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公務員は、原則として副業を禁止されているが条件を満たせば不動産投資を行えることはご存じだろうか。今回は、公務員が副業禁止とされている法的根拠を紹介するとともに不動産投資を行うことができる条件や注意点について解説していく。
公務員が副業禁止とされている法的根拠とは?
国家公務員や地方公務員は、法律によって定められているため、原則副業ができない。
国家公務員の副業禁止
国家公務員は、国家公務員法第103条で「営利を目的とする私的企業を行う会社やその他の団体の役員などを兼ねることはできない」「自ら営利企業を営んではならない」とうたわれている。役員兼業の禁止については、報酬の有無を問わないことから、絶対的な禁止事項であることがうかがえるだろう。しかし同法第104条では、以下のように定められている。
国家公務員法第104条
引用:e-Gov 法令検索 国家公務員法 第104条 ※この先は外部サイトに遷移します。
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する
つまり、役員兼業そして自ら営む営利企業以外の兼業であれば、所轄庁の長の許可があれば行えるのだ。対象となる兼業は「労働の対価として報酬を得る業務」「その事業に継続的もしくは定期的に従事する」といった場合を指す。これらを踏まえると国家公務員の場合は、非営利団体における兼業が可能といえる。ただし以下のような要件を満たすことが必要だ。
- 職員が在職する機関とその非営利団体に利害関係がない
- その非営利団体との兼業によって公務の信用を傷つけられない
- 業務が経営上の責任者ではない など
また兼業から得る報酬は、社会通念上相当と認められる必要があり、勤務時間と兼業の時間が重複しないことなどの条件が付されている。
地方公務員の副業禁止
地方公務員においても地方公務員法第38条で以下のような内容を禁止している。
- 営利企業の役員兼業
- 自ら営利企業を行うこと
- 報酬を得て事業に従事する
ただし任命権者の許可を受ければ副業を行うことは可能だ。総務省発表の「地方公務員の社会貢献活動に関する兼業について」※この先は外部サイトに遷移します。によると、許可を受けて「社会貢献活動」や「その他の兼業」を行っている実績は、2018年度で約4万件となっている。「その他の兼業」には、農業や不動産の賃貸を含む。
公務員でも条件次第で家賃収入を得ることができる
上述した通り公務員でも許可を受ければ不動産の賃貸を行うことが可能だ。ただし許可を受ける必要性は、その不動産賃貸業務の条件によって異なる。具体的には「人事院規則14-8」に規定されているが以下の条件を超えない場合は規定に反しないため、許可なく業務を行うことが可能だ。
物件の規模
不動産の賃貸において戸建ての場合は5棟未満、集合住宅の区分所有の場合は10室未満となっている。また土地の賃貸については、契約数が10件未満、駐車場として貸し出す場合は平面かつ駐車台数が10台未満でなければならない。
家賃収入の基準
不動産の賃貸で収入を得る場合、賃料収入の合計額が年間500万円未満となることも必要だ。また対象となる不動産賃貸契約において特別な利害関係がないことも要件となっている。
ただし上記の条件のいずれかを超える場合は、副業とみなされるため、許可を取らなくてはならない。
不動産投資で家賃収入を得るためには許可が必要
条件を超えた不動産賃貸業務を行う場合は、「自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)」を提出し、許可を得なければならない。
管理業務の外部委託
許可を得るためには、入居者の募集や家賃の集金のほか、不動産の維持管理など不動産の賃貸にかかわる管理業務を事業者に委ねることが条件だ。これには、管理業務を外部に委託することにより、職員の職務の遂行に支障が生じないようにする目的から付された条件と考えられる。
