。

<不動産価格指数(住宅)※2010 年平均=100>

また、上表では「全国」「ブロック別」「都市圏別」「都道府県別」の不動産価格指数と対前月比が表でまとめられている。対前月比の「▲」はマイナスを意味し、前月に比べて価格が下がっていることを示している。直近の不動産価格の動向を知りたい場合は、こちらの表を確認するといいだろう。

不動産投資における不動産価格指数の活用法

不動産価格指数は、どのような場面で利用すればよいのだろうか。ここでは、不動産投資における不動産価格指数の活用法を紹介する。

不動産市場動向の確認

不動産価格指数は、不動産市場の動向を確認したいときに活用できる。国土交通省が公表しているため、データの信用度が高いのが特徴だ。長期の価格推移はもちろん、毎月公表しているため直近の動向も把握しやすいだろう。

投資対象不動産・エリアの選定

不動産価格指数は、幅広い種類の不動産を対象としている。マンション(区分所有)だけでなく、戸建住宅やマンション・アパート(一棟)も含まれているため、投資する不動産の種類を選ぶ際の参考資料として活用できるだろう。また、ブロック別や都市圏別の指数も公表していることから、投資エリアの選定にも役立つ。

取引タイミングの判断

不動産価格指数は、取引タイミングの判断に活用することも可能だ。例えば、「購入時は指数が下落傾向にあるエリアは避ける」「指数が上昇傾向にあるときに売却する」といった具合だ。不動産価格指数で直近の価格動向を確認しておけば、物件購入・売却の判断がしやすくなるだろう。

不動産価格の動向を把握する指標

不動産価格指数は、取引事例データなどを活用して国土交通省が算出しているデータだ。毎月公表されており、直近の不動産価格の動向を把握する際に欠かせない資料といえる。公示地価に比べて不動産の種類が幅広く、不動産投資の対象となりやすい「マンション(区分所有)」「マンション・アパート(一棟)」をカバーしていることも魅力の一つだ。

不動産投資で物件購入や売却タイミングを判断する場合は、不動産価格指数を活用して直近と長期の価格動向を確認しておこう。

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