
本コラムでは、副業と所得税の関係や、副業の税金に関する注意点を解説しながら、不動産投資での税額を具体的にシミュレーションしていく。
目次
年収別不動産投資での税金シミュレーション
不動産投資を副業にして100万円の収入を得た場合を想定して本業の年収別にどの程度の税金を納めることになるのか、シミュレーションしてみよう。
一般的に不動産投資の経費率は、15~20%程度といわれている。物件を購入した初年度は、不動産仲介手数料や印紙税、登録免許税などかかる費用が多く経費率は高い。しかし2年目以降は、次第に減って15~20%程度で落ち着くため、ここでは経費率15%として計算する。
なお、以下のシミュレーションは扶養している配偶者やその他親族がいないことを前提としている。
本業での年収500万円
本業での年収が500万円の場合の税額は、以下の通りである。
青色申告 | 白色申告 | |
---|---|---|
所得税 | 23万800円 (うち副業分9万1,900円) | 24万4,700円 (うち副業分10万5,800円) |
住民税 | 33万1,000円 (うち副業分9万円) | 34万1,000円 (うち副業分10万円) |
社会保険料 | 74万3,750円 | 74万3,750円 |
合計 | 130万5,550円 (うち副業分18万1,900円) | 132万9,450円 (うち副業分20万5,800円) |
青色と白色の差額 | 2万3,900円 |
日本の所得税は、納税者が自ら税法に従って所得金額と税額を正しく計算し納税するという申告納税制度を採っている。
1年間に生じた所得金額を正しく計算し申告するためには、収入金額や必要経費に関する日々の取引の状況を帳簿に記帳し、また、取引に伴い作成したり受け取ったりした書類を保存しておく必要があり、そういった帳簿に基づく確定申告し正確な納税を行う者に対して税制優遇を行っている。青色、白色の差異はその記帳する帳簿が複式簿記によるものか簡易的なものなのかによって優遇の有無の差つけられている。
複式簿記による記帳や青色申告を選択すると青色申告特別控除として最大65万円が控除される。ただし65万円の青色申告特別控除を受けるには「5棟10室以上」の事業規模という条件がある。例えば区分マンションを1室所有しているケースでは、控除額が10万円となるため、注意が必要だ。
ここでは青色申告特別控除10万円として計算している。
本業での年収900万円
本業での年収が900万円の場合の税額は、以下の通りである。
青色申告 | 白色申告 | |
---|---|---|
所得税 | 83万7,900円 (うち副業分18万3,800円) | 85万8,300円 (うち副業分20万4,200円) |
住民税 | 63万1,500円 (うち副業分9万円) | 64万1,500円 (うち副業分10万円) |
社会保険料 | 122万8,950円 | 122万8,950円 |
合計 | 269万8,350円 (うち副業分27万3,800円) | 272万8,750円 (うち副業分30万4,200円) |
青色と白色の差額 | 3万400円 |
本業での年収1,500万円
本業での年収が1,500万円の場合の税額は、以下の通りである。
青色申告 | 白色申告 | |
---|---|---|
所得税 | 244万200円 (うち副業分30万3,300円) | 247万3,800円 (うち副業分33万6,900円) |
住民税 | 119万7,100円 (うち副業分9万円) | 120万7,100円 (うち副業分10万円) |
社会保険料 | 157万2,450円 | 157万2,450円 |
合計 | 520万9,750円 (うち副業分39万3,300円) | 525万3,350円 (うち副業分43万6,900円) |
青色と白色の差額 | 4万3,600円 |
副業と所得税の関係
副業を行うには、所得税との関係の把握が必須である。なぜなら副業で得た収入の規模によっては、確定申告しないと申告漏れになる可能性があるからだ。確定申告にあたっては、まず「収入」と「所得」の違いを押さえておくことが必要である。副業で確定申告が必要になるのは、副業が給与所得以外の場合や年間所得が20万円を超える場合だ。
副業がパート・アルバイトの場合は給与所得になり、2カ所以上から給与を受けた場合、年末調整されなかった給与の収入金額と年末調整された給与所得および退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超えれば確定申告が必要になる。不動産経営の場合、家賃収入を得るためにかかった経費は収入から差し引くことが可能だ。収入から経費を引いたものが所得となり所得が20万円を超えた場合に確定申告が必要になる。
例えば家賃収入が年間60万円でも経費が45万円かかっていれば所得は15万円となるため、確定申告は不要だ。ただし、不動産所得が赤字になった場合は給与所得と損益通算して節税になるケースがあるため、確定申告したほうが良い場合もある。
さらに複雑なのは、20万円の基準は一つの投資に対してではなく、すべての所得を合計して20万円を超えれば確定申告が必要になる点である。例えば不動産所得が15万円でもその他の副業所得が10万円あれば合計25万円となるため、確定申告が必要だ。
なお、給与所得以外の所得合計が20万円以下であっても、住民税の申告が必要となるケースがある。詳しくは以下の関連記事を参照するといいだろう。
【関連記事】副業で収入を得た際には確定申告が必要?確定申告の方法と注意点について
副業の税金に関する注意点を覚えておこう
副業を行う際は、以下のような就業規則や税金に関係する注意点もしっかりと押さえておきたい。
副業に関する就業規則のチェック
給与所得者が副業を行う場合は、まず大前提として「副業が自社の就業規則に違反しないか」を確認する必要がある。仮に認められている場合でも本業に影響が出ないように行うことが大事だ。不動産投資であれば物件管理を不動産管理会社に委託することで本業への影響を最小限に抑えられる。
税制面での注意
不動産投資で年間20万円超の所得があった場合は、給与所得者でも確定申告をしなければならない。確定申告が必要なのは、収入が20万円超ではなく収入から経費を差し引いた所得が20万円を超えた場合だ。
かつて終身雇用が当たり前だった時代は、給与所得者の副業が禁止される傾向が強かった。しかし時代は変わり現代は企業側も副業を推進する社会情勢になってきているため、副業を始めるには良いチャンスといえるだろう。
※本記事は2023年6月現在の情報に基づいて構成しています。文中のシミュレーションは一例であり、細かい設定によって計算結果は異なります。参考程度にしてください。

宮路 幸人
会計事務所での長い勤務経験で培った豊富な実務知識により、会計処理・税務処理および経営や税務に関する相談など、さまざまな問題に対応。宅地建物取引士、マンション管理士等の資格を保有し、不動産と相続関連に強みを発揮する。特に相続関連では、税務面だけでなく、家族の幸せを重視したトータルでの提案を行っており、軽いフットワークでお客さまのニーズに応えることをモットーとする。離島支援活動にも積極的。
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