自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)
自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)には、以下の内容を記載することとなっている。
- 賃貸する不動産の情報
- 賃料収入の予定年額
- 不動産又は駐車場の賃貸に係る管理業務の方法
- 職員への承認に係る不動産の賃貸との間の特別な利害関係の有無
- 職員の職務の遂行への支障の有無
- その他公務の公正性及び信頼性の確保への支障の有無
また申請書には、以下の資料を添付しなければならない。
- 不動産登記簿の謄本、不動産の図面等賃貸する不動産等の状況を明らかにする書面
- 賃貸契約書の写し等賃貸料収入額を明らかにする書面
- 不動産管理会社に管理業務を委託する契約書の写しなど、不動産の賃貸に係る管理業務の方法を明らかにする書面
- 事業主の名義が兼業しようとする職員の名義以外の名義である場合は、事業主の氏名および職員との続柄ならびに職員の事業への関与の度合いが分かる書面
- 職員の人事記録の写し
引用:人事院 人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について ※この先は外部サイトに遷移します。
申請書・添付書類などの概要
規定を超えて公務員が不動産投資の副業をする場合、所轄庁の長を通して承認権者に申請書や添付書類を出すことになる。具体的には、以下の申請書や添付書類が必要だ。
1.自営兼業承認申請書
2.職員の人事記録の写し(※副業をしている本人は取り扱わない)
3.不動産登記簿の謄本
4.賃貸借契約書
5.管理委託契約書 など
このうち副業をする公務員本人が用意するのは、3~5だ。(1は署名押印が必要)それぞれの申請書・添付書類の概要を見ていこう。
・自営兼業承認申請書
公務員が規定を超えて不動産投資で副業をする際に必要な「自営兼業承認申請書」は、人事院の公式サイト上からダウンロードできる。注意したいのは、この申請書はあくまでも所轄庁の長などを通して承認権者に対して出すものということだ。ただし職員署名欄に副業をする公務員本人の署名押印が必要となる。
人事院公式サイト「自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)」※この先は外部サイトに遷移します。
・不動産登記簿の謄本
自営兼業承認申請の添付書類である「不動産登記簿の謄本」は、最寄りの法務局で取得できる。申請書(不動産用・登記簿謄本・抄本交付請求書)に必要事項を記入し、収入印紙を貼付のうえ申請する。申請書は、以下の法務局の公式サイトからダウンロードできる。
法務局公式サイト「不動産用/登記簿謄本・抄本交付請求書」※この先は外部サイトに遷移します。
なお申請書の提出方法は「法務局に送付する」「法務局の窓口に提出する」「オンライン請求する」の3つある。ただし郵送の場合は、取得までに日数がかかるため、急ぎならその場で取得できる窓口に提出するのが確実だ。
・賃貸借契約書
一般的に添付書類である「賃貸借契約書」は、不動産仲介会社が用意してくれる。貸主・借主が記名押印した賃貸借契約書の写しを提出しよう。
・(賃貸住宅)管理委託契約書
一般的に添付書類である「管理委託契約書」は、管理会社が用意してくれる。依頼者と賃貸住宅管理業者が記名押印した管理委託契約書の写しを提出しよう。なかには、管理会社が用意した契約書の中身が適切か確認したいケースもあるかもしれない。その場合、国土交通省の「賃貸住宅標準管理委託契約書」(ひな形)を参考にするとよいだろう。
同一の内容である必要はないが、中身が大きく違うときは管理会社に理由を確認しておこう。
国土交通省公式サイト「賃貸住宅標準契約書について」※この先は外部サイトに遷移します。
公務員が副業を相談するタイミング
上述しているように規定を超えて公務員が不動産投資の副業をするには、所轄庁の上長から承認権者に申請手続きが必要だ。そのため物件規模や収入要件などの規定を超えそうなときは、早いタイミングで人事担当者や上司などに相談してコンセンサスを得ておくのが得策である。そのうえで実際に申請の必要があれば所轄庁の上長に承認権者に対する申請をお願いするとよいだろう。
