紙幣の人物はどうやって決めているのか?お札に関する疑問あれこれ
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

日本銀行券のデザインが20年振りにリニューアルされることが大きな話題になっている。紙幣はなぜ新しくするのだろうか。また、紙幣に印刷される肖像画の人物を誰がどのように選んでいるのか、お札に関するさまざまな疑問について考察する。

新紙幣発行で話題になっている3人

前回紙幣のデザインがリニューアルされたのは2004年で、このとき選定された肖像画の人物は、一万円札の福沢諭吉のみそれまでと変わらず、五千円札は樋口一葉、千円札は野口英世にそれぞれ変わった。

それから20年後の2024年に再びリニューアルが行われる。今回は、一万円札も慣れ親しんだ福沢諭吉から刷新となる。新しく紙幣の肖像画に選ばれたのは、一万円札が資本主義の礎を築いた大実業家の渋沢栄一、五千円札が女子教育の先駆者である津田梅子、そして千円札が近代日本医学の父と評される北里柴三郎である。渋沢栄一はNHKの大河ドラマ「青天を衝け」の主人公として描かれるなど、一種の社会現象といえるほど大きなスポットライトを浴びている。

渋沢栄一は経済とお金の関連性を考えると、納得できる人選といえるだろう。津田梅子は前回の樋口一葉と同じく女性の著名人として五千円札の枠を継続したことになる。千円札の北里柴三郎も医師で細菌学者だった前回の野口英世と同じジャンルから選ばれたことを考えると、無難な人選になった印象だ。

紙幣の人物はどのように選ばれるのか

では、これらの人物は誰がどのような基準で選ぶのだろうか。人物の選定は日本銀行法第47条第2項の規定で財務大臣が行う。選定する人物の基準は、明治以降の文化人が基本とされている。その上で品格があり、お札の肖像に相応しい人物であること、国民に親しまれ知名度が高いことが選定基準になる。さらに、偽造防止の観点から精密な写真や絵画が入手可能な人物としている。

また、2004年にはそれまで男性のみだった紙幣の肖像画に、女性で初めて樋口一葉が選ばれた。ジェンダー平等の社会的背景も影響しているのだろうか。新紙幣でも津田梅子が選ばれており、今後も女性の選定が継続される可能性は高いだろう。

なぜ紙幣を新しくするのか

次に紙幣を新しくする必要性について考えてみよう。紙幣のデザインは原則として20年おきに改定されるが、新しくする大きな目的は紙幣の偽造(にせ札)防止と識別性の向上のためである。今回の新紙幣にはレーザービームで立体画像をプリントする「ホログラム」という技術が採用される。見る角度によって肖像画の立体画像の向きが変わるという最先端技術が導入されるので、偽造は困難だろう。また、指の感覚でどの紙幣か識別できるような工夫や数字の大きさを変え、視認性の向上を図るなど目の不自由な方や外国人に対する配慮がされている。

必要な改定ではあるが、一万円札のことを別名「諭吉」と呼ぶくらい福沢諭吉の肖像画が親しまれているだけに、渋沢栄一に変わった直後はかなり違和感があると思われる。聖徳太子から福沢諭吉への変更時もそうだったように、徐々に慣れていくしかなさそうだ。

新紙幣が発行されたら旧紙幣はどうなる?

新紙幣が発行されたあと、旧紙幣はどうなるのかも気になるところだ。新紙幣が発行されると、旧紙幣は随時新紙幣に切り替わっていくが、旧紙幣を使えなくなるわけではない。日本銀行のホームページ「教えて!にちぎん」※この先は外部サイトに遷移します。によると、2022年4月時点でも22種類の紙幣が有効とされている。1958(昭和33)年に発行が停止された一円札も理論的には使用することが可能だ。ただし、コレクションとして額面以上の価値があるので、現実的に一円として使用する人はほぼいないと思われる。

手元に残っている旧紙幣は銀行の窓口で「両替依頼書」を記入すれば交換してもらえる。ATMコーナーに両替機があれば、機械による両替も可能だろう。

紙幣の番号にプレミアが付くって本当?

紙幣に個別の番号が記されているのはよく知られるところだ。特殊な番号はプレミアが付いて、コインショップでは高値で売られているという。高値になるパターンのひとつがA-A券と呼ばれる最初期に印刷された紙幣である。AとAの間に6ケタの番号が記され、A000001Aが最初の番号となり、原則として博物館に寄贈される。それ以外は民間に出回っているのでA-Aが付いたものや、他の記号の1番券は高値が付く。また、111111などゾロ目の番号も希少価値が高く、一万円以上の相場になっている。

現行紙幣にプレミア券が残っている可能性は低いが、新紙幣が発行された直後は運が良ければプレミア券に出会えるかもしれない。しばらくの期間は番号に注目する人が多いのではないだろうか。それもデジタルマネーにはない紙幣ならではの楽しみといえそうだ。

新紙幣発行を機に現金の役割を考えよう

日本は国際的に見ると、キャッシュレス化が遅れているといわれる。経済産業省の「キャッシュレスの現状及び意義」※この先は外部サイトに遷移します。によると、2016年の時点において世界で最もキャッシュレス化が進んでいるのは韓国で96.4%となっている。これに対し日本は2018年の時点でも24.1%と大きく立ち遅れているのが現状だ。

キャッシュレス化にはスピーディーな決済や資金の透明化、社会コストの削減など多くのメリットがある。1円玉を作るのに3円のコストがかかると言われているが、キャッシュレス化が進めば、国の造幣コストが下がるのは事実だろう。

しかし、一方で今後も紙幣が必要な分野もあるだろう。日本には結婚祝いやお年玉といったご祝儀の文化がある。やはり、のし袋にきちんと包んで紙幣で渡すほうが相手も心がこもった印象を受けるはずだ。もちろん、お年玉をデジタルマネーにしたり銀行口座送金にしたりすることは可能だ。しかし、それでは味気ないと感じる人も多いだろう。もらうほうもありがたみが薄れる。それに子どもや孫の喜ぶ顔を見ることができないのは渡す方にとっても張り合いがないというものである。

また、日本には少子高齢化という特別な事情もある。ある程度の年齢層以上にはまだキャッシュレスへの抵抗感もあり、現金に依存する人も少なくないだろう。キャッシュレス決済への対応ができない小規模な個人商店も、まだしばらくは紙幣でやりとりせざるを得ない。日本のキャッシュレス化が進展したとしても、紙幣の魅力や役割は今後も続くのではないだろうか。

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