本記事では、所有しているアパートに無料Wi-Fiがない、または購入を検討しているアパートにWi-Fiの設備がない大家に向けて、ネット環境を整えるために無料Wi-Fiを設置する方法やコスト、メリット・デメリットを解説する。
目次
無料Wi-Fiを設置する3つの方法
同じWi-Fi設備でもそれぞれ特徴や設置方法が異なるため、設置を検討している物件に合うものはどれか、という視点を持っておこう。
埋め込み型Wi-Fi
埋め込み型Wi-Fiとは、アパート全体に引かれたインターネット回線が、各部屋の壁やコンセント(LANケーブルの接続口がある形のもの)に埋め込まれたルーターで飛ばされるタイプである。アパートのインターネット回線が有線である場合にのみ導入できる。
コンセントにLANケーブルの接続口があるため、Wi-Fiでの接続と有線LANでの接続の両方が可能になる。
共用部設置型Wi-Fi
共用部設置型Wi-Fiとは、アパートの共用部分(廊下や壁面など)に設置されたルーターから各部屋にWi-Fi電波を飛ばすタイプである。
アパートの共用部分にルーター収容箱および機器収容箱が設置され、そこからWi-Fi電波を各部屋で共有するという形になる。建物がWi-Fi電波を通しやすい木造や鉄骨造で、比較的小規模なアパートに適したWi-Fi設備だ。
置き型Wi-Fi
置き型Wi-Fiとは、アパート全体に引かれたインターネット回線が、各部屋の置き型Wi-Fiルーターで飛ばされるタイプである。
仕組みとしては埋め込み型Wi-Fiに近いが、Wi-Fiルーターが壁やコンセントに埋め込まれているか、住戸内部に置かれているかが両者の違いだ。置き型Wi-Fiの場合、共用部設置型Wi-Fiや埋め込み型Wi-Fiのように共用部分や住戸内で工事をすることなくネット環境を整備できる。
無料Wi-Fiを設置する際の大家のコストは?
大家として気になるのはやはり設置する際のコストだろう。木造2階建て・10部屋のアパートの場合を例に、各種無料Wi-Fiを設置する際のコスト(導入コスト・ランニングコスト)についてみていこう。
コストは物件規模・構造・依頼する業者等によって大きく異なる場合があるため、複数の業者に見積もりを依頼して比較するのが得策だろう。そのため、以下で示した数字もあくまでも一例であり、参考程度にしてほしい。
設置方法 | 導入コスト | ランニングコスト(月額) |
埋め込み型Wi-Fi | 30〜40万円程度 | 1〜3万円程度 |
共用部設置型Wi-Fi | 30〜40万円程度 | 1〜3万円程度 |
置き型Wi-Fi | 5〜10万円程度 | なし |
埋め込み型Wi-Fiのコスト
埋め込み型Wi-Fiのコスト(導入コスト・ランニングコスト)は、共用部設置型Wi-Fiと同様程度で、導入コストが30〜40万円程度、月額のランニングコストが1〜3万円程度である。 ルーターを壁に埋め込む工事のコスト(導入コスト)と設置後のメンテナンスのコスト(ランニングコスト)がともにかかる。埋め込み型Wi-Fiを設置する場合、設置されるコンセントが従来のLANコンセントに比べて高単価になる場合がある点を認識しておこう。
共用部設置型Wi-Fiのコスト
共用部分へのWi-Fi機器の設置工事のコスト(導入コスト)と、設置後のメンテナンスのコスト(ランニングコスト)がかかる。
共用部設置型Wi-Fiは、サービスを提供する各社でサービス内容に大きな差があり、コストの概算が非常に難しいという特徴がある。導入コスト・ランニングコストがともに安くても、定期の保守点検費用に加えて通信障害発生時の対応時等における費用が別途発生し、トータルの金額が高くなるという場合もあり得るため注意が必要だ。
置き型Wi-Fiのコスト
置き型Wi-Fiのコスト(導入コスト・ランニングコスト)は、導入コストが5〜10万円程度、月額のランニングコストはなしである。 置き型Wi-Fiのコストは、基本的に置き型のルーターを購入するコストのみだ。共用部分や住戸内工事をする必要がなく、保守点検のためのコストもかからないという点で最も経済的といえるだろう。
無料Wi-Fiを設置する大家のメリット・デメリットは?