いずれにしても物件購入の直前のお願いや事後報告は避けたい。
公務員が不動産投資を行うことのメリット
公務員が不動産投資の副業をする場合、新たな収入源の確保やローン審査に有利などのメリットを得られる。詳細は、次の通りだ。
許可を得ることで新たな収入源を確保できる
公務員は、原則副業禁止だ。しかし許可を得ることで新たな収入源を確保できる点は大きなメリットといえる。ただし、許可を得ずに一定規模以下の不動産賃貸業務を行うにしても本業の業務に支障が生じてはならないことから管理業務の外部委託は必須といえる。
ローンの審査において有利に働くケースが想定される
不動産投資を行う際は、金融機関からの融資を活用するケースもあるだろう。公務員という属性は収入の安定性からローンの審査において有利に働くケースが想定されることもメリットといえる。
公務員が不動産投資を行うことのデメリット
公務員が不動産投資の副業をする場合、転勤や規模拡大時にデメリットが発生する可能性がある。詳細は、次の通りだ。
転勤して拠点が変わる可能性がある
不動産投資をしている公務員のなかには、目が届きやすいように自宅近くの物件を所有しているケースもあるだろう。公務員には「転勤のないもの」「転勤のあるもの」があるが、後者の場合、遠方に転勤することで物件から離れてしまう点はデメリットだ。ただ信頼できる管理会社と契約していれば遠方にいても安心して不動産投資を継続しやすいだろう。
転勤の可能性のある公務員は、業務を安心して任せられる管理会社をパートナーに選んでおくことが大事だ。
不動産投資の規模拡大時に周囲の負担がある
上述の通り、公務員が規定以上の不動産投資を行う際には、所轄庁の長から承認権者に申請する手続きが必要となる。以下がその規定だ。
- 戸建ての場合は5棟以上
- 集合住宅の区分所有の場合は10室以上
- 土地の賃貸は、契約数が10件以上
- 賃料収入の合計額が年間500万円以上
実際の申請手続きでは、人事担当者や所轄庁の長の手をわずらわさなければならないため、気を使うこともあるだろう。これも公務員が不動産投資の副業をするときのデメリットとなる。
公務員が不動産投資を行う際の注意点
まず自分が行う不動産賃貸業務の規模が許可を受ける条件に該当しているかどうかをチェックする必要がある。例えば物件の規模や家賃収入基準の確認、管理の外部委託契約の話を進めておくことが必要だ。申請書に添付する資料は、事前にしっかりと確認し、漏れのないように準備しておきたい。
さらに管理会社の選定も慎重に行う必要がある。例えば「消防設備の点検などの法定点検を行っているか」「家賃の滞納が発生した際に迅速に動いてくれるか」など実績の確認をしつつ安心して委託できる管理会社を選ぶことが大切だ。できるだけ管理会社が提出している運用レポートや入居者募集活動報告などの事例を見せてもらうとよい。
家賃交渉などもしっかりと行ってくれる管理会社であればさらに安心できるだろう。またある程度の基準を設定したうえで複数の管理会社を比較することも大切だ。さらに委託料が適切なものかを判断しながら最終的に委託契約を結ぶ管理会社を選定するのが賢明だろう。
不動産投資を始める際に物件を選ぶポイント
副業で不動産投資を始める際、失敗しないための物件を選ぶポイントは数多くある。その代表的なものをいくつか紹介していく。
入居者の需要と物件供給のバランスがとれている立地を選ぶ
不動産投資で安定経営を目指すなら入居者の需要(ニーズ)と物件の供給(物件数)のバランスのとれた立地を選ぶことが重要だ。こういった立地であれば空室率を抑えやすく家賃下落率も緩やかにしやすい。入居者の需要と物件供給の指標の一つに総務省統計局の「住宅・土地統計調査」がある。
この統計で空き家率が低い都道府県は、需要と供給のバランスが比較的とれていると考えられる。ちなみに、総務省の「平成 30年住宅・土地統計調査」※この先は外部サイトに遷移します。で空き家率の低い都道府県のベスト5は次の通りだ。
