ダイナミック・プライシングとは?今後導入されそうな分野についても解説!
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近年の航空機やホテル、高速バスなどの料金は、繁忙期や閑散期によって変動するのをご存じだろうか。このように条件に応じて価格を変動させる仕組みは「ダイナミック・プライシング」と呼ばれている。柔軟な価格設定を導入する業界が増えており、ダイナミック・プライシングは今後ますます広がるのは確実だ。

本コラムでは、ダイナミック・プライシングの概要やメリット・デメリット、今後導入されそうな分野について紹介する。

ダイナミック・プライシングとは?

ダイナミック・プライシングとは、状況や条件によって商品やサービスの価格を変動させる仕組みのことだ。「料金変動制」や「動的価格料金」などとも呼ばれる。大型連休中やお盆の時期、年末年始などは、飛行機代やホテルなど宿泊施設の料金が高くなることはおなじみだろう。さらに宿泊施設では、週末の価格が上がるのが一般的だ。

需要が多いか少ないかによって価格を変動させるダイナミック・プライシングを導入している業界や施設は意外と多い。例えば新年度を控えた3月に料金がはね上がる引っ越し業界、披露宴を挙げるカップルが多い春と秋には式場の料金も高くなるブライダル業界も古くからダイナミック・プライシングを導入している。

ダイナミック・プライシングの仕組み

ダイナミック・プライシングを導入する場合、従来はその価格や時期について顧客動向や日々の売り上げ、人件費といった固定費、実現したい利益などを考慮して人間が判断していた。ただ近年では、価格設定などにAI(人工知能)を活用する例も目立つ。

AIであれば過去の販売実績や在庫状況、天候、競合他社の価格といった膨大なデータを踏まえて、利益を最大化するために最適な価格と変動させる時期を瞬時に判断可能だ。さらにAIは、機械学習も可能で回数を重ねるごとに適正価格の決定の精度が上がっていくとされている。

ダイナミック・プライシングのメリットとデメリット

ダイナミック・プライシングの概要が理解できたところで企業側と顧客側にどのようなメリット・デメリットがあるのかを見ていこう。

企業側のメリット・デメリット

企業側のメリットは、なんといっても利益を最大化できることだろう。需要が高まる繁忙期であれば、料金を高く設定しても利用・購入してもらえる。一方、閑散期に料金を低くすれば顧客にとっては同じサービスや商品を安く手にできるため、ある程度需要の回復が見込めるだろう。閑散期に需要が高まれば、本来なら遊ばせておいた人的リソースなどを有効に稼働できることになる。

ひいては、損失の発生を防ぐ結果を得られる効果があるということだ。デメリットとしては、AIなどシステムの導入にコストがかかることが挙げられる。価格の変動をその都度、周知するにもコストがかかるだろう。また過剰に価格を上げると顧客から反感を買ってしまう恐れもある。

顧客側のメリット・デメリット

顧客側としては、タイミングを見計らえば同じ商品でも安く手に入れることができたり、同じサービスでも安く利用できたりすることがメリットだ。一方のデメリットは、タイミングや利用する時期によっては、割高な料金を支払う必要が出てきてしまうことだろう。

今後ダイナミック・プライシングが導入されそうな分野

近年は、テーマパークやスポーツといったエンタメ業界が次々とダイナミック・プライシングを導入している。

  • テーマパーク
    2019年1月10日にユニバーサル・スタジオ・ジャパンがチケットに導入して話題になった。繁忙期と閑散期の料金に差をつけることで入場者数のコントロールと混雑緩和につながったといわれている。2021年3月20日には、東京ディズニーリゾートも後に続いた。

  • スポーツ
    スポーツ界では、プロ野球チーム、サッカーJリーグのチームなどが、対戦相手や時期によって観戦チケットの価格を数パターン用意している。いずれも2018~2021年ごろの動きだ。これからもダイナミック・プライシングの導入は、ますます増えるだろう。

  • 小売業
    導入に近い分野として真っ先に挙げられるのがコンビニエンスストアやスーパーといった小売業だ。例えば、2019年2月に大手コンビニが、2022年1月には大手スーパーが、ダイナミック・プライシングを導入する実証実験を行っている。商品に電子タグをつけて商品の消費・賞味期限を管理し、期限が迫ると事前に登録した顧客に割引販売の情報をSNSで伝えるものだ。

売れ残って廃棄処分される商品を減らすことも導入を検討する目的の一つである。各企業は、食品ロスが削減できることで収益増加に貢献する一方で、導入にはコストがかかる点を見極めている段階だ。

  • 交通業界
    他にも交通機関でのダイナミック・プライシングの導入が近そうだ。2021年10~12月にかけてタクシー運賃のダイナミック・プライシングの実証実験が国土交通省によって行われた。

タクシー運賃に導入されれば雨天や大規模イベント開催時、終電後など利用客が多いときは、運賃を高く設定する一方、客が少ない平日の日中などは安くするといったことが可能だ。また鉄道でもダイナミック・プライシングの導入が検討されている。朝夕の混雑時の運賃を上げる一方、日中は値下げすれば、利用分散が見込まれる。

混雑緩和につながるほか、ラッシュ時に増やしている人員を適正数に抑えることができればコスト削減にもなるだろう。

需要と供給の変動にあわせて調整させる

ダイナミック・プライシングは、需要と供給の変動にあわせてか価格が調整される仕組みだ。これは、需要と供給のバランスによって価格が決まる金融商品と変わらない。ダイナミック・プライシングの導入が広まれば多くの分野で料金体系が複雑になるだろう。金融商品と同様、十分にリサーチしたうえで利用・購入しなければ損を被りかねないため、導入の動きには注意しておきたい。

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