コストをかけて無料Wi-Fiを導入する以上、リターンとしてどのようなメリットを享受できるのか、大家にとっては重要な点だ。
「インターネット無料」という入居者のニーズを満たすことができるという前提で、それ以外に各タイプでどのようなメリットがあるのか見てみよう。併せてデメリットについても記述する。
埋め込み型Wi-Fi
まずは埋め込み型Wi-Fiのメリット・デメリットから見ていこう。
- 接続状況が安定しやすい
- 住戸内で配線が煩雑にならない
- 入居者によるルーターの破損や盗難のリスクを抑えられる
ルーターが各住戸の壁に埋め込まれているため、接続の質を保ちやすいうえ、入居者が触れることがないというメリットがある。
- 入居者がいる住戸での工事が難しい
- 全部屋での導入完了までの期間が長くなる
- 導入コストが高くなる可能性がある
既に入居者がいる住戸で工事をする場合、入居者との日程調整や生活への配慮(プライバシーや騒音等)が必要になるため、入居者との各種調整の関係で全部屋での導入完了まで時間がかかる可能性があるだろう。
埋め込み型Wi-Fiを設置する場合、設置されるコンセントが従来のLANコンセントに比べて高単価になる場合がある点も認識しておこう。
共用部設置型Wi-Fi
次に、共用部設置型Wi-Fiのメリット・デメリットを見ていく。
- 住戸内の工事が不要
- 即日完了の場合もあるなど工事期間が短く済む
- 比較的コストを抑えて導入できる
既に入居者がいる住戸で工事をする場合、入居者との日程調整や生活への配慮(プライバシーや騒音等)が必要になるが、共用部分であれば原則として大家のスケジュールで工事を進めることができる。
- 通信速度が遅かったりつながりにくくなったりすることがある
- 導入できる物件に構造的、規模的な制限がある
共用部分に設置されたルーターを各入居者でシェアする形になるため、設置された場所や天候、電波の弱さ等が原因で接続状況が左右されてしまう可能性がある。構造上、木造2階建・広さ40平方メートルまでの部屋など、物件の構造や規模によっては導入できない可能性がある。設置可否についての事前確認が必要だ。
置き型Wi-Fi
最後に、置き型Wi-Fiのメリット・デメリットである
- 工事が不要
- 接続状況が安定しやすい
- ランニングコストがかからない
コンセントがあれば容易に設置でき、配線の必要もないため、工事のための時間もコストもかからない。また、ルーターが各住戸内に設置されているため、接続の質を保ちやすい。
- 入居者がルーターを破損したり持ち去ったりするリスクがある
住戸内にルーターを設置する以上、入居者が誤って破損してしまったり退去時に持ち去ってしまったりするリスクがある。住戸内の設備であるため、善管注意義務を持って扱うことや退去時に持ち去らないことを重要事項説明書や契約書に織り込んでおく等の策を講じるといいだろう。
コストパフォーマンスを意識した設備投資を
無料のインターネット環境は、ウィズコロナという時代の流れも相まって賃貸住宅における重要性が以前にも増している。大家としてより良い住環境を入居者に提供するために、無料Wi-Fiの導入を検討するもの選択肢の一つだろう。
コスト(導入コスト・ランニングコスト)がかかるため、無料Wi-Fiの導入は設備投資の一環だ。大家には、共用部設置型、埋め込み型、置き型のいずれを導入するのか、導入した場合のメリット、導入しない場合のデメリットを比較しつつ、コストパフォーマンスを意識した判断が求められる。
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