ただし同じ都道府県でも空室率の高いエリア、低いエリアがあることに留意したい。
目的に合った建物構造の物件を選ぶ
一口に不動産投資といっても建物構造によってメリット・デメリットが変わってくる。これらの特性を理解したうえで建物のタイプを選ぶことも大切だ。
構造 | 新築の法定耐用年数 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
鉄骨造 | 軽量:19年(骨格材肉厚3mm以下) 軽量:27年(骨格材肉厚3mm超4mm以下) 重量:34年 | ・コストがやや安い | ・耐火性で難がある |
木造 | 22年 | ・コストが安い ・工期が短い | ・耐用年数が短い ・耐火性で難がある |
鉄筋コンクリート造 | 47年 | ・耐火性がある ・遮音性が高い | ・コストが高い |
例えば購入費用を抑えること重視なら「木造アパート」、不動産投資ローンで長期の借入期間を設定したいなら「鉄筋コンクリート造のマンション」などになるといった具合だ。
将来的に人口が安定しているエリアを選ぶ
日本は、本格的な人口減少社会に突入しているが、なかには人口減少が緩やかだったり人口が安定していたりするエリアもある。副業で賃貸経営を検討しているのであれば、こういったエリアの物件を選ぶことが大事だ。対象とするエリアの将来の人口を調べる方法は、各自治体でまとめている人口予測や人口推計のデータを参考にするとよいだろう。
まとめ
副業が禁止されている公務員でも一定条件未満の場合は許可なしで副業を行うことが可能だ。また一定条件以上の場合でも許可を得ることで不動産投資を行うことができる可能性がある。ただし不動産投資は、投資である以上必ず利益が発生するとは限らない。不動産投資のメリットやデメリット、リスクを十分に理解しながら自身の資産形成の一部として有効に取り入れ活用することが大切だ。
また許可が必要であるにもかかわらず、無断で副業を営んでいた場合は何らかの懲戒処分を受ける可能性がある。そのため「黙っておけば分からないだろう」という安易な考えで副業を始めないことが大切だ。また、不動産投資自体が副業規定に抵触しないかどうか人事担当者などに念のため確認を取ってから始めることが無難だろう。
公務員が副業で不動産投資をする際によくあるQ&A
Q.副業として不動産投資ができる条件とは?
A.以下の規定の範囲内であれば公務員が不動産投資の副業をする際も申請手続きは不要だ。
- 戸建て:5棟未満
- 集合住宅の区分所有:10室未満
- 土地の賃貸:契約数が10件未満
- 賃料収入の合計額:年間500万円未満
承認権者への申告手続きを取りたくない場合は、規定の範囲内で不動産投資を検討するのがよいだろう。許可不要であっても念のために人事担当者などに副業規定に抵触するかどうかの確認はしたほうが自信の身を守るためには必要だろう。
Q.規定を超えた不動産投資をする際、申請に必要な書類とは?
A.規定を超えて公務員が不動産投資の副業をする場合、所轄庁の長を通して承認権者に申請書や添付書類を出すことになる。具体的には、以下の申請書や添付書類が必要だ。
- 自営兼業承認申請書
- 職員の人事記録の写し
- 不動産登記簿の謄本
- 賃貸借契約書
- 管理委託契約書 など
このうち副業をする公務員本人が用意するのは、3~5だ。(1は記名押印が必要)
Q.副業として不動産投資をするとどんなデメリットがある?
A.公務員が不動産投資の副業をする場合、「新たな収入源を確保できる」「ローン審査に有利」などの メリットがある一方、 以下のようなデメリットもある。
- 転勤して拠点が変わる可能性がある
- 不動産投資の規模拡大時に周囲の負担がある(申請が必要になる)
例えば自宅近くに物件を所有しているケースでは、遠方への転勤で目が行き届かなくなる可能性がある点はデメリットだ。しかし信頼できる管理会社と契約していれば遠方にいても安心して不動産投資を継続しやすくなる